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  • 2014.07.28 Monday
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「アカサギ〜詐欺師と甘い鉄枷〜」 沙野風結子 / ill.小山田あみ

結婚詐欺師の槙圭人のカモは、ある条件を備えたノンケの男だ。普通の男たちが自分によって骨抜きになっていく様は愉快で仕方がない。だが、ある日、槙は弁護士の恩田奏源に捕まってしまう。槙の被害者が示談を依頼したのだ。恩田は他の男とは違って、槙の手管が通用せず、槙の金目の持ち物をすべて押収して去って行った。「色恋の案件など反吐が出る」。そう言い残して…。槙は、腹癒せに恩田を次のカモと決め、さりげなく接近を始めるが―!?

久々の更新になってしまいました。もう7月が終わりかけていることにびっくりです;
時間が経つのが早すぎる…というか、ここ二ヶ月ほどの記憶がまぢでないんですけど(汗)
年度が変わってからこっち、人の入れ替わりがあるわ他部署の仕事をかぶることになるわで残業続き、ここを更新する余裕がまったくないです;
とはいえBLが心のオアシスなのは相変わらずなので(笑)、限られた時間の中でも好き作家さんやレーターさんの作品は読んでいるんですけどね。
ゆとりが持てるようになるのはいつなんだろう…と遠い目;;
そんな中で読んだ沙野さんの新刊がもう凄く良くて、読んでからふた月近くになろうかというのに未だ余韻に浸っています。
沙野さんといえば最近は特殊設定ものが多くてちょっと乗り切れないことが続いてたんですが、これはもう、キャラ、お話の構成、エロ、ひとつひとつの言葉の選び方からイラストまで、どこを取っても非の打ち所のないすてきな一冊でした!

男専門で結婚詐欺を働いていた槙(受)は、被害者のひとりが弁護士事務所に駆け込んだことで弁護士の恩田(攻)に捕まってしまう。
元検事の恩田は感情を持ち合わせていないかのような甲冑男で、「色恋の案件など反吐が出る」と吐き捨てて槙の持ち物を押収、示談金に当てて去りますが、その遣り口に憤りの収まらない槙は恩田を次のカモにしてやろうと接近を試みます。
しかし、罠に嵌めたつもりが見透かされて墓穴を掘る羽目になったりやらせるつもりはなかったのに抱かれてしまったりと、思った以上に恩田は手強い。それでもなんとか一矢報いてやろうと躍起になるうち、槙の、そして恩田の感情が変わっていきます。

男相手に結婚詐欺(アカサギ)を働き表面上は軽薄を装いながらも実は辛い過去を抱えていた槙と、冷血な鉄面皮と見えて実は感情表現の乏しいむっつり男・恩田というキャラ組み合わせがツボでした。
そんなふたりが、お互いに落ちる/落とされるつもりのなかった相手に、無意識にどんどんはまっていく様がとっても伝わってきてすごく良かった。男相手の結婚詐欺師という無茶すぎる設定も、すとんと納得のできる具合に収まっているのがすごいですね。
槙と恩田の両方の視点で描かれていたためでしょうか、BLによくある、いつの間にそこまで想い合ってた?? な疑問や違和感がまったくなかったです。
恩田を何とかカモにしようと躍起になればなるほど墓穴になってしまう槙が可愛かったし、他のカモへの嫉妬から遂には貞操帯まで持ち出してしまう恩田の槙への嵌りっぷりがイイです。
感情など持ち合わせていない冷血人間と見せかけて、実は表に感情を出すのが下手なだけでけっこう暑苦しいタイプだったという(笑)。その落差にギャップ萌えですw

始めは軽薄そうに見えた槙が、実はそうではなかったことが印象的でした。
槙が詐欺を働いている本当の理由が彼の悲しい過去にあったこと、そして彼なりの正義だったのかと思うととても切ない。
読んでいたのがちょうど躑躅が咲いている季節だったこともあり、なんか、もうほんと、躑躅の蛍光ピンクを目にするたび胸がきゅーっとなりました。
また、攻めはバツイチ子持ち設定なんですが、よくある取って付けたような子持ち設定じゃなく恩田と彼の息子との関係がお話に深く関わっていきます。
色んな伏線が回収されていく終盤、これは壊れてしまった父と息子の関係の再生の物語でもあったんだな、と。
恩田は槙に自分が結果として捨ててしまった息子の姿を重ね、槙も恩田に父親を重ねていた、というか求めていたのかな。
ラストの再会のシーンは、イラストも含めあまりにも良すぎて涙してしまいました。

エロは決してハードではない(というか沙野さんにしては大人しめ?笑)ですが、なのになぜかとても濃厚です。
始めのガラス越しプレイや先ほども触れた今回の裏テーマらしい(笑)貞操帯などなど、沙野さんならではのマニアックさもちりばめられていますが、プレイそのものよりもその描かれ方の艶っぽさにまいってしまいました。
あとね、「お前を抱きたくて仕方ない」とか「そうだな。私も落とされた」とか恩田のセリフがなんかいちいちツボで、これは槙ちゃん振り回されちゃうよね、とにやにやw
小山田さんのイラストもアングルがすごくてセクシーでたまらんです!

というわけで、ひっさびさにどはまりな作品でした^^
9月に出るラヴァーズ10周年記念の特大版ラブコレに番外編が収録予定だそうなので、そちらも楽しみにしています♪

「おやすみなさい、また明日」 凪良ゆう / ill.小山田あみ

「俺はもう誰とも恋愛はしない」。仄かに恋情を抱いた男から、衝撃の告白をされた小説家のつぐみ。十年来の恋人に振られ傷ついたつぐみを下宿に置いてくれた朔太郎は、つぐみの作品を大好きだという一番の理解者。なのにどうして…?戸惑うつぐみだが、そこには朔太郎が抱える大きな闇があって!?今日の大切な想い出も、明日覚えているとは限らない…記憶障害の青年と臆病な作家の純愛!!

先日に続きまたまた凪良作品です。
Chara文庫から出た新刊は、記憶障害のある青年とマイナーな小説家のかなり切ないお話でした。

長年一緒に暮らしてきた恋人に突然別れを告げられたマイナー作家のつぐみ(受)は、新しく部屋を借りるのに困っていたところを祖父がアパートを持っているというなんでも屋の青年・朔太郎(攻)と偶然知り合い部屋を借りることになります。
つぐみの小説のファンだという朔太郎は気さくで付き合いやすく、そんな彼に助けられながら一癖あるアパートの住人たちにも馴染んで新しい生活をスタートさせたつぐみ。
初めは元恋人のことや先のことで気が沈みがちだったつぐみでしたが徐々に朔太郎に惹かれるようになりますが、朔太郎から事故の後遺症で記憶障害があるという衝撃の事実と、そのためにもう誰とも恋はしないと告げられてしまう。それでも朔太郎の傍にいたいと願ったつぐみが選んだのは――。

記憶障害という、ヘヴィーだけども最早使い古された感のある題材ですが、記憶障害になる朔太郎ではなく受けのつぐみ視点なためか、ただの可哀想な泣ける話ではなく(いや泣けるんですけど)誰もが抱くことのある普遍的な不安を極端な形で描いたお話という印象を受けました。
つぐみの置かれた状況が極めて不安定で、彼が孤独や先のことで思い悩む姿に同情よりも共感を覚える人は多いのではと思います。
記憶障害ものとしても、BLだから病が元の死別というオチにはならないだろうからありきたりなハッピーエンドだったらイヤだなぁと思っていたんですが、誰かと記憶を共有していくかたちに落ち着かせているのがすごく良かった。
記憶は肉体以上にその人を形作っているかもしれず、その記憶が消えていくということは自分が自分であるということの根幹を揺るがす怖いことだと思います。その恐怖を克服していくふたりの姿がとても印象的でした。
読み終えた直後は実はさほどじゃなかったんですが、これ、後からじわじわきます。

つぐみが単なる売れない作家ではなく、純文学というマイナージャンルを描く作家だったことが良かったです。
純文学ってエンタメ系のように「ああ面白かった」で終わるわけでもなく売れる売れないでは価値を計れない、それこそ必要としない人には何がいいのか解らないジャンルなんじゃないかと思うんですが、だからこそつぐみの小説ではありませんがどんな存在でも「そこにいていい」圧倒的な肯定を与えているのではと思います。
そこが努力ではどうしようもないことで社会から弾かれてしまった朔太郎の心に響いたのだと思えたし、この説得力はつぐみが売れないミステリー作家や恋愛小説家(ヤコ先生の少女漫画の原作になりうるジャンルなのにあえてそうしなかったのが素晴らしい)とかだったら絶対にないですよ。
そして、そんな風に若干典型的なBLから軸足を動かしている作品だったからこそ、あのラストも受け入れられました。

それからつぐみが、かなり難しい状況に置かれているにもかかわらず閉じこもったりせず穏やかながらちゃんと先に進んでいける人だったのも良かった。
最初は十年付き合っていた恋人との別れに参って立ち止まりかけていたものの朔太郎に惹かれ彼の抱える問題の大きさを知ってから変わっていった姿に、これまでの凪良作品の年下攻めものの受けみたいに年下の男の子に手を引いてもらわければ動き出せいないめんどくさいタイプじゃなく、むしろ逆なんだなぁと。
これは、記憶障害という問題を抱えているのが攻めの朔太郎だからというのも大きいかもしれないですね。
というか、攻めの方にこうしたハンデがあるのって凪良作品では初めて読んだかも。そういう意味でもすごく新鮮でした。

こういうお話なのでもしかしたらスルーした方がいいかもですが(汗)、エッチシーンにすごく萌えてしまいました。
つぐみが朔太郎を慰めるつもりで受け入れた最初のシーンの、その時につぐみが自分の気持に気付いてしまうくだりは切ないですし、晴れて一緒になれた時のシーンは互いに求め合っている感じが濃厚でたまらなかったです。
こうしたBLとしての読み応えも外していないところがいいですね。

ラスト、というか本編後のSSは、BLでは賛否両論あると思いますが、記憶障害という難題を乗り越えたふたりのその後をここまで見届けられたたことに私は感謝しました。
「つぐみさんより長生きする」という誓いを守った朔太郎とその側にいたつぐみの生涯は、とても幸せだったのだと実感できて涙がじんわり。
もしかしたら若い時だとこのラストの良さは分からなかったかもと思いもして、これは読んだ人の年齢によって持つ印象が変わるかもしれませんね。今ダメだと思った方でも、もう少したったら逆の想いになるかもしれません。

小山田さんの、いつもよりも抑えた印象のイラストもお話にすごく合っていました。
読んでから気が付きましたが、口絵の一枚目は本編ではなくその後のふたりなんですよね。本編後のふたりの長い時間が、穏やかで優しく幸せなものだったんだなと感じられまたしても涙腺が…。
うーん、こういう読後感が待っているとは思ってもみませんでした。しばらくは浸っていると思います(笑)。

そうそう、作中に登場していたヤコ先生が出て来るお話が他にもあるようなので、そちらも読んでみようと思います。

「蝕みの月」 高原いちか / ill.小山田あみ

画商を営む汐方家の三兄弟―京、三輪、梓馬。三人の関係は四年前、目の病にかかり自暴自棄になった次男の三輪を三男の梓馬が抱いたことで、大きく変わりはじめた。養子で血の繋がらない梓馬だけでなく、二人の関係を知った長男の京までもが、実の兄弟であるにもかかわらず三輪を求めてきたのだ。幼い頃から三輪だけを想ってくれた梓馬のまっすぐな気持ちを嬉しく思いながら、兄に逆らうことはできず身体を開かれる三輪。実の兄からの執着と、義理の弟からの愛情に翻弄される先に待つものは―。

イラスト買いした作品です。初読み作家さんでしたが久々に面白い兄弟3Pものでした!

