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  • 2014.07.28 Monday
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「花の迷い仔」 沙野風結子 / ill.小路龍流

ひとりっ子政策が生んだ中国社会の影・黒孩子―戸籍も国籍も持たない公的にはこの世に存在しない人間。中国黒社会の一員として生きてきた黒孩子のウーにとって自分という人間を初めて認めてくれた警視庁の刑事・阿南斎は特別な存在だった。黒社会の情報提供を口実に斎と接触するうちにミスを犯したウーは、組織のトップ・零飛の命令で現れた柳夕矢のもとへ拉致同然に連れ去られ…。

花シリーズ最新刊はウーが主役です! お相手はなんと「共謀」シリーズの夕矢(!)で、11も歳の差の年下童貞攻めです!
両方のシリーズのリンク作ですが、これ単体でも愉しめる内容です。でもそれぞれのキャラたちも顔を出していますので、読んでからの方がわかりやすいかもしれません。

前作「千年の眠り花」から2年後。18歳になっても相変わらず斎一筋のウーは彼に会うためにと裏の情報を得ては流しているのですが、その中に零飛側の流してはまずいものが含まれていたために窮地に立たされます。
零飛は制裁処置として、ウーの身柄をを配下の夕矢に渡してウーと斎の接触を一切禁じてしまう。
黒孩子である自分の存在を認めてくれた人であり、生きるための指針でもあった斎と会えなくなったことで生きる意味を失いかけたウーですが、夕矢との共同生活が彼を生きることにつなぎとめていきます。

一見感情のないロボットの様な夕矢をウーは初め気味悪がりますが、自分と彼の意外な共通点に気が付いたことで徐々に変わっていきます。
ウーが斎を想うのと同様に、夕矢も親友である桐斗にずっと叶わない想いを抱いているんですね。
そのことで乱交までしてしまうほど自暴自棄になっている姿に、夕矢ってそんなに桐斗が好きだったのかと思い知らされました。彼もまた桐斗の存在が自分をまともにさせる存在だったわけです。
でも桐斗は夕矢の気持などまるで気が付いていないから、知らないとはいえけっこう無神経なことをしているんですよね。夕矢サイドから考えると、これで堪えられる方がおかしいかもしれないという気になってきます。だからニュースダブルツーをもの凄い勢いで消してしまうのとか、めちゃくちゃ大人気ないなぁと思いつつも納得してしまいました(因みにこのエピソードはとても好きです(笑)油断も隙もないように見えた彼がとても可愛く思えた瞬間でした)。
そんな、想う相手から離れると自暴自棄に凶暴化してしまうウーと感情のないロボットになってしまう夕矢は、根っこのところでそっくりなんです。
そのことに気が付き始めたウーは、夕矢が桐斗の前では活き活きとした表情を見せるとに何故か嫉妬を感じてしまう。初めて斎以外の人間に興味を持つようになって、それが彼の視野を広げていきます。

初め、ウーは自分に似た境遇にありながらも夕矢が思う相手と気軽に会うことのできることに嫉妬していただけだと思います。その頃はまだ斎に会えないという焦燥感の方が勝っていたはず。
けれどもちょっとしたハプニングから夕矢と躰の関係を持つようになってから、決定的に彼の中の夕矢の存在が変化し始めていく。
ウーは過去のトラウマで性的なことには嫌悪感を持ってしまっていて、いくら夕矢と行為に耽っても射精ができないというややこしい状況にあり、それが自分にも夕矢にもお互いではダメなのではないかと思わせてしまう。
何となく、ウーも夕矢も長いこと想い続けた相手を超える存在を作りたくなかったのかもしれませんね。それはある意味で相手を裏切ることだと思っていたんじゃないのかと。報われない相手に裏切るも何もないんですけど、その人がいないと自分が自分でなくなるという想いの中に籠もりきっていたような気がします。
だからふたりともが無意識のうちにお互いの気持ちに気が付かないようにしていたのかもしれません。
でもそれではダメなんですよね。

