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  • 2014.07.28 Monday
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「蘭陵王」 山藍紫姫子 / ill.小島文美

評価:
山藍 紫姫子
(1994-11)

北斉の蘭陵王長恭は、世にもまれなる美貌を隠すため、獰猛な仮面を着けて出陣し、敵の大軍を撃破した―。中国南北朝の故事の材を得た奔放な創作バレエ「陵王」。一方、妖しく踊る天才ダンサー土御門玲司にも、醜悪と艶麗、淫蕩と無垢、いずれが仮面とは知れぬ二つの顔があった…。

久々に再読してみました。
蘭陵王というのは、中国南北朝時代の北斉に実在した武将の名。あまりに美しい貌をしていたために戦場では怖ろしい怪物の仮面を付けて闘ったといわれています。雅楽の「陵王」でも有名ですね。でも婦女子が歓びそうなエピソードは全くない人物だったようです;
最初にこの作品を知った時、山藍さんはこれをどう料理した? と興味津々でいられずにいられなかったのですが、創作バレエの演目「蘭陵王」を十八番とする2つの顔を持つダンサーのお話しです。

刑事の桐生は身重だった妻を殺され独自に犯人を追っていますが、その途上で妻が贔屓にしていたキドバレエの花形ダンサー・玲司にたどり着きます。
キドバレエは裏でダンサーたちに売春まがいのことをさせていて、玲司も躰を売っています。桐生は偽名を使って彼を買い玲司という人間を探ろうとしますが、会を重ねていくうちにその妖しい魅力の虜になっていく。
そのままふたりは愛し合うようになるのかと思っていたら、お互いの秘密を知ってしまったことで予想もしなかった展開になります。

玲司には大きな秘密がありました。
血を見ると全身が赤い痣に覆われ、血を浴びることで元に戻るという特殊な体質をしていて、赤い痣が出だ醜い姿を見られることを何よりも恐れています。そして人に見られてしまう度に相手を殺している。
バラしちゃうとアレな気もするんですけれどもこれを明かさないとお話の核心に迫れないので書いちゃいますが、自分の醜い姿を見られたこととその正体を知った反動で、玲司は桐生を殺してしまいます。
予期せぬ唐突な展開に何故!? と思わずにいられないところですが、玲司のうちに潜んでいた狂気が桐生の愛情を持っても静まらないものなのだということなんですよね。彼は特異体質の自分を嘆くか弱い存在ではなく、それゆえに人ならぬ獣性を秘めた生き物なのです。
その玲司を、桐生の妻の兄で同僚の刑事である佐野が捕らえて監禁してしまう。
桐生と入れ替わるように玲司をからめ取った佐野は優しい印象だった桐生とはまるで違う、獣性を秘めたかなり危険な男です。
彼は桐生に恋愛感情ではないけれども友情以上の特別な想いを抱いていて、だから決して玲司を許さない。最初に読んだ時は気が付かなかったんですが、再読すると佐野にとって如何に桐生が大切な存在だったのかを思わせるエピソードが散りばめられていることがわかりました。
佐野は怒りのまま玲司を徹底的に陵辱し痛めつけます。

絶対に許し合い分かり合えることのないように見えた玲司と佐野でしたが、実は似た獣性を秘めているという共通点がふたりの心を共鳴させていくようになり、ああつまり玲司は、獣性などはらんでいないために自分を「わかる」ことのなかっただろう桐生ではダメだったんだな、と思いました。その桐生が玲司と佐野をを結び付ける役割を果たしているんですけれども。
そして美しい面を醜悪な仮面で隠した蘭陵王とは逆に、玲司は美しい面の奥に狂気を潜めていると思っていたんですけれども、佐野に監禁され痣の現れた玲司を見ていたら逆かもとも思いました。
玲司と佐野の関係は愛ではないですが、より深いところで理解し合えるという意味ではそれに近いのかもしれません。

そんなお話しなので、エロシーンは桐生と玲司のところは甘いですが全体的に痛くてハードな場面が多いです。特に佐野に監禁されてからは卵入れられたりフィ○ト○ァックされたり凄いです。切れたり出血したり、けっこうではなく本当に痛いのでご注意下さい。
でも圧巻は、玲司が地下劇場の舞台上で不特定多数の客にヤラれてしまう公開プレイ。淫靡な気配濃厚です。

だいぶ前の作品なので桐生の妻やバレエ団のパトロンの姿に時代を感じてしまったりはするものの、その「今よりもちょっと前」のお話しであることが、19世紀のオペラ座じゃあるまいしなバレエ団の売春行為なんて無茶な設定もアリに思わせたり、暗くて妖しい雰囲気を際立たせたりしています。

数ある山藍作品の中でも屈指のハードさですが、「堕天使の島」とか最近のタリオシリーズがお好きなら大丈夫…かな?

