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  • 2014.07.28 Monday
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「交渉人は疑わない」 榎田尤利 / ill.奈良千春

元検事で元弁護士、そのうえ美貌と才能まで持ち合わせた男、芽吹章は、弱き立場の人を救うため、国際紛争と嫁姑関係以外はなんでもござれの交渉人として、『芽吹ネゴオフィス』を経営している。ところが、ひょんなことから高校時代の後輩で、現在は立派な(!?)ヤクザとなった兵頭寿悦となぜか深い関係になっている。嫌いではない、どちらかといえば、好き…かもしれない、だがしかし!!焦れったいふたりの前に、ある日、兵頭の過去を知る男が現れて。

交渉人シリーズ2作目。相変わらずの面白さでした!

「国際紛争と嫁姑関係以外はなんでもござれ」の交渉人・芽吹の元に、ストーカーと化した客に悩むホストの溝呂木が訪れますが、彼は兵頭と何やら因縁があるらしい。
そして兵頭を人殺し呼ばわりした溝呂木の様子にただならぬものを感じた芽吹は、自分の知らない兵頭の過去を知ることになります。

お話の冒頭、芽吹と兵頭は、体の関係(でもまだ最後まではいってない)は続いているけれど恋人同士というわけではないというなんだかよくわからない状態になっていますが、でも信頼関係は深まっているな〜と思いました。
そして相変わらずな夫婦漫才には笑ってしまいます(笑)。

今回は芽吹の知らない兵頭の過去が明らかになるお話で、それ自体はけっこうヘヴィーなんだけれども重苦しくならないのがこのお話のいいところですね。
かと言って決して軽いわけではなくて、読み応えがありました。
「変わろうとしている人を信じたい」もですが「恐ろしいのは個人ではなく、組織」というセリフに、芽吹の信念の根っこを見た気がします。
今回、交渉人としての芽吹の仕事ぶりと活躍がさらに描かれていますが、すごく有能なその姿はかっこよく見えそうなものなのに何故か三枚目になってしまうのが芽吹らしくてイイです(笑)。

そして今回はやっとふたりが最後までやっちゃうことにもなるお話でもあります(笑)。
そこも良かったですが、エロなシチュでいちばんインパクトあったのは、溝呂木の前で兵頭が芽吹とイタそうとしたシーンでした(笑)。オチに笑わずにはいられませんw 兵頭がますます好きになってしまいますww
いやいや、そんなヘンタイなところだけじゃなくて(笑)、最後の最後で明かされる事実に惚れ直してしまいました。

キヨ、智紀、さゆりさん、アヤカなどなど脇キャラもちゃんと登場してくれているのも愉しかったです。
キヨと智紀はいつの間にそんなことにと突っ込んでしまいました(笑)。
今回登場した七五三野は当て馬キャラ狙いすぎでちょっとノれなかったですが、こうした脇の面々が今後どう活躍していくのかも見どころですかね。
因みにさゆりさんファンなので(笑)、さゆりさん視点の終章がすごくよかったです^^

ところで奈良さんのイラスト、苦手だった鼻から下のもったりした感じがなくなったと思ったら、今度は目と眉がコワイ…。コミカルな雰囲気は前よりお話に合ってるんだけど…、目が;;

「交渉人は黙らない」 榎田尤利 / ill.奈良千春

元検事で元弁護士、そのうえ美貌と才能まで持ち合わせた男、芽吹章は、暴力・脅迫・強制、このみっつが反吐が出るほど大嫌いだ。弱き立場の人を救うため、国際紛争と嫁姑問題以外はなんでもござれの交渉人として、『芽吹ネゴオフィス』を経営している。そんなある日、芽吹の前にひとりの男が現れた。しかもヤクザになって!!兵頭寿悦―できることなら、二度と会いたくない男だった…。

言わずと知れた超人気シリーズ、今頃になってやっと読んでみました。
実はこのシリーズ自体はけっこう前から持っていたんですけれど、今の今まで積んでおりまして;
これまで、
 ・BLの超人気作ほどさしてはまらなかった
 ・この作家さんの他作品がさほどツボにこなかった
 ・イラストが苦手(とくに三作目の攻めの目がコワすぎる;)
 ・長編シリーズなので読み始めるのに躊躇
…等々の理由で時間の空いたときにでも〜…と放置していたのですが;この間出た榎田さん100冊記念本を購入したのをきっかけに、もうそろそろ読もうかと。

で、遂に読んだわけですが、期待値高すぎて思うほどは楽しめないかもという予想に反して、これとっても面白かったです!
イラストの印象で勝手にシリアスなヤクザものなのかと思っていたんですが、かなりコメディタッチでびっくり!(笑)。
もっと早くに読んでおけばよかった!(笑)。

東京の下町で交渉人(ネゴシエーター)を始めた芽吹(受)が、高校時代の後輩で今は町を仕切るヤクザの若頭(攻)となった兵頭と再会したことから始まるお話。
暴力が大嫌いな芽吹は自分に絡んでくる兵頭と関わり合いになりたくないんですが、根っからのゲイだという兵頭はなぜか芽吹に執着していて、芽吹を「俺のオンナにする」と言い出して迫ってくるわ、周囲からはいつの間にかそういう関係だと思われるわで踏んだり蹴ったりな状況に陥り、気が付いたら兵頭の依頼で仕事をする羽目に。
それがきっかけである事件が起こり…。

序章と終章を除く本編は32歳にして既にオヤジの入っている芽吹の一人称で進むので、とても軽妙で時々プププと笑いながらサクサク読めてしまいます。
そして両国という下町が舞台のせいなのか、お話全体が地に足の着いた感じで親しみやすかったです。

このお話で何よりツボにきたのは、芽吹のキャラでした!
冒頭の折り目正しい姿が標準なのかと思いきや、仕事から離れた途端にぞんざいな物言いになったり、美形で優秀なのに頭の中はオヤジ臭かったりなギャップがすごくイイ!(笑)。
あと、こういうタイプでここまで運動能力が標準以下なキャラをBLで見たのは初めてかもしれない(笑)。そこに何とも言えない人間臭さを感じて、「ああこういう人何処かにいそうだな」と思わせてくれます。この、ちょっと抜けている感じがミソなんでしょうね。
彼は決して万能なヒーローではないけれど、弱いもののために強くあろうとしている―ともすれば鼻に付きがちなキャラ設定をここまで絶妙に描いているのは凄いです。

お相手の兵頭もイイ味出してます(笑)。
芽吹を「先輩」と呼び慇懃に敬語なんか使っちゃってますが、その実だいぶヘンタイな執着男ですw ほんと、芽吹きに対しては真面目に変態で(笑)、ピンチな芽吹が気の毒なんだけれど、兵頭の「―ああ、ゾクゾクする」には爆笑してしまいましたw
そんな変態さんなところだけでなく(笑)、ヤクザといえばハイスペックな経済ヤクザがお約束のBLにあって、これまた珍しいことに自ら経営しているイメクラの様子を見に行ったりと地道な感じが何だか新鮮です(笑)。や、兵頭のスペックはかなり高いですけど!(笑)。

ふたりの漫才みたいなやりとりがいちいち可笑しくてかなり笑わさせていただきましたが、そうしたコミカルな部分だけではなく、兵頭の依頼から発展する事件のこととかふたりの間に過去の確執があったりとか、色んな面で目が離せない展開です。
事件は大げさでない分如何にも「ありそう」な感じで逆にハラハラさせられました。
ところで、事件がらみで出て来る女の子にBLに登場する女子特有のいやらしさがないのが個人的にすごくよかったです。単にラブ面に関わってこないからかもしれませんが(笑)。

シリーズものなので仕方のないことですが、お話の余白部分が多いのが気になるところ。
芽吹と兵頭のそれぞれの過去に関しては、特にそれを感じてしまいました。
何というか、ふたりともかつての姿と現在の彼らとがあまりに別人過ぎて繋がらず、いったい何があったらそんなに人間変われるものなの?? と疑問だらけ。芽吹も肝心な部分は明らかに語り落としてますよね。
このあたりの余白―というか空白部分は、今後埋められていくのかな。期待してます♪

もうひとつ、ラブ面もふたりはまだまだ恋人には程遠いですね(笑)。
っていうかラスト、まさか最後までしないで終わるとは思わなかった(!)。
そして、芽吹の一人称で進む割に徹頭徹尾ノンケの彼が兵頭に身を委ねても構わないと思うようになったのはなぜなのかが見えてこないのが気になりました。
若干「BLだから」ふたりはくっついたと感じてしまったのが残念。
キャラがすごくいいだけにそこがすごく引っかかってしまったのでした…。

「窓」 水原とほる / ill.奈良千春

高校2年の時、逆恨みで陵辱されかけた保(たもつ)を助けてくれた1年の隆明(たかあき)だが、なぜかその後強引に身体を繋げてくる。大学になって離れたのもつかの間、また隆明は追いかけてくる。逃げたいが逃げられない状態のまま、出会ってから9年が経った。そんなある日、突然態度に優しくなった隆明が告げたこととは…。

水原さんの初期の中〜短編集。
「窓」、「温い血」、「秘密」、「黄色い花」の4作品が収録されています。
読む前は執着系のお話ばかりなのかなと思っていましたが、SMや耽美なお話もあったりで色々と美味しい一冊でした(笑)。

「窓」
★★★☆☆
高校時代、逆恨みで不良たちに襲われかけた保(受)は一つ下の隆明(攻)に助けられるもののその場で犯され、それ以降明は一方的に執着されるようになってしまう。
隆明は進学しても社会人になっても保を追いかけてきて、気が付けば度を越した執着は9年も続き、保は隆明にいつしか恐怖だけではないものを覚え始めていることを自覚します。けれどもある時、隆明が「別れよう」と告げてきて…。

最近ようやく悟ったんですが、私、BLでいちばん苦手なのは執着もののようです。特にヤンデレっていうんですかね、病的だったり歪んでいたりする執着攻めがどうにも受け付けない。大抵がそこまでするほど受けに魅力がないケースが多い気がしますし、それで周囲を巻き込んでいたりしたらもう本当にダメです。
なので、執着もので有名なこの作品も覚悟して読んだんですが(大袈裟か)、予想に反してこれが案外大丈夫でした。
関係の始まりが高校生の時だったことがプラスに働いたというか、隆明は保に一目惚れしたのにどうしていいのかわからずこんなことになったという印象で、このある意味不器用とも取れるところがなんだか可愛かった。
まぁ、進学後や社会人になってからも追いかけてこられたり、恋人ができそうになるたび強制的に別れさせられたりした保にはたまったもんじゃなかったでしょうけれどもね(苦笑)。
そんなふたりが、始まりこそ間違えたけれどちゃんと向き合って手を取り合えたのがとてもよかった。執着ものですけど、読後感は爽やかです。

ところで、こうした一方的な執着で始まるお話ってBLではよく見かける気がしますが、これ普通に男女だったら嫌悪感や恐怖を覚えるレベルなのに、BLだと許容してしまえるのは基本的に力関係の覆せない男女と違って男×男だと対等だからかもしれませんね。そこらへんに安心感を覚えるというか。いや男相手でもそれはダメだろと思うこと多いんですが(笑)。
ともかく、男×男だからこそ安心して愉しめるジャンルだと思いました。

「温い血」
★☆☆☆☆
離婚した親に嫌気が差した高校生の和己(受)は、両親のどちらでもなく子供の頃から自分を可愛がってくれている叔父の俊和(攻)のところにいたいと言い、俊和は「どうなっても知らないよ」と意味深な言葉を告げて和己を受け入れます。
和己は長年俊和が自分を甥以上の目で見ていることを自覚していて、生活を共にしたときから俊和とそれ以上の関係になることを受け入れるのですが、次第にどこまでも自分を甘やかす俊和にのめり込んでいく。
けれども俊和に自分以外の男の影がちらついたことに腹を立て、和己は仕返しとばかり行きずりの男と一夜を共にしてしまいます。
それを知って激怒した俊和が和己に取った行動は…。

どこか爽やかだった「窓」から一転、同じ執着ものでも叔父×甥の近親もので最後はふたりの世界にこもってしまうこの作品は全然ダメでした;
何より、俊和の和己への執着が気持ち悪すぎる。
ところどころで小さい頃から和己を…みたいなことを言っていて、彼はいったいいつから和己をそういう目で見ていたんだろう…と思うとゾゾゾ〜っとしてしまいました…。ショタがダメなので余計かも;
一方の和己も、甘やかされて育ったただのわがままな高校生にしか見えず何の魅力もなかった。
こういう系の執着ものは本当に苦手だなーとしみじみ実感してしまいました。
あと、イラストの俊和がイメージと合ってない。温厚そうなしゃべり方からして、ワイルドなオッサンじゃなく調教中も薄っすら微笑んでいるような怖さのある甘いマスクの男だと思うんですけど…。

「秘密」
★★★★☆
秘かに磔刑図に興味を覚えている高校生の薫(受)は、偶然知り合った公一(攻1)と雅弘(攻2)ふたりのS気質の男たちに誘われて彼らの相手をすることに。そして、ふたりの容赦無いプレイによってM性を暴かれていきます。

短いお話ながらすごくよかったです! 収録作の中でこれがいちばん好きかも。
公一と雅弘は恋人の関係ですがタチ同士なので抱き合うことはなく、ふたりでひとりのMを共有し、Mを介してお互いを確かめ合っている奇妙な仲。
しかも、Mを加えた3Pではなく順番にMを抱きそれをもう片方が眺めるという、かなり変わった愉しみ方をしています。
3人だけど3Pじゃないのが逆にマニアックで、攻め二人の特殊性が際立っている感じですね。
公一と雅弘それぞれに攻め方の違うSなのでそこも愉しめますし、そんなふたりによって普通の男の子がM性を暴かれていくというのがたまらんです(笑)。
もっとページがあってもいい気がするけれども、この量だから無駄なく愉しめるお話かもしれません。

「黄色い花」
★★★★☆
芸大生の隆一は、憧れの存在で滅多に表に出てこないことで有名な日本画家・水口に取材をするチャンスに恵まれます。
そして訪れた時間の止まったような水口の屋敷で水口の養子・旭の存在を知り、その美しさに惹かれていきますが、水口と旭との間にある普通ではない深い絆を知ることになり…。

短いながらJUNEな気配の濃厚な耽美なお話でした。水原さん、こんなお話も書かれていたんですね。
隆一がふたりの関係を傍観するのではなくその歪んだ絆を深めるための道具として利用されるのが、救いがないんですけどなんだかいい。
お互いに体を繋げることはないふたりが愛を確かめる手段として第三者を必要としているという点では、「秘密」と共通する部分がありますね。とても興味深いです。
こんなお話をもっと読んでみたいと思いました。


どのお話も、この長さだからこそ無駄のないストーリー展開で読みやすかったです。
少し前の作品なためか、受けが軒並み高校生以下なのも何だか新鮮でした(笑・「窓」は成長した受けの回想部分なので厳密には違うかもですが)。
最近はBLで短〜中編はなくなりつつある感じですが、この本の収録作のように短〜中編だから表現できるお話もあると思うので、また復活してほしい。っていうか、ここまで長編が好まれる理由って何なのだろう? よりエンタメ路線になっているということでしょうか。
ところで、お話の痛さは個人的にはそれほどでもなく普通に愉しめましたが、内部洗浄はなくてもいいんじゃないのかなと; 作家さんがそこにこだわりを持っていることは伝わってくるんですが、そこは敢えてリアリティを持ち込んんで欲しくないというか、正直萌えないんですけど。。

あと、このレーベルの特徴でイラストが漫画調でしたが、それはいいとしてセリフが入るのはどうなんだろう。
イラストが入るたびに気になってしまって、「黄色い花」みたいな耽美なお話にはむしろ邪魔になっていると思いました。
レーターさんのファンだったら珍しいのでいいのかもしれませんが、そうじゃないと蛇足に感じるだけのような気がしてちょっと残念でした。

「ヘブンノウズ 赦罪」 英田サキ / ill.奈良千春

ベストセラー作家の渋澤征武にイラストの才能を見いだされた千野旭は、弟のミツルと渋澤の屋敷で暮らしている。恋人はつくらない主義だと宣言している渋澤に恋した旭は、身体だけの関係でもいいからと訴え、渋澤はそばにいることを許した。渋澤がある過去に苦しんでいることを知った旭は、渋澤の力になりたい、今は無理でもいつか本当の恋人になりたい、そう思っていた。そんなとき、旭はかつて渋澤と寝ていた速水に怪我を負わせてしまう。好きなのに、擦れ違っていく想いに旭は・・・!?