これでちゃんとくっつけるのか??とヤキモキしているところに現れたシロという黒孩子の少年との関わりでウーは成長していくようになり、夕矢とのこじれた関係にも変化が訪れます。

後半はふたりがどう気持ちを繋げ合うのかに加えて、黒孩子の子供たちの失踪事件など色んなことが交錯してちょっとごちゃごちゃした印象がありますが、ラストはちゃんと収まるところに収まっています。
…というか、またしても零飛が悪趣味なシーンを用意してくれました(笑)。やっぱり彼は黒キューピットですね(笑)そしてこういう乱交ではない複数プレイが最近の沙野さんのお気に入りなのかなぁと思ったり(笑)。

なにはともあれ、こじれまくった関係がほぐれ過去から解放されてやっと自由になった、ということでしょうか。ウーはもう「迷い仔」になることはなでしょう。

エロシーンも含め全体的にハードで甘い感じではないですが、童貞攻めが手練た年上に翻弄されるという美味しすぎるシチュに加えて、沙野作品ではなんと初になる攻め視点のお話、というだけで充分愉しめました(笑)。
零飛たちに引き取られたシロのその後が気になるところです(笑)。ほんと、零飛はシロをどうするつもりなのか…。

「花」シリーズ
 ・「廻り花を揺らす指」
 ・「花の堕ちる夜(新装版)」
 ・「花陰の囚人たち(新装版)」
 ・「千年の眠り花」
 ・沙野風結子番外編小冊子(番外編収録)
 ・「花の迷い仔」

「千年の眠り花」 沙野風結子 / ill.小路龍流

上海経済を牽引するビジネスマンと黒社会を牛耳るマフィアの幹部という二つの顔を持つ耿零飛。出逢いから8年、零飛を愛し、その癒えない心の傷を知った義蒼は彼を護るためには手段を選ばない人間になっていた。日本企業との提携ビジネス拡大を目論む零飛は、敵対組織を潰すため警視庁の刑事・鷹羽と亜南、黒社会でしか生きられない少年・ウーを巻き込み危険な罠を仕掛けるが…。

「花」シリーズ4作目。
「花の堕ちる夜」の零飛×蒼に加えて「花陰の囚人たち」の鷹羽×斎も登場です。

今回は、前作から4年後、日本企業との提携と敵対組織を潰すため零飛が蒼と共に日本にやって来たことから始まります。
邪魔が入ってビジネス交渉が上手くいかないことに苛立っているのか退屈しているのか、零飛は気分を紛らわすためにまたも悪趣味な「余興」を用意します。
なんと斎を拉致、監禁してしまい、彼を餌にウーを手駒として動かし敵に潜りこませようと目論むのです。
前作「花陰の囚人たち」で生死不明のままだったウーはちゃんと生きていて(よかった…!)、今では16才のナイフを握らせたら相当の腕を持つ若者に育っています。そして未だに斎一筋という一途さ。そこに零飛は目を着けたわけです;
蒼は現職の刑事である斎を巻き込んだこの危険な「余興」を当然心良くは思わないのですが、だからといって零飛を止める手立てもなく…、と相変わらず悩まされ振り回されてで見ているこちらが気の毒なほど。一度は斎を解放しようと試みるも失敗に終わり、結局零飛にお仕置きされいたぶられてしまう。
そうこうしているうちに事態に気付いた鷹羽が斎の返還を要求して来ますが、零飛はしらを切り通して彼さえも利用しようとしますが…。

