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  • 2014.07.28 Monday
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「帰宅」 剛しいら / ill.茶屋町勝呂

爆発事故で妻を失い、ひとり息子も大怪我を負った中堅俳優の佐伯は、事故後の息子が異常な愛情で接してくるのを苦悩しつつも、受容していた。しかし、「息子」として接していた彼は本当の息子ではなかった…。表題作のほか、デビュー作に書き下ろしを加え、痛く、せつない愛を描いた、著者初の作品集となるラブ・ストーリーズ。

剛しいらさんの初期作品、「ぴすとる」「帰宅」「一枚の遺書」の3編が収録された短篇集。
ちょっと古いものですが、英田サキさんが「知らなくても生きていける萌えの話」の「ダーク」という項目の中で、表題作の「帰宅」を挙げられていて気になっていたので、古書店で探してみました。

ので、まずその「帰宅」から感想を書きます。

「帰宅」
★★★☆☆
中堅の俳優として活躍している佐伯(攻)は、爆発事故で妻を失い一命を取り留めた一人息子の尚紀(受)も大怪我を負うという不幸に見舞われます。
やがてひどいやけどを負っていた尚紀が回復し家に戻った時、その姿に佐伯は自分の息子はこんなに美しかっただろうかと思う。彼は仕事人間で今まで家庭を顧みることもなかったため、事故以前は尚紀とは口を利くか利かないかといった微妙な関係になっていて、実の息子だというのにかなり久しぶりにまじまじと見たわけですが、なぜか違和感が拭えない。更に以前は素っ気なかった尚紀が佐伯に、父子を超えた異常な愛情を向けてくるようになり、当惑する。初めのうち、それは事故によるショックのためだろうと考えるも、実はその「尚紀」は彼の本当の息子ではないのではないか、という疑惑が生じてくる。
事故の犠牲者の中に、尚紀の同級生がいた。彼、達実は佐伯の大ファンだったという。
その達実が尚紀に成り代わっているのではないのか。
疑いが確信になり、佐伯は尚紀を問い詰めますが尚紀はそれを認めるどころか役者の佐伯も敵わないと思うほどの迫真の演技で自分は尚紀なのだと繰り返します。その姿に、佐伯は彼までも失いたくないと思うようになり…。
 
英田さんが「ダーク」だと言われるのも納得の、どこかぞくりとくる内容ですね。
かつての自分を葬り他者になり代わってまで愛しい男の側にいようとする少年の執念、そしてその執念に、息子の死の真相を闇に葬ったまま陥落する佐伯の孤独。
誰にも知られてはならない秘密と共にふたりだけの世界に閉じられていくラストは、ある意味壮絶です。
 
「ぴすとる」
★★★☆☆
大人しい中学3生の秀(受)は先輩の山内(攻)に脅されてコンビニ強盗に加担してしまう。そのまま山内に連れられて大阪へと逃避行するが、その中で奇妙な連帯感が芽生えてゆく。
けれどもふたりの行く先は明るくはなく…。

冒頭の閉塞感云々が作品を表しているというべきか、これが書かれた90年代後半に10代の間に流れていたやり場のない感じ、あいは居場所のない感じが全体に漂っています。ほんと、あの頃ってそこまで破滅的でどうするよーなのやトラウマ語りが大流行して、BLに限ったことじゃなくてそれこそエンタメまでもこういう雰囲気のものが多かった気がします。
この作品のラストも、あの頃ならではというか、もう今のBLでは絶対に見られない結末です。

「一枚の遺書」
★★★☆☆
高校生・真澄(受)が一枚の遺書を残して自殺した。遺書には自殺の原因となった親友、政彦(攻)の名が書かれていたが、彼と真澄は実は恋人同士の関係だった。いつもと変わることのなかった真澄が自分が原因で自殺したことがどうしても信じられない政彦は、その真相を探る刑事に真澄とのことを話しますが…。
…と、片一方がすでに死んでいるという悲劇的な状況でお話が始まり、かつての出来事が語られていくという展開で、ああ、JUNEな世界だなぁと思いました。

ところで作中、政彦が深まっていく真澄との関係に男同士なのに…と深刻に悩んでいる姿に、こういうの懐かしいなと思ってしまいました。
今のBLってあっけらかんとしているというか、もともとゲイ設定だったりと男同士で惚れた腫れたしている割には「男同士」ということに葛藤する、みたいなのがなくなりましたよね。昔々のJUNEのイメージしか持っていなかった私は、BLにはまって一番驚いたのはこのことだったりします。
トウがたって、そういうことに悩む姿に共感するお年ごろは過ぎたのか、男同士という延々考えても答えのでない問いに悶々する姿に萌えたりとかはもうないですねぇ。
あと、最近のBLに出てくる高校生が妙に世慣れているせいか、このふたりの高校生らしい初々しさは新鮮ですらありました(笑)。
まだ制服の時代がすぐそこだった頃は、等身大な登場人物に共感してたんだけれども、制服なんてはるか彼方になった今、高校生がステキな夢の存在でもファンタジーとして消化できるようになっちゃったんでしょうかね;
それはさておき、この作品がなんと剛さんのデビュー作なのだそうで、後でそのことに気がついてびっくりしました。

3作品とも今のBLにはなくなって久しいJUNE的な雰囲気濃厚であると同時に、これが刊行された90年代後半に漂っていた閉塞感や不安定な感じが満ちている感じです。
今のBL作品よりも重いといいますか。
どれも完成度の高い作品で読み応えもあるんですが、そこに萌えを感じるかと言われると…それは違うかなぁと。
なんだか、自分があの頃から如何に遠いところに来てしまったのかをしみじみと実感してしましました;