「アレキサンドライト」 山藍紫姫子 / ill.小島文美

流れるような黄金の髪と怜悧に煌く緑潭色の瞳を持つ美貌の貴族シュリルは、隣国の軍人、マクシミリアンに捕らえられた。彼は、妹を死に追いやったシュリルに復讐を企んでいたのだ。シュリルは贖罪のため、マクシミリアンにその身を差し出す。想像したこともない屈辱に翻弄され、貶められるシュリルだったが―。憎しみと禁断の愛に彩られた、官能の美を描く衝撃の耽美ロマン。

山藍さんの代表作、久々に再読しました。最初に読んでからもう10年以上が経ちますが、時間が経っても色褪せることのない本当に素晴らしい作品です。
「アレキサンドライト」は1992年に白夜書房刊行されてからも、1995年にコアマガジンから復刊したり、同じく2002年コアマガジン刊の「両性具有の世界」に収録されたりと何度も姿を変えて出ていますが(イラストは全て舞方ミラ)、2006年に角川文庫に加わりより多くの方の手に取りやすくなったのは、この作品の大ファンとしては嬉しい限りです^^

シュリル(受)はエスドリア国の聖将軍の地位にある美貌の青年貴族でしたが、特権階級が民を省みることなく浪費を続けたエスドリア国では革命が起こり国王が追放される事態になってしまい、混乱の中、隣国の謎めいた軍人マクシミリアン(攻)に捕らえられてしまう。
マクシミリアンはシュリルが元で死んでしまったかつての妻の実の兄で、妹の復讐のためにシュリルを陵辱しようとするのですが…。

シュリルには、ずっと隠し続けてきた秘密があります。それは彼が両性具有の躰を持っているということ。
そしてそのために父親から認められず疎まれ続けた過去があり、このことをひた隠すと同時に自分はとても罪深い存在だと思い続けていたんですね。
一見、高慢でプライドが高くて冷淡そうな彼の意外な一面と抱えてきた苦しみの大きさに、一気にシュリルという人間が愛おしくなってしまいました。
マクシミリアンはシュリルを効果的に傷めつけるつもりで陵辱しようとしたものの、そのことを知り複雑な心境になってしまう。といってもしっかり陵辱してしまうんですが;
シュリルは当然マクシミリアンを憎みますが、そんな関係でも続いていくうちにふたりの間には憎しみ以外のものが漂うようになっていくんです。
けれどもふたりともが言葉が足りないというか相手に感情を伝えるのが下手で、そのためにすれ違いや思い違いをくりかえしてしまうのですね。ふたりの、気が付きそうだけど気が付かないことの繰り返しが、じれったくてもどかしくてどうしようもなく切ない。
そんなお互いに惹かれ合うようになったたふたりの間を、革命による混乱の余波と長くシュリルを想ってきた男ラモンが引き離してしまう。

いわゆる当て馬役のラモンは、シュリルより年下の、事あるごとにそれを持ち出してくる典型的な体育会系の男です。
もし彼がマクシミリアンよりも先にシュリルを手にしていたらどうなっていただろうと考えて、いや結果はやっぱりラモンの惨敗だっただろうなと思ってしまいました。
シュリルは許しを必要としていたんだと思います。実の親に殺されかけてしまうほど罪深い存在として生まれてきた自分を、誰かに許してほしいと。
だから、間接的にとはいえ自分がもとで死んだ妻の兄であり、長くシュリルを憎んできたマクシミリアンから許されるということは、ある意味自分が生きていてもいいのだという救いになったんだろうなと思うのです。
シュリルにとってはこの憎しみから許しへというプロセスが不可欠だったわけで、だから最初からシュリルを賞賛し愛でているだけのラモンではダメだっただろうなと。シュリルにとってはラモンの絶賛する己れの美貌も、何の価値もないものでしょうから。
シュリルとの間に暗い因縁のあったマクシミリアンだったからこそ、成り立った恋なのでしょうね。