画商を営む汐月家の次男でキュレーターをしていた三輪(受)は、24才のときに目の病を患い数年後には失明すると宣告され絶望のあまり自殺しようとしますが、そこを義理の弟の梓馬(攻1)に助け出されます。
梓馬は三輪に、ずっと好きだったと告げて自分のことをいらないと思うのなら三輪をもらうと迫り、三輪はそんな梓馬の勢いに流されるように抱かれてしまいますが、義理とはいえ兄弟でこんなことは間違っていると梓馬の想いを受け入れません。
それが原因で梓馬は出奔してしまい、そうなって初めて三輪は自分も梓馬に惹かれていたことに気付いてしまいます。
更に、ふたりの関係に気付いた実兄の京(攻2)が梓馬と寝たのなら自分も三輪を抱いていいはずだとと言い出し三輪を犯し、その後三輪は京によって山中にある別荘に閉じ込められるように囲われ調教される日々を送ることに。
それから4年、全てを諦めていた三輪の前に梓馬が戻り、三輪は梓馬と京の間で翻弄されるようになり…。

兄弟ものでもそうじゃなくても、ここのところ面白いと思える3Pものに中々出会えず実はこのジャンルは合わないんじゃ…と思ったりもしていたんですが(汗)、これはとっても愉しめました! いい3Pもの(笑)!
こうした最後は3人もしくは複数で落ち着くお話って、ここ数年で乱発されて目新しさに欠いてきたこともあるんでしょうが、どうにも3人(複数)で仲良く終わるラストありきで作られているものが多い気がして食傷気味でした。
全く一般的ではない特殊な関係性だからこそ、そうならざるを得ない理由がしっかり描かれていないと納得できず愉しめないんですが、このお話はそのあたりがちゃんと書き込まれていたのでとても良かったです。

末っ子の梓馬が義理の弟だったのがポイントですかね。
遠縁なので全き他人ではないにしろ、三輪と実の兄弟ではないことで彼の三輪に対する想いが迷いのない真っ直ぐなものになっていたこと、そして他所から貰われ居場所のなかった梓馬にとって初めて自分に優しくしてくれた三輪が特別な存在になったことなど、とても自然に感じました。
始めは三輪もそんな一途で甘え癖のある梓馬に完全に傾いていて、自分をいいように扱う兄の京を憎んでいる節さえあり、そんなふたりの間に京がどう入り込むのかが読みどころでした。

京は実の兄弟であるにも関わらず三輪に病的な執着を見せていて、かなり歪んでいます。真っ直ぐ一途な梓馬とは真反対。
けれどもそんな京の三輪への異常な執着の原因が三輪と梓馬が実の兄弟ではないことに関わっていたという事実が明らかになった途端、ただ歪んだ偏愛者にしか思っていなかった京がもう本当に哀れで可愛そうになってしまいました。
家の設定とかご都合主義的なラストの顛末とか、お話そのものにはいろいろ突っ込みどころがあったんですが、終盤近くの京の慟哭が全てを帳消しにしちゃいましたね(笑)。こういうヤンデレ執着攻めは苦手なのに気持ちを持って行かれてしまった。

そんな京の本当の姿に気が付いた三輪も心を動かされて、結局どちらか一方を選べず…な結末は、この3人はこうなるしかないだろうとしか思えなかったです。
ふたりの間で翻弄されているだけに見えた三輪が実は無自覚にしたたかで、そして淫乱だったのがいい感じでした。本当のところは、京と梓馬が三輪に翻弄されていたんじゃないのかな。

因みに3人でのシーンはラストのみ。お約束の二輪挿しもちゃんとあって愉しめますが(笑)、そこに至るまではそれぞれとのシーンがしっかりあって、途中道具を使ったプレイもあったりと色々と濃い目です。
でも兄弟もののドロドロ背徳感はそうでもないかも。私はそういうのが苦手なのでこのくらいがちょうど良かったですが、それを求めて手にされると物足りないかもしれません。

それにしてもイラストがすごーーーくイイです!
カバーイラストがすでにそうなのですが、山中にある曰くつきの古い別荘という、ちょっとクラシカルで淫靡な気配漂う舞台で繰り広げられるお話にとてもマッチしていて素敵でした。

「硝子の囚人 〜淫罪のドッグケージ〜」 本庄咲貴 / ill.小山田あみ

ある理由で、元カノへ賠償金を支払うために、タクシードライバーとして日銭を稼いでいる中津蛍太は、投資会社を経営する朽木鷹介の高級車と接触事故を起こしてしまう。鷹介は、金のない蛍太にとんでもない示談を持ちかけてきた。唐突に蛍太の足元にバラまかれた札束と、煌めく銀色のチョーカー。鷹介は蛍太をペットとして飼ってやると言うのだ。「欲しかったんだろう?金が」。蛍太は怒りに震えつつも、黒い誘惑に抗えず、鷹介の所有の証を首に着けてしまうが―!?

イラスト買いの一冊ですが、これまでも色々とヒドイ攻めの出てくるのを読んできましたけどここまで非道なのは初めてのようなw
そういう意味ではインパクト大なお話でした。

タクシードライバーの蛍太(受)は稼ぎの殆どを交通事故で顔に傷を負った元カノの賠償金の支払いに当て、ぎりぎりの生活をしていますが、勤務中に投資会社の経営者・朽木(攻)の車と接触事故を起こしてしまいます。
朽木は蛍太にストーカー対策に協力してくれるならと示談を持ち掛け、蛍太はそれを受け入れますが、朽木はストーカー相手の前で蛍太を犯すというとんでもない行為に出ます。

…そこまでならわりと見かけるかなという感じですが、その後が酷すぎます。
朽木は蛍太を自分の父親を含む数人の男たちに払い下げ、蛍太は彼らに輪姦される羽目になった上に映像がネットに流れるという最悪の事態になってしまう。
自ら受けを凌辱するならともかく他者にやらせる攻め…、しかもそれをなんとも思っていない攻めって初めてかもです。もうこれはBLで言うところの鬼畜なんて生易しいものではなくて非道そのものですね。
BLの鬼畜攻めって、結局は受けに執着していて愛情の裏返し的な意味で受けにヒドイことを…な感じですが、これは最初は本当に攻めは受けのことをどうとも思っていなかったという;
ある意味斬新ですが、蛍太が気の毒すぎますよ。。
蛍太自身がそれに対して被害者意識を持つことなく一切折れないのが唯一の救いですかね。そのお陰で痛々しさはだいぶ薄らいでいるとは思いますが…。

その後、画像を消させるために再び朽木の元を訪れた蛍太に朽木はチョーカーと大金をばらまいて、雌犬になって自分を満足させたら要求を呑んでやると、また有り得ないことを言い出します。
普通の感性の人間ならそんな要求飲むはずありませんが、蛍太はそれを受けるのです。
人の心らしいものを持っていない朽木の歪みっぷりほどではないにしろ、蛍太も面倒くさい面のある人間でした。
自分に過失があったわけでもないのに事故で怪我を負った元カノに賠償金を払うような、相手に構うことなく自分の善意を押し付けてしまう偽善的なところがあり、なんかちょっと鬱陶しい(笑)。
朽木とのことも、実は背負い込まなくてもいい苦労をまた勝手に背負ってしまっているという、もうなんだかどうしようもない人です。

複雑な生い立ちのせいで人を思いやることのできない朽木が、鬱陶しいほど独善的でお人好しな蛍太に知らず知らずのうちに感化されていく…というのがお話の大まかな流れなんですが、そこに朽木とその父親の確執とか蛍太の弟とかが絡むのがちょっと邪魔。とうかやりすぎている感じがしました。
特に朽木の父親は出過ぎ…。彼に蛍太が犯られる場面が数回あって、バイブ使われるところとかかなりハードなんですけれど、どうせなら朽木本人にやってほしかったですね…。そしたら美味しく頂けた気がします。
そんなわけで、受けが攻めにも攻め以外にもヒドイ目に遭わされるシーン多数ですが、前にもお伝えした通り蛍太が全く折れないのでさほど痛々しさはないです。
…でも苦手な方は避けた方が無難かも。。

ここまで体もプライドも身内との絆もズタズタにされて、それでも一緒にと望まれて嫌ではなかった…って、これはある意味割れ鍋に綴じ蓋というやつでしょうか?(笑)
蛍太に感化されて朽木が人らしい優しさを持つようになってくれますようにと祈るばかりです。
というかもう蛍太が究極のドMにしか見えない…(笑)。

「花嫁飼育」 眉山さくら / ill.小山田あみ

真面目な高校教師・陽生の前に突然現れた、傲慢なマフィアの首領・ジルベルト。会った事もない陽生の亡き父は、実は別のマフィアの首領だった―ジルベルトは全てを支配するため、陽生を拉致し、激しく犯す。あげく「自分の花嫁にする」と言い出し、淫らな教育を始める。嫌なのに…乳首が紅く熟れるほど弄られ、最奥を熱塊でかき回され、蜜悦に溺れていき…。濃密エロス。

週明け早々、7年ぶりに来日した某ヘヴィメタバンドのライブにさらわれてましたーー。もう完全に旦那の趣味です;
私と旦那は音楽の趣味がまったく合わないので間違ってもライブ一緒に行くなんてことしないんですけど、今回ばかりはどーしてもとしつこい上にもうチケット取ったと事後報告され;;
知ってる曲がひとつあるかないかレベルの知識で果たして楽しめるのかと危惧していたものの、還暦前後のひとたちが飛んだり火を吹いたり血を吐いたり(?)している姿は思いのほか楽しかったです(笑)。ステージ寄りのスタンド席だったんですけど、ステージ裏の様子も垣間見えてそこも楽しかった(笑)。ってか紙吹雪、まさか人力だとは思わなかったぜ!
もちろん肝心の音楽も想像以上にかっこよかったですよ(笑)。たまにはこんなのもいいなと思いました。

…なんてことはどうでもいいですね(汗)。
さらわれる少し前にこれを読みました。
別段花嫁ものに興味があるわけではないのですが、小山田さんのイラストの魅力にはやっぱり抗えません(笑)。
マフィアの若きドン×高校教師、久々に王道っぽいお話を読んだような気がします(笑)。

顔も知らない父親の突然の訃報を受け、遺品の受け取りのためにイタリアへ向かうことになった高校教師の陽生(受)。
そこで陽生を待っていた傲慢な若きマフィアのドン・ジルベルド(攻)によって陽生の亡き父がマフィアのドンだったことを知り、彼が負債ごと父の遺産を引き継いだことを告げられます。そして陽生を「自分の花嫁にする」と言い出したジルベルトに無理やり犯されてしまい…。

…という、傲慢な攻めに花嫁にされてしまい〜なお話です。
花嫁といっても、受けが纏うのはカバーイラストの通り(大部分はだけちゃってますが・笑)純白のドレスではなく白無垢。舞台はイタリアなのに〜? と思う方もおられるかもしれませんが、花嫁やら女装ものに興味のない私にとっては、イラストの効果もあって着物の色っぽさが味わえ中々美味しかったです(笑)。
白無垢の他にも極妻みたいな着物姿を披露なんてシーンもあったりで、そういうのがお好きな方は愉しめると思います。
ただ、タイトルにある「飼育」に惹かれて手にすると、ちょっと期待はずれな部分はあるかもしれません。スラッシュなのでエロは多めですが、飼育というのはちょっと違うかな。

受け攻め視点が交互に進むのでどちらの心情も分かり、それゆえにすれ違ってしまっているふたりにもどかしさを覚えます。
これまでの生活とはまるで違う環境に身を置く羽目になった陽生は、それでも本来のまっすぐさを見失わないかなり前向きな性格の持ち主。
ジルベルトに日本で幸せに暮らしている姉の存在を楯に取られる形になったものの、早々に自分は姉の身代りなのだと割り切り、むしろジルベルドが引き継いだ亡き父の事業が上手くいくのを見届けるまでのことだとジルベルトに協力すらするようになるのですから、順応性が高いというか(笑)。
女装をさせられていても性格はかなり男前なのでそこもよかったです。
途中、廊下を雑巾がけする姿にはやりすぎだろうと思ってしまいましたが(笑)。

そんな陽生はジルベルトにとっては陽生の父の組織を完全に支配するためのコマでしかなかったんですが、ジルベルトの中でそれ以上の存在になってしまったのが大きな誤算。
陽生もジルベルトに惹かれている気持ちに気づかないまま、すれ違いラブなのが前半、後半はジルベルドの過去が絡んでひと悶着起こり、結果的にこれがふたりをくっつけることになるのですが、はじめは具体的なシーンが出て来るわけでもないのに必要だったのかなと思っていた陽生の高校教師という設定がここで活かされていて、実はちゃんと意味のあるものだったんだなと。
そして傲慢な攻めには珍しく自分の非を認めているジルベルドがよかったです。
自分でしでかしておきながらこんなはずでは…と悩む攻めっていいなと思うこのころです(笑)。新たな萌えの発見か!?(笑)

ところで、こういうお話は受けが日本人だといろいろと違和感が残ってしまうのが気になるところだったりしますが、…とりあえず、みんな何語でしゃべっているのだろうかと。。
陽生は英語教師だから英語? と思うもやっぱりイタリア語なのかな?? そのあたりがすごく気になるー

「色街淫花」 矢城米花 / ill.小山田あみ

突然の事故で父親を亡くし、多額の負債を相続してしまった柚木千郷。同じく事故で意識不明の母のために、屋敷だけは手放したくないと思うものの、坊ちゃん育ちの大学生ではなす術がない。途方に暮れる千郷の前に現れた男・国東廉は、自分の経営する遊郭「蘭華楼」で働けば、屋敷を守ってくれるという。差し伸べられた手は、救いの手か黒い罠か――? だが、千郷には自分を商品にするしか選択肢はなかった……。初々しい千郷の美貌は話題を呼び、たちまち売れっ妓になるが――!?

矢城さんでは初ですかね、遊郭ものです。
時代物ではなく現代に遊郭が復活したというパラレル設定ですが、花丸BLACKらしいお話で大満足(笑)。
そして小山田さんのイラストのエロさににやにやが止まりません(笑)。特に口絵の緊縛図が悩殺もの! たまりません!!