今回浮き彫りになるのは、零飛の抱える孤独の深刻さです。
彼は過去の経験から痛みを感じにくい体質なのですが、それは他者の痛みを理解出来ないということでもある。彼が時に文字通りの零飛冷血漢に見えてしまうのはそこに起因しているからだと思うんですが、悪趣味な方法で他者を苦しめても彼にはそもそもその苦しみが理解出来ないんですよね…。だからどんどんそれがエスカレートしているのかと気付いて、何ともやるせない気分にさせられました。彼の孤独は痛みのわかる普通の人のそれとは根本が違うんですね。
蒼はそのことに気が付いていて、でも自分にはどうすることもできないことに苛立たずにはいられないわけです。もう彼らは8年も一緒にいて、でもそれだけの時間をかけても零飛を変えられないという事実はかなりきついですね。
そんな風に暗澹たる思いで読み進めていただけに、ラストでほんの少しだけ光が見えてきたことに安堵せずにはいられませんでした。8年という歳月は、やはり長いものだったんだなぁと。

そんな零飛の孤独の深さを見せつけられるように、今回も彼ならではの悪趣味全開なシーンがたくさんあります(苦笑)。BLでギャグボールを使っているのを初めて見たような…(笑)。あとマジックミラーを使って、「向こう」と「こちら」をシンクロさせる演出はなかなかやらしかったです(笑・シンクロしているのはエロ面だけじゃないんですけれども;;)。
そして蒼が人の命を救うという名目の上とはいえ零飛以外の男のものを…とか、輪姦されそうになったり(幸い未遂です)とか、痛いシーンや人によってはダメだろうシーンもあります。
でもそこら辺がなくなると、ラストのじんわりとした感動も成り立たなくなるんですよね。零飛の孤独を破ることに繋がる重要な部分だと思うので、決して無駄ではないです。
本当にもう散々このふたりは歪んでいるなーと思わせられて、だからウーの4年越しの一途さにきゅんきゅんします(笑)。零飛の掌で踊らされて気の毒なウーですが、これからの成長が楽しみです^^

あのキャラもこのキャラも、と欲張りすぎたためにちょっとごちゃごちゃしたり期待したわりに尻切れトンボな部分(特に斎の顛末が;;)もあったりするんですが、でも「花」シリーズのメインキャストが揃い互いに絡み合うような展開は、このシリーズがお好きな方ならきっと愉しめる一冊だと思います。

「花」シリーズ
 ・「廻り花を揺らす指」
 ・「花の堕ちる夜(新装版)」
 ・「花陰の囚人たち(新装版)」
 ・「千年の眠り花」
 ・沙野風結子番外編小冊子(番外編収録)
 ・「花の迷い仔」

「花陰の囚人たち(新装版)」 沙野風結子 / ill.小路龍流

警視庁組織犯罪対策部の刑事で中国語が堪能な亜南斎は尊敬する先輩・鷹羽征一に上海マフィアへの潜入捜査を依頼される。鷹羽の期待に応えたいと願う斎は、来日する幹部・耿零飛の通訳となり動向を探り始めるが、刑事であることを暴かれた斎と鷹羽は囚われの身に。二人は月下美人の花が開く夜毎、零飛の見ている前で淫らな行為を強要されて―!?書き下ろしを含む短編二話も収録。

「花」シリーズ三作目。
2005年刊のアイノベルズの旧版に、アイノベルズのオンラインで発表された「猛禽の瞳」と書き下ろしの「秘密」を収録した新装版(2009年)です。
今回は前作「花の堕ちる夜」から4年後、零飛のところに潜入捜査する日本の警視庁の刑事さんたちのお話です。そして少年ウー初登場のお話でもあります(笑)

中国語が堪能な警視庁組織犯罪対策部の刑事・斎(受)は、その能力を買われて先輩刑事の鷹羽(攻)に上海マフィアへの潜入捜査を頼まれます。ヤクザにも一目置かれる鷹羽は斎にとって憧れの存在。その鷹羽の期待に応えるべく斎は来日する上海マフィアの幹部・零飛の通訳になりすまし、その動向を探り始めます。
ところが零飛は斎が刑事であることを見破り、更には鷹羽をも呼び寄せてふたりを監禁してしまう。
ここからが零飛の悪趣味全開(笑)で、なんとふたりに月下美人の花が咲く夜ごとに零飛たちの見ている前で性行為をするように強いる(!)。…さすが沙野さん、今度はマナ板プレイですか…っ!(笑)