陵辱から始まるお話なので、濡れ場はかなりハードな面もあります。
拘束されたり道具を使われたりは山藍さんだから当たり前(笑)ですし、途中ラモンを交えての3Pがあったり(しかもマクシミリアンがそそのかすという…)と、もしかしたら受け付けられない人がいるかなと思うシーンもあります。でもそんなに痛い感じではありません。むしろマクシミリアンとのシーンは甘すぎるくらい(笑)。逆に、シュリルがラモンの手に堕ちてしまう後半からの方がいろいろ凄いです(笑)。媚薬使っちゃったり結婚迫ったり(!)、ラモンどんだけシュリルが欲しいんだよと(笑)。
それから変わったプレイとして、受けが攻めに割礼されてしまうシーンがあります(!)。いろんな作品を読んできましたが割礼は後にも先にもこれで見たのみ。さすが山藍さん、描いていないプレイなんてもはやないのではないでしょうか(笑)。
そして両性具有(フタナリというよりこっちの方がしっくりくる作品です)ものですので、普通のBLとはちょっと違う、まさに耽美小説と呼ぶに相応しい感じがします。BLの両性具有ものにありがちな中途半端さや腑に落ちない部分はありません。(余談ですが始めて読んだとき以来、両性具有ものといえばこの作品! の私には最近のフタナリBLはどーにも苦手です;)

それにしてもこれだけエロエロなシーンが登場するのに、そのエロの部分ではなく切ないお話そのものがともて印象深く残ってしまうのが凄い。
終盤の、運命に立ち向かうために自ら動くシュリルの姿には何度読んでも涙が出てきます。
ラストはこの壮大なお話にしてはあっさり終ってしまっている感じがしなくもないですが、これはこれでいいです(笑)。おもいきったマクシミリアンは男前です(笑)。
そしてちゃんとハッピーエンドであることに心の底からシュリル良かったね! と祝福の思いでいっぱい。耽美ものは破滅で終ってこそ美しいとかその方が完成度が上るのにとか、この作品に関しては一切思わなかったです。むしろ甘いハッピーエンドだからこそのカタルシスを味わうことが出来ました。もしこれがバッドエンドだったら、長いこともやもや胸のつっかえが降りない気分になったと思います(笑)。

架空の世界が舞台のお話ですがファンタジー的な特殊設定等はありませんので、ややこしい印象はありません。雰囲気としては革命前後の西欧世界に近いですね。そしてキャラの持ち味などなど些細な部分まで、設定が物語のためにある作りになっていて無駄のない展開で読ませます。ここまで耽美で豪奢なイメージに溢れていながら全くごちゃごちゃしていないので、キャラの名前が横文字なのは苦手〜という方でも読みやすいと思います。

小島さんの美麗なイラストはカバーのみ。あまりに美しいので本文イラストもあればなーと思いつつも、この作品はイラストがないほうがいいのかなとも思いました。文章が色彩豊かなので世界観が見えてきますし、なくても気にならない、むしろ合わないイラストだったりしたらストレスになりそうな気がしました(小島さんなら決してそうはならないでしょうが)。
そしてそういう作品を書いてしまう山藍さんはやっぱり凄い作家さんだな、と改めて思いました。

妖艶な、とか退廃的というのではなく、透明で純粋な宝石の美しさ。間違いなく山藍さんの最高傑作だと思います。
山藍作品の最初の一冊にもオススメです。

「堕天使の島(新装版)」 山藍紫姫子 / ill.小島文美

義父の陰謀に堕ち、絶海の孤島に送られた秋生。そこは表向きは更生施設と呼ばれていたが、実際は少年達を酷使し麻薬の原料を育てていた。高貴な美貌と邪悪なほど淫らな雰囲気を持つロシア系の美少年クリス、手負いの獣のような激しさを秘めた海人。性と血の饗宴が繰り広げられる、逃げ場のない島で出会った孤独な魂。切ないほどに互いを憎みそして愛する、絶望の日々の先にあるものは…。
 
2000年に角川書店からハードカバーで出た「堕天使の島」の新装版です。
主人公含むメインの3人が山藍さんの刊行中の背徳シリーズの最新刊「ネメシス」に登場している関係で、かなり加筆修正されていました。普段あまりそういうのが気にならないでいた私でさえ、気に入っていたシーンやセリフがなかったり、記憶していたものとは違っていたりしたのでさすがに気が付いたほど。