会社経営者の父親を交通事故で亡くした千郷(受)は、幹部の横領が元で発生した多額の負債を相続することになってしまいます。
同じく事故で意識不明になっている母のためにせめて家だけは残したいと父親と付き合いのあった人たちに援助を求めるも、まだ大学生でお坊ちゃん育ちの千郷を相手にする者はいません。
途方に暮れた千郷の前に、債権者で遊郭経営者の廉(攻)が現れて自分の店で男娼となって働くなら家は残してやると持ちかけ、他に方法のない千郷は男娼―太夫になる道を選びますが。

遊郭ものといってもBLでは結局受けは攻め以外にやられないのが鉄則なお話が多い気がしますが、そこは矢城作品、受けの千郷は太夫(この作品では「花魁」ではなく「太夫」。作家さんの思い入れがあるのでしょうかね?)としてしっかり働いています。
のっけのお披露目公開水揚げショーに始まって、客として登楼したかつての裏切り者の男を拒否してお仕置き、敵に拉致されて輪姦…と、けっこう散々な目に遭ってしまうわけですが、なにしろ千郷と廉とのラブが終盤近くになってやっと訪れるという内容なので、廉以外とのこうしたシーンで遊郭ものっぽい愉しみが味わえるという(笑)。
矢城さんお得意の触手はさすがに登場しませんが(笑)、凌辱たっぷり、縛りや剃毛(方法にびっくりw)プレイもあってエロいです!
廉とのシーンが最後の最後なのも、もしかして一種の焦らしプレイなのかと思ってしまうほど(笑)。
そうした愉しみはもちろん、遊郭ものとして単純に男女のそれをBLに変換しただけでないところも個人的には大きなポイント。
先輩太夫があくまで娼妓としてのプライドから厳しいあたり、僻みや嫉妬で諍いが…のようなそこだけ無駄にドロドロした女の世界を模すようなことをしていなかったのもよかったです。

お坊ちゃん育ちらしく世間知らずでウブな千郷ですが、けっこう腹が据わっているというか、太夫になったのは自分の選んだ道なのだと一切泣き言を言わないのが見ていて気持ちがいいです。健気(攻めにではなく仕事に対して・笑)だけどなかなかの男前ですね。
そんな千郷のキャラのせいか、ハードなシーンもそこまで痛々しい印象ではないです。
案外世慣れた風に見える廉の方が実は純情だったかも(笑)。

父親の元部下で裏切り者の小笠原が千郷の身売りの噂を聞きつけ客として登楼し、父親の会社が傾いたのは内部の裏切りだけではなく後ろで糸を引いていた黒幕の画策らしいことが明らかになってから、少しお話の雰囲気が変わっていきます。
小笠原に嬲られているうちに母親が亡くなってしまう悲劇が起こり千郷は心が壊れてしまうほど追い詰められてしまいますが、復帰してからは見事に変貌、それまでは愚直なまでに身を売ることしか知らなかったのがなかなかしたたかな太夫となって、復讐を遂げるためにと小笠原から有利な情報を聞き出そうとするのです。
最後まで読むと小笠原はちょっと気の毒でしたね。歪んでいたけれどだいぶ前から千郷に執着していたんだなーとか色々と。
憎まれ役ですが、彼がいたから読み手の私も美味しいシーンを拝めたわけで(笑)、なんだか憎みきれません。
まぁ、その向こうにいた黒幕こそがほんとの酷い奴でしたしね。

そんな千郷の太夫奮闘記(?)や復讐譚がメインといってもいいような内容なので、攻めの廉の印象は薄いかもです(笑)。
育ちのいい千郷とは真逆の生い立ちを持ち実力でのし上がった廉は、初めは冷やかし半分で千郷に身売りしろと言ったものの予想に反して千郷がそれを受けてしまったことに戸惑うのですね。
どうしてそこまでするのか、どこまで弱音を吐かずにやるのか、想定外に頑なな千郷の姿にいつの間にか目が離せなくなってしまったという感じです。
そして千郷は最後まで、廉と想いを通じ合わせた後でさえ頑なで、自分が身請けするという廉の申し出を蹴ってまで太夫として勤め上げてしまうという(!)。
むしろ千郷を身売りさせた廉の方が苦悩するというのもすごく新鮮です(笑)。
想いが通じあった後2年間もおあずけというのは、気の毒というかなんというか。

そんな、最初から惹かれていたのにえらい遠回りをしたふたりのお話でした(笑)。

「ブラックジャックの罠」 中原一也 / ill.小山田あみ

表の顔は巨大カジノの凄腕ディーラー、けれどその正体は、敵の懐に潜り込む潜入捜査官―。長年の間、本当の自分を捨て任務に励んでいた警視庁刑事の西沖。その重圧から味覚障害を患っていた西沖だが、そこに現れたのが、カジノでの不審な自殺事件の捜査に来た所轄刑事の鵜飼だ。狩猟者のような天性の嗅覚を持つ男は、西沖が秘密を握ると直感!!西沖に付き纏い、正体を探ろうとするが…!?

ちょっと前に身内が遊びに来ていて、一緒に地元の観光してきました。
観光地に住んでいても中々行かないもんで、ガイドっぽいことを期待されても応えられない不甲斐なさなんですが(笑)、それより何より前に見た時はまだまだちっちゃかった従兄弟の子供が今年でハタチになると聞いて愕然! …私も年を取るわけですね。。ちょい焦りました;
…なんてことはどーでもいいんですが(笑)。
すごーく楽しみにしていた中原さんの新刊、やっと読みました^^
カバーイラストのカジノディーラー姿の受けがセクシーすぎる…!
カジノ特区ができた日本というある意味パラレルな設定で展開する、所轄の刑事×潜入捜査官のスリリングなお話。読み応えたっぷりでした!

潜入捜査官の西沖(受)はカジノディーラーとして捜査対象のカジノに潜入中で、味覚障害になってしまうほどのストレスを抱えながらもカジノの経営者・津川の懐に入りこみ政治家との間にある不正な資金の流れを暴こうとしていますが、協力者だった男が自殺に見せかけて殺されてしまう悲劇が起きてしまい、以来完全に味覚を失っています。
後悔の念にとらわれ不正の実態を暴くことだけを考えるようになってしまった西沖の前に、自殺事件を不審に思う所轄の刑事・鵜飼(攻)が現れ、ディーラーにしては場慣れした西沖に目を着けて何かと絡んでくるようになる。
正体がばれないようにと警戒しながらも、西沖が味覚障害であることに気づいた鵜飼にたびたび食事に誘われるうち、西沖は忘れかけていた誰かを信頼する気持ちや自分自身を取り戻すようになっていきます。
そんな中、ようやく西沖に不正の証拠を握るチャンスが訪れますが…。

主人公が潜入捜査官といういつ正体がばれるか分からない立場にあるだけに、お話全体が張り詰めた感のあるシリアス路線のお話でした。
味方からの最低限のサポート以外は基本ひとりで敵を欺き付け入る隙を窺う、それが2年にも及ぶとなると考えるだけでストレスを覚えそうになるのに、その上犠牲者まで出てしまったとあってはそれは味覚障害にもなるだろうと。
西沖はカジノディーラーとしての仮面を完璧に被り、捜査遂行のためならば男に体を差し出すことも厭わないほどですが、そこまでしてしまうのは正義感からではなく協力者を死なせてしまった自責の念から。
もしも自分に協力していなければ彼は死ぬことはなかったという思いが西沖を追い詰めていて、それに西沖自身が気付いていないのがすごく痛々しいです。

その西沖の前に現れた鵜飼は、西沖の協力者だった男の自殺を怪しむ一匹狼風の所轄の刑事。見た目は無精ヒゲにボサボサ頭で何処か喰えないオヤジという中原作品でよく見かけるタイプなんですが、いつものセクハラオヤジじゃないところが新鮮でした。
何かと西沖に絡んでくるのも下心からではなく味覚障害を治してやりたいという想いからで、そこに懐の深さが窺えて好感が持てます。
そして、それまではどこか捨て身だった西沖が何度も西沖を美味しい店に誘っては豪快に食べる鵜飼の姿に、味覚を取り戻したい=生きる楽しみを取り戻したいと思い始めるところがすごくよかったです。生きることの基本中の基本である食べることを絡めているのが心憎い!
殺しても死なないような(笑)鵜飼の存在が、西沖に自分と関わることで誰かに危険が及ぶのではと臆病になっていたことに気付かせてそれを克服させていくという流れもじわんと心が温まって大好きなのですが、これは鵜飼がセクハラオヤジではないからこそ心に響いた気がします。

捜査遂行上、西沖はターゲットとなる男と寝る状況になってしまいます。このくだりはそんなに詳しく書かれていないとはいえ、西沖と鵜飼がくっつくよりも先のことなので地雷になる方もいらっしゃると思います。
けれども、これが西沖と鵜飼が体を重ねるきっかけになるのは何だか納得でした。
割り切ったつもりが結局割り切れない不快感の残った西沖が男の残した感触を消すために鵜飼を求め、そんな自分を大切にしない西沖に鵜飼は嫉妬を隠せず、実は惹かれあっていたふたりがここで一線を越えてしまう流れはわりと自然に受け入れられたというか。
特に西沖が逼迫した状況に置かれていることもあって、そこまで唐突には思わなかったです。

その後のふたりの照れたようなぎこちないようなやりとりやら、傍目にはコントみたいな「俺の気持ちを〜」云々のくだりとか、決してコメディタッチではないシリアス路線なお話なのに吹き出してしまう可笑しさや微笑ましさがあって、なんだかニヤニヤが止まりません(笑)。
ラストのキスシーンも大好きです^^
内容が内容なので甘々ラブラブな雰囲気はないですが、こうした重たくなりがちな中に温かみを感じさせてくれるのは中原さんならではですね!

ただ、捜査の方のその後の顛末は、途中で津川側の状況を明かしてしまうのなら、もうちょっと西沖と津川の駆け引きめいた場面があってもよかったような。
ラストでの事件の収束もけっこうあっさり予測通りで、も果たして最後に勝つのは…?! みたいなハラハラな展開をもっと読んでみたかったです。

そして最後に、小山田あみさんのイラストが本当に素敵!
シーンをそのまま切り取った一枚一枚が臨場感と高揚感を高めてくれて、お話を更に楽しむことができました^^

「優しい悪魔が同居人」 朝香りく / ill.小山田あみ

貧乏くじを引きまくり、運に見放された人生を歩む宇佐美雪弘(24歳)。勤務会社が倒産するという悲劇的な緊急事態に見舞われヤケ酒したところ、地味で臆病な普段の性格から一変し強気になる酒癖のせいで暴力団関係者と覚しき男・駿河に怪我を負わせてしまう。翌朝、すっかり酔いも醒めて目覚めたのは駿河の部屋で、「悪いと思うなら役に立て」と成り行きで身体を奪われるわ、同居を強いられるわ―最低最悪に踏んだり蹴ったり!?

先日出たスピンオフが面白くて、つられて本編も再読してしまいました。
やっぱりこれ、面白い!

何事にもツイていない宇佐美(受)は、住むところと仕事を失うという不運に見舞われてしまう。やってられないとヤケ酒を飲んでしまうのですが、宇佐美は酔うと普段の臆病でネガティブな性格が真逆に豹変してしまう体質(?)。絡んできたヤクザに気が大きくなったままケンカを売ってしまい、危ないところを偶然にも駿河(攻)という男に助けられます。
翌朝、酔が醒めた宇佐美は駿河の部屋にいて、どう見てもヤクザの関係者にしか思えない容貌の駿河に怯えますが、成り行きで同居することになってしまい…。

ただのネガティブ人間でない宇佐美のキャラが面白いです。
普段はうじうじびくびくしっぱなしなのに、酔うと普段の鬱積を一気に晴らしたように強気に、そして小悪魔に豹変してしまう変化球が実に良い味を出しているというか(笑)。タイトルの「悪魔」はこっちだったのかと驚きです(笑)。
ネガティブ受けが主役のお話って重たくなってしまうこともありますが、その辺のさじ加減の効いたこのお話は何だかんだでコメディティストなので、読んでいて気持ちが沈んだりしないのがいいです。
そして単なるネガティブと言うよりは、後ろ向きすぎるのが一周しておかしな妄想というか思い込みをしてしまう、見ようによってはだいぶフシギな性格なところが更なる可笑しさを誘っています。

そんな宇佐美を助けることになる駿河は、一見ガラの悪い剣呑な感じがするものの実は面倒見のいいやさしい男。
なのに宇佐美が持ち前の激しい思い込みでずーっと勘違いしたままぐるぐるして、終盤近くになってやっと駿河の正体に気が付くという(笑)。
ありえないだろ! と思いそうなところをおかしな暴走をする宇佐美の思考回路なんだから仕方がないと思えてしまうのだから不思議です(笑)。
そんな宇佐美を駿河が「ウサ耳」って呼んでいるんですが、これがぴったりすぎる(笑)。ウサギそのものな宇佐美がとにかく可愛い!

細かいことには全く頓着しない駿河とともに暮らすうちに、宇佐美が怖いと思いながらも駿河に段々惹かれていく様子と、ちょっとずつ前を向くようになっていくのが見どころです。
終始宇佐美視点なので、いつのまに駿河がそこまで宇佐美に惹かれていたのかが見えづらかったのが残念でしたが、
やっと駿河の正体に気付いた宇佐美が駿河から逃げるもあっさり追いつかれて顔を覗きこまれるところなど、とんちんかんに可笑しいふたりのやりとりに何だかほっこりの、とても楽しい作品でした。

小山田さんのカバーイラストが絶妙すぎて好きです。首輪とリードプレイはお話には登場しないんですが、最期まで読むとなるほど納得なアイテムなんですよね(笑)。
そして隅の方にこっそりあの仏像が転がっているのを見つけて吹いてしまったw

<スピンオフ作品>
 ・「ヤクザな子猫は初恋中」

「ヤクザな子猫は初恋中」 朝香りく / ill.小山田あみ

極道一家の三男の木芽は、厳つい父や兄とは似ても似つかぬ母親似の美貌がコンプレックスで、男らしくあろうとつっぱってきた。そんな木芽は獣医の駿河に恋をしていたのだが、このたびあえなく失恋…。傷心で飛び込んだバーで、渡瀬という男に出会う。泥酔して甘えたになった木芽は彼に「お持ち帰り」され、強引ながらも優しく快感に酔わされた。しかし翌朝、正気に戻って愕然! しかも、渡瀬は駿河の従弟で、その後も脅すように木芽に誘いをかけてきて…!?