5月も半分近く終わっていることに気が付いて本気で焦ったaliciaです;今月はなんか余裕がなくて、BLゆっくり読めないわここの更新もできないわでちょとストレス。ちょっと体を動かしたら全身筋肉痛になるし(運動不足…)、まったりBLで癒されたいーーー
さてさて、そんな中でやっと読みました「ヘブンノウズ」の最新刊!
前回はたいした進展もなくじりじり状態で終わってうーん…という感じでしたが、それの反動なのか今回は一気に事態が動きました。予想以上に動いていて、ちょっと戸惑ってしまったくらい(笑)。
これまでのような旭たちの周りで事件が起き…みたいな展開とは違って、渋澤の過去を中心に添えた内容だったからでしょうか。

デビュー以来一度も締め切りを破ったことのない渋澤が仕事も滞りそうなほどのスランプ状態に陥ってしまい、らしくない様子に不審なものを感じた旭は、それには渋澤の亡くなった弟が深くかかわっているらしいことを知ります。
少しでも渋澤の力になりたいとがんばる旭でしたが、成り行きで渋澤の元セフレ速水を怪我させてしまったり渋澤との約束を破ってしまったりで、すれ違いばかりを起こしてしまいます。
遂にはやっと手にしたセフレ関係さえも解消されてしまうというピンチに陥ってしまい…。

これまではクールで謎めいた紳士然としていた渋澤が今回はのっけから弱っていて、その意外な姿にびっくりさせられました。まるで別人ですよ。
ここまで「あれ?」って思ってしまったのは、渋澤の変調が今回唐突に訪れているからでしょうね。前回まではそんな気配はまるでなかったので、そのギャップで余計に。
そしてその渋澤の過去がここで全て明かされてしまったことも意外でした。
これまでさんざんひっぱってきた感じだったし、そんなにあっさり明かされないだろうなぁと勝手に思っていたもので(笑)。
謝罪ではなく赦罪し続けていた渋澤が切なかったです。
渋澤がいたからこそ救われた人たちは多くいるのに、彼はひとり苦しんでいたんだなと思うと本当に苦しいですね。
今回は、諦めの悪い旭の勝利といいますか、旭のしつこさが渋澤を終わりのない苦しみから救ったんだなと思いました。
途中、渋澤に見限られたと思った旭が薫に身を任せようとしたのにはちょっと待て!! って思ってしまいましたが(だって男のくせに優柔不断に揺れてほしくないです…)、旭と渋澤が晴れて恋人同士になってくれて良かった。
まぁその一方で、薫がただのいい人として去っていっちゃったのが残念でしたが。。
よく考えたら、人のオーラが見える薫は、最初から解っていたんですよねきっと。そう考えると、なんて切ない役回りだったんだろうかと今更気が付いてしまいました。

私、こういう「いい人」の登場する「いい話」はあまり好きじゃない…というか、押し付けがましさにちょっと醒めてしまうことがあってダメなことが多いんですけど、不思議とこのシリーズは好きです。
全体を覆っている人とのつながりや支え合いがもたらす優しさが心地良いからでしょうかね。
今回も温かい気持ちにさせられました。
唯一、速水があまりにもヤなやつすぎてちょい引きましたが(笑)。子供じゃないんだからあそこまで意地悪しなくてもねぇ。。まぁ、色んなものの裏返しなんでしょうけど、もうちょいどうにかしてほしかったと思ってしまいました正直;

というわけで、BL的にはめでたくここで一段落ですが、まだ大きな謎がひとつ未解決でしたね。
次回が最終巻だそうですので次はそれメインなのは確実ですが、…なんかいろいろ覚悟しとかないとなぁと思ってしまったり。
今回ミツルがすごくがんばっていて、だいぶしゃべるようになったり再び学校へ行こうとする姿にじわーんときてしまったんですよ。だから、だからこそミツルにとって苦しい展開になりませんようにと切に願ってしまうわけですが…、やっぱりつらいことになりそうな気配…。
このイヤな予感がどうか当たっていませんように。。

「ヘブンノウズ」シリーズ
 ・「ヘブンノウズ」
 ・「ヘブンノウズ 足跡」
 ・「ヘブンノウズ 赦罪」

「愛に終わりはないけれど」 中原一也 / ill.奈良千春

労働者の街で診療所を営む坂下は、ボランティア紛いの診察で常にギリギリの生活だ。そこへ新たな珍客・斑目の師匠の久住医師がやってきた。隙あらばセクハラをしかけてくる恋人の斑目に加え、それに輪をかけて下ネタ遊びや酒好きの久住に手を焼かされる坂下。しかしそんなある日、いつもの見回りをしていた坂下は街に起きている異変に気づく。その背景に絡む一人の男により、斑目が医師を辞めるきっかけとなった出来事が明らかに。斑目の癒えることのない傷、それを知った坂下は―。

シリーズ第5弾です。前回は双葉メインのお話でしたが、今回は斑目の抱える過去が絡んでくる内容でした。
…で、どこを見ても評価高い中で申し訳ありませんなんですけれど、個人的にはそうでもなかったです。

双葉が去った後の坂下診療所。相変わらず坂下へのセクハラに余念のない斑目と斑目のセクハラをかわしつつ仕事に追われる坂下でしたが、双葉のいない診療所にはどことなく寂しい気配が漂っています。
そんなふたりの前に斑目の恩師であるという医師・久住が現れて、成り行きで坂下の診療所に下宿することに。
そしてさすが斑目を育てただけあってただの爺さんではない久住に、坂下は振り回されっぱなしになります。
同じ頃、街からホームレスが消えるという奇妙なことが続き、不審に思って調査を始めた坂下たちが辿り着いたのは、貧困ビジネスの温床となっているある支援施設。
そこのスタッフのひとり美濃島が斑目の過去に深く関わっていることを知った坂下は、これまで斑目が語りたがらなかった過去を知ることになりますが。

今回は、斑目の過去が明らかになったことで新たな局面を迎える坂下と斑目の関係と、貧困ビジネスなどの現実に社会が抱える問題を絡ませたいつになく社会派な内容でした。
日雇い街舞台のお話らしく社会の暗部に踏み込んだ内容は確かに読み応えあるんですが、今回どうもそこに重点置きすぎているような印象でBLとしてはちょっと物足りない読後感でした。
個人的に、やっぱりBLには萌えは不可欠だなーと改めて思ってしまったり。

というかこのシリーズ、いいお話だとは思うんですが個人的にはそこまでツボにこないんですよね。
医療ものに興味がないのに加えて、回を重ねるごとにおせっかいないいひとっぷりに磨きがかかっていく坂下がどんどん苦手になってきたせいかも。んで、イラストの坂下がいっつも美人に見えないのも原因のひとつですかねー
イラストといえば、今回の斑目、誰このラテン男と思ってしまったのは私だけ?wウクレレ弾き語りなんて新たな技(?)を習得しているからか??で、ウクレレはラテンじゃねーよと自分で突っ込む(笑)
…そんな、スカイツリーやらウクレレ弾き語り(w内容の酷さに笑わされつつ、返事の代わりにポロンと返すところが可愛くて好き)やらで相変わらずのセクハラオヤジっぷりを披露する斑目や、子泣きジジィ久住の登場(笑・登場シーンのイラストに吹いてしまったw)などなど、このシリーズには欠かせない笑いもちゃんとありますが、全体的にけっこう重たい感じです。

いろいろ気になってしまった部分もありました。
斑目の抱えている過去が明らかになりましたが、批判を承知の上で言うと、それだけで医者が日雇い労働者になるものなのかとどうにもギモンが拭えない。
双葉編は文句なしに納得できるものでした。
彼の過去は想像を絶していて、だからこそあの若さでこの街でしか生きていけなかったんだなと思わされました。
逆に言うなら、日雇い街にたどり着く人間というのは、双葉のようにもうそこしか行き着く場所がない状況にあるからそこにいるんだと思うんです。
でも、双葉のように追い詰められたわけでもない斑目には別に選択できる道もあっただろうに、なぜそこに来たのか? それがどうしても腑に落ちません。
彼の過去についてはまだ明らかになっていないこともあるのかもしれません。でも、これを読んだ時点ではどうにもすっきり納得できなくて、双葉を始め他に登場する日雇い労働のおっちゃんたちのエピソードがいいだけに斑目だけが浮いて見えてしまうんです。
…日雇い街が舞台っていってもBLなんだから目ぇつむれよって言われたらそこまでなんですけど; せっかくそうそうは描かれることのない世界を舞台にしたシリーズなんだから、もうひと押しほしいというのが正直なところ。
そしてそんな斑目の過去に深く関わる人物として登場した美濃島が、なんだかとってつけたように中途半端な扱いになっているのもなんだか…。
彼が貧困ビジネスに走った理由やそのことと斑目のことは関係があったのかなど、美濃島というキャラの核心が見えてこず、だから斑目が最後に彼に放つセリフがすごくいいはずなのに深いところまで響いてこない。とても惜しいです。
あと、終盤何度も繰り返された日雇い労働街を「卒業」するという言葉に違和感覚えるのは私だけでしょうか。
日雇い労働街は、人生に迷った人がモラトリアム期間を過ごす場じゃないですよ…。

そんな、なんとも言えない本編終了の後の、双葉のその後を描いたSSにほっこりさせられました。
周りの人たちの温かな支援や徐々にパパ認定されている感じが微笑ましくて、がんばれ双葉! と応援せずにはいられないパパ奮闘記でした。
今回はそんな双葉と、子泣きジジィに持っていかれた感じですかねぇ。

因みに、子泣きジジィは決していなくなった双葉の後を埋める愉快キャラとして登場したのではなくて、坂下と斑目にとってけっこう厄介な決断を迫る役割を担っています。
そのあたりのことは次回へ続く…なんですが、斑目は伝説になるほどの腕のある外科医なんだしこれまでも坂下を助けるかたちで街に貢献してきたのだし、このまま街の診療所で坂下と仲良くやっていくという道もアリなんじゃないのかと思うんですけどね…。
でも、前回の双葉編を読んだときから感じてはいましたが、多分作家さんはこれを日雇い労働街で診療所を営む坂下がそこに流れ着きやがて行き過ぎていく男たちを見守っていくお話にしたいんだろうな…。
次巻が最終巻になるそうですが、果たして彼らがどういう結末を選ぶのかとても気になりました。

「愛して」シリーズ
 ・「愛してないと云ってくれ」
 ・「愛しているにもほどがある」
 ・「愛されすぎだというけれど」
 ・「愛だというには切なくて」
 ・「愛に終わりはないけれど」
 ・「愛しているにもほどがあるプレミアム小冊子」

「個人秘書」 高岡ミズミ / ill.奈良千春

警視庁公安部に刑事として勤める草間柊一は、久世義嗣という名前で議員秘書として潜入捜査をしていた。ターゲットは深澤トラストホールディングスの社長、深澤泰久。惚れ惚れとするようないい男だが、黒い噂が絶えない男だ。草間は深澤の亡くなった秘書が持っていたあるものを手に入れなくてはならなかった。深澤と知り合い、彼の個人秘書として働くことになたものの、深澤から一目惚れだと宣言され!? 男同士の恋だから、手強ければ手強いほどいい…。追う男と追われる男と、プライドをかけた駆け引きが始まる!

「ワイルド&セクシー」のスピンオフ。久世という名で登場していた攻め桐谷の同僚・草間が主人公です。
前作で受けの一宮を口説いていたりしたのでてっきり攻めだと思っていたら、草間はなんと受けでした。いや、もともと攻め属性なんですが、成り行きで受けになってしまっているという、攻×攻が大好きな私には嬉しすぎる設定(笑)。受け攻めふたりともが身長180オーバーなのもポイント高い!
そんな個人的激ツボな設定と前作が好きだったので期待したんですが、…ちょっと、前半と後半の印象が変わりすぎて戸惑ってしまった;

公安の草間(受)はある過激派組織の情報を探る目的で、若き会社経営者の深澤(攻)に近付きます。
深澤は若くして成功しただけあって風格のある男。その彼がなぜか草間を「一目惚れ」したからという理由で自分の秘書に引き抜きたいと言い出してきます。
深澤の真意が見えず警戒する草間でしたが、結局は渡りに船と彼の個人秘書になりすまし潜入捜査を開始。
けれども完璧に見えていた深澤の意外な面に振り回され、次第に放っておけなくなってしまいます。

かなりスリリングな始まり方をするので全体がそんな感じなのかなと思いきや、草間が探っていた事件そのものは前半であっさり解決をみるのでちょっと拍子抜けしてしまいました。
で、草間の本性が出てきて一気にコミカルになった残り半分を読みながら、冒頭の事件はふたりが出会うきっかけにすぎず、これはふたりの男が惹かれあう過程がメインのお話なのかと思い至りました。

潜入捜査を専門とする草間は仕事中は自分が創り出した「久世」という男を演じていて、時々本当の自分を見失いそうな感覚に陥ったりしています。
最初、草間が「ワイルド&セクシー」の時とは印象が全然違って戸惑ったんですが、あの時も彼は「久世」を演じていたんだなと納得できました。
そして深澤に対してももちろん個人秘書の久世として接していたわけですが、草間が握っている情報を狙った何者かに襲われたことがきっかけで正体がばれてしまい、以降は久世ではなく草間として接するようになり、ある意味仮面を被ることなく素の自分でいられることに開放感を覚えるようになっていきます。
それまでの如何にも秘書らしい几帳面な対応から一転、素のけっこうぞんざいな感じになる草間がとってもいいです。
秘書のときも、マイペースな深澤にこっそり毒づいたりしていたりしてますけどね(笑)、なんかギャップ萌です(笑)。
深澤は完璧なタイプと見せかけて、実は朝が弱かったりゴルフが苦手だったりと色々残念な部分のあることが段々と判明して、最後は何だかただの一途な男になっちゃった感じです(笑)。
でも、個人的には作中に何度か出てきた「映画スターみたいな」華やかなイメージから外れることはなくて、草間ほどギャップが出てくる感じでもなかったかも。

結局そんなふたりの間にラブができるまで(笑)がメインな内容なんですが、…肝心の深澤が草間に惹かれた理由が全然わからない。
このお話、本来キモはそこだったと思うんですよ。なのに、絶対に正体がバレてはならない緊張感の中で生きてきた草間が自分の正体を知った相手を信用するにはそれなりの理由がないと納得できないはずなのに、そこがなおざりなのはどうなのかと。
そこを含め、キャラの造形の深みをあまり感じられないのがネックです。

他にも、唐突に出てきた深澤の少年時代のエピソードはイラスト共々全体から浮いているし、終盤近くになって草間が深澤にキレた理由もよくわからなかった…。たぶん深澤に彼女扱いされたのがカチンときたんだろうと思うんですが、それだけで別れてしまおうと思ったりしますかね?? なんかすっきりしないです。
せっかく攻×攻でリバにもなりそうなカプのお話なだけに、こうした惜しいところが多くてちょっと残念でした。

イラストは故・朝南かつみさんから奈良千春さんへ。
連続したカバーイラストと中表紙にニヤリとさせられましたが、この方のイラストだとどうしても「その作品のイラスト」というよりは「奈良さんのイラスト」になってしまう感があるので、最初からそうだったならともかく、もうすでに他の方のイラストでイメージが固まっていた作品ではやめてほしかったかも(すいません、ファンじゃないもんでこう感じてしまうのかも。ファンの方だとまた違った印象になるかもですね)。
作中、草間が一宮のバーに立ち寄るシーンがあって(桐谷も顔を出しています)、そこでの草間はどうしても朝南さんの描いた久世でしかイメージできなくて、哀しさが募ってしまいました(因みにここ、草間はふたりの前でも久世を演じていたんだなと思えて、ちょっと切なくなるシーンでもありました)。
今更ながら、イラストの影響って大きいのだなと思わせられました。

「ワイルド&セクシー」(スピンオフ)

「ヘブンノウズ 足跡」 英田サキ / ill.奈良千春

ベストセラー作家の渋澤征武にイラストの才能を見いだされた千野旭は、幼い弟のミツルと一緒に渋澤邸で暮らすようになった。渋澤は恋人をつくらない主義だと自ら宣言していたが、旭は渋澤のキスが忘れられずにいた。あのキスはなんだったのか、何か意味はあったのか?本当は自分の気持ちに気づいているのではないだろうか?旭は渋澤が気になってしかたがなかった。そんなある日、旭は渋澤たちと温泉に行くことになって!?