他に選ぶ道もないふたりはその無茶な要求を呑むのですが、ふたりともバイでもゲイでもないんですよね。斎は鷹羽を尊敬しているけれどもそれはBLには珍しく恋愛感情の混じらない純粋なもの。鷹羽に至っては、後輩とこうなるとは思いもしなかったでしょう。
そんなふたりですから、当然すんなりとはいきません。おまけに鷹羽は後ろ手に拘束されているというハンディ付き(!)です。
ふたりが手こずっている感じとか初めての同性との行為への手探り感とかがちゃんと伝わってきて、何だか萌えてしまいました(笑)
そしていちばん最初の時は慣れていないから先の方しか入らなかった、というのがなんともリアル(笑)。
で、月下美人の花が咲くたびに回数を重ねていくうち、ふたりの感情も段々変化していくんですね。
生きて出られるかもわからない切羽詰まった状況下ということもあって、何ともエロスな色っぽい雰囲気濃厚です。
…なんというか、零飛に捕まらなければフツーに生きただろう男たちが、零飛によってくっつけられていくという(笑)。ほんと黒キューピットですね、零飛;
そしてそんな零飛に付き合わされている蒼が何だか気の毒です…。
いや、ノンケ同士のマナ板プレイはおいしかったですけど(笑)

そんなマナ板プレイも萌えましたが、脱出したあとのふたりが誰に脅されるでもなく求め合うようになる展開が激ツボでした。ここで初めて彼らは恋人同士になるんですよね。
そして強面で恋人には背を向けて寝てそうな鷹羽が実は…とか、微笑ましい意外性ににやにやが止まりません(笑)

この他、最初の方で零飛が無理矢理斎に自慰させたりとか、エロなシーンはたっぷり濃厚です(笑)。でもそれだけではなくて、ハードなエロシーンと絡めて、キャラの感情の動きもしっかり描かれているのでそちらも読み応えもいっぱいあります。読んだあとに余韻の残る感じが、さすが沙野さんは上手いなぁと思いました。
そして斎が色っぽいです。彼は自覚のない誘い受けですね(笑)。

あ、あと小路龍流さんのあとがきイラストは必見ですっ! 零飛の刺青が…(笑)。でもこれ何故かかっこよく見えるから不思議です(笑)。何が起こっているのか、ぜひぜひご確認下さいませv

「花」シリーズ
 ・「廻り花を揺らす指」
 ・「花の堕ちる夜(新装版)」
 ・「花陰の囚人たち(新装版)」
 ・「千年の眠り花」
 ・沙野風結子番外編小冊子(番外編収録)
 ・「花の迷い仔」

「花の堕ちる夜(新装版)」 沙野風結子 / ill.小路龍流

上海マフィアに、唯一の肉親である妹を殺された青年・蒼は復讐を誓うが、返り討ちにされてしまう。負傷した蒼が逃げ込んだ車の中にいたのは、仇と敵対するマフィアの幹部・零飛だった。有能で表社会ではビジネスエリートとして有名な零飛は、身体を差し出せば、妹の仇を討たせてやると蒼にもちかける。冷酷で美しい零飛から逃れようとしながらも、惹きつけられていく蒼の答えは。

「花」シリーズ本編の第一作目です。
2004年にアイノベルズで刊行された作品が、書き下ろしの「眉間の空」と小冊子に収録されていた「かの庭に廻る春」を加えてダリア文庫で復刊(2009年)。加筆修正もされているようですが、旧版を読んでいないのでどの部分なのかはわかりませんでした。