タイトルやイラストレーターさんでもしかして、と思ったらやっぱり「優しい悪魔が同居人」のスピンオフでした。
スピンオフとは言っても、「優しい悪魔〜」の攻め・駿河の勤める動物病院で飼い猫を見てもらっているヤクザの三男で駿河に片思い中の木芽と駿河の従兄弟で外科医の渡瀬という今回が初登場のふたりのお話ですので、これ一冊でも愉しめます^^
このふたりのお話が3分の2ほどで、残りは前作の宇佐美と駿河のお話「あやしいウサギと同居人」で、こちらも愉しめました!

ヤクザの末っ子の木芽(受)は、厳つい一家の中にあってひとり母親似の容姿をしているために父や兄たちに溺愛されていますがそれをコンプレックスに思っており、男らしくあろうとつっぱっている毎日。
そんな木芽は飼い猫を見てもらっている獣医の駿河に片思いしていて、遂に意を決して思いを伝えようとした矢先、駿河に恋人がいることを知ってあえなく失恋してしまいます。
傷心を抱えて飛び込んだバーでヤケ酒を飲んでいた木芽は、何処か駿河に似た雰囲気を持つ渡瀬(攻)という男と出会いますが、木芽はすっかり泥酔していまい渡瀬にお持ち帰りされ関係を持ってしまう。

今回の木芽も「優しい悪魔〜」の宇佐美と同様、酔うと豹変してしまうタイプです。
普段は舐められてはならじとつっぱっているヤンキーなのに、酔っ払うと途端に舌足らずなにゃんにゃん言葉&甘えたになってしまうという(笑)。普段とのギャップがイイです!
しかもそこに意地っ張りなツンデレ要素も加わって、見れば見るほどほんと可愛いんですよ。このキャラはかなりツボにきました!
そして、よくよく考えたらヤンキー受けは初めてみたような(笑)。絵的にも美味しすぎるんですが(笑)! そういう意味でも新鮮でした。

泥酔した木芽は、普段の男らしくとか甘えたりしないとかの信条がすっかり何処かに行ってしまって(笑)、タガが外れたように渡瀬に甘えまくってしまいます。
でも翌朝にはそんなことすっかり忘れていて、元の調子で渡瀬とやり合うんですが、ここが何だか漫才みたいですごく可笑しかった(笑)。
そして後日、木芽はそれっきりと思っていた渡瀬と偶然再会し更には渡瀬が駿河の従兄弟であることが判明、半分脅すように誘いかける渡瀬とまたしても…なことになり、その後は段々と渡瀬自身が気になっていく、というわりと先の読める展開です。

先ほども書いたように渡瀬と木芽のやりとりがコントでも見ているみたいで笑えて、そこだけでも楽しめましたが、攻めの渡瀬がどういう男なのかちょっと解りづらかったのが惜しいところ。
お話が木芽視点で進むので渡瀬が何を考えていたのかが見えてこないのは仕方がないんですが、もう少し彼が何故そこまで木芽に惹かれたのか具体的なことが描かれていればな〜と思ってしまいました。
あと、木芽が兄と一緒にいるところを見た渡瀬が木芽と全然似ていない兄を新しい男だと勘違いして殴りかかるシーンがあって、これかなり可笑しかったんですけど、その後のフォローも読みたかったですねー。
宇佐美と駿河のお話が入っているため全体の3分の2のページ数内容なので、そのあたりは仕方がないかもしれません。

続く「あやしいウサギと同居人」は、「優しい悪魔〜」のその後の宇佐美と駿河のお話。
普段はうじうじネガティブ人間なのに酔うと小悪魔ウサギ(?)になってしまう宇佐美は、駿河が仕事で家を開けている時に同僚たちと飲んでしまい、起きたら隣に男が…、という最悪な状況に。
どうやら酔って不貞を働いてしまったと思った宇佐美は、これが知れたら駿河に捨てられてしまうと戻ってきた駿河に何としてもバレないようにと頑張りますが、…ぐるぐるして自爆してしまうという(笑)。
思い込みの激しい宇佐美のことですので顛末は想像のとおりでしたが(笑)、このふたりも何だかコントみたいで可笑しかったです。

そして朝香さん恒例のカバー下SS、今回もありました^^
その「かわいい悪魔に要注意」は、駿河と宇佐美、渡瀬と木芽の4人が駿河宅で飲んでいたら酒癖に大変問題のあるふたりの間にアヤシイ気配が…なお話w
私、百合っぽいのはあまり興味ないんですけど、この魔性黒ウサギはやばいですね! ヤツは最強だと思います!(笑)

小山田さんのイラストもすごく素敵です。
色っぽいシーン(多めv)はくらくらで、口絵がないのが本当に残念。。
でも、おまけで滅多に見られそうもないにゃんこプレイ&うさうさプレイが見られたから満足です(笑)。

ウサギとにゃんこ、どちらも可愛くて大好きなので、また彼らのお話を読みたいと思ってしまいました。

 ・「優しい悪魔が同居人」(駿河×宇佐美の本編)

「真夏のクリスマス」 水原とほる / ill.小山田あみ

孤児として育ったキヨとダイスは幼い頃から愛を誓い合い、孤児院を出てからも共に暮らしていた。街の居酒屋で働く二人のところに弟分だったテオも加わり、キヨはとても幸せだった。しかし、ダイスとテオがマフィア相手に事件を起こした代償に、キヨはマフィアの愛人として囚われてしまう。それでもダイスに会いたいという想いだけがキヨの支えだった。気が遠くなるほど時が流れたある日、ダイスがマフィアの次期ボスとしてキヨの前に現れて……。

水原さん、意外にも花丸BLACKではこれが初なのですね。
そしてBLACKなだけにどれだけハードな内容なんだろうかと思っていたら、予想とは違うベクトルでヘヴィーな、そして哀しいお話でした。タイトルの印象と3人いながらも静謐な感じのするカバーイラストからエロ路線ではないのかもと思いはしましたが、BLでここまで読後を引きずられる作品は久しぶり。ちょっとしばらく戻れなさそうなくらいです。
感想だいぶバレていますので、未読の方はご注意ください。

舞台は東欧を思わせる架空の国。
僧院の孤児院で育ったキヨとダイスは、子供の頃に神の前で「死が二人を分かつまで」一緒にいることを誓い合うほどお互いに想い合っている仲。成長して孤児院を出てからも共に暮らしていて、そこに同じ孤児院育ちの弟分テオも加わり貧しいながらも満ち足りた日々を送っていました。
けれども、今よりもいい暮らしを目指そうと隣町の賭場でイカサマをして稼ぎ始めたダイスがマフィアのボス・デステの愛娘サラの目に留まってしまったことが原因で、3人の穏やかな生活は終わりを告げます。
ほどなくしてテオがマフィア相手に問題を起こしてしまい、これがきっかけでキヨはダイスたちから引き離されデステの愛人として囲われることになってしまう。

キヨとダイス、そしてテオの悲劇は、キヨがデステに目を付けられたからではなくその娘のサラがダイスに執着してしまったから引き起こったというべきもの。
BLでここまでインパクト(もちろん悪い意味で)のある女性キャラは久々でした。マフィアのボスにまで上り詰めたデステですらこのひとり娘の策略に利用されているし、女の妄執は怖いですね…。
そしてこの父娘は執着の酷さといい他者の気持ちを知ろうとしない傲慢さといいそれはやっかいです。

デステに囲われている間、キヨはひたすら苦しみ続けます。
デステは相手を痛めつけその顔が苦しみに歪むことに悦びを覚えるようなサディストで、もちろんキヨの気持ちなど考えることもなく自由を奪って実質的に監禁状態に置き弄び続ける。
デステに初めて陵辱された時のシーンでは出血沙汰になっていますので、ダメな方は注意したほうがよさそうです。
かくいう私も、凌辱ものは普通に愉しめるのにこういうのは苦手です。私は陵辱シーンといえどもエロを愉しみたいのであって一方的な暴力を見たいわけではないので、それが痛い系の水原作品を苦手だと思ういちばんの原因かもしれません。
でも今回のキヨが置かれた痛いだけで救いの全くない状況は、それが酷ければ酷いほど哀しみや絶望も深いことが感じられて、必要のない痛さだとは思いませんでした。
その後のダイスに逢うこともかなわずただ流れていくだけの絶望の日々を、キヨが感情が半分死んでいるかのように淡々と送っているのも痛々しくて哀しかったです。
キヨにもうちょっと男らしいところがあったりデステを手玉に取ってしまうくらいのしたたかさがあっても良かったのではと思いますが、そうでないからこそ絶望も深いという感じです。

デステにキヨが囲われて5年、その間にダイスはマフィアとなりついにはデステの後継者と目されるまでになる。そして、サラの婚約者となったダイスとキヨが再会して3人の運命は再び動き出します。
キヨ、ダイス、そしてテオが何よりも望んだものは、マフィアという組織の中で得られる地位や金や権力ではなく、ただ昔のように3人で穏やかに暮らしたいということ。これを理解していなかったためにデステとサラは失敗したわけですが、どれだけ年月が流れても3人が一途に同じ想いでいたことが感動的でした。
お話はキヨ視点で進むので引き離されている間のダイスの思惑が見えず、まぁダイスはサラを利用してりんだろうなと推測はできてもキヨと同様絶望を彷徨うような気分でお話を読んでいましたので、余計ぐ…っときました。
特に、キヨとダイスが漸く真の意味での再会を果たしたシーンはじんわり滲みました。キヨが長い苦しみから漸くここで解放されるんだなと思うと本当に泣けてきましたね。
カバーイラストに3人いることからも推測できる通り3人でのシーンもありますが(ただしテオはここでキヨと一線を越えてません)、明日の命も知れない逃亡の途上での流れは自然で、むしろ3人の絆の深さを改めて感じさせられました。

逆に言えば、キヨとダイスにそうした野心がなかったことが彼らの悲劇につながったとも言えるかもしれません。
ふたりの結末は、タイトルの「真夏のクリスマス」が示唆していると思います。
子供の頃から反対側の世界にあるという真夏にクリスマスが来る国に行ってみたいと願っていたふたり。けれども遠いその国は、ふたりがどんなに願っても行くことのかなわない幻の楽園なんですよね…。
いわゆるバッドエンドに種類はあれど、BLでこういうラストを迎えたお話を読んだのは初めてでした。
バッドエンドは嫌いではありませんが、ここまで壮絶な運命に翻弄された末にやっとささやかな幸せの訪れたふたりだったからこそ、ダイスの死には神(作者)に何故? と問わずにいられませんでした。ふたりには生きて幸せになってほしかった。
その後のキヨが辿る道は悲しいけれど、キヨにとってはダイスのいない世界を生きていくことがもう限界だったのでしょうね。ダイスが迎えに来たというより癒えることのない哀しみの中にあったキヨが見た幻のような気がして、それだとなお哀しいんですが、キヨにとってはこの方が幸せだったのだろうと。
ただ残されたテオがあまりにも可哀想で、でも彼には強く生きてほしいと思いました。

BLでは珍しく辛く救いのないお話でしたが、携帯やらネットやらが出てこないから今よりも少し前のようだけれども現代の事だと言われればそう思えなくもない曖昧な時代の、「北欧」とか「ラテン」とか現実にある地域的な単語が出てきながらもあくまで「この世界の何処かにありそうな架空の場所」が舞台になっているのが、変な生々しさを感じることなくお話に入り込めさせてくれました。
取って付けたように無理に日本人が出てくることのなかったのもよかったですね(笑)。
小山田さんのイラストもイメージにぴったりですごく素敵。
キヨがすごく女性的で、小山田さんイラストでここまで女性的な受けを見たのは初めてかも。それも含めいつもより少し耽美で、ハードなシーンやエロなシーンにもどこしらか切なさが感じられるのがとてもよかったです。

「極道はスーツを秘密に閉じ込める」 中原一也 / ill.小山田あみ

若頭・芦澤と出会い、スーツ一筋だった榎田の人生は大きく変化した。そして、ここへきて芦澤の側近、木崎の謎に満ちた死、その恋人の弁護士、諏訪の軟禁と緊迫した状況が続き…。そんなある日、矢も楯もたまらず諏訪が軟禁されている病院を訪れた榎田は、そこで執拗に芦澤たちをつけ回す刑事、野口と再会する。常軌を逸した野口が次々に仕掛ける罠…絶体絶命の窮地に追い込まれた榎田と芦澤だったが―。