「ヘブンノウズ」シリーズ第二弾。
発売が遅れに遅れて、一時はどうなるのやらと思ったりもしていたので、無事に刊行されて何よりです^^

人気作家・渋澤の新作のイラストレーターとして抜擢され、幼い弟・ミツルと共に渋澤邸で暮らすようになった旭。渋澤はや屋敷の個性的な住人に囲まれて、これまでのように疲弊することなくイラストの仕事に専念してしますが、渋澤への恋心を自覚してしまったことと前に渋澤にされたキスの真意が解らないことに悩んでいます。
しかも、ここのところ渋澤が自分と目を合わせるのを避けていることに気が付いて動揺してしまいますが…。

忘年会やクリスマスなど、年の瀬のイベント盛りだくさんでほのぼのしたシーンが続く今回は、前回のように大きな事件は起こりません。敢えて言うなら、薫の過去絡みで女性の幽霊が出てきますが、ちょっと取ってつけた感じというか幽霊ものの特性を生かすためのエピソードを加えてみましたという感じで全体から浮いてしまっています。
他にも、もしかして旭たちの母親を殺した犯人への伏線? と思える人物が登場していますが、登場しただけなので今は何とも言えないという。。いや、出てきたからには何か関わりがあるんだとは思いますが、え? それだけ?? とモヤモヤ。。
前回はこのあたりも含めて見事に展開していたのに、今回はどうした?? という感じが拭えません。

ならば渋澤と旭のラブ面が進展しているのかというと、…それもそうでもないんですよね。。
渋澤を好きになってしまった旭は前回のキスの意味を知りたいと思うのですが、相手は恋人をつくらない主義なのだと宣言しているような面倒くさい男。どうしたって渋澤の方が一枚上手なんですね。
渋澤が恋人をつくらないのはどうも過去に原因がありそうですが今のところはなにもわからず、ますます何を考えているのか分からない男状態です。
でも、何だかんだ言って旭に特別な想いを抱いているのはバレバレなんですが(笑)。

エロ面も、前回よりは進んでいますが(でも相変わらす本番はナシ)、BLとして読むとやっぱり物足りないかなぁ。
あと、旭が言い寄ってくる薫にくらっといきそうでちょっと複雑。。渋澤が好きだと言いながら、薫との間で揺れるのはナシだろうとか、そもそも薫は何で旭をここまで気に入っている?? …とか色々釈然としない部分も出てきて、この2巻は前回に比べて消化不良な印象です。
…っていうか、主人公ひとりがモテモテ状態のBLって好きじゃないので、そうならないことを祈ります。。
そして、次回はもうちょっとお話が進展していますように…!

「ヘブンノウズ」シリーズ
 ・「ヘブンノウズ」
 ・「ヘブンノウズ 足跡」
 ・「ヘブンノウズ 赦罪」

「ヘブンノウズ」 英田サキ / ill.奈良千春

「私はね、君の絵に恋をしたんだ」ベストセラー作家の渋澤征武と知り合ったその日、旭はそう告げられた。半年前にある事件で母を亡くし、ショックから言葉を失った幼い弟と暮らしている旭は、もしあの日、もしあの時…そんな後悔に囚われて毎日を送っていた。けれど、渋澤に会った日から、すべてが変わり始めた!恋人はつくらない主義と宣言する渋澤、男女問わず恋をする薫、執事の宇喜田を始め、個性豊かな渋澤邸の住人たちに、最初は反感を覚えた旭だったけれども―。

風邪を引いてしまいました。。毎年この時期に罹る喉からくるヤツ(そしてものすごく長引くヤツ;)…。お陰でせっかくの三連休も半分寝込んで過ごしてしまって、お出かけの予定が全てパァになってしまいました。おまけにこういう時に限って旦那が曜日を勘違いして、夫婦でうっかり生ゴミ出すのを忘れたりともう散々です。トホホ。。
そんなわけでこの3日間は積読(主にBL・笑)消化に勤しみ、長らく積んだままだったこのお話もやっと読みました。いつもの英田作品とはちょっと違うテイストで、けっこう面白かったです。

旭(受)は幼い頃に父親を亡くし母親と年の離れた弟のミツルとでやってきましたが、何者かに母親を殺害されてしまい、事件以来自分の殻にこもって一切喋らない状態になってしまったミツルとふたり誰に頼ることもなく生活しています。
大学もやめてバイトに明け暮れるだけの毎日の旭の息抜きは大好きな絵を描くこと。秘かにサイトを作ってそこに作品を発表しているのですが、ある時旭の絵を気に入った人気ミステリ作家の渋澤(攻)が新作の児童文学作品のイラストレーターに起用したいと申し出てきて、旭たちの生活は変わっていきます。

旭は責任感が強くてなんでもひとりで背負い込んでしまう、人に甘えるのが下手なタイプ。何でもかんでも溜め込んでしまう癖もあって、最初の方は内心でウジウジている姿にだったらはっきりそう言えばいいじゃんとイライラすること数回。男の子のウジウジ系はちょっと苦手ですね;
それが、渋澤に関わっていくことで変わっていきます。
渋澤はよくわからなくて掴みどころのない男。常に慇懃な物腰をしているけれどもさらっと嫌味を返してくるような一面もあって(笑)、傍目には面白いんだけれどもちょっと得体が知れないですね。
そんな何処か胡散臭いところがあるのみならずなんと幽霊が見えると言い出すものだから、旭はいい大人がそれでいいのかと不審感を募らせてしまいます。
けれども、幽霊が見えるのは渋澤だけではなくなんとミツルもで、それがミツルが引きこもった最大の原因らしいと知って、旭は衝撃と兄なのになにも気付いてやれなかった深い後悔を覚えてしまう。
おまけにミツルが同じように幽霊が見える渋澤に懐いて、旭は更に複雑な心境になってしまいます。

そんな彼らの関係に、旭のバイト先の突然消息を断った女性従業員の謎が絡みながら展開していくのですが、渋澤たちの幽霊が見える能力が謎を解く大きな鍵になっています。
ある意味ミステリー仕立てですが、ミステリー部分はわりと早くに予想がついてしまう感じなので期待し過ぎないほうがいいです(笑)。

いちばんの見所は、苦しい状況に頑なに心を閉ざしていた旭が、渋澤とその屋敷の住人と関わるうちに成長していく姿ですかね。
先にも書きましたが始めは内に溜め込んでウジウジしている感じだった旭が、渋澤に対しては反発したり歯向かったりとけっこう素直な姿をさらけ出しているんですよね。それはたぶん、渋澤という人間に旭でさえ遠慮したりお愛想を言ったりするのがバカバカしいところがあるからだと思うんですが(笑)、彼に出会えたことは旭とそしてミツルには大きな出来事だっただろうなと思いました。
そして、時にトンチンカンに見えてしまう渋澤と旭のやり取りが楽しいです(笑)。

シリーズ第一弾だからかラブ面は、酔った勢いでとかレッスン(?)だとかでのキスシーンのみで、甘いシーンはほとんどありません。まだやっと旭が渋澤への気持ちに気が付いたところ。そして旭が渋澤に惹かれた理由がもうひと押し欲しい感じがして、BLとしては物足りないかもしれません。
また、旭が渋澤邸の住人・薫に言い寄られてのキスシーンもあったりしますので、苦手な方はご注意を。

BLっぽさはそれほどありませんでしたが、旭や渋澤のみならず渋澤邸の他の住人も魅力的ですしその屋敷の雰囲気や幽霊のお話(ホラーではない)も好きなので、今後を楽しみにしたいシリーズです。

「ヘブンノウズ」シリーズ
 ・「ヘブンノウズ」
 ・「ヘブンノウズ 足跡」
 ・「ヘブンノウズ 赦罪」

「薔薇の誕生」 夜光花 / ill.奈良千春

薔薇騎士団の総帥であり、唯一の薔薇騎士である啓は、金髪の守護者レヴィンと、赤髪の守護者ラウルのふたりに守られながら、不死者の始祖で初代薔薇騎士でもあるアダムと死闘を繰り広げていた。時間が経つほどに闘いは悲惨になり、誰もが、啓やレヴィンでさえもが傷ついていた。そんななか、啓はある真実に気づき始めて…不死者となりレヴィンとともに生きていくのか、人間としてラウルとともに生きていくのか―薔薇騎士と守護者。逆らうことのできない運命の結末は?

「薔薇」シリーズ第六弾にして最終巻です! 予想外の展開に目が離せませんでした!

アダムを倒す可能性を探るため、アデラの残した助言に従ってレヴィン、ラウルと共にシャーラの屋敷の地下にある幽玄の間に入った啓。そこで彼らが見たのは、薔薇騎士団と不死者誕生の秘密と自分たちのくぐってきた過酷な過去。驚愕と苦悩に翻弄されるも、肝心のアダムを倒す手掛かりを見出だせないまま地上に戻ってきます。
間もなくシャーラの館を欲するアダムが攻撃をかけてきて、その圧倒的な強さの前に啓たちは大苦戦を強いられます。

今回、お話はエリックがレヴィンに宛てた手紙から始まり、その不穏な結びにどうか悲惨なことにはなりませんようにと祈りながらページを繰りました。啓たちがアダムを倒す手立てを見付けられずまったく歯の立たない状態に陥ったとき、かなりひやりとしました。
けれども、そこから意外な加勢もあって急展開。最後はそう来るか! の連続でした。
バレるとあれなので詳しくは言いませんが、結末は悲劇ではありません。途中でもうダメなのかとヒヤヒヤさせられたので、みんなが笑っているラストを迎えられて本当に良かった…! 啓の、レヴィンの決断に涙が出てきました。
啓が薔薇騎士としてアダムに立ち向かえたのは、これまでたくさんの人に愛されて育ったことを彼自身が理解してそれがどれほど素晴らしいことなのかを知ったからでしょう。啓が誰かを必要とするように啓自身も多くの人に必要とされ支えられ繋がりながら生きている。それが人の世界なんですね。そこから逸脱しているアダムという存在を許すわけにはいかなかった、と。

そして最終巻なだけあって、アダムの過去や薔薇騎士団と不死者の誕生など多くの謎が明かされていきます。
これまで全く触れられなかったラウルの過去に、楽観的に見えた彼のこれまでの言動が違ったものに思えてきて切なくなりもしました。あのあとHに雪崩れ込むのはちょっとどうよと思わなくもないですが(それもふたりともと…)、目をつむります(笑)。
Hといえば、このお話の3Pは、攻めふたりが互いに嫉妬し合っているあまり見掛けないスパイスがよく効いていて萌えます(笑)。実は啓とどちらか一方のシーンには全体通じてそれほど萌えなかったんですけれど(汗)、3Pがそれを補完してくれました(笑)。
それにしてもマリアの役回りにはびっくりです。最後の最後ま本心がどこにありどう動くのかが読めなかったキャラでしたが、終始ツンツンしていながら実は…な彼女はこのシリーズでいちばん好きかもしれません。BLなのにね(笑)。

こうして全巻読み終えてみると、ゴシックホラーというよりは少年漫画やラノベ感覚な雰囲気で、ヴァンパイアものというよりはゾンビものでした。
私はヴァンパイアものは貧血を起こしてしまうのでジャンルを問わずダメなんですけれど、これは「薔薇の血族」で啓がレヴィンに貪られるシーンに「うー」となった以外は大丈夫でした。
夜光さんの文体は良くも悪くもライトな感じで耽美な雰囲気や情緒はないですが、その分読みやすく、2段組み全6巻の内容もサクサク読み進められて、もっと長くてもいいとさえ思ってしまったほど。
ただ、ゾンビもの特有の気持ち悪さがあったり登場人物も多く無残な死を迎えたりしているので、そういうのが苦手な方は受け付けられない部分もあるかもしれません。

レヴィンのこともですがギルバートのその後や、ヴィクターはあの後どうなったのか、アダムはなぜ房枝に執着していたのか等々、案外描かれていない部分も多くあって、そこは想像にお任せしますということなのかそれとも外伝やスピンオフがあるのか…、後者を期待してしまいます(笑)。

奈良さんのイラストは、全編通じて荒いというかキャラの顔がちゃんと描かれていなかったりして残念な部分が多かったですが、最終巻となる今回はカバーイラスト、口絵、扉絵、最後の大大円の見開き、どれも大盤振る舞いで見応えがありました。扉絵のやけに目立っている雄心(お気に入りなのか?)は、寡黙な彼のキャラとは違う印象で違和感がありますけれど。
カバーイラストのあれは誰だと思っていたら、…びっくりでした。まさに全てが明かされる時、という感じですね。

ところで、私はこのシリーズはまとめてではなくかなりバラバラと購入したんですけど、どれが何作目なのか全く分からなくて困りました…。
カバーイラストもぱっと見どれも色調やごちゃごちゃした感じが似ているし、うっかり間違ってしまいそうになったほどです。
この作品に限らずBLのシリーズものってシリーズと分かりにくかったり巻数不明なものが多いですよね。買い手にはこれはけっこう不親切だと思います。巻数をタイトルに含めるのが難しいなら、せめて裏表紙の作品紹介でシリーズ何作目とか記入してほしいですねー。こんなに面白い作品なのに、新規の読み手は手にするのを躊躇してしまうのではと心配になってしまいました。