上海で拳術を教えて生活している蒼(受)は、マフィアにたった一人の肉親の妹を殺され復讐を誓います。けれども仇討ちに失敗して怪我を負ってしまい、逃げるためにどうにか乗り込んだのが蒼の仇のマフィアと敵対しているマフィアの若き幹部・零飛(攻)の車。
零飛は半分脅して聞き出した蒼の身の上話に興味を持ったのか、蒼にその躰と引き換えに復讐に力を貸そうと持ちかけてきます。マフィアそのものを嫌悪している蒼でしたが、復讐を果たすためならばとそれを呑むことにします。

表では有能なビジネスエリートとして知られる零飛は、慇懃な物腰とは裏腹に得体の知れない雰囲気を持つ男。沙野作品の中でもかなりのS気質なキャラなんですが加えてとても歪んだ性格(笑)をしていて、蒼はかなりいらぶられてしまいます。外出時にもぴっちりビキニタイプの下着を着けさせられたり…(笑)。性的なことはほとんど経験のなかった蒼には、これはけっこうな刺激だったでしょう(笑)。
そんなふうに、初めは冷酷で血も涙もない様な印象だった零飛でしたが、実は蒼と似たような辛い過去を持っていてそれに苛む人としての心があったことがわかります。その上、かつてのトラウマでほとんど痛みを感じなくなってしまっている。
歪みまくっているのもそのせいなのか、と納得させられますが、この零飛を好きになれないとこのシリーズは愉しめないかもしれないですね。

そんな零飛の過去を知ったことで、蒼はどうしようもなく零飛に惹かれていくようになります。
けれども零飛はあの通りのわかりにくさなので、蒼には一体彼が何を考えているのかがわからない。見えてこない零飛の本心と、もしかして飽きられたのでは…、という不安に翻弄されてしまう。
と同時に、零飛との関係は復讐を果たしたなら終わってしまうものなのだとも思う。
蒼が、毎晩ひとつのベッドで一緒に眠るけれども自分たちは恋人でも家族でもないと思うシーンがあるんですけれど、ひとりぼっちの彼だからこそこれはとても切なかったです。
読んでいる側としてはふたりの想いが同じなのは気が付けるので、いったいいつまですれ違ったままなんだろうかとやきもきさせられました。

零飛が蒼に惹かれたのは彼が自分と同じ痛みを持っていたから、そして同時にそうでありながらも自分が遠い昔に失くしたものを彼が持っていたからでしょう。だから彼に長年付き添ってきた張ではダメだったんでしょうね。
そして作中いろいろ思い悩む蒼ですが、基本的に男っぽい感じで全然女々しい印象じゃないところがけっこうツボでした(笑)。
そして書き下ろしの「眉間の空」を読んで、生きることに倦んでいた零飛に再び生きる感覚を呼び覚ましていくのが蒼なのだと思うと、彼の方が実は零飛よりもはるかに男らしいのかもと思ってしまいました。

マフィアとか復讐といったフレーズの踊る作品なだけにハードな内容なのかと思いきや、けっこう甘くて切ないお話でした。

「花」シリーズ
 ・「廻り花を揺らす指」
 ・「花の堕ちる夜(新装版)」
 ・「花陰の囚人たち(新装版)」
 ・「千年の眠り花」
 ・沙野風結子番外編小冊子(番外編収録)
 ・「花の迷い仔」

「廻り花を揺らす指」 沙野風結子 / ill.小路龍流

高校生の八国は、酒とギャンブルに溺れる自堕落な父とふたり暮らし。多重債務者の父が蒸発したせいで、八国は取り立て屋たちに陵辱され、屈辱的な写真を撮られてしまう。一度は解放されるが、頼る相手もいない八国はひとり怯え、アパートに立て篭もるしかなかった。そんな彼に救いの手を差し伸べてくれたのは、これまで反抗心を抱いていた養護教諭の吉祥だった。吉祥に守られて暮らすうちに、芽生えた恋心は禁忌の境界線を越えるまでに激しく燃え上がる。そんなとき、八国が取り立て屋に再び拉致されてしまい―。