待ってました〜、「極道スーツシリーズ」の最新刊! スピンオフ含めるとこれでもう9作目になるのですね。

カバーイラストの榎田がいつに増してりりしいな〜と思った通りといいますか、前回登場した諏訪と木崎の悲劇のきっかけとなった刑事・野口との決着編ともいうべき今回は、榎田がこれまで以上に男前な活躍ぶりです。
木崎は生死不明、諏訪は精神病院に軟禁状態、そして野口の策略で舎弟たちを拘束された芦澤は自分の意志で動くことがままならないという、これまで榎田を守り助けてくれた男たちが不在の状況下で、榎田はひとり野口に立ち向かうのです。

とにかく野口の狂気スレスレな壊れっぷりがすごかったです。彼のヤバさはヤクザどころじゃなかったです。
これまでのいざこざは、芦澤と敵対しているアウトロー的存在相手でしたが、野口はそうではなくむしろ間逆の存在である刑事だというのが厄介。
しかも、正義感で芦澤たちを捕らえようとしているのでも芦澤たちに恨みがあるのでもなく、成功したヤクザが堕ちていく姿が見たいというかなり歪んだ欲望を満たすためにたまたま芦澤たちの組に目を付けただけだという、ある意味これまででいちばん面倒な相手です。
そんな野口が自分の計画を台無しにした上に警察からも追われるきっかけを作った榎田を許すはずもなく、榎田は、逃亡のついでにその身を海外に売ろうと企んだ野口によって拉致されてしまうというピンチに。
諏訪と木崎との関係がこじれ始めたあたりから、騒動はあっても組内でのことが多かっただけにこういう展開は久々で、かなりハラハラさせられました。

榎田が芦澤を信じきれずにぐるぐるしていた初期の頃とは違って、ここ数作はふたりの信頼関係はすっかり強固になってゆるぎのないものになりましたね。
今回も、芦澤の忠告も聞かず榎田は単独で諏訪に会いに行ったりと無茶をするんですが、何だかんだで芦澤もそれをちゃんと認めているんですよね。
榎田もそれをわかっているからある意味安心して動いているわけですが、このふたりのこうした深い信頼の上で築かれている関係性が好きです。
そしてこのシリーズのもうひとつのお愉しみともいうべきエロもたっぷり、今回も芦澤はいい仕事をしています(笑)。
尿道だけでは飽き足らない芦澤によってついに乳首まで開発されてしまった榎田、…もう普通のテーラーには戻れないですね(笑)。
普段は真面目なのに脱ぐと実は…なギャップは大好きですが、いったいこのままどこまでM化していくのだろう…(笑)。

そんなもはやゆらぎない関係になっている主役カプに関しては、BL的には何の心配もなくなりましたが、一方の諏訪が幸せになれるのか、そこがこれからの最大の焦点ですね。
前作からの木崎の死についての疑惑は、ちゃんと判明しています。
赤いカーネーションに希望を託していて良かった…と思ったものの、でも待ち受けるものはあまり明るくないだろうなとも思ってしまったり、、ちょっと複雑なんですが、何にしても、諏訪が早く幸せになれますようにと祈るばかりです><

それにしても、毎回のこととはいえ芦澤にしろその舎弟たちにしろ、あんたたちは不死身なのかという活躍っぷりですね! だからこそ榎田も無事に戻ってこられるんですけど、ほんと、いつも優秀すぎて感動してしまいます(…笑)。

「極道スーツ」シリーズ
 ・「極道はスーツがお好き」
 ・「極道はスーツを引き裂く」
 ・「極道はスーツに刻印する」
 ・「極道はスーツに契る」
 ・「極道はスーツを愛玩する」
 ・「極道はスーツに二度愛される」
 ・「番犬は悪徳弁護士に狂う」(諏訪と木崎のスピンオフ)
 ・「極道はスーツを愛で貫く」
 ・「極道はスーツを秘密に閉じ込める」

「調教は媚酒の香り」 砂床あい / ill.小山田あみ

主人に捨てられ身よりのなくなったM・潤音は、選ばれた者だけが集うSMサロンで、徹底したSと噂の調教師・宗司一鷹に預けられる。縛られたまま絶頂をむかえ続ける疼痛、全裸で外に出される屈辱、ローターを入れたまま長時間の勉強、仕置きのスパンキング…宗司だけが与えてくれる躾に蕩け始める身体。羞恥と欲望にまみれた潤音は、支配の先に宗司の狂おしい愛情を感じ取る。しかし暴力だけで潤音を束縛した前の主が、二人の関係を壊しに現れ―。

かなりインパクトのあるカバーイラストと調教やらSMやらのキーワードにすごーく期待していた作品、予想通りに面白かったです!
最近、20世紀初頭の娼館が舞台の映画やらバ○イユやらを観たり読んだりしていたところにこの間の山藍さんのマダム・キスミで完全にヘンなスイッチが入ってしまって(汗)、こうしたちょいアブノーマルな作風のお話がマイブーム(笑)。
そんな状態ですので、なおさら愉しめた気がします。高評価の原因はそれが大きいかも(笑)。
BLでは珍しくSMな世界が描かれていますがけっこう甘さもあって、全体的には読みやすいお話でした。

身寄りがなく売り専ボーイとして生きていた潤音(受)は、客であったS気質の男に拾われM奴隷として囲われていましたが、ある時その「ご主人様」が姿を消してしまう。
事業に失敗した主に捨てられたことを理解できないまま、潤音は主から何かあったらここへ行くようにと教えられていたSMサロンを頼りますが、サロンの主Qの采配でサディストとして名高いワインバーの経営者・宗司(攻)に預けられることに。
未だご主人様以外の人間を主と認められない潤音に宗司はお前は虐待されていただけだと告げて、潤音はそれに反発してしまいますが、そんな潤音を待っていたのは容赦のない調教の日々でした。
けれども、これまで痛みや苦しみでしかないSM行為しか知らなかった潤音はプロの調教師である宗司によって本当のSMを教えられ、徐々にその虜となっていきます。
また、潤音が異常な記憶力を持つことを知った宗司は、潤音をただM奴隷として調教するだけではなくワインの知識も教えていく。
本当のSMの快楽に目覚め、また初めてひとりの人間としてまともに扱ってもらったことで心が宗司に傾くほど、潤音はこれが仮初めの関係でしかなくいつかは前と同じように捨てられてしまうのだという怖れに捕らわれてしまう。

SMっぽい雰囲気のBLは時々見かけますが、このお話のように受けも攻めも始めからSM世界の住人だったりセーフワードなどのSM用語が使われているような作品は珍しいと思います。
プレイ的には、スカトロ、スパンキング、ローター、緊縛、ピアスなどいろいろやってますが、そこまで痛い感じではないです。SMといえば鞭ですが宗司は鞭を使わず素手で打つので、それがSM的な痛々しさを和らげている気がしました。
あとは、作品全体に甘さがあるからですかね。
個人的にこういう作風のお話は、ラブそっちのけでハードなプレイがてんこ盛りだとエロいですね〜とは思っても面白いとは思わないことが多いので、甘さや切なさもちゃんとあるこのお話は萌えもたくさんあり愉しめました。
小山田さんのイラストも素晴らしいです! 相乗効果とはこのことですね! 緊縛&ピアッシングのシーン、縄の描き分けまでされている芸の細かさには驚きました。

ほんの子供のころに捨てられてまともな愛情も知らないまま大人になって、前の主人の虐待でしかなかった行為にすらも愛されている証なのだという幻想を抱いていた潤音に、本物のSである宗司が真のSMは互いの深い信頼があってこそ成り立つことを教え、本当のMにしつけ直しながら前の主の呪縛を解いていく過程がお話のメインですが、潤音のそれまでの境遇がかなり切ないです。
そんな潤音をただのM奴隷として調教するのではなく、ちゃんとひとりの人間として認め可能性を伸ばしてやろうとしている宗司の姿に深い愛情を感じました。
宗司の、潤音の前の主に対する嫉妬や憤りの深さは、彼が真のSだからこそなのでしょうね。
そして、長い間他者から虐げられることしかなかったため卑屈になるばかりだった潤音が徐々に成長していく姿には、熱いものがこみ上げて来ました。
でも潤音は宗司の心がどこにあるのか解っていないし、宗司は宗司でそんな潤音をいつまでも前の主を忘れられない頑固者と思ってしまうしで、いつまでたってもすれ違ってしまうふたりにかなりやきもきさせられます。
ふたりの関係が「SとM」であるからこそすれ違ってしまうのかもな〜とも思ったり。
けれどもよくよく考えたら、深い信頼があって初めて成り立つSMの関係は究極の愛の形だと思わされました。

さて、際どいプレイは散々してきたふたりですが、体を繋げるのはお話の最後の最後にやっと、漸く、といった感じです。これは宗司の気持ちが通わないうちにMと体は繋げないという、プロ調教師ゆえのポリシーというかプライドのためですが(笑)、この一回の行為がすごーくエロくて甘くて、このお話が最初に無理やり…とかのありきたりな展開でなくて良かったと心の底から思いました(笑)。
っていうか、読んでいるこっちまで潤音同様宗司の調教にやられてしまった気が(笑)。
本格的なSM作を望むなら、案外甘いところのある宗司に物足りなさを感じるかもしれませんが、私は彼がサディストではあっても性格破綻者ではないところに救いを見た気がします。
潤音が最終的に辿り着いたのが彼の所でよかった。

あとがきによれば、初稿はもっとハードな内容だったそうですが、ストップの掛かったそのシーンは読んでみたかった(笑)。
というか、このあとがきとコミコミスタジオさんのSSペーパーの内容から察するに、元々は本編に身請け絡みでQのサロンでの際どいお披露目シーンがあったんだろうなと。インパクトのあったQが冒頭に出てきたっきりだったことも含め、なくしてしまうのはちょっと惜しい気がしました。
まぁでも、元主登場で一悶着、その後にふたりがくっつくという流れは王道ながらもBLらしくて読みやすい感じではします。
痛いのがダメな方はにはおすすめできませんがそんなBLらしさもしっかり押さえたお話なので、SMと気構えることなく愉しめるお話だと思いました。

小説Chara vol.27

またしてもうっかり積んでしまうところでした;
今回もシリーズもののSSや連載ものはスルー。
そして読んでいないシリーズのSSが多かったためなのか、今回はちょっと読み応えがなかったような。。読み切りも全然合わないのがあったりして、全体としてはハズレ気味だったかなぁ。


□小説

「学生寮で後輩と」 渡海奈穂 / ill.夏乃あゆみ
★★★☆☆
高校の学生寮を舞台に、優等生だけど人との距離のとり方のわからない春菜とそんな彼に懐いた犬っころみたいな後輩・城野の、まるで少女マンガみたいなお話。
BL小説でひっさびさに高校生ものを読んだ気がします。いつの間にやら見かけなくなりましたよね。
しかも学生寮なんてもう青春ですよね、きらきら眩しい! こういうのが久しぶりすぎたせいもあって、凄ーく新鮮でした。
夏乃さんのイラストもぴったりでいい感じ。この方の絵はけっこう好きです^^

「仮面の秘密」 秀香穂里 / ill.小山田あみ
★★★★☆
久々に秀さんヒット! 今号はこれがいちばん面白かったです。
自分の性的嗜好に悩んでいるリーマン・高森(受)が、交流サイトで出会った男・コウ(攻)に誘わるまま彼の主催する仮面イベントに足を踏み入れてコウに溺れていくけれど、実はコウは…。
小山田さんの妖しさ満点のイラスト効果もあって、仮面バンザイ! な内容でした(どんなのだ)。
コウの正体に普通は気がつくだろというヤボな突っ込みは敢えてしないで愉しむお話ですね(笑)。
男から「かわいい」と言われてときめいている高森がかわいすぎてヤバイw
そんな高森ですがただ美人なだけではなく仕事のできる男なので、お仕事ものとしても楽しめるのがまたいいです。続きが読みたいので文庫化希望!