「薔薇」シリーズ
 ・「薔薇の刻印」
 ・「薔薇の血族」
 ・「薔薇の陰謀」
 ・「薔薇の奪還」
 ・「薔薇の守護」
 ・「薔薇の誕生」

「薔薇の守護」 夜光花 / ill.奈良千春

金髪の守護者レヴィンと赤髪の守護者ラウル。ふたりの大切な守護者を取り戻し、啓は薔薇騎士団の総帥となった。そんな束の間の平穏のなか、三人目の守護者であるマリオが騎士団に戻ってきた。ライバル心を隠さず、堂々と啓に好意を示すマリオに、ラウルは苛立ちを増していき、レヴィンは啓に触れなくなり、避けるように距離を置き始めた。一体どうして?レヴィンのことがわからなくなり、啓は焦燥する。どこか歯車が狂ったまま、アダムたちとの闘いに備えるが…愛情と憎悪、少しずつ見え始めた過去、いくつもの想いが複雑に絡み合うなか、啓が薔薇騎士団の誰かを殺すという予知がされて。

もう昨日のハナシなんですが、某ネット書店で注文して届いたBL本がポストに詰まるということがありまして。そこまでならなんてことない話なんですが、同じくネット注文していたものがあった旦那が取りに行ったんですよ。
で、私の荷物が詰まってどーしても他のものが取れなかった旦那が採った解決策は何と…
私の荷物の梱包を破って中身(=BL本)を取り出す、という暴挙だったというT T
ええ、見られましたよ、中身バッチリ。他の人に見られてませんようにと切に願う(マンション住まいってこういう時…涙)。
でもそれより何より腹が立ったのは、取り出すときにそのうちの一冊を痛めつけられたこと。よりにもよって絵師さん目当ての新刊だったというのに、全体がフニャって変形しているし小口は引っかき傷でメタメタだしカバーは折れてるし…。新刊がボロボロになって届くとガッカリ感半端ないっすね! 破られなかっただけマシなのか??
日曜の朝から郵便局の荷物が投函されているのも予想外なら午前中から旦那がポストへ向かったのも想定外だった…。
…因みに、旦那がそうまでして手にしたかった注文品は、寺山○司監修による東○健らゲイ共演のオムニバスCD(気になる方はこちらを…笑)
そして汗みずくになってポストから戻ってきて最初の一言が、
「もうちょっとで紙ジャケCD破るとこやったやんけ!」
(件のCDは紙ジャケだったそうです)
…ええっと、どこから突っ込んだらいいんですか;;
わ、私の大切なBL本が…T T

たわごとが長くなってしまいました;どこかにぶつけたかったのですすみません。。
さてさて、「薔薇」シリーズ第四弾の感想でございます。

ルイスから薔薇騎士団を奪還し総帥となった啓は、守護者のレヴィンとラウルや仲間たちとともに打倒アダムへ向けて備え始めます。
そこにルイスの僭称以来姿をくらましていた三人目の守護者マリオが戻ってきて、啓にまっすぐな好意を向けるのですが、鈍い啓はそのことにまるで気が付かない。そのせいでレヴィンとラウルとの関係がもつれ始めてしまう。

啓が他者が自分に向ける感情を理解できない鈍いタイプだということはこれまでも散々わかっていたことですが(笑)、今回は特にそれが酷いですね(笑)。
鈍感な主人公や主人公一人がモテモテ状態のお話って実は好きではないんですけど(汗)、既に関係を持っている恋人がふたりもいて彼らに翻弄されるというのが、他では見られない面白さだと思います。
それにしても、前回危うく不死者になりかけた経験からラウルがレヴィンの不死者としての苦しみを理解するようになり、このふたりの関係がちょっと変化しているのがいいですね。この先の3人の関係に影響していきそうな(笑)。
それから、啓がなぜラウルとレヴィンは愛せても彼らと同じ守護者であるマリオはダメなのか、そのあたりのことが書かれているのにすとんと納得。もやもやとしていたものが漸くすっきりしました(笑)。
そして啓がふたりに守護者だから惹かれているのではないということがはっきりしても未だどちらか一方をえらぶことができないのは、このまま3人でやっていくということなんでしょうかね?

3人の関係の変容以外にもいろいろとびっくりな展開になって相変わらず読み応えはあるのですが、前回あっと言わされた3Pやそこに至るまでのハラハラ目が離せない展開に比べると、今回はちょっと展開が急というかエピソードを詰み込みすぎている印象です。
前回のラストでその後一体どう使われてしまうのかと期待していたルイスも、冒頭であっけなく倒されていたり、ちょっと肩透かしな部分もあったような。。
そして何よりマリオが気の毒でしたね。
彼は登場は早い段階でしていたけれども主要メンバーとして活躍を見せたのはこれが初で、漸くそのパーソナリティーも見えてきて愛着も出てきたのに…(涙)。
この巻だけの活躍なのはちょっと哀しい。
他にも、予想外のところで姿を消すキャラが数人いて、これは「薔薇の刻印」以来の哀しい巻かもしれません。もちろんこれまでにもいなくなってしまったキャラはいましたが、…クライマックスが近いということですかね。
長い間忘れていただろう「怒り」を覚えたアダムが次にどう出るのか、ハラハラしながら最終巻を読みます…!

「薔薇」シリーズ
 ・「薔薇の刻印」
 ・「薔薇の血族」
 ・「薔薇の陰謀」
 ・「薔薇の奪還」
 ・「薔薇の守護」
 ・「薔薇の誕生」

「薔薇の奪還」 夜光花 / ill.奈良千春

不死者の血を引く者として、薔薇騎士でありながら薔薇騎士団から追われる身となった啓。ずっと啓を見守ってきた守護者であるレヴィンは啓の血によって死にも似た眠りにつき、もうひとりの守護者であるラウルは啓を救うために、宿敵アダムの手に落ちていた。誰が本当の味方なのかさえわからないなか、ふたりの守護者を想い、ときに孤独に囚われる啓だったが…薔薇騎士と守護者、離れることのできない運命が再び動き始める。

「薔薇」シリーズ第4弾。
前回から3年後、青年期編に突入ですが、…面白すぎです!!

啓に「不死者」の血が流れていることを掴んだルイスがそれを武器に啓を追い落とし、薔薇騎士団の総帥に就いてから約3年。レヴィンはいつ目覚めるかわからない眠りにつき、ラウルはルイスとアダムの手に落ち、そして啓は消息を絶ったまま。
薔薇騎士団内ではルイスによる横暴な圧政が続き、アシュレイたちは日々不満をつのらせてどうにかルイスを総帥の座から引きずり下ろそうとしますが、企てを気付かれてしまう。「不死者」出没の調査と称して向かわされた島で抹殺されかかったアシュレイたちは、何とそこで啓と再会を果たします。
祖父・スティーブンと母・マリアによって助けられていた啓はこの3年、強敵アダムに立ち向かうためそしてラウルを救うため、修行を続けていたのでした。
アシュレイたち、そして目覚めたレヴィンと共に、啓はアダムとルイスの打倒とラウル救出に向かいますが…。

いやもう、前回からラウルがどうなるのか、まさか彼まで「不死者」になるのではとヒヤヒヤしていましたが、無事で良かった…!
救出後、生と「不死者」とのはざまを行ったり来たりしている姿は、彼が常は陽気なだけに見ていて辛かったです。ラウルを失いたくない、絶対に「不死者」にさせたくはないという啓の想いは、もはや自分が「薔薇騎士」で彼が「守護者」だからという関係を超えたんじゃないかと思います。
一方のレヴィンは何だか更に紳士度が上がりましたね。

前半は啓の修業の日々の回想とラウル救出の顛末がメインでBLというよりは少年漫画やラノベっぽい展開が続きますが(再会した啓とレヴィンが洞窟でやっちゃうシーンはありますが)、後半、遂に! 遂に、3Pに雪崩れ込みます…!
ラウルを救うという大義名分あっての3P(なんだそりゃ)なのですが、これがめちゃくちゃエロい(笑)。
そしてレヴィンとラウルが互いに嫉妬しながら挑み合うようになっちゃうのが、なんだか新鮮で美味しかった。
BLの3Pものって攻めふたりが受けを可愛がる図に収まって、そこまではいいとして攻め同士が互いに嫉妬して牽制し合うというのはほぼ見掛けず、でも攻め同士がそうならないのってよくよく考えたら不自然なのでは…とすっきりしないことが多かったので、この作品の3Pはとても愉しめました(笑)。
今後も3人のシーンがあるのか、気になります! というかありますように!(笑)
それにしても啓の血の効力は、ちょっと計り知れないものがありますね。

あとあと、やっと登場したマリアがけっこう好きです。
姑のスティーブンのアダムの娘が息子の嫁とは的な嫌味に、
「申し訳ありません、お義父様」
としれっと返すところが特にツボ(笑)。スティーブンとセットでお気に入りです。
それにしてもこのふたり、お互いにツンツンしているくせに一緒にいるところを見ると案外馬の合う者同士なのかもしれません(笑)。

啓が薔薇騎士団を離れるというのもありかなと思っていましたが総帥になることを選んで、その姿に随分貫禄が出てきたなーと思いました(笑)。
ルイスから薔薇騎士団を奪還するくだりはあっさりというかあっけないなと思いましたが、やはりあのままでは終わりませんよね(笑)。今後アダムがルイスをどう使うのか、気になります。

「薔薇」シリーズ
 ・「薔薇の刻印」
 ・「薔薇の血族」
 ・「薔薇の陰謀」
 ・「薔薇の奪還」
 ・「薔薇の守護」
 ・「薔薇の誕生」

「薔薇の陰謀」 夜光花 / ill.奈良千春

薔薇騎士となり、薔薇騎士団の本部を訪ねた啓は、そこで新たな仲間たちと出会った。高潔なはずの薔薇騎士団。けれど、そこには欲望と謀略、そして、裏切りが渦巻いていた。薔薇騎士である啓を守るため、命を賭ける守護者のレヴィンとラウル。彼らは求め合う運命にあった。薔薇騎士だから、守護者だから惹かれるのか?自分の心がわからず戸惑う啓だったが、新たな薔薇騎士が誕生して―。

「薔薇」シリーズ第三弾。
前回で啓は、薔薇騎士団の本部があるマルタ島で正式な「薔薇騎士」として認められました。けれども今回、その薔薇騎士団の、陰謀や権力争いや裏切りの渦巻くかなり腐敗した内部が明らかになっていきます。
今回はこれまでの主軸だった「不死者」との闘いそのものよりも、薔薇騎士団内部についてがメインになっており、その実態に薔薇騎士団って高潔で名高いんじゃなかったのかよーと突っ込みたくなるほど。結局ある程度の人間が固まるとどんな組織もそうなっちゃうってことですかね。。
そして更にもうひとりの「薔薇騎士」ルイスの登場が、啓たちに暗雲を呼びます。
啓は図らずも薔薇騎士団の総帥の座をルイスと争うことになるのですが、それまでの薔薇騎士団内のドロッとした権力闘争のいざこざも吹っ飛ぶくらいとんでもない展開が待っていました。

もうこれ、ラブよりも物語そのものの方に目が離せなくなってしまいました。
いやラブももちろんありますが、それよりもお話の面白さに惹きこまれてしまうというか。
これまでもそうでしたが序幕と終幕に別軸からの謎や告白が差し込まれて、それが続く本編と次巻それぞれの伏線になっているのが秀逸。夜光さんは面白いエンタメを作るのが上手いですね。

でもでも! ラブ面も美味しいところがちゃんとありましたよ(笑・当たり前だ)!
啓は相変わらずレヴィンとラウルが同じくらい好きで、これは自分が「薔薇騎士」で彼らが「守護者」だからなのか答えを見付けられずに悩んでいます。
その啓を巡ってレヴィンとラウルが決闘すると時代錯誤なことを言い出し(結果啓には親代わりの文也にばれ・笑)、そんなふたりに啓はもうどちらとも寝ないと決意し、そんなことを承知せず迫ってくるラウルに啓が「ラウルがするなら、この後レヴィンともする」。
…。
いちばんヒドイのは啓ですね(笑)。
今回はっきり分かったことがあるんですが、啓って無自覚に残酷だな〜と(笑)。今回はこんなののオンパレードだった気がします。レヴィンやラウルはもちろん、気持ちに全く気付かれていない雄心が憐れで何だか泣けてくる…。

そのレヴィンもラウルも終盤で危機にひんしてしまい、いったいどうなってしまうんだというところで幕。
本作で少年時代編は終了とのこと、次回はこのお話のラストから2〜3年後になるのだそうで、そうなるとラウルがどうなってしまうのかと気が気じゃないです。
つくづく、完結するまで読んでなくてよかったと思ってしまいました(笑)。

「薔薇」シリーズ
 ・「薔薇の刻印」
 ・「薔薇の血族」
 ・「薔薇の陰謀」
 ・「薔薇の奪還」
 ・「薔薇の守護」
 ・「薔薇の誕生」

「薔薇の血族」 夜光花 / ill.奈良千春

十八歳になった夏、自分の運命を知った高校生の相馬啓は、一見平穏な日々を送っていた。けれど、敵の存在がある限り、薔薇騎士である啓の未来には闘いが待っていた。薔薇騎士のそばには、常に守護者の存在がある。守る者と、守られる者。両者は惹かれ合うことが運命づけられていた。啓には父親の元守護者であり、幼い頃から自分を守り続けてくれたレヴィンに、新たな守護者であるラウルという、ふたりの守護者がいる。冷静なレヴィンに、情熱のラウル。惹かれ合うこの感情は恋なのか、それとも…薔薇を持つ男たちの運命は複雑に絡み合い―。

「薔薇」シリーズ第二弾です。ボリュームも面白さもラブ面も更にUPしていました!

前作で啓は「不死者(アンデッド)」を滅ぼす「薔薇騎士(ローズナイト)」となりましたが、その後も変わらず高校生としての日常を送っています。
それは啓が、18歳になった夏を境に一変してしまった平凡な日々がそれでもまだ続いて欲しいと願っているからなのかなと思いましたが、敵はそして「薔薇騎士」という立場はそうさせてくれません。またしても彼の身近な人々を巻き込みながら、「不死者」たちは啓たちを襲ってきます。
啓はレヴィンとラウルふたりの「守護者(ガーディアン)」に守られながら立ち向かいますが、遂に現れた敵の黒幕というべき存在・アダムにはまるで歯が立たない。

アダムのインパクトは強烈でした。もしかしたらエロ面よりも大きかったかも(爆)。
アダムは幻視で相手を惑わせることができ、啓はあっさりそれに掛かってしまうんですよね。仲間たちの力を借りてどうにか切り抜けるも、以来啓はアダムと闘うことが怖くなってしまう。そら、ついこの間まで普通の高校生だった彼にあれは強烈すぎたでしょう。
恐怖に慄える中、啓は自分を支えるふたりの「守護者」、レヴィンとラウル両方に惹かれていきます。

この2巻ではっきりしましたが、このお話、三角関係ものなのですね。
でも啓がどちらを選ぶのかはちょっと見えません。
「不死者」となりながらも啓をずっと見守ってきたレヴィンと、啓に生きる意味を見出したラウルと。啓はどちらを選ぶんでしょう? まさか両方でしょうか(笑・特殊設定なだけにそれもアリかなと思いました)。 

そして今回はエロ方面でも大進展がありました。
啓はレヴィンに迫られラウルに迫られ…ふたりともとやってしまいます。
そしてふたりとしておきながら、どちらとも「初めて」のような感覚を持たせているのがなかなか…(笑)。
啓の初めての相手はレヴィンですが彼は「不死者」であるため体温がないんですね。で、ちゃんと生きているラウルにはレヴィンにはない熱さがあって、それが啓にレヴィンの時とは違うと強く思わせるという。
さすが夜光さん、やらしいです(笑)。
それが「冷静なレヴィン」と「情熱のラウル」をそのまま表しているのもいいですね。
しかし「不死者」は、血は流れていないのに精液は出るのか…、などど思ってしまいました(笑)。もしかしてこれも何かの伏線なのか??
ただ、どうにもすっきりしないのが、啓はふたりを「好き」で行為を許したのかがはっきりしないこと。
「薔薇騎士」と「守護者」は互いに惹かれ合わずにはいられない存在とされていて、だから啓はゲイでもないのにやってしまえるほどふたりに惹かれているのか?? と、はっきりしません。啓自身がまだ答えを見付けておらず、その状態でふたりとやっちゃったっていうのはどうなんだろうか…と、もやもや;
同様に、「守護者」であるレヴィンとラウルが啓に惹かれるのは啓が「薔薇騎士」だからなのかという疑問も…;
そのあたりは「薔薇騎士」と「守護者」の関係も含めて、今後どう決着するのか気がかりです。

後半の薔薇騎士団本部での啓はなかなかかっこいいです。型にはまった優等生でないところが彼の最大の持ち味かもしれない。
母・マリアと啓の出生に関する衝撃の事実が明かされて続きがどうなるのかハラハラしていますが、このまま立派に成長してほしいですね!