「花」シリーズの最新巻「花の迷い仔」が出たので、シリーズのおさらいです^^本当は出る前に書くつもりだったんですけど…;相変わらずののろさです。。
沙野さんのデビュー作(!)でもあるシリーズ一作目の本作ですが、何故か2009年のダリア文庫でのシリーズ復刊に含まれなかったのですよね…。ほんとに何でなんだろ。。

酒とギャンブル漬けの父親と二人暮らしの高校生の八国(受)は、父親が借金を抱えたまま蒸発したことで取り立て屋の脅迫に怯える生活をしています。頼る相手のいない八国はひとり恐怖に怯えながら日々をやり過ごしていますが、その様子におかしなものを感じた高校の養護教諭の吉祥(攻)が、救いの手を差し伸べてくれる。
事情を知った吉祥はひとます八国を自分の部屋に住まわせるようにするのですが、生活を共にするうち二人の間には恋心が芽生えてゆくようになり…。

八国はかなりの美少年ですが、中身は年相応に粗雑というかしっかり男の子です。だから酷い目に遭ってもそこまで悲壮感は漂っていなかったです。
でも普通の高校生ですから、尋常ではない取り立てが連日続けば当然怖いし、精神的にも参ってしまう。その弱り切ったところにするりと入ってきたのが吉祥だったわけですね。
吉祥は包容力のある大人です。学校の先生をやっているだけに困っている子を保護したいという気持もあったのかもしれません。(因みに彼は「花陰の囚人たち」の受け・斎の弟です。本作には斎も登場しています^^本編よりもちょっと男前な感じです)
その後は八国が拉致されたり借金の形に売られそうになったりとなかなかハラハラな展開が続いて、これだけ切迫した状況下の中だからこそお互いを想う気持が燃え上がったのかもな、と思いました。

そして、売り飛ばされかけた八国が徹底的に性技を教え込まれたりそれを写真やビデオに収められたりと、すでに沙野さんらしさもしっかりあります(笑)。
イタイケな少年(といってもかなり威勢がいいですが)相手にけっこうハードですが、本番行為は最後の最後、吉祥とするまでされていないので、その辺が心配な方はご安心下さい。でもそれって、かなりの奇跡ですよね。。八国を吉祥以外と「させない」ための設定が、ちらほらある印象でした。
痛かったりハードなシーンはありますが、八国と吉祥の関係は終始甘めなので読んでてしんどい…と思うことはなかったです。沙野作品には珍しく、このふたりが過去のトラウマを抱えているタイプではなくて現在進行形の出来事に向かっていくキャラだったのもその一因かも。

今の沙野さんの作品に比べれば色んな意味で薄いかもしれませんが、本編の主役である零飛も登場しています(!)し読み応えはあります。何しろ花シリーズの一作目、ですもんね!
因みに斎の様子からこのお話は彼と零飛の接触後の出来事ということがわかりますので、三作目の「花陰の囚人たち」と四作目「千年の眠り花」の間のお話みたいです。
しかし零飛は八国をどうするつもりだったんだろうと気になって仕方がない(笑)

「花」シリーズ
 ・「廻り花を揺らす指」
 ・「花の堕ちる夜(新装版)」
 ・「花陰の囚人たち(新装版)」
 ・「千年の眠り花」
 ・沙野風結子番外編小冊子(番外編収録)
 ・「花の迷い仔」

「愛執の褥―籠の中の花嫁」 藤森ちひろ / ill.小路龍流

白河伯爵嫡男の美紗緒は、少年とも少女ともつかぬ美貌の持ち主。体の瑕疵ゆえ隔離されて育てられてきたが、父の思惑により景山家へ引き取られた。豪奢な打掛を纏わされ、体の秘密が知られているのではないかと不安に駆られる実紗緒の前に現れたのは、庭の迷い猫を助けてくれた黒衣の男・征爾。彼は白河家への復讐のため、実紗緒の二つの性を開花させ激しく陵辱していく。だが、あのとき触れられた指先のやさしさが忘れられなくて―。

昭和初期の華族もので、なんとフタナリ設定です(!)。苦手な方はご注意下さい!!