「二つの爪痕」 宮緒葵 / ill.兼守美行
★☆☆☆☆
健やかな受けが姉の婚約者である義兄とその弟に想われて…なお話ですが、…全然合わなかった;
何よりなよっちいだけの受けに魅力をまるで感じません。
そして姉の顛末がなぁ…。時々見かける女子キャラをこういう形で破滅させるやり方が好きじゃない。。そんな風になっちゃう女子ってそんなにいるのかよと思ってしまって醒めるんですよねー。扱いがヒドイからイヤなんじゃなく、リアリティがまるでないからダメというか。
実はこれが初読みの作家さんだったんですが、…評判いいので期待し過ぎたのか、これがまるで合わないだけなのかわかりませんけど、ちょっとがっかり。

「嘘と親友」 水原とほる / ill.駒城ミチヲ
★★★☆☆
高校以来の親友3人のちょっと複雑なお話。でも、水原作品にしては痛くも猟奇的でもない至ってフツーの内容でした。
正弘の死とその疑惑が、何故残ったふたりが体の関係を持ってしまう理由になるのかがわからないんですが、終盤に明らかになる正弘の真実にじわん…と来るお話でした。

「舟遊び」 松岡なつき / ill.彩
読んでいないシリーズなので未読。
…の分際で、表紙を飾っているのに内容がショートすぎやしないかと思ってしまったんですが。アピールしたかったのは小冊子企画の方なの??
そんで、次号も「HARD TIME」で同じようなことになりそうな予感が…。
このまま人気作のショートが目玉になったらちょっと複雑。文庫に再録なんてこともなさそうだし、余計にシリーズものを嫌煙してしまいそうですよ。。

「公爵様の羊飼い 9」 秋月こお / ill.円屋榎英
未読。


□漫画

「史上最悪な出張命令」 山本小鉄子 / 原作:楠田雅紀
★★☆☆☆
小説のほうは未読です。
が、これもしかして攻めは関西弁なんじゃないんですかね?? それが気になって気になって…;

「雲とガラスと恋もよう」 三池ろむこ
★★★☆☆
主人公×スノードーム作家のほんわかしたショート。
これから恋が始まる感じです。冬らしいお話でした。


…というわけで、全体的にいつもより物足りない読後感でした。
そして前号に続いて今回も付録に付いてきたドラマCD、…こういうの聴かない私は扱いに困ってしまう。。最近雑誌にドラマCD付くことが増えた気がしますが、値段上げるのならやめてくれ〜…と思ってしまうのでした。

「探偵見習い、はじめました」 いおかいつき / ill.小山田あみ

顔も知らない父親の突然の訃報―しかも父は探偵だった!?意外な報せを持ってきたのは、亡き父を慕う刑事・石堂。初対面から不遜な石堂に苛立つ祐介だが、そんな折、勤務先の銀行で横領の疑惑がかかってしまう!なぜか祐介以上に冤罪を憤る石堂とともに真犯人を捜す羽目に。「俺がお前を一人前の探偵に仕込んでやる」迷惑なほど強引な石堂に、感謝どころか反発が募るばかりで…。

いおかさん、これまで雑誌で見たことはあっても丸々一冊がっつり読んだのは初めてかも。
本当は、個人的に大好物な攻×攻で有名なリロードシリーズをこれが出るまでには読むつもりで数冊購入していたんですが、…結局積んでしまいました。。
これに限らず、最近は夫のシュミに付き合っていたことに加えて親ほども年の違う職場の先輩から本を借りていたりもして、BL非BL問わず積読がすごいことになってます。。
その積読の山が高くなるのを見るにつけ、カドがたっちゃうのもイヤだし…とついつい借りてしまいがちだけど(だってけっこう気になるタイトルがあるもんですから・笑)断る気概も持たないとなーと思うこの頃です。
っていうか、この先輩(女)から何か面白い本はない〜? と聞かれてとっさにBLしか思いつかない私ってどうなんだろう;ドン引きされるの間違いないなので、さすがに勧められないのがまたツライところなんですけど(笑)。
んな与太話はさて置いて、いおかさんの新刊です。

銀行に勤める祐介(受)の元に、突然顔も知らなかった父親の訃報が届きます。更には亡き父・野間は、なんと探偵事務所を経営していたという驚きの事実まで明らかに。
しかし祐介は、顔も知らなければ確実に父親であるとも言い切れない男のことなど自分には関係がないと取り合いません。すると今度は野間に仕事で世話になっていたという刑事・石堂(攻)がやってきて、半ば強引に探偵事務所まで連れて行かれ、生前の野間を知ってほしいと食い下がってきます。
やっぱり取り合わずにいた祐介でしたが、なんと銀行でまったく身に覚えのない横領の疑惑をかけられてしまい、仕方なく石堂たちに真犯人探しの協力をしてもらう代わりに彼らが望む通り野間のことを知ろうとしますが、ソリの合わない石堂に反発ばかりしてしまい…。

祐介を陥れた真犯人と、祐介の父・野間の過去のふたつを追いながらお話は進んでいきます。
祐介は他人と極力関係を持たずに生きてきたような、ちょっと温かみに欠けるところのある男だったんですが、それが横領犯にされかけたことでこれまでの生き方を考え直すようになり、また石堂たちと関わることでちょっとずつ人らしくなっていく、その過程が見所だと思います。
それにしても祐介、何者かに横領犯に仕立て上がられそうになるという最悪の事態の中で銀行内にひとりの見方も思い当たらず、頼れそうな先がついさっき知り合った刑事と探偵…というのは、ちょっとどうかと思いますよ(苦笑)。
横領犯についてはまぁあっさりわかっちゃう展開ですが、徐々に明らかになる野間のことに関しては、最後はけっこうじーんとさせられました。
特に、祐介が亡くなった母親の元同僚を訪ねるシーンが好きです。
そしてじーんとなったのは読者だけではなく祐介もかな、という、ちょっとだけ何かが動いた感じが良かったです。

…とここまで読んだ方は、肝心のラブはどこに? と思われたでしょう(笑)。
このお話、難点はそこなんですよねー。
ラブはもちろんちゃんとあります。ありますが、なんか急というか取って付けたようなというか…。
ゲイではない石堂が祐介に惹かれた理由がよくわからなかったし、肝心の祐介の気持ちはなんだかまだ発展途上な印象だったし(このあたり、もしかしてシリーズものなのかなと思いました)…。
何より祐介と石堂が最初に関係を持つところが無理矢理すぎる。。
祐介と石堂のキャラは好きなので、余計にふたりの関係も謎解きと同じように徐々に育っていく感じだったら良かったのになーと思わずにいられませんでした。
お話そのものが面白かっただけに、肝心のBLな部分が物足りない…っていうのは惜しいですね。。

というわけで、たぶんシリーズものの予定なんじゃないかな? 次回では富野がもっと登場してくれたら嬉しい。ついでに受けだとなお嬉しい(笑)。

「奪取〜嵌められた潜入者〜」 結城一美 / ill.小山田あみ

優秀な移植外科医の白波瀬裕は、ある理由から、エマーソン再生医療センターにスパイとして潜り込んだ。だが、セキュリティ部長の陣野に睨まれて身動きが取れない。そんななか白波瀬は、白波瀬のDNAを欲しがる研究者・長峰に拘束あれてしまう。実は長峰は、ある「実験体」との異常な行為を愉しむマッドサイエンティストだったのだ。センターで行われる闇の研究…。陣野は、秘密に気づき始めた白波瀬をベッドに括り付け、そんなに情報が欲しいなら探らせてやると言うのだが!?

幾○邦彦好きの夫に付き合って、ここのところ少女革命してました。
地元でリバイバル上映される映画版も成り行きで付き合うことになっちゃって、全く未知の世界だったのを今さら見ているんですが、…いやあ、如何にウチの夫がヲトメ趣味なのかが改めてわかったというか…(笑)。幾○さんは好きですよ!
でも私がはまりまくっているのっていったらベ○セル○やジョ○ョとかですからね。。夫とは嗜好がまるで反対のような気が…; つか、どっちがダンナでどっちがヨメなんだよ。。
そんなわけで、最近ちょっとBLをまともに読めてません(泣)。ここの更新も滞りがちで申し訳ないです;;
こんな時にはエロ度の高めなものを〜と、久々に花丸BLACKです。けっこう愉しめました!

クローン技術による臓器形成術が確立した近未来の日本。
外科医の白羽瀬(受)は、難病を持つ妹の忘れ形見の姪を治してやりたいと願いながら仕事をしていますが、あるときヤクザにはめられて、ある再生医療センターにスパイとして潜入することに。姪の病気を最新の技術で治すことを条件に、期限内にセンターが密かに行っているある最新技術の情報を入手しなくてはならなくなります。
けれども、のっけからセンターのセキュリティ部長の陣野(攻)にスパイ疑惑をかけられて、疑いを晴らすためにセクハラもいいところの屈辱的な目に遭わされてしまいます。
そんな目に遭いながらも何とか無事センターの新メンバーに加われた白羽瀬でしたが、陣野によるセンターのセキュリティは強固で隙がまるでない。
仕方なく白羽瀬は研究者の長峰に近づいて情報を聞き出そうとしますが、逆に罠にはまって、実はマッドサイエンティストだった長峰の研究の実験台にされかけてしまいます。
ピンチに陥った白羽瀬を救ったのは陣野で、その後は体の関係と引き換えに何故か白羽瀬のスパイ行為を黙認するかのような素振りを見せます。
陣野の真意が掴めないことに困惑しながらも、白羽瀬は近付くタイムリミットに向けて情報を探り、やがてセンターが禁忌であるクローン人間を作り出していることを知り…。

再生医療とかクローン技術などが出てくるお話なのでややこしい印象を持つかもしれませんが、決して難しい内容ではないです。むしろそれを上手く美味しく使っているので、愉しめます!(笑)
このお話、受け攻めふたりはわりとノーマルな感じなんですが、脇キャラのマッドサイエンティスト・長峰が実にイイ味を出しています(笑)! こういうキャラはぶっ飛び度が高ければ高いほど清々しくていいですね!
そして、白羽瀬が長峰を利用するつもりが逆に玩具にされてしまう展開は色々と美味しすぎました(笑)。ごちそうさまです!
問題のクローンに関しても、そう持ってきたかな使い方(笑)。
受けに8体のクローンが寄ってたかって…な状況は、なんだか触手プレイっぽいエロさで、もうちょっと見てみたかった…!
このシーンのイラストがまた凄くて、…9人の裸体が絡み合っている図なんて初めて見た気がします(笑)。
…とまぁ、長嶋の実験材料にされたりクローン攻めに遭ったりと散々な白羽瀬ですが、本番行為は攻め以外とはしていませんのでご安心を!

そんな、キワモノもいいところなクローンネタ(そしてマッドサイエンティスト長峰・笑)と、攻めの陣野の目的は何なのかが読みどころですかね。
終盤はちょっとドタバタした感じで、もうちょっとページがあってもよかった気がします。
そんでそのドタバタの中、仕事そっちのけで求め合うふたりについついそんなことしていていいのかと突っ込んでしまいました(笑)。
ラストは収まるところに収まるんだろうなとわかっていながらも、いっそあのまま姿を消してしまうのもアリだったかなと思いました。…そんなラスト、BLでは絶対ムリでしょうけどね…。

それにしても、長峰とクローンの元になった人物との関係や、今はどうしているのかが気になって仕方がない。
そのあたりのお話もぜひ…と思いつつも、長峰サイドではスピンオフは絶対ムリですよね(笑)。凄く読んでみたいんですけど、…やっぱりムリですよね。

真面目な話を求める内容ではありませんが、BLとしては(だいぶ偏ってますが・笑)けっこう愉しめる一冊でした。

「特別診療」 あさひ木葉 / ill.小山田あみ

「あんたは俺のものだ。なあ、先生?」ヤクザの幹部である岩切の愛人であり、新宿の片隅で小さな病院を営む真敏。かつては大学病院の医局で将来を嘱望されていたが、恋人だった男の死を機に闇医者になった。医者でありながら恋人を救えなかったことへの後悔と悲しみは深く、資金援助を受ける代わりに岩切に身を売ったのだ。だが、セックスは贖罪行為のはずなのに、真敏の体は岩切の愛撫に淫らに喘ぎ快感に溺れ―。危うい愛人契約。

週明け発売だと思っていたのに週末には店頭に並んでいてびっくり、お陰でちょっと早めに読めちゃいました、あさひ木葉さんの新刊です。
ところで、ガッシュ文庫装丁が変わりましたね! って、読み終えるまで気が付かなかったんですが;背表紙がシンプルに様変わりしていい感じです^^
そして何より、裏表紙に口絵イラストが載らなくなったのがありがたいです(笑)。今回もそうですが、好きなレーターさんだと何だかんだいっても口絵はやっぱりエロい方が嬉しいのでw唯一のネックと言ってもいい購入時の気まずさがなくなるのは喜ばしいですねー(笑)。

前置きが長くなってしまいましたが、そんなわけで実はほぼイラスト目当ての購入です(笑)。

金銭絡みのトラブルが原因で死んだ恋人を助けてやれなかったことを悔やむ真敏(受)は、贖罪のために将来を嘱望された外科医としての道を捨て、ヤクザの岩切(攻)に愛人になる代わりに資金援助を得て闇医者として生きています。
自責の念の中にありながらも、真敏は社会の底辺で生きる人たちの助けになっている今の在り方に後悔はしていませんが、恋人を失った時にもう二度と恋はしないと決めていたにもかかわらず、ギブアンドテイクの関係と割り切っていた岩切にいつの間にか惹かれ始めていることに気付き戸惑うのですが…。

お話は真敏の視点で進むので、ずーっと延々後悔の念と贖罪することにとらわれ煮え切らないまま岩切と愛人関係を続けている彼の苦悩に付き合わされている感じです。真敏が、もう何回同じことを悩んでる??…と突っ込みたくなるくらいネガティブ思考の持ち主なので、余計にぐだぐだ堂々巡りしているような。。
あさひさんの作品って、時々こういうことがありますよね…。
かつての恋人が追い詰められていことにも気が付かなかった上、医者であるのに彼を助けられなかったことを責める真敏の気持ちがお話の核になっていて、それはよくわかるんですけれども、あまりにもそこに拘りすぎて何も見えなくなっているというか。
終始そんな感じなので、ヤクザものっぽさはあまりなかったです。
途中、闇医者の仕事絡みでトラブルになったりと波乱もあるにはあるんですが、何か盛り上がりに欠けるのは、真敏の感情が一貫して同じところにあるからかもしれません。まぁその波乱が元でちょっとだけ真敏の中で気持ちの変化が起きてくるんですけれど、もういったいどこまで臆病なのさというくらい頑なで、じれったくて仕方がない。
医者としての姿勢など一貫しているところもあるけれど、真敏にはただうじうじ悩んでいるだけではなくてもうちょっと男前なところがほしかったかも。