因みに新たなメンバーの中ではアシュレイが好き。こんな細かいヤツ実際にいたらヤなだけなのにw二次元だとどうして可愛く見えてしまうのでしょうか(笑)。
それにしても今回は、とりあえず誰も前回のような悲惨なことにならなくて本当にほっとしました…。
そしてこのシリーズを1・2巻だけしか入手していなかった自分に殺意(笑)。早く続きを手に入れなければっ!

「薔薇」シリーズ
 ・「薔薇の刻印」
 ・「薔薇の血族」
 ・「薔薇の陰謀」
 ・「薔薇の奪還」
 ・「薔薇の守護」
 ・「薔薇の誕生」

「薔薇の刻印」 夜光花 / ill.奈良千春

高校生の相馬啓は、よく不思議な夢を見る。薔薇の咲く庭と、自分に微笑みかける金髪の美貌の男。男は追いつめられ、自分に死を求めるのだ…その男は、啓が通う高校の美術講師とよく似ていた。彼は他の生徒には優しいのに啓にだけは冷たく、忌々しいものでも見るような視線を向けてくる。それなのに、彼がそばにいるだけで啓は不思議な高揚感に囚われてしまうのだ。ある放課後、怪我をした啓の手当てをしてくれた彼は、不可解な行動をとり―そしてその夜、啓の部屋を訪れた彼は、啓に強引に迫り!?守る者と、守られる者。薔薇を持つ男たちの運命の輪が回り始める―。

今更なのですが、夜光さんの「薔薇」シリーズを手に取ってみました。
私、吸血鬼モノが苦手なので実はこのシリーズは読まないつもりでした。夜光さん好きだしもの凄く人気があるし面白そうだなーとかなり気になっていたんですけれど、ジャンルを問わず吸血鬼モノは貧血起こしてしまうので読めないという…。昔からよく愛好家だと勘違いされてはこのジャンルの作品を勧められたりしていますが、どうしても生理的にダメなんですよね;
ところがこのシリーズは吸血鬼モノではなくゾンビモノだと聞きまして、読んでみることにしたのでした。不思議なことに、ゾンビモノは大丈夫なんです(笑)。

というわけでシリーズ一作目「薔薇の刻印」です。

啓は普通の高校生ですが複雑な出生を持っており、両親の顔を知らずに育っています。
屈託のない啓は学校でも人気があるのですが、ただひとり美術講師のマイケルだけが彼に異常なまでに冷たい。マイケルの様子に傷付きながらも、啓は彼が気になっています。それは、啓がよく見る夢の中に彼によく似た男が現れるから。夢はいつも男のキスで終わるのでした。
単なる偶然かと思うも、マイケルの本当の名はレヴィンといい実は啓と深い関わりがあることがわかります。
そして、啓の周りで奇妙な事件が起き始め…。

一作目に当たる今回は、普通の高校生の啓が18歳の誕生日を境に「不死者(アンデッド)」を倒す「薔薇騎士(ローズナイト)」になるまでを追ったお話の序盤というところですが、さすが夜光さん! とても面白かったです!
「不死者」は、聞いていた通り吸血鬼というよりはゾンビです。吸血鬼要素もあるんですが、腐乱とか頭を砕いたら死ぬとか、ゾンビと言った方がしっくりくる感じで、あぁこれなら私も読めると安心してしまいました(笑)。まぁでも、ゾンビものらしくグロテスクな描写があるのでダメな方もいるかもしれませんね。
啓はその「不死者」を滅ぼすことのできるただ一人の「薔薇騎士」となりうる存在として生まれるという、かなり過酷な運命の持ち主だったのですね。
「不死者」を滅ぼすために作られた秘密結社「薔薇騎士団」の内情や「薔薇騎士」を守る存在である「守護者(ガーディアン)」との不思議な関係、そして啓の父親とレヴィンとの関係などなど、お話の根幹に関わってくるだろう数々の謎が散りばめられていて、今後どう展開していくのか楽しみです。
それにしてもこれ、かなりの特殊設定モノのはずなのに説明臭くなっていなくて、お話を楽しんでいるうちにいつの間にか設定も頭に入ってくる感じで読みやすいです。

エロ面はこれは本当に夜光作品なのかというくらい控えめです。攻めがまだはっきりしていない感じもしますし、シリーズものの一作目なので仕方がないですかね。
でもでも、「薔薇騎士は愛のない性行為をすると力が弱まる」という設定などこれは今後美味しくなりそうだな〜と思わずにいられない部分もあったりして(笑)、今後は夜光さんらしくねっとりエロくなっていくかなぁと期待しています(笑)。

ただ、啓を育ててくれた面々や友人など、思い入れもできつつあったキャラがどんどん悲惨なことになっていくのがあまりに悲しくて、もうちょっとどうにかしてほしかった気がします。
お陰で彼らと入れ替わるようにして後半に登場したキャラたちに、すんなりとは馴染めませんでした;こちらのキャラたちが物語の核になっていくんだろうことや、あの悲劇が啓を「薔薇騎士」として立ち上がらせていくというのはわかっていても、つい…(涙)。

この一冊だけではまだまだBLというよりはファンタジーアクションな作風ですが、今後の展開に期待します!

「薔薇」シリーズ
 ・「薔薇の刻印」
 ・「薔薇の血族」
 ・「薔薇の陰謀」
 ・「薔薇の奪還」
 ・「薔薇の守護」
 ・「薔薇の誕生」

「愛だというには切なくて」 中原一也 / ill.奈良千春

日雇い労働者の集まる街で診療所を営む坂下は、ボランティアまがいの診療のため常に貧乏で貯金通帳と睨めっこの生活。そんな坂下の恋人・斑目は、伝説の外科医にして街の男たちの中心的存在だ。あいも変わらず坂下へのセクハラに余念のない斑目とその悪友・双葉を叱っていたある日、診療所に若い男がやってくる。不機嫌そうな態度を隠しもせず、周りはすべて敵といわんばかりのその男・小田切は、坂下や斑目も知らない双葉の過去に関係があるようで…。

「愛して」シリーズ大第四弾です!
今回漸く双葉の過去が明らかになります。今回は、最初から最後まで安定期を迎えた坂下と斑目のラブへよりも、双葉にばかり気を取られてしまいました。

いつも斑目とコンビになって坂下へのセクハラを盛り上げている(笑)双葉は、まだ年若く屈託のない好青年ですがその年で日雇い労働をやっているだけの重い過去を持っているという設定で、でもこれまでそこに突っ込んだ話は登場してこなったためにシリーズいちばんの謎でした。
その双葉の過去を知る小田切という男が街に現れたことて、彼の過去が明らかになっていくんですが…。

双葉の過去は想像を絶します。
彼のことで判っていたことといえばマグロ漁船に乗っていたことくらいでしたが、そのマグロ漁船の連中が、ヤクザもびっくりなとんでもない奴らだったんですね。双葉が見たこと体験したこと、とにかく酷い。
双葉はそこから何とか逃げ出したものの追われる身となり、日雇い労働者として生活せざるを得なかったわけです。
でも、船を降りてから数年が経つのに彼らは双葉を執拗に追っていてとうとう見付けられてしまい、坂下と斑目はじめ街の面々も双葉を守ろうとするものの、かなりの危機が訪れます。
終盤に、坂下・斑目・双葉の三人はこのシリーズ一番といっていいかもしれないほどの危険な状況になりひやひやさせられますが、斑目のいい意味でのふざけけた感じが緊迫した空気を和ませてくれて、斑目のこういうところが好きだなーと思ってしまいました。

そして騒動の果てに街を出て新たなスタートを切ることを選んだ双葉の姿には、心底がんばれ! と、何だか子を見送る母(?)の思い。
双葉は、過去に克幸と接触したこともあったのにその後くっつくこともなくここまで来たので何かあるんだろうなと思ってはいましたが、そうきたかという顛末ですね。克幸とつっくけて欲しいという要望は(やっぱり)多かったようですが、シリーズもののBLではお約束(苦笑)の総ホモ化になってしまうよりは、この方がこのシリーズらしいし双葉らしいかなと思いました。
と同時に、これからは彼と斑目が組んで坂下をセクハラする毎度の微笑ましいシーンはなくなるんだなとしんみりしてしまいました。寂しくなりますね…。
そしてそんな双葉の姿に、ここは誰にとってもいつまでもいていい場所ではないのだと思う坂下の心境がまた切ないです。
この先、坂下と斑目のふたりはどういう道を選んでいくのだろうと思ってしまう終幕でした。

もともとの持ち味だった日雇い労働者街人情BLな風味は薄れちゃいましたが、何だかBL的な部分ではないところでどきどきしたり切ないと思わせられたいいお話しでした。

ところでこのシリーズ、一作ごとの間がかなり開くので奈良さんの劇的な絵の変遷がどこよりもよくわかるシリーズでもありますよね(苦笑)。
今回は前回みたいにイラストが内容に合っていない! みたいなことはなかったんですが、キャラがもう別人のよう…。双葉はそうでもないんですけれど、坂下と斑目は「誰?」と言いたくなるくらいです。
いちばん最後のイラストとか、しんみりした雰囲気が見事でステキだな、と思うだけに本当に残念。
絵柄が変化しても今まではどこかに奈良さんだなと思わせる個性があったんですけれど、最近はそれすらなくなって、もしかしてBLではなくラノベな絵柄に舵を切ったのかと思ってしまいます。事実、BLが苦手とか興味のない方には今の絵のほうがステキに見えるそう。
でもねぇ、これはBLなんだからねぇ…と、腐りきった私は思わずにいられないのでした。

「愛して」シリーズ
 ・「愛してないと云ってくれ」
 ・「愛しているにもほどがある」
 ・「愛されすぎだというけれど」
 ・「愛だというには切なくて」
 ・「愛に終わりはないけれど」
 ・「愛しているにもほどがあるプレミアム小冊子」

「愛されすぎだというけれど」 中原一也 / ill.奈良千春

日雇い労働者街で診療所を営む医師の坂下は、元伝説の外科医にして彼らのリーダー格の斑目といつしか深い仲に。北原の一件も片づき診療所にいつもの風景が戻ってきた。しかし、街には路上強盗が溢れ、ドラッグまでが出回り始める。平和な日常を脅かす黒い影に坂下は、斑目の腹違いの弟・克幸が絡んでいることを知る。執拗に自分を狙う男に決して屈しない。そう決意する坂下だが、その強い意志が逆に克幸の興味を煽り…。坂下を巡る斑目兄弟戦争、ついに決着の時。

「愛して」シリーズ第三弾。
今度は斑目と弟の克幸の対決、というか兄弟喧嘩の決着編。なので労働者街ならではのエピソードに溢れていたこれまでの2作品とは少々趣が異なるハードな内容です。

前作から2週間ほど。街にいつもの平穏さが戻ってきたのも妻の間、路上強盗が横行するようになり更には労働者の間でドラッグが出回り始めます。坂下・斑目・双葉の三人は、不穏な空気の裏に斑目の腹違いの弟・克幸が絡んでいることに気が付きます。
克幸はヤクザで、過去に二度ヤクザ者の手術を行なって危ない橋を渡ったことのある坂下を自分専属にしてやろうという目論見と、気に食わない兄・斑目のお気に入りを自分のものにしてやりたいという子供じみた対抗心から坂下に執着しています。
でも克幸のところに行く気などさらさらない坂下はその誘いを突っぱねていて、そんな坂下にしびれを切らした克幸がとうとう動き始めたという筋書き。
その後も街では不穏な事件が起こり、果てには坂下が拘置所に入る事態になってしまいます。

結局は斑目の持ち物が欲しかっただけという子供のケンカみたいな理由がもとで克幸はここまでしてしまうのですが、ちょっと何だかなーと思ってしまいます。
というのも、克幸の坂下への執着心がどうにも中途半端なんですよね。
坂下が肉体的にも精神的にもけっこう辛い目に遭ってしまうことの原因がそんなハンパなものでは、何だか割に合わない気がしなくもないです。
で、ここまで引っ掻き回しておいてそんなことであっさり引き下がるのかと、あっけない結末がまた物足りない;
主要キャラ坂下・斑目、双葉の三人はいい味出しているだけにもったいないですね…。
今回、坂下のピンチに斑目が間に合わない事態になってしまって(NGな方はご注意下さい)、普通なら後味悪くなりそうなところなのにそれが結果的に坂下に生きてもう一度斑目に会いたいという想いを強く抱かせて、今更ながらにふたりの絆の深さを感じさせられたりと、じーんとくるエピソードもあるのにな…。
もうひと押しあったらと思わずにいられませんでした。

エロ面では今回は、坂下が拘置所に入った絡みで刑務所ごっこです(笑)。なんだかんだと言って最後にはノッてしまっている坂下に萌えます(笑)。
それから括約筋ネタにはニヤニヤが止まりませんでした(笑)。斑目が言ったらとんでもなく卑猥ですよね。
あと、「フェアリー」には吹きました。いつまで引っ張るつもりなんだと(笑)。

ところで奈良さんのイラスト…。絵柄云々は置いておくとして、内容に全く合っていません。緊張感あふれるシーンやシリアスなシーンもコメディテイストっているのはどうなんでしょう?? 坂下のまともな顔がひとつもないっていうのもなんだかね…。
正直これならイラスト無い方がよかったのではと思ってしまいました。

「愛して」シリーズ
 ・「愛してないと云ってくれ」
 ・「愛しているにもほどがある」
 ・「愛されすぎだというけれど」
 ・「愛だというには切なくて」
 ・「愛に終わりはないけれど」
 ・「愛しているにもほどがあるプレミアム小冊子」

「愛しているにもほどがある」 中原一也 / ill.奈良千春

坂下が日雇い労働者の集まる街で診療所を開いて約一年。優しげな外見に似合わずゲンコツで荒くれ者たちを黙らせる姿は、待合室の名物と化していた。そんな坂下と深い仲の彼らのリーダー格・斑目は、かつて天才外科医と謳われたほどの腕を持ちながら、気ままなその日暮らしを決め込む変わり者。フェロモン垂れ流しで坂下を求めてくる斑目に、自ら欲しがるほど溺れつつも、羞恥に焼かれる男心は複雑で…。だがある日、医者時代の斑目を知る美貌の男・北原が現れて―。