美紗緒(受)は、白河伯爵家の嫡男でありながら半陰陽の躰に生まれたため父をはじめとする身内から疎まれながら、屋敷奥の離れで隠されるようにして暮しています。その美紗緒を父伯爵は自身が傾けた家業の借金の形として影山伯爵家の若い当主・影山征爾(攻)に引き渡してしまい、彼の生活は一変します。
連れてこられた影山の屋敷で、美紗緒は打掛を着せられた上にその躰の秘密を暴かれて影山に陵辱されてしまう。美紗緒は影山の仕打ちと、父親に見捨てられたという二重のショックを受けることになります。

美紗緒は男でも女でもない中途半端な躰に生まれついたことで周りに疎まれ蔑まれてきたために、必要以上に自信のない性格で、どちらかというとか弱い女の子のよう。だから自分の持つ美しさにも気が付かず、ただこの躰が悪いのだという思いに囚われがちで、陵辱されてしまうとさらに痛々しい感じがします。フタナリとはいえ、もうちょっと男の子成分があった方が良かった気もします。
そんな美紗緒視点でお話が進むので、どうしても影山は酷薄で残酷そうな男に見えてしまいますが、彼は実は、美紗緒の父が元で兄を死なせており、その復讐のために白河家に近付いているんですね。そして、美紗緒を陵辱するのは憎しみのためなのかと思いきや、徐々にそうではないことが明らかになります。

結局、不器用で感情を伝えるのが下手なくせに執着の強い影山の性格と、自信もなければ恋の駆け引きも知らない美紗緒がすれ違っていた、というフタナリという部分を除けは、王道テンプレという印象の内容です。
打掛やら振袖やら夜会のドレスやら、花嫁ものの雰囲気もたっぷりあると思います。受けが少女っぽい上にフタナリなので、さらに濃厚かもしれませんね(笑)。私は花嫁ものには興味が無いのでそこには萌えなかったのですが;お好きな方にはたまらないと思います。

そして、肝心のフタナリ設定に関しては、…なんか色々突っ込みどころが多かったです;
というか、前に読んだ西野花さんの「鬼の花嫁」の時も思ったのですが、フタナリBLでは初めの陵辱では前ではなく後ろを使うのかお約束なのでしょうか?? でもフツーに考えたら逆だろ、という気がしてなぜそうなるのかが謎。…それはBLだからだろ、と言われてしまえばそこまでなんですが、前をふたりが本当に結ばれた時に開かれる神聖な場所(笑)という位置付けなのも何だか。。
…ダメですね、ここで躓くようではフタナリものは私には向いていないのかもしれません、はい。。
でも、後になってはたと気がついたのが、美紗緒がフタナリだと知らなかった影山は美紗緒を男の子として抱くつもりだったんですよね。だったら最初に後ろでもアリなのか(笑)。

というわけで、すみません、肝心のフタナリ設定に関しては消化不良気味になってしまいましたが、この作品意外なところで萌えを拾ってしまいました。
美紗緒の異母弟の央緒(笑)。彼は絶対に異母兄に対してヨコシマな想いを抱いているだろうなーと思っていたので、後半の再登場にときめいてしまいました…っ! というか、正直、影山×美紗緒よりも央緒×美紗緒の方が激萌えです! もちろん未遂ですけれど(笑)
その後に続くまさかの濡れ場は、やっぱり藤森さんだな〜と思ってしまう展開です(笑)。
この他、エロもエロエロというのではなく、時代の雰囲気に合わせてしっとりねっとりとした感じです。この時代設定だからこそのフタナリもの、という感じでした。