そんな真敏を受け止める岩切はヤクザだけども強面な感じではなく、飄々としていながらも懐の深いところを見せてとてもいい味出をしていて、このお話はもう彼に救われている感じすらします。こういうキャラはすごく好きです。
真敏は結局は自分を甘やかす岩切の存在に依存しているんですけれど、それすらも受けれいているっていうのが、どこまで懐が深いのかと感心してしまいました。
その岩切がなぜここまで真敏に惹かれたのかという肝心のところがわかりづらかったし、果たしてそこまで真敏に魅力があるのかちょっと疑問だったのが残念ですね。私、美人なだけの受けって全然ツボにこないもんで、余計。。。

最後の岩切視点のショートは、まったくの別視点からお話を見られてすごくよかったです。真敏の死んだ恋人の想いとかそれを知った上での岩切の真敏への眼差しに、すごくじーんとさせられました。
これを読んだら余計に真敏はやく岩切とくっつけーー!…と思わずにはいられませんでした(笑)。

トラブルになったときに真敏が拉致されてあわや…な展開になるもぎりぎりで攻めが登場&救出するのでそう悲惨な感じでもなく(イラスト見てたら最後までやられちゃうのかなと思ってしまいましたが。ちょっと期待した私は鬼ですね!)、エロも標準的だと思います。
なのでイタイのがダメな方には案外大丈夫、でもそういうのを求めて手にすると肩透かしかもしれませんね。イラストだけはさすがというか凄いんですけど!(笑)
小山田さんのイラストはエロ面だけではなくほかももちろんステキです。いややっぱり色っぽいシーンにばかり目が奪われてしまうのですけれど(笑)。口絵とか、たまらないですね! この作品、イラストがエロ度を上げているような(笑)。
それとあとがきの「みんなの姐さん先生」イラストがほのぼの楽しくて好きです。

作中、真敏の同僚のワケアリ医師の笹木とかカジノのディーラー青年とか、なんかありそうなキャラが登場していますし、スピンオフがあるのかな? 今度はもうちょっとダークな内容を読みたいかも。

「棘の檻」 本庄咲貴 / ill.小山田あみ

「今から来い。三人で、しよう」。フリーターの篠田白斗は、警察官である兄の利一に呼ばれ、利一の恋人で職場の部下・玖珂の部屋へ行く。そして、利一に命令されるまま、三人でベッドを共にしてしまう。白斗には利一に逆らえない理由があったのだ。初対面の玖珂は、なぜか怒りと蔑みをぶつけるように激しく白斗を蹂躙した。「墜としてやる。真っ黒になるまで汚れろ」。その日以降、玖珂は、利一のいない時に白斗を無理矢理抱くようになり…!?絡み合う黒い愛情に囚われた白斗の運命は!?―。

完全なイラスト買い(笑)。っていうか小山田さんが3Pもののイラスト担当されるのって初めてじゃないですかね?
なのにタイトル文字がイイところを隠しているという残念さ。折り込み広告に掲載されているタイトルの入っていない状態のものが、受けの乳首とか右の攻めの腹筋とか、これぞ小山田さんって感じでめっちゃイイんですよ…! よりによってタイトル文字がそれを全て隠してしまっているという。デザイナーわかってなさ過ぎ。そこを隠してどうするの。もうちょっと下げるとか小さめにするとかしてくれよ…。
ってなわけで、実は初読み作家さんです。兄弟+兄の恋人の3Pものというよりは、ひとりの男を兄弟が取り合う三角関係ものでした。3Pしっかりありますけどね(笑)。

フリーターの白斗(受)には3つ上の優秀で容姿端麗なキャリア警察の兄・利一がいますが、高校生のときに利一の同級生の男に襲われかけて利一が白斗の身代わりになったという過去があり、以来引け目と秘かな恋心を覚えています。
ある時、白斗は利一にあるマンションに来るよう呼び出されますが、そこで利一と利一の部下で恋人だという男・玖珂(攻)とに犯されてしまう。
利一がずっと優しい兄を装いながらも自分を許していなかった事実に傷付きその本性を知ったことで百の恋も冷めた白斗でしたが、彼にとって利一が大切な兄であることは変わらず、憎むことができません。
ところがそんな白斗の様子が気に喰わない玖珂が「自分のもとに堕してやる」と言い出して、白斗は無理矢玖珂の理性的な玩具にされてしまい…。

何というか、「BL的ありえなさ」に溢れたお話でした(笑)。
冒頭の兄弟を襲う男にしろその男に犯される兄に欲情してしまう主人公にしろ、その後腹いせまぎれに弟をやっちゃう兄にしろ、BL「だから」そうなるのオンパレード。こういうのってひとつくらいならまぁBLだしねと流せるんですが、あんまり続くとすごく気になってしまう;
で、この状況なら白斗は利一を抱きたいと思うのが自然な感じがするんですが、何故かその逆(笑)。よくわからない兄弟ですね。
他にも、呼び出された部屋には明らかにもうひとり誰かいる気配がするのにそれにもかかわらず行為に及ぼうとしたりとか、コックリングをそんな長時間付けていて日常生活に支障はないのか(笑)とか、いろいろ小さいところが引っかかって仕方なかったです。文章もちょっと慣れていない印象。

白斗は初めての体を縛られた上に利一と玖珂にいいように弄ばれ、その後は玖珂に玩具にされローター挿れられるわコックリング付けられるわと散々な目に遭ってしまいます。
白斗が玖珂の気を引き執着されてしまったのは、どんなに酷い目に遭わされても利一を憎もうとしないようなまっすぐさや優しさを持っていたため。育った環境のために荒みきってしまっている玖珂は、自分がとっくに忘れてしまった白斗の真っ白さを汚したかったんですね。
そんな、初めは堕とす堕とされるの関係でしかなかった二人でしたが、共に過ごす時間が長くなるにつれ、お互いにそれ以上の感情を抱くようになってしまいます。
特に白斗が警官としての玖珂を見直すようになったあたりからふたりの距離がぐっと近付いて、もっと酷いことになるのかと思いきや意外と甘い感じです。
でも、利一の恋人である玖珂と深い関係になることは白斗にはどうしてもできず、自分の恋心を認められない…というのがなかなか切なくてよかったです。ベタなんですが、私こういうシチュけっこう好きみたい(笑)。
後半、最初はヤなヤツだった玖珂がすべてをさらけ出して白斗を求めるところもじーんときて、だからこそその後3Pになだれ込むのはちょっと違う気がしました。それで元通りにっていうのにもムリがあったような。。

っていうかこのお話、3Pシーンなしの純粋な三角関係だった方が面白かったかも。
兄弟もので3Pという美味しいとこ取りしたつもりが結果的に焦点がぼやけてしまって、いろいろ残念ですねー。白斗と玖珂のどこかじれったい関係がけっこう好きなだけに余計に。。
まぁ、利一はとんでもない淫乱で、3Pもただの3Pではなく悦んで挟まれちゃったりしていますから、そういうのがお好きな方には美味しいのかも(でも白斗×利一のシチュはないです)。彼の歪みっぷりがあまりにすさまじくて、ちょっと優秀なキャリア警官には見えないんですが(笑)。彼が働いているシーンは出てこないから仕方ないですかね。
これ、出来る兄に引け目を覚えている弟のお話であると同時に、実は同じように弟にコンプレックスを抱く兄のお話でもあったのかな。
当て馬状態で終わってしまった利一にも、いつかいい相手が現れますように。

「堕楽の島 〜狂犬と野獣〜」 沙野風結子 / ill.小山田あみ

「あんたを信じられない」テロに巻き込まれて負傷した靫真通(ゆぎまさみち)を陵辱し、そう言葉を残して消息を絶った峯上周(ほうじょうあまね)。峯上は暴力団藜(あかざ)組の若き幹部で、公安警察官・靫の協力者であり、最高のパートナー…のはずだった。靫は焦燥感と失意のなかで、マークしているテロ組織に峯上がいることを突き止める。だが、峯上はテロリスト・櫟(いちい)に取り込まれていて、靫の存在すらどうでもいい様子だった。「愛を失うのは苦しいね?」破壊されたふたりの絆は取り戻せるのか!? 野獣と狂犬の共闘、その最終決戦の行方は――!?

待ってました! 狂犬と野獣シリーズ三作目〜!  そして完結編です。
靫と峯上ふたりの出会い編の一作目「タンデム」、ふたりに漸くラブモードが入った二作目「落園の鎖」、そして今回でふたりはもはや恋愛を超えた絆を結ぶに至っています。

ソイルロード事件から2年後。
靫は峯上との関係を深め、お互いに固い信頼を築いていますが、仕事の方では頭を抱えています。
靫は「シューニャの集い」という過激な思想団体を監視中でそに礎苑教の気配を感じますが、いくら捜査しても決定的な繋がりが見えてこない。
そんな中、一連の出来事が藜組には関係ないにもかかわらず靫のために情報収集していた峯上の様子がある時期からおかしくなり、靫をむりやり犯した後に謎の失踪を遂げてしまう。
失踪前に峯上の残した言葉を手掛かりに、靫は「シューニャの集い」を再び洗い漸く礎苑教と櫟との繋がりを突き止めます。そして峯上が彼らの手に堕ちたことを知り、靫は峯上を絶対にを取り戻すと単身で櫟のもとに飛び込みますが…。

今回、櫟に囚われてしまうのは峯上です。
これまでずっと靫視点で進んできたお話でしたが、今回は峯上視点が挟まれていて今までちょっと見えてこなかった彼の本音が見えてきます。すっかり靫にべた惚れなんだなとか意外にかわいい部分がわかったりしますが(笑)、かつて家族を喪ってひとりになった経験のある彼は、自分の大切な相手がまたいなくなることに大きな不安を覚えていたこともわかります。
峯上にとって靫はすでに家族のようなかけがえのない存在になっているのですが、靫は職業が職業なだけに命にかかわる危険に晒されることがあるんですね。おまけに基本がスタンドプレーな男だから、峯上を頼ることなく突っ走るわで晒される危険もちょっと半端なものではない。前回もそうでしたが、今回も捜査の途中で負傷してしまっています。
その靫が、家族のように自分の前から消えてしまうのではないかと峯上は不安で仕方がない。
峯上唯一のウィークポイントと言っていいそこを櫟が巧みに突いてきて、峯上はその手に堕ちてしまうのです。
はじめ、峯上は櫟の罠に掛かった振りをしているだけかもと思っていたんですが、徐々にこれはヤバイのでは…な展開になってしまいかなりハラハラしました。
櫟の使う「すくう」という音が言葉に変換されるとき、それが必ずしも「救う」ではないというのが、かなりの恐怖です。峯上ほどの男が巣食われてしまうのですからね…。

一方の靫は、峯上が姿を消したことで彼がこれまでどれほど自分に尽くしてくれていたのかに気が付きます。そしてそれに対して、自分は何も返していなかったと。
そしてかつての峯上の立場に立たされたことで「自分が体験することで、初めて他人の苦しみを理解する」という櫟の言葉のままに、靫はこれまで峯上がどんな思いでいたのを身を持って知ることになります。
そこで靫は漸く信頼している彼を頼ることは決して弱さを晒すことではないということに気付いて、彼と本当の意味での信頼関係を築こうとするのですが、これが転機になるのがきゅーっと切なくてすごく良かったです。

これまでは峯上のリズムが靫を助けてきましたけれど、今回は靫のリズムが峯上を取り戻します。攻めに守られてばかりの受けとは違う、男としてのスペックが高い靫がたまらないですね…!
そしてリズムといえば、恒例の複数シーン(笑)。
今回ももちろんありましたが、これまでのように靫は指をくわえて見ているだけではなくしっかり挟まれちゃってます(!)。でも相手を自分の「リズム」に染め上げていくというSっ気たっぷりな攻めっぷりを見せてくれるという。
このお話の重要なキーであるリズムには、もの凄く生々しいエロさを感じてしまいます。現実には有り得ないことなんですけれど、上手いこと使ってますよね。
このサンドイッチシーンの他、もうひとつ靫が三人目の手で…なシーンがありますが、そこでも受けらしく相手のなすがままになっていないのが男前! って感じでおいしかったです(笑)。で、その後は気まずさのまるでない様子で何事もなかったように顔を合わせていたりレクチャーしていたり(笑)。惚れ惚れしますよ(笑)。
因みに、挿入自体は峯上以外とはしてないので、ご安心(?)ください(笑)。

この他、前回までよりも関係が近くなったためなのか今回はふたりのやりとりが可愛かったです。甘えたサンとか「ゴツロリ」とか(笑)、口絵の並んで凭れかかているところとか。あと何気に峯上が「照れるな」って言うところが好きだっりします(笑)。このふたり、実はけっこう甘々なのかもと思ったり(笑)。
そして何より、ラストのHシーンと深まる絆がたまりません。このふたり、どこまでも好みすぎる!
それにしても、櫟は危険で手強い相手だったけれども、ちょっとかわいそうでしたね。どうにも憎みきれません。沙野さんもあとがきで言っているように、槙野の想いが彼を救ってくれたらいいなと思いました。