日雇い労働街BL「愛して」シリーズ第二弾。

日雇い労働者街で診療所を開いて一年近くが経ち、坂下は相変わらずあれくれどもに振り回され斑目にセクハラされながらも(笑)、街の人たちとの間に信頼関係を築き充実した日々を送っています。
けれども医師だった頃の斑目を知る北原が現れて、穏やかな日々が一変。
北原は有能な医師の上にただならぬ美貌の持ち主で、どうやら斑目と躰の関係もあったらしい。彼は「伝説の外科医」と言われた斑目の腕を腐らせまいと斑目に自分のもとに戻るように迫りますが、斑目は一向に相手にしない。ところが北原は、斑目の弱点である坂下の診療所の存続を盾に取り脅してきます。
そんなこととは知らない坂下は、北原にどうしようもなく嫉妬してしまい…。

めでたくくっついたふたりの前に過去の男が登場して一波乱という、続編にはありがちなお話ですが(笑)、面白かったです。
坂下が北原にコンプレックスを抱いて悶々とする姿がとてもかわいい。前作ではそれほどでもなかったんですけれど今回は坂下に萌えちゃいました(笑)
北原は美貌と医師としての高い技術だけではなく、坂下が絶対に知ることのできない斑目との過去の時間を持っているわけですからね〜。ウブで純な坂下にはツライ状況です。
でも斑目には場馴れした北原よりも何よりも、そんな坂下がいちばんかわいくて愛しい存在だというのがまたいいです。

中原さんなのでエロも濃いめですが(笑)、中でも萌えたのは「お医者さんごっこ」プレイ! エロオヤジ斑目がやるとやらしさ倍増です(笑)。っていうか医者(と元医者)が何してる!! 医療ものには関心低めですがお医者さんプレイは大好きなので(笑)、とっても美味しくいただきました!
こんなエロいことをしているふたりなのに、その関係がBLによくありがちな「公認の仲」になっていないのもなんかいい(笑)。
斑目と坂下には、いつまでもそんな風にいてほしいです。

ラブありエロあり笑いありな中に家族を捨てた男とその息子のエピソードなど日雇い労働者の闇と哀しみもきっちり描かれた、読み応えのある内容でした。

「愛して」シリーズ
 ・「愛してないと云ってくれ」
 ・「愛しているにもほどがある」
 ・「愛されすぎだというけれど」
 ・「愛だというには切なくて」
 ・「愛に終わりはないけれど」
 ・「愛しているにもほどがあるプレミアム小冊子」

「愛してないと云ってくれ」 中原一也 / ill.奈良千春

日雇い労働者の集まる街で診療所を経営している青年医師・坂下。彼らのリーダー格の斑目は、屈強な男たち相手に一歩も譲らず日々奮闘している坂下を気に入り、なにかとちょっかいをかけていた。ある日、坂下と仲のよい日雇いのおっちゃんが肝硬変を患っていることが発覚。家族に知らせて手術を受けるよう説得してもらおうと考える坂下を、この街の現実を知る斑目は無駄だと一蹴する。坂下を諦めさせるため、躰と引き替えにならおっちゃんの住所を教えてもいいと条件を出す斑目。脅しのつもりだった斑目だが、自分の本気を示すために坂下はその条件をのんで抱かれることになり―。書き下ろしには斑目の腹違いの弟が登場。坂下をかけて斑目兄弟が直接対決。

日雇い労働街BL愛してシリーズ、最新刊が出たのでおさらい中です。一作ごとにけっこう間の空くシリーズですよね。
一冊目は表題作と「根無し草狂詩曲」の二部構成。

日雇い労働者の街で診療所を開いている坂下(受)は、口が悪くて荒っぽい男たちを相手に奮闘する毎日。そんな彼を気に入る街で一目置かれる日雇い労働者・斑目(攻)は下ネタ・セクハラ発言を繰り返しながらも(笑)、見守っています。
ある時坂下のところによく顔を出していたおっちゃんが肝硬変に罹っていることがわかり、坂下は連絡先さえも分からない家族にせめて知らせたいと思うのですが…。

BLで出てくる医者といったら、とんでもない天才医師だったり医師一家の子息だったりとにかく華やかな設定なのが定説ですけれども、この作品は日雇いの街というなんでもござれのBL業界の中でもかなり特殊な場所が舞台になっているので、よくある「医者もの」とは違う作風です。華やかさのカケラもない、くたびれた感じがとっても新鮮(笑)。
坂下は地味だけれども美人さんで育ちのいいお人よしな感じですが、街のあれくれオヤジを相手にやっていくだけのたくましさを持っています。斑目とくっついてからも、ラブラブ甘々な感じにはならず、エロオヤジとの攻防を繰り広げている感じです。
その坂下を気に入っている斑目は、ワイルドで無精髭の似合うフェロモン系オヤジ。とっても中原さんらしいオヤジです(笑)。
斑目は斑目の盟友(笑)・双葉と、ことあるごとに坂下にセクハラ発言してそれがいちいちおかしいんですけれど、これ、BLだから成り立つセクハラという感じが凄くします(笑)。いくらきれいとはいえ現実には男相手にこんなこと言うオヤジはいませんよ!(笑)
そんな斑目に迫られいつの間にかそのフェロモンに当てられて、坂下がどんどん深みにはまっていくのも納得です(笑)。

だた、中編2編で構成されているために坂下が斑目を好きになる過程が少々説明不足で、展開も斑目の意外な正体が発覚するあたりとかドタバタした印象なのが惜しいです。
一冊分のページがあったら、もっと深みが出たんだろうなと。

続く「根無し草狂詩曲」では斑目の弟でヤクザの克幸が登場して、街に騒動を起す内容。坂下のおばあちゃんも登場して、いい味出しています。
こちらももうちょっとボリュームがあればなぁと思ってしまいました。

実はBLに限らず医療ものに関心がないので(汗)伝説の○○とかあまりピンとこず、本音を言えばもっと純粋に日雇い労働街BLな内容を読みたかったんですけれども;人情味あふれるエピソードと笑いとエロ(笑)が渾然一体となった、中原さんの描くオヤジがお好きならきっと愉しめる作品です。

「愛して」シリーズ
 ・「愛してないと云ってくれ」
 ・「愛しているにもほどがある」
 ・「愛されすぎだというけれど」
 ・「愛だというには切なくて」
 ・「愛に終わりはないけれど」
 ・「愛しているにもほどがあるプレミアム小冊子」

「赫蜥蜴の閨」 沙野風結子 / ill.奈良千春

高柳商事大阪支社長の高柳光己は、英国人の血が混じる端麗な容姿に美しい妻…と、誰もが羨む人生を歩んでいる。しかし、会社のために自分を利用する社長の養父や、我が侭な妻に振り回され、光己は鬱屈した日々を重ねていた。ある日、光己は妻の浮気をネタに熾津組の若頭、熾津臣に強請られ、凌辱されてしまう。なぜか執着され、執拗に繰り返される行為に光己は理性を徐々に蝕まれていく。だが、次第に奇妙な解放感と安らぎを感じるようになり…。

「蛇淫の血」シリーズのスピンオフで、前作「蛇恋の禊」で凪斗たちの敵として登場した組の若頭・臣(攻)サイドのお話です。彼が目をつけたのは、商事会社の支店長で英国の血を引く美丈夫の光己(受)。このふたりの関係は、臣が光己を彼の妻の浮気をネタに強請って陵辱するというとんでもなく酷い始まり方をします。

このお話の最大のポイントは、受けの光己が受けらしくなく男前であることですね。頭の切れるしたたかな性格もですが体格とかあれが大きいとか(笑)男にやられることに潔しとしないところなど、攻め要素がたっぷり。もともと女々しかったり軟弱な受けが苦手な私には激ツボです。
そんな容姿にも恵まれ若くして如何にも若きエリートとしての道を行っているかのように見える光己ですが、実際は会社の社長である養父や身勝手な妻やその父親らに振り回される駒のような存在でしかなく、周りに理解者の一人もいないとても孤独な人です。そんな彼を、凶悪ともいえるような男・臣が執着して何度も酷い目に遭わせるんですが、光己は徐々にそれに解放感を覚えていくようになるんですね。

臣は前作から奈良さんの迫力のありすぎる絵のとおり沙野作品の中でも屈指の凶悪な男で、始めは果たしてこいつにいいところなんてあるんだろうかと思っていましたが、光己に執着する理由やその背に禍々しい赫蜥蜴の刺青を背負うもとになった過去のことが徐々に明らかになるにつれ、意外と可愛いことに気が付きました。やんちゃな悪ガキがそのまま大人になった感じでしょうか。大阪弁も効いている気がします。光己に対して好き放題酷いことをしているうちに…なベタなところもポイント高いですし(笑)、光己の母親の八朔のエピソードに「優しい女やったんやな」とか実用書ばかりを持っている光己に「生き抜くのに必死やってんな」とか、時々さらっと深い優しさを覗かせる言葉を呟くのにぐっときます。
そして本当に残忍非道なのは、光己を使い捨ての駒のように扱う彼の義父一族。彼らは光己の養父の会社を乗っ取ろうとしていて、光己はなんとかそれを食い止めようとするもどうにもならず逆に彼らに追い詰められてしまう。その姿が切なく哀しいです。
そんな風にぎりぎりまで追い詰められた光己に安らぎを与えたのは、臣の存在。
彼らは壊されてゆく者と破壊衝動に駆られる者とでタイプは全く違うけれども、本質は近いのだと思います。そして互いに惹かれ合うのは愛とか恋というよりも、魂で触れ合おうとしている印象。何度行為を重ねても声は絶対に上げようとしなかった光己がセックスでではなく臣のために壊れていく時に初めて声を上げることにも、ふたりの関係が甘い恋愛ではなくもっと深いものなのだとわかります。だから最後の場面も、他でなら痛くてダメなんだろうけれどもこのふたりにならありだな、と思ってしまう。
沙野さんの、こういう巧みさにはやられてしまいます。
そしてこれは、光己と同じように孤独の中にいた臣ががんじがらめになっていた過去から解放されていくお話でもあるんですね。ふたりが求めたのは窮屈さからの解放だったんだな、と。
 
陵辱に始まりその後も痛い場面が多くて甘さはほぼ皆無の作品ですが、読み応えのある他にはない名作だと思います。
そして読み終えて思ったのは、この4部作の中でいちばん卑劣で最低だったのは光己の秘書の安曇だ! ということでした。こいつに関しては何一つ斟酌する要素なしですよ、ほんとに。
それから臣サイドから凪斗を見ていると、彼はけっこう怖い極道な気がしました。小蛇は確実に成長しています。

 ・「蛇淫の血」(1作目)
 ・「蜘蛛の褥」(スピンオフ)
 ・「蛇恋の禊」(2作目)
 ・「赫蜥蜴の閨」(スピンオフ)
 ・Extra Book ガッシュ文庫「蛇淫の血」&「蜘蛛の褥」番外編

「蛇恋の禊」 沙野風結子 / ill.奈良千春

平凡な大学生ながら不可抗力によって岐柳組次期組長に据えられた円城凪斗。常に傍に控えている、恋人で補佐でもある角能堯秋に支えられ、戸惑いながらもその重圧に耐えていた。だが、代目襲名を控えたある日、敵対組織に襲撃された凪斗を庇い角能が負傷してしまう。いつか、自分の為に命を落としてしまうと恐れた凪斗は次第に角能と距離を取るようになる。心身共に結びついていた二人の亀裂は広がるまま、岐柳組は抗争に巻き込まれていき―。

「蛇淫の血」の続編。新装版を読んだらこちらにもついつい手が伸びてしまいました。だって凪斗のお話は、この作品を持って完結するんですものね。
前作で、普通の美大生だった凪斗がヤクザの四代目を継ぐことになりましたが、その後も順風満帆とはいかず敵対する組との抗争や破門となった兄の逆襲に巻き込まれてしまい、四代目になった後の方がとんでもないことになってしまいます。

自分が四代目になったことで、角能や祖母といった何よりも大切な人たちが危険に巻き込まれていくのを目の当たりにした凪斗は、角能さえも自分から遠ざけようとしてしまう。角能を大切に思うあまり彼から離れ、その代わりに角能への想いを描いた「初恋」を抱きしめる凪斗の姿は切ないです。
そして自分が角能を守るのだという想いが徐々に、彼の中に現れ始めたもう一人の自分、四代目の人格に自身を明け渡していく、という流れなのですが、これがあたかも凪斗の背にある双頭の蛇に人格を喰われていくかのようで凄い。彼のそうした禍々しい部分は、母が穏やかに生きていけるようにと付けてくれた凪斗の名の下に封じられていて、それがこの四代目襲名で目覚めた、ということなのですが、刺青に喰われていく、という表現がぴったりくるような感じです。

で、そのまま毒のあるしたたかな部分がもとの凪斗と合わさってけっこう非情な極道に成長するのかと思いきや、兄の辰久とその側近・数井の登場とその後に続く監禁・陵辱あたりから迷走した感が拭えないですね。。辰久とはまさかそこまでするとは思ってませんでたのでわりとなんでも来い! な私ですらびっくりしましたし、これが地雷な方は多いだろうなと思います。そして数井の境遇には同情してしまいますが、凪斗の身に起きたことを思うと、ふたりの処分は甘いなー。
まぁともかく、そのあたりの展開から予想していたものとは大きく外れてきてしまって、このままどこに行くんだろうと不安になりながらも読み進めました(苦笑)。最終的には小蛇はちゃんと脱皮したんですが、そういう持って行き方だったのかという感じですね。途中から姿がぼやけてしまった感もなかった角能の想いの強さが最後の最後にきたというか、やっぱり凪斗には彼がいてよかったなと。彼は誰のものでもない、凪斗のものなんだと実感です。
ただ、絵が焼けるシーンは迫力ありましたが前作ほどのカタルシスは味わえなかったです。

人によっては地雷もののハードな部分や辛い場面も多いですが、触手プレイ好きの沙野さんによるそれっぽい蛇の場面(夢の、ね)もあるし(笑)色々と読み応えのある作品でした。
でもやっぱりこのシリーズ、本編よりスピンオフの方が萌えるんだなー。

 ・「蛇淫の血」(1作目)
 ・「蜘蛛の褥」(スピンオフ)
 ・「蛇恋の禊」(2作目)
 ・「赫蜥蜴の閨」(スピンオフ)
 ・Extra Book ガッシュ文庫「蛇淫の血」&「蜘蛛の褥」番外編

「蜘蛛の褥(新装版)」 沙野風結子 / ill.奈良千春

涼やかな美貌の検事・神谷は、高校の後輩でやくざの久隅に大きな秘密を知られてしまう。それは、同性の同僚への密かな恋情…。久隅は神谷を脅し、身体を求めてきた。容赦ない蹂躙に澱む、恥辱と自滅衝動―。渇いた心は歪な悦びを知り、足掻きながらも搦めとられていく―甘美な毒に侵されるように…。待望の新装版、書き下ろしも収録。

「蛇淫の血」に続く新装版です!
スピンオフ作品ですが、これ単体でも十二分に愉しめる内容です。私は本編よりもこちらの方が好きなので、新たに収録されたSSともども嬉しい限りです。