母親とその再婚相手である義父に子供ができたことで義父に邪魔者扱いされた秋生(攻)は、日頃の素行の悪さのために少年院から絶海の孤島にある更生施設に送られてしまう。けれどもそこはただの施設などではなく、更生不可能の烙印を押された少年たち(女の子はいません)を隔離するための島で、職員たちはそこに集められた少年たちを暴力で支配し(何しろライフル持ってます)性的にもいたぶりながら、麻薬の原料となる花を非合法に作らせている。
生きて出ることのできない、まさに地獄の島。
そんな場所に捨てられた、という事実を現実として受け入れられなかった秋生ですが、共に島に入ったキレやすい俊輔と泣いてばかりいる由樹也がそれぞれにバランスを欠いて脱落者の体を表していくのに対して、徐々に生き抜いていく強さを備え始める。
そのきっかけとなったのは、施設にいたロシア系の混血の美貌の青年・クリス(受)。秋生は彼の美しさに惹かれていきますが、元男娼のクリスは施設の所長(ど変態・笑)のお気に入りで、更には彼に私怨があってここまで追ってきたという海人と憎み合いながらも相思相愛な関係にある。
そのクリスと秋生の関係が絡みながら、島での暴力とセックスと狂気じみた営みとそこからの脱出劇が展開していき、それだけでも充分に愉しめる面白さです。
実はクリスには「パーフェクト・キル」と言われるほどの腕を持つ暗殺者としての裏の顔があるんですが、その有り得なさを目の当たりにするにつけ、暴走族の副総長としてこれまで悪いこともしてきたんだろう秋生が年相応の普通の少年に見える。まぁもともと秋生はそんなに凶暴なタイプというわけでもなく、むしろ面倒見のいいくらいの子なんですが、クリスと並ぶと余計に普通に見えてきます。
このふたりがよくわからないけれど惹かれあったのは、お互いがお互いにないものを持っていたからなのかもしれませんね。
 
終盤部分は随分変わっていて、「ネメシス」へと続く伏線も張られていてこれはこれでいいんですが、個人的にはある種の青春譚として読めた旧版の方が好きでした。秋生もクリスも年相応な少年という雰囲気でしたし、旧版の所長とのSMプレイ後の豪雨の中での応酬とか、そんなふたりのやり取りが好きでしたので…。
特にクリスが、暗殺者という裏の顔を更に強調するかのようによりしたたかで計算高い存在に変貌しています。エロシーンでも更なる快楽を得るために相手を絡めとり支配してしまっています。旧版でも充分したたかで一筋縄ではいかない部分がありましたが、でも年相応なやんちゃな感じがあったんですけれど、そういう部分が減ってしまって、何だか哀しいような、複雑な気分です。。
あ、でもラストのたこ焼きのくだりは、修正後のほうが好きです(笑)

エロについては、もう今更言う必要もないかもしれませんが(笑)、クリスは所長どころか他の島の職員とも関係しているし海人という厄介な存在もあるので、秋生が彼とふたりで愛し合えるのは終盤の一回のみ、あとは複数だったり縛られたり鞭打たれたり締め上げられたりリバがあったり(!)と、免疫のない方にはかなりハードです。
にもかかわらずこの作品は、あまり受けが虐げられている感じがしない。それは、山藍作品には珍しく受けが肉体的にも精神的にもしたたかにできているからでしょう。読んでいておかしな安心感がありました(笑)。
そしてこの作品では、エロよりも痛かったりグロテスクだったりする描写の方が、ダメな方多そうな気がします…。

さて、秋生とクリス、そして海人が「ネメシス」に登場するのは、このお話から5年後という設定でした。5年…、その間に彼らに何があったのか、背徳シリーズで読める時がくると思っていていいんでしょうか?(笑)期待してしまいます><

旧版では水上有理さんの麗しいイラストが飾っていましたが、この文庫版では小島文美さんのカバーイラストのみで、本文にイラストはありません。そして耽美な小島文美さんのイラストはちょっと違うかなぁという気がしないでもないです(苦笑)。耽美ではなくてハードでかっこいい、山藍作品には珍しくそんな印象の作品です。