シリーズ通してものすごく面白いお話でした。男前な靫と意外と可愛いところのある峯上ふたりがものすごく好みなこともあるんですが、ストーリーそのものも魅力的なんですよね。
靫が直面する問題は、そのまま現実社会が抱えているものですが、BLに限らずエンタメ系の作品で社会派っぽい部分があるものって書き手の持論に押し付けがましさを感じて辟易することが多い中、この作品にはそういったものを感じることがありませんでした。あくまでお話のモチーフとして使っているためだと思いますが、だからといって軽さを微塵も感じさせないのは沙野さんの巧さだと思います。
それから、小山田さんの渾身のイラストもシリーズを盛り上げていたと思います。受けもしっかり男だし、複数のシーンの迫力と言ったらもう…! この話のイラストが小山田さんで本当によかった。
そんな、BLの中ではいちばん好きと言ってもいいかもしれないくらいはまった作品なだけに、これをもって完結というのは惜しすぎます。 櫟のその後とか今回登場した忠犬とか、まだまだお話は広がりそうな気配がするだけに余計に。。
何よりチワックス宮木と光のあれからが気になって仕方がない! スピンオフ出ないかなーと期待せずにはいられなかったり。
そんな、最後の最後まで面白くてたまらないシリーズでした。

「狂犬と野獣」シリーズ
 ・「タンデム 〜狂犬と野獣〜」
 ・「落園の鎖 〜狂犬と野獣〜」
 ・「堕楽の島 〜狂犬と野獣〜」
 ・ラブコレ 6th anniversary(番外編「黒い傘」収録)

「僕に愛を語るな」 結城瑛朱 / ill.小山田あみ

西野と加納は元恋人同士だが、今はお友達だ。真面目な性格の西野は昔も今も、恋愛を軽く楽しむ加納に振り回されてばかり。平静を装っているが、西野は過去に捕らわれたまま、今の関係を割り切ることができないでいた。そんなある日、加納から今の恋人について相談された西野は、ささくれだった感情を抑えられず、試すようなことを口にしてしまう。「あんたと別れた後…おれ、誰ともしてないよ」この一言から二人の関係が歪み始めて…。一生に一度の恋をしたとき、人は本当の苦しみを知る―。

完全なイラスト買いの一冊で初読みの作家さんでしたが、読み応えありました。
著者さんのサイトで発表されていた受け攻めそれぞれの同時系列視点で描かれた「僕に愛を語るな」にその後の「After」を収録して発表された同人誌を加筆修正、書き下ろし「笑って云えますように」を加えた二段組のボリューム。
12年前に付き合い始め10年前に別れて5年前に再会、それからは友人として付き合い続けているふたりの男のお話です。

西野(受)と加納(攻)は10年前に別れた元恋人同士で、再会してからは友人として付き合っている間柄。
生真面目な西野は実は今でも加納を好きなのですが、奔放な加納は恋人を取っ替え引っ替えしては事あるごとに西野に恋の相談をしてくる始末。
そんな加納に堪えられなくなった西野が「あんたと別れてから誰ともしてない」と告げてしまい、それを機にふたりはまた関係を持ってしまう。
けれども、その後ふたりは再び恋人同士になるどころかその関係は更にもつれてしまう。

何か大きな事件が起こるでもなくドラマディックな展開が待っているわけでもない、延々とふたりが先に進まない関係をぐるぐる悩んでいるだけ。簡単に言ってしまえばただそれだけのお話です。
終始二人の会話が続き、それが少々芝居がかって見えることもあったりして、全体的にちょっと二人舞台っぽい感じがします。
またこの作家さんは独特の漢字遣いをされていて、それが個性的といえば個性的なんですがそこには別に文学的な意味や含みは感じられず…ただ読みにくい印象になってしまってます。。

西野が加納に想いを告げなかったのは、かつてのように奔放で気ままな加納にまた振り回されたくはないから。
かつての西野は、自分にはない強さと魅力を持つ加納という人間をどうしようもなく好きで、けれども本来が自由人である彼を自分のようなつまらない人間が独占してしまっていいのかと悩み、加納を自由にするために別れている。
そして運の悪いことに、加納に出会った時の西野はまだ19歳で彼とが何もかも初めてだったんですね。加納との恋があまりにも大きすぎて、別れてから10年がたった今でも加納への想いに囚われているのです。
対する加納は、一見とんでもない遊び人のロクデナシですが、実は実の母親に殺されかけたというとんでもなくヘヴィな過去を持っている。そんな不幸な生い立ちにもかかわらず、加納は自分の腕だけで美容師として世界的にもそれなりに認められるまでに登りつめるほどの強靭さがあって、西野はそこに惹かれたんですね。
けれども実は誰かひとりを愛することから逃げてきたような弱さや脆さもあって、それが加納が西野を傷付けて別れさせるまでにしてしまう。かつての加納は西野を愛しながらも彼ひとりに囚われたくはなかったのです。
…ややこしいふたりです。

けれども年の功なのか、加納は西野が別れてから誰とも寝ていないほど自分を思い続けていた事実を知ったことで、10年前には逃げ出した西野という存在を今度はちゃんと受け止めようとします。
なのに西野がものすごく頑なで全然加納を受け入れようとはせず、普通ならそこでもうくっつくだろというところでもくっつかないという(笑)。
まぁ元を辿れば昔散々西野に酷いことをしてきた加納が原因なのだから、加納にとっては身から出た錆なのですが。
東京で出会い別れたふたりが、お互いに「会えるかもしれない」という思いから偶然同じだった地元に戻っている時点で彼らは一緒になる運命にあったと思うのですが、再会した時ではまだ早かったのですかね。そこから更に5年という時間が必要だったという。にしてもトータルで12年って長すぎやしないか;
西野の病みっぷりとかつての加納の仕打ちの酷さが伺えるというものです。

西野の途方も無いネガティブ思考に付き合わされそれを打開しようとする加納の説得に付き合わされる、気が付いたらそんな感じになっていました。
人を好きになること誰かと共に生きていくことを美しい夢物語のようには決して描かないこうしたお話は好きなんですけれども、ノベルズで二段組のボリュームで延々やられてしまうと、さすがに途中で疲れてしまいました。
でも、ラストのふたりの関係は二人の間だけで完結するものではなくその先に広がる世間とも繋がっていくものなのだという着地がすごく良い。そこに辿りつけたことで、この二人舞台みたいな世界から彼らは降りてこられたのかな。

萌えるとかそういうのとは違うんだけれども、読後は温かい気持ちになれた作品でした。
というか、萌えは小山田あみさんのイラストで補完したという感じ(笑)。インパクトのあるカバーイラストのみならず、本文イラストも素晴らしく素敵でした。
ああでも、加納が美容師の「素材として理想的」な西野を他のスタイリストの目に触れさせたくなかったというところは、なかなか独占欲丸出しな感じがして可愛いかったかも(笑)。

どうでもいいんですけれど、加納の店の雰囲気が、床がフローリングだとか椅子が固定式じゃなくて一人掛けのソファだとか私が通っている美容室に似ていていちいち気になってしまった(笑)。通っているところしかよく知らないんですけれど、最近の美容室ってこんな感じなんですかね?
それから、お話の中で出てくるピアニスト、大ファンなので名前が出てきたきはちょっとテンションが上がってしまいました(笑)。

余談。
ちょっと前にネット購入したBL本がポストに引っかかって、取りに行った旦那に痛めつけられたというトホホな話をしましたが、あれはこの作品のことです(泣)。よりにもよって、いちばん好きなレーターさんである小山田さんのイラスト本(しかも白い)を…!
…とまぁ、未だに思い出すと怒りで腸煮えくり返りそう(笑)なんですが、ドルチェじゃないですけれどもなぜかこの出版社のノベルズ、しかも小山田さんイラスト作品は、我が家では悲惨な目に遭うことが多いです…(涙)。
外出時にやっぱり旦那に積んでたBL本の雪崩を起こされて、一冊だけ角が見事に曲がってしまい(しれっと元に戻して何事もなかった風を装われたのがまた腹の立つ!)、それに懲りて雪崩を起こした本一式本棚に避難させたら、今度はものの一週間で別の一冊が虫に喰われ…(ウチのマンションは高温多湿です…)。
そんな悲惨な思い出のあるムービックのルナノベルズとドルチェノベルズも、今月で休刊だそうです。
派手ではないけれどもしっかり読ませる作品が多かったレーベルでしたので、大好きだっただけに残念です。
特にルナは、私がちょうどBLを読み始めた時期に創刊されたこともあって個人的に思い入れがありました。
やはり不景気なんでしょうかね。
好きだったレーベルがなくなってしまうのは、本当に切なく残念だと思わざるを得ません。

「極道はスーツを愛で貫く」 中原一也 / ill.小山田あみ

今日も仕立に心血を注ぐ榎田。そして、そんな榎田を淫靡な世界へと誘う芦澤。一見平穏な見える日々。だが、一人の中年刑事が芦澤の右腕、木崎と弁護士、諏訪との関係、さらに木崎の組への裏切り行為に気づいたことで、破滅へのカウントダウンが始まる。諏訪が組に捕らわれ、今度はその人質交換として木崎が榎田と組長の孫娘・優花を攫う。一方で木崎の始末を命じられる芦澤。八方塞がりの闇の中、一発の銃声が…。

待ちに待った「極道スーツシリーズ」第7弾! 今月は中原さんの待ちに待った作品が続けて読めて嬉しい限りです!
このシリーズもスピンオフを含めるともう8作目ですが、途中マンネリ化していた時期があったりしつつも諏訪と木崎の関係が複雑化したあたりからすっかり目が離せなくなってきました。
今回は、その諏訪と木崎の顛末が深く関わってくるお話。覚悟はしていましたが、かなり痛くて辛い展開になっていました。

諏訪と木崎、そして芦澤に不穏な事態が起きていることを知らない榎田は、いつも通りスーツ作りに勤しみ芦澤によって淫らな快楽を与えられる日々を送っています。
そこに野口という刑事が現れて、榎田の平和な日々が一変します。
芦澤たちを嗅ぎ回っているという野口は、榎田と芦澤の関係はもちろん、どこで聞きつけたのか諏訪と木崎の関係や木崎の犯した殺人にも気付いている。
そして榎田の反応で諏訪と木崎の関係に確信を持った野口がそれを桐野組長にタレんだことで、諏訪は組に捕らえられ木崎は逃亡、芦澤たちに追われる身となってしまう。
カタギの榎田は極道のルールにどうしても納得できず、何とかしてふたりを助け出したいと思うのですが、行方をくらませていた木崎は組長の孫娘・優花と榎田を人質交換として拐うという手に出てしまい…。

木崎が舎弟を殺してしまったあたりから安直なハッピーエンドにならないことは覚悟していましたが、ちょっともう、色々と哀しすぎます。
榎田のふたりに幸せになってほしいという願い。
ふたりを始末する立場に立たされている芦澤の苦しみ。
そして諏訪と木崎の行き場のない恋の顛末。
4人それぞれのことを考えては胸が苦しくなってしまいました。

それでも、あとがきでもおっしゃられているように読者の期待を裏切るかたちになってしまったけれども大事な作品だからこそ自分の温めてきた内容で勝負したかった、という著者さんの想いには拍手です。
こうしたシリーズものは長くなればなるほどファンの期待や要望にお応えして…なサービス的な展開に陥りがちだと思います。気が付いたら登場人物総ホモ化とか、そのいい例ですね。
それはそれで楽しくていいんですけれども、長く読み続けて愛着もあるシリーズものにこそ、作家さんには読者に媚びない面白さを追求してほしい。
このシリーズはそれが見事に描かれていると思いました。
私はこのシリーズでは諏訪がいちばんのお気に入りなので彼には何としても幸せになってほしいと思っていますが、ここまでややこしくなってしまったふたりがやすやすとハッピーエンドを迎えたりしたら、逆に嘘臭くてイヤですよ。
けれども、木崎が本当に死んでしまったのかははっきりしないし、最後の諏訪視点のSSのラストでは希望が残っています。
今後どうなるのか、まだまだ目が離せないです…!

野口は中々の曲者でしたねー。彼はこのまま芦澤のたちを諦めるとは思えないし、次回以降も手を煩わせる存在として登場しそうです。
それから、優花の変貌もちょっと気になります。彼女もこの先また関わってきそうな。。この事件で極道に目覚めてしまったりして。それはそれで見てみたいような(笑)。

お約束の尿道プレイや今回はピアッシング(合ってる??)での乳首攻めなど冒頭のエロなシーンもばっちり大満足でしたが、中盤以降の榎田と芦澤の関係というか絆が更に深まっていくのを感じさせられるベッドシーンが切なさまでにじみ出ていてとてもよかったです。いつになく積極的な榎田がとてもエロいのがまたいい(笑)。
ここでもそうでしたが、今回は榎田の意外な強さと芦澤が初めて見せた気弱な姿が印象に残りました。

あ、あとピアッシングプレイも充分イタイですが、今回はそれ以上に衝撃の指詰めシーンがあります。これもう榎田が刺青彫られちゃった時以来の衝撃ですね。苦手な方はどうぞご注