真実を追求する姿勢を貫く検事・神谷(受)は、事務官の木内に密やかな恋心を抱いていますが、既婚者である木内とそんな関係になれるはずもないと自分の感情を直視することのないまま仕事をこなしています。
ある時偶然高校時代の後輩で今はヤクザとなった久隅(攻)と再会し、その後久隅の属する組絡みの事件を担当することとなり関わることが増えるんですが、そうしているうち神谷の密かな恋を暴かれてしまいそれをネタに脅されて犯されてしまう。
久隅は昔から神谷が好きで、だから嫉妬にかられてそんな行動に出てしまうわけですが、その好きという感情は普通のものではなくてこの高潔な男を自分のところにまで引きずり下ろしてやりたいというかなり歪んだもの。その昔から胸にくすぶり続けていた劣情が暴走して、神谷にかなりひどいことをしてしまうんですね。
その後もふたりの関係は続いて、こんなことは受け入れられないと思っていた神谷も、誰かと暖かな関係は築けなくてもこうした壊される関係なら深く繋がれるのではないのかという、だいぶ歪んでいるけれども変化の兆しともいうべき想いを抱くようになります。
けれどもある事件がきっかけになって神谷は結局は木内しか見ていないということを見せつけられた久隅は、神谷から木内への想いを完全に消し去ろうとしますが…。

そこからは沙野さんがあとがきでも触れているとおり「意味のある3P」(笑・詳しくは言いません)へとなだれ込んでいくんですが、そこに至るまでが二人の過去や刺青やフレグランスといった小道具がとても上手く絡められていて見事な展開。再読なので初めて読んだ時の衝撃はないにしろ、この展開の上手さには圧倒されます。
特に久隅が背の刺青を焼くシーンの凄まじさは鳥肌ものですね。はじめはけっこう酷い男に見えなくもない久隅が、実はからめ取っていたはずの神谷という存在にがんじがらめになっていて、彼のためにそこまでするんですからもうだんだん愛おしく思えてしまいます。嫉妬に狂って拉致を疑うよりも木内を疑う姿とか、もうどれだけ盲目なんだよと(笑)
で、普通にいい人だと思っていた木内がぼろっと出した本性に、実はこういうタイプが一番残酷なんだよなぁと思ってしまいました。どんなかたちであれ(笑)神谷は目が覚めてよかったな、と。
そしてつくづく感じたのは、この作品の中でいちばん歪んでいるのは神谷だということ。真実を追求するという一見とてもまともな姿勢で仕事に挑んでいるのも過去のあやまちを引きずっているからであり、そのために他者とも深く関わることができない彼は、相当病んでいます。久隅が彼を実は鬼門だったのではないかと思ってしまうのも頷けてしまって、神谷という存在が久隅に破壊衝動をおこさせているんですね。
そんなふたりの歪んだ関係が、すべてを乗り越えて迎えたラストでは純粋に美しいものへと昇華しているのが素晴らしいです。

描き下ろしの「濡れた砂」は、4作目の「赫蜥蜴の閨」で組の抗争が元で神谷が負傷してしまった時のエピソードを軸にしたお話。気になっていたところだったので嬉しいです^^
で、これを読むとやっぱり久隅が神谷を引きずり下ろしたというよりは神谷が久隅に引き上げられたお話だったんだな、と思ってしまいました。沙野さんもあとがきで言ってますしね(笑)
 
それにしてもエロ度の高い作風で有名なわりに沙野さんの作品には流行りの安直な3Pとか複数プレイものは見当たらなくて、エロのために設定を練りまくった作品作りをされているのには流石というか脱帽です(笑)。
 
ところでイラスト…修正入っちゃいましたね。。旧版の時から口絵とかなんちゅーハードな絵だとは思ってましたけれども(笑)、「蛇淫の血」はそのままだったしこの新装版も修正が入るとは思ってませんでした。ので、ちょっとびっくり。そういえば最近のBL小説って、内容的には複数ものが増えたりとハードなものが増えているのに、絵的にはカバーの肌色率下が下がったりと大人しくなってきている気がします。間違いなく都条例等の影響なのでしょうが、今になってみるとこの作品が出た2006年頃は少なくとも絵的には割と何でもアリな感じだったのかな、と思ってしまいました。
イラストといえばもうひとつ、旧版刊行時のラフ画が収録されていた前回とは違い今回は描き下ろしが一枚収められてしましたが…、絵柄だいぶ変わりましたね、奈良さん。。もともと絵柄が苦手なのでファンというわけではないですが;あの頃の奈良さんの絵の雰囲気はこの作品によく合っていると思うし、最近の絵はもう何がなんだか分からない気分になってしまうので、本編イラストが旧版のままで良かったなとしみじみ思ってしまいました(汗)。。。
どうせなら昔のラフ画が見たかったですーー

 ・「蛇淫の血」
 ・「蜘蛛の褥」(スピンオフ)
 ・「蛇恋の禊」(2作目)
 ・「赫蜥蜴の閨」(スピンオフ)
 ・Extra Book ガッシュ文庫「蛇淫の血」&「蜘蛛の褥」番外編

「蛇淫の血 (新装版)」 沙野風結子 / ill.奈良千春

その日を境に、大学生の凪斗の平穏な日常は崩れ去った―。凪斗の警護を任されたという男・角能が現れ、岐柳組組長の隠し子である凪斗が跡目候補となり命を狙われていると言い放つ。己に流れる血を忌み怖れ、平凡な生活を必死に守ってきた凪斗。だが、護る者であるはずの角能に監禁され、冷めた眼差しで弄ばれる。「おまえは、俺に与えられた玩具だ」心も身体も翻弄され、淫らな熱に理性は浚われていき―。極道BLの秀作、書き下ろしも収録してついに復活。

2006年にラピス文庫で出ていた沙野さんの「蛇淫の血」が、書き下ろしを加えて復活です! 来月発売のシリーズ2作目「蜘蛛の褥」ともども長い間入手困難状態だっただけに、この復刊は嬉しい限り。
懸念していた(汗)奈良さんのイラストも旧版のままで、なんと当時のラフ画まで収録されているというサプライズ付き。
旧版ですでに読んでいるんですが、本編は加筆訂正はほぼない印象で、この作品に対する沙野さんの思い入れの深さが窺い知れます。そして沙野さんの文体も変わったなぁと思ってしまいました。

ヤクザの組長の隠し子であるという出自を持つ美大生の凪斗(受)は、それゆえに平穏で平凡な日常を大切にしていましたが、突然父親が彼を跡目候補に選んだことによってその生活は一変します。
跡目候補にされたために義兄に命を狙われる羽目に陥った凪斗の前に、角能(攻)という彼を警護するために父が寄越した男が現れます。角能はそれまでの凪斗の生活を土足で踏み散らかすように力尽くで入り込んできて、更には監禁しあろうことか守る相手であるはずの凪斗を弄ぶ。
そんな角能を凪斗は当然憎むんですが、義兄に拉致されて間一髪で角能に助けられたあたりから徐々に変化が表れます。
その変化は凪斗だけではなくて、角能にも訪れる。
角能は最初、凪斗をただの子供だとしか思っていなかったんですが、彼が描いた絵を見て以来、彼の中には実は計り知れないものが潜んでいるのではと思うようになる。
それを引きずり出すために、彼は凪斗の背に刺青を入れます。凪斗の本性であるという双頭の蛇の図案を彫らせるんですが、この刺青プレイともいうべきシーンがとにかくエロい。
沙野さんなのでエロなシーンはもちろんいろいろあるんですけれども、攻めに見られながらその背に刺青を彫られていく受けというシチュはそれらを凌駕するやらしさがありました(笑)
その刺青に感化していくように、凪斗自身も徐々に変容し始め…。
  
突然ヤクザの跡目候補にされたり角能に弄ばれたり刺青まで入れられたりとかなり過酷な目に遭うことになる凪斗ですが、運命に翻弄されるだけのか弱い青年では決してなくて、意外と男前なのがいいです。ラストのあの顛末はもちろんですが、喋り方とか普段から男っぽいし決してなよなよしていません。
こういうのを見ていると、沙野さんの受けはあくまで男の子なんだなぁと思います。

それから、全体に渡って凪斗の絵が上手く使われていると思います。
凪斗は素直に表に出せない想いや葛藤や感情を絵に描いてしまうタイプなんですが、その絵が父親の目に留まるきっかけになっるなどあまりにも皮肉な、そして切ないエピソードや角能への「初恋」のことなどなど、凪斗の成長を物語るようにお話の展開に絡んでとても効果的で印象的な感じがしました。
その絵に絡んで凪斗に変化が表れ始めたことが書き下ろしの「あたたかな輪」で書かれていますが、やはり普通とは違う生き方をしなくてはならないのは切ないですね…。
けれどももしかしたらずっと孤独だったかもしれない凪斗に今は角能という存在がいるのだと思うと、心底良かったなぁと思うのです。
それはきっと角能も同じなんでしょうね。この作品は凪斗の変容の物語であると同時に、かなり重い過去を持っている角能がそれから解き放たれるまでの顛末を描いた作品でもあると思います。

というわけで懐かしささえ覚えてしまった小蛇親分とでかい嫁のお話ですが、後編ともいうべき「蛇恋の禊」(リンクスロマンス刊)で完結する物語です。この他来月同じくガッシュ文庫で復刊予定の「蜘蛛の褥」とリンクスロマンスで出ている「赫蜥蜴の閨」のスピンオフを含む4作品のシリーズ物なのですが、レーベルがバラバラなのが惜しいですねぇ。。
でも大好きなシリーズなので復刊は嬉しいです。これを記念しての小冊子企画もありますし、そちらも見逃せません!

 ・「蛇淫の血」(1作目)
 ・「蜘蛛の褥」(スピンオフ)
 ・「蛇恋の禊」(2作目)
 ・「赫蜥蜴の閨」(スピンオフ)
 ・Extra Book ガッシュ文庫「蛇淫の血」&「蜘蛛の褥」番外編

「ディープフェイス 閉じ込められた素顔 下」 秀香穂里 / ill.奈良千春

都内で起きた不可解な殺人事件。新聞記者の貴志誠一は、問題の裏側を探るべく、事件の関係者である警視庁の篠原に近づくが、篠原の影には、闇に潜む凶暴な男が存在していた。『リョウ』と名乗るその男に拉致された貴志は、そこで陵辱の限りをつくされ、二度と篠原の事件に関わらないことを約束させられる。しかし、残酷にも事件は新たな展開をみせ、貴志の不安を大きく揺さぶった。事件の真相を知る人物は篠原の他にもう一人。危険と知りながらも貴志はリョウを呼び出し…。

上巻「ダークフェイス」からの続きです。
上巻で、篠原には凶悪な双子の兄がいること、そしてその兄・竜司こそが篠原の家で起きた殺人事件の犯人であること、さらには謎の男リョウが竜司からの暴力から自身を守るためにつくり出した篠原の別人格であることが判って、貴志はこれまで追っていた真相に近付くと同時にそれの持つ想像以上の暗い深淵にも気が付き始めます。

この作品の最大の見所は、貴志が愛した男がその人そのものではなくて彼の第二の人格であること。
貴志は、篠原亮司ではなくて、彼の別人格であるリョウを好きになってしまうんですね。けれどもそもそも作られた存在であるリョウという人格は、篠原本人の精神が安定すればいずれ統合されて消えてしまう存在でしかない。リョウは確かに「いる」のに、やがてはそういうかたちでいなくなってしまうというのは、例えば相手と死別するとかいう以上に哀しいことのように思えて切ないです。
貴志がリョウを好きになってしまうまでの経緯はちょっと説明不足な気もしますが、リョウが実は篠原の、本人さえ知らない別人格だったということが大きく働いているのかもしれませんね。
そしてリョウもまた、自分自身の存在を初めて明かした相手でもあり篠原と自分を理解してくれた貴志を愛しいと思うようになる。
上巻ではエロも殺伐とした感じでしたがふたりの気持ちが通じ合った下巻では、ハードだけれどもけっこう甘い感じです。上巻に引き続いての尿道攻めや剃毛プレイなどなど内容も濃ゆいです(笑)
あと、ただ傲慢で冷たい男なのかと思っていた篠原が意外に脆い人間だったことが判明して、いまいちつかめないなという印象だったのが一気に愛おしくなってしまいました(笑)

竜司の顛末は、作中で執拗なくらい残忍で凶悪な男だとされてきたにもかかわらず肩透かしなくらいあっさり終わってしまいます。事件に関わるヤクザたちや貴志の同僚のエピソードは無駄とはいいませんがお話の展開にどうしても必要なものとは思えず、ここにページを割くならもっと篠原と竜司の対決や顛末を作り込んで欲しかった気がします。
それから上巻読んでた時から物凄く気になっていたのが、屈指の名家であるはずの篠原の家の人間がその気配すら出てこないこと。未だに影響力を持つ大物政治家だった祖父とか、この事態に一体何をしているんだろう?? …と、首を傾げてしまいました。
事件面ではそういう甘さが目について、貴志たちが日本がひっくり返るようなスキャンダルが起きている、と大騒ぎしているわりにその臨場感を欠いている印象が最後まで拭えませんでした。
上下巻のボリュームでせっかく記者が主役なのだからもっと深く掘り下げてほしかったし、秀さんならきっともっと骨太なものが書けるはず、と思わずにいられません。
それから、秀さんの作品は攻め視点で書かれたものの方が萌える気がします。。

ラストは素晴らしいと思います。単純なハッピーエンドではないけれども、読み手の取り方によっては希望の持てるような余韻の残るこんな終わり方、BLではあまりないですものね。
私は篠原の中に「いた」リョウが抱いた愛しいという想いは、きっと篠原自身のものでもあると思っています。

 ・「ダークフェイス 閉じ込められた素顔 上」

「ダークフェイス 閉じ込められた素顔 上」 秀香穂里 / ill.奈良千春

新聞記者の貴志誠一は、ある殺人事件の記事に疑問を覚える。閑職に追いやられ、暇を持て余していた貴志は、その秘密を一人で探ることにするが、事件において重要な鍵を握っているのは、警察官僚の篠原亮司だった。怜悧で冷たい雰囲気をまとう篠原は、貴志にまともに取り合おうとせず「関わるな」と忠告する。しかし貴志は、高慢な篠原に憤りを感じ、事件の裏側を探ろうと躍起になった。だがある夜、危険な匂いを漂わせる黒獣のような男に拉致され……。

発売が延期になっていた秀さんの新刊は上下巻のボリューム。
新聞記者の貴志(受)は社会部で仕事をこなしていたが上司の失態に巻き込まれて閑職に追いやられている。
暇を持て余していた彼の目に、偶然ある殺人事件の記事が留まります。それは警察官僚で有名政治家を祖父に持つ男・篠原に関わるもので、そのわりには大きく報じられていない、というかそこに触れることがタブーのようになっていることに疑問を持ち、貴志は持ち前の好奇心の赴くまま独自に調べ始めます。
篠原本人に接触するも、如何にもエリート然とした彼は一介の記者、それも閑職に左遷されている貴志をまるで相手にせず冷たくあしらわれただ関わるなと言ってくるだけ。
それでも食い下がる貴志の身辺に不穏な気配が立ち込め、ある夜彼は篠原に関わりのある凶暴で危険な男・リョウ(攻)に拉致され陵辱を受けてしまう。

その後も貴志は篠原という男に惹かれて事件の真相を追うことにのめり込むんですが、そうまでさせる最大のキーパーソンのずの篠原の魅力が伝わってこないのが残念。
というかこのお話、全体通じて貴志がなぜこの事件を、拉致監禁の末に嬲られもなお追おうとするのかその動機や理由付けが弱い気がします。
記者魂で事件を追う貴志のキャラも、正義感からではなくてただ真実を知りたいという思いから動いているというのは伝わるんですが、冒頭の、出世欲の強い野心家的な感じが後まで尾を引いてしまって共感できませんでした。
その後も篠原に関係しているヤクザが登場したりしますが何だか魅力不足。彼らの関わり方も、BLだから当然そうなるんだろうなというお約束的な印象です。
そんな中、ただひとり謎の男リョウの存在感だけが他を圧倒しています。得体の知れない彼は篠原の何なのか、それが最大の見せ場でしょうか。

ラヴァーズなので監禁、陵辱と甘さのまるでないハードな濡れ場が多いです。
乳首を輪ゴムで縛られて攻められるシーンがいちばんやらしかったです(笑)
あと、最後まではされていませんが攻め以外の人間との絡みもありますので、苦手な方はご注意ください。
 
貴志の執念で徐々に篠原の抱える闇の部分とリョウの意外な正体明らかになり、もうちょっとで決定的に見えてきそうな事件の真相は下巻に続くかたちで上巻は終わっているので、これをどう展開させていくのかが気になります。

 ・「ディープフェイス 閉じ込められた素顔 下」

「エス 残光」 英田サキ / ill.奈良千春

 大物ヤクザであり椎葉のエスでもある宗近が何者かの銃によって倒れた。宗近を守るため、ある決意のもと宗近から離れた椎葉は、五堂によって深い闇を知る。複雑に絡まり合う過去と因縁。錯綜する憎しみと愛。奪われた者は何で憎しみを忘れ、奪った者は何で赦しを得るのか。この闘いに意味はあるのか?闇の中でもがき続けた男たちの鎮魂曲。

「エス」シリーズ最終巻。
宗近が五堂の手の者に撃たれ自身にも監査の打ち込みのかかった椎葉は、拳銃を手に五堂のもとへ向う。そして椎葉は五堂に拳銃を突きつけて自分の姉の仇なのか聞きだそうとします。答え次第では撃つかもしれない―。けれども五堂はそれを上手くはぐらかし、椎葉を自分のもとに来るよう誘う。そうすることで何かが見えるかもしれないと考えた椎葉は、五堂の言葉に乗ります。
そこで五堂自らが語った過去は、あまりにも壮絶すぎてそれは人格歪むだろうと思う。彼は自分の過去を笑いながら語って見せ、もはやどこかが正気ではないんだろうなと思わずにいられません。
更に五堂は宗近の弟・東明を完全に支配下に置いていて、東明は椎葉の、五堂が宗近を狙撃したという言葉に耳も貸さないほど。そしてもうひとり、旋盤工の少女・紀里はゆいいつ五堂との間に不思議な絆を結んでいるらしい。
観察を続けつつ、椎葉は徐々に五堂に取り込まれかけますが、何とかぎりぎりのところで踏みとどまる。彼が五堂の手から逃れた時、危うく読んでいるこちらまで五堂の策にはまりかけていたことにはたと気が付いてひやりとしました。
そしてその後、東明が動いたことで事態に変化が訪れます。

今回いちばん泣けたのは、五堂に監禁され追い詰められた椎葉が出逢ったばかりの頃の宗近の放ったオヤジ発言を思い出すところ。なんていい場面なんだとぐ…っときました。英田さん、こういうの上手すぎます。
そしてシリーズ全体を通して、これは男と男の間にしか成立しない関係性を描いていると思いました。それも、互いに対等な立場にある男たちの関係。全体通してエロ度や甘さは控え目ですが、この作品はそれらある意味BLに不可欠な要素が無くてもいい、いやむしろ無いからこそいい作品だと思いました。そうすることで他では見れない緊張感があり、それが病み付きになります。そしてエロや甘さは無くても萌えはあるという、大事なポイントは押さえてあるので(このバランスが絶妙!)ハードボイルドが苦手な人でも楽しめると思います。

評価星5つ! といきたいところなんですが、ある一点が気になってしまって一つ減らしました。それは紀里のこと。しゃべることが出来ず頼る身内もない彼女は、あのまま本当に大丈夫なんだろうかと心配になります。これは「咬痕」に出てきた真央の時も思ったんですが、世の中はそんなに甘くないんじゃないのかなぁと。真央は男だから何とかなるんでしょうが、紀里は女の子だしその上…と思うとすっきりしないんですよ…。まぁ、彼女の職人としての腕の高さを持ってすれば、上手く世を渡っていけるのかな…と思っておきます。
その点さえ除けば文句なしで満点の面白さでした。

本編読了後、フェアでGetした小冊子を読みました。
ドラマCDブックレット再録の「FOUR ROSES」「Liar's truth」「I'm not your pet」の3編と、書き下ろ「Late fall」。どれも本編の番外編的ショートでしたが、「Liar's truth」にその後の真央が出てきたのが嬉しかったです。書き下ろしの「Late fall」は、英田さんが震災のチャリティーで書いたショートのその後でした。
この小冊子は上手いことフェアに乗っかれて手に入れられましたが、…番外編多いですね、エスシリーズ。。
前に「エス」の感想書いたときにちらっと、このシリーズには手を出さない理由があったって書きましたがそれは、はまったらもう読めない番外編小冊子が多いなぁということ。ま○だらけとかヤ○オクとかで時々出ているの見かけますが、何だかとんでもない値段になってますよね…。
新参者の私はこれが辛くて、このシリーズに関わらず番外編小冊子の多くでいる作品はもの凄く高評価でも手に取らずにいます。だって、うっかりはまろうものならもう…(涙)
無視できればいいんですけどね、そうもいかないのがファン心理(苦笑)
本編終わっても番外編が出るのはファンには嬉しいことですが、できれば誰もが読めるかたちで発表してほしいです…。

「エス」シリーズ
 ・「エス」
 ・「エス 咬痕」
 ・「エス 裂罅」
 ・「エス 残光」

「エス 裂罅」 英田サキ / ill.奈良千春

大物ヤクザでありながら椎葉のエスである宗近。宗近に特別な感情を持っていることを意識しつつも、刑事というポジションを選んだ椎葉。互いを想いながらも、ふたりはエスと刑事という関係を守ることを誓っていた。そんなある日、椎葉の前に現れた謎の青年・クロによって、すべてが狂い始める!罪と罰。そして、贖われるべきものとは。

「エス」シリーズ第三弾。

一般人の間で出回っている出所の分からない密造銃の情報を追っていた椎葉は、ある時密造銃の情報を持つという青年クロと出会う。クロは今上機嫌だったかと思うと次の瞬間にはキレているような何処か壊れた人間で、思うように情報は得られない。捜査に手こずる中、義兄の篠塚から近く監査が椎葉の身辺調査に動くという情報を聞く。何故監査が動くのかが分からず苛立ちの募る一方の中で、それを知った宗近は椎葉を気遣って自分と合うことを控えさせようとし、椎葉はかつて彼の姉を殺したと思しき男・五堂と出会い…。

ついに佳境に突入していきます。そしてこんなところで次巻に持ち越しか〜という終わり方をしています。刊行当初に読んでいたら、続きが気になってハゲていたかも(笑)。

この三冊目で、ようやく宗近サイドのことが出てきます。
今まで直接出てこなかった弟の東明もやっと登場(ヤクザの組長なんだからそれなりに貫禄はあるんだろうと思っていたらまだまだお子様な感じで意外)。そして彼らの関係の複雑さとか宗近の過去とか、今までは何処かひょうひょうとしたオヤジのイメージ(すみません…)のあった宗近という男の抱えているものの大きさがはっきりして、胸に来るものがあります。人望も能力もあるのに弟の補佐に徹していることや松倉組と距離を置いていることの理由も、そういうことだったのかと。

椎葉の苦しみは散々見てきましたが宗近の実態は謎だらけだっただけに、苦しくなってきました。
その宗近と確執があり、そして椎葉の姉の敵かもしれない男・五堂はなかなか喰えない男です。優秀なデイトレーダーという成功した華やかな面を持つにもかかわらず、五堂組の組長でもありガンマニアで危険なことを好む、というかそれを求めてやまないようなおかしなところがあって相当壊れている。もしこの男が椎葉の姉の仇だったとして、この男がまともな反応を返すとは思えず椎葉はまた悩むんでしょうね。
もしかしたら紀里が全てを救うのかな…? と勝手な推測をしたりしています。

「エス」シリーズ
 ・「エス」
 ・「エス 咬痕」
 ・「エス 裂罅」
 ・「エス 残光」

「エス 咬痕」 英田サキ / ill.奈良千春

大物ヤクザである宗近をエスとし、自分の身体を餌に情報を得る椎葉に、ある日、上司から命令が下った。それは同僚の刑事である永倉の援護をするというものだった!刑事とエス。それは運命を共有する関係でありながら、決して相容れない存在でもある。孤独に生きる男たちの歪で鮮烈な愛の物語。

「エス」シリーズの2作目。
一作目を読んだ時点ではまぁ普通かな、という程度だったんですが、これを読んで凄いと思いました。

自分の体と引き換えに松倉組若頭補佐である宗近を新たなエスとした椎葉に、組対五課の同僚・永倉の仕事を援護しろ、という命令が下ります。永倉は、椎葉とはまるで違う自身のエスを暴力や脅しで従わせて使っているような剣呑な男。永倉のエスは、彼が捜査している一鴻会の組長の愛人という立場にある青年・真央で、ホモフォビアの気のある永倉に弱みを握られ半分脅されて彼のエスになっているんですが、どうもそれだけではないらしい。捜査中、一鴻会組長が何者かに殺害され事態が一変、その犯人を捜査していくうち、椎葉は永倉と真央との間にある奇妙な絆に気が付きます。そして、彼らの関係を自分と宗近のそれに重ねてしまう。
自らの体を差し出すことで宗近から拳銃押収のための情報を得ている椎葉は、宗近がそれ以上の関係を求めていることを感じながらも彼との関係は仕事上のものなのだと割りきろうとしますが、何故か上手くいかない。それは頭でそう理解していても心がそれ以上を求め始めているからなんだろうと思うんですが、それを認めてしまうことは宗近を「エス」以上の存在にしてしまうことを意味するので、出来ないんですね。
この、椎葉と宗近の刑事とエスというある意味運命共同体でありながら決して相容れない関係性のやるせなさが、同じ立場の永倉と真央というふたりの葛藤と二重に重ねることで更に強調されています。それで結局ふたりはどうなるんだろうかとか、椎葉は一歩先を踏み出せるんだろうかとか、やきもきしてしまいます。が、宗近がそんな雁字搦めになったふたりの関係の突破口を作る。見ようによっては酷いと思わなくもないんだけれども、ああしてしまうくらい宗近は椎葉が欲しかったのかと思いました。

当人同士がより破滅的な永倉と真央は、見ていて切なすぎました。永倉が何故エスに対して冷淡なのか、その原因となった過去も辛すぎます。真央はもう登場しないでしょうけれど、あのまま幸せに生きて行けるんだろうかとか、色々気になってしまいました。
そんな真央と、宗近のちょっとした絡みがかわいいというか面白くて印象深かったです。宗近のところに避難していた時が、実は彼がいちばん肩の力を抜いていたのかもしれないですね。

次巻は宗近の属している松倉組が大きく動き出しそうな気配。どんな展開になるのか楽しみです。 

「エス」シリーズ
 ・「エス」
 ・「エス 咬痕」
 ・「エス 裂罅」
 ・「エス 残光」

「エス」 英田サキ / ill.奈良千春

警視庁組織犯罪対策第五課、通称「組対5課」の刑事である椎葉は、拳銃の密売情報を得る、言わば拳銃押収のスペシャリストだ。その捜査方法はエス(スパイ)と呼ばれる協力者を使った情報収集活動に重点がおかれている。椎葉は新宿の武闘派暴力団・松倉組に籍をおく男を情報提供者として工作している。ある日、寝起きの椎葉に一本の不明な電話がかかってくる。おまえのエスに気をつけろ、と。劣情と矜持、孤独が交錯する男たちの物語。

またまた時間が開いてしまいました。。
先日映画を観に行ったら、唐突に男優ふたりが濃厚に絡み始めた(!)のでびっくりしました。別にそういう作品を狙ったわけでもない、フツーの映画だったのに、なんだか映画にまで腐ってることを見透かされた気分…
なんて話はさておいて、本日は英田サキさんの「エス」シリーズ第一弾です。SHYノベルスが開催している「英田サキフェア」につられて、遂に手に取ってみました。…っていうか、こんな有名な作品をまだ読んでなかったのかっていう…(笑)
それにはまぁ色々理由もあったりするんですが、それはひとまず置いといて、感想をば。

警視庁組織犯罪対策第五課の刑事として拳銃の密売情報の収集活動をしている椎葉(受)は、その捜査に「エス」と呼ばれるスパイとして、暴力団・松倉組の安東という男を使って工作を行っていた。
が、その安東が何者かに殺される。
誰の犯行なのかはっきりしない中、椎葉は安東が自分の「エス」であったために殺されたのではないのかと思う。そして、安東が殺される前に自分に「安東に気をつけろ」と忠告してきた男、松倉組の若頭補佐である宗近(攻)が犯人を知っていると考え、接触する。そして彼を次のエスに出来ないかと考える。ところが宗近は情報を与える代わりに椎葉の身体を要求してくる。

ここからは椎葉と宗近の駆け引きが始まるんですが、まるで甘さはないです(笑)。そこがいいんですけれど、どっちに転ぶんだろうという駆け引きの中、徐々に徐々にふたりの気持ちや関係に変化が表れていくのがさらにいいです。
椎葉のキャラがいいですね。美人なんだけれど女々しくなく、ちゃんと「男」として描かれているのが、BLの受けは女要素が少ないほど萌える私なんかは読んでて安心(?)しちゃいました。女の子みたいなのより男っぽいほうがセクシーですよ(笑)。彼が何故拳銃の取締に必死になっているのか、その原因となった過去のエピソードがやるせなく、それが椎葉というキャラに、更には物語に深みを与えています。
でも、中国マフィアに嵌められるくだりは、仮にも捜査官としてやってきたならちょっと有り得ないミスなのでは? と思ってしまいました。だってあの香炉、出てきた時から「それアヤシイそれアヤシイ」と思いましたよ! あんなところで敵に隙を作ってしまったのはどうなんだろうかと。。
宗近がそんな椎葉にいつの間にベタぼれになっていたのかがちょっと説明不足かな、とは思いますが、まぁ、オヤジな宗近が好きなのでもういいです(笑)。
Hシーンはオ○ニーショーやらSMプレイやらきわどいものも出てくるけれども、割とさらっとしているというかあんまりエロいとは思いませんでした。代わりに椎葉と宗近の言葉の応酬がいちいちツボで、そっちにニヤニヤしましたね(笑)
あと、挿し絵の奈良さん、この頃はこんな絵柄だったんですねー。

一巻だけなら普通かな、という印象(なので評価も普通です)ですが、ちょこちょこ出てきたキャラたち含めこの先どう展開していくのか楽しみです。

「エス」シリーズ
 ・「エス」
 ・「エス 咬痕」
 ・「エス 裂罅」
 ・「エス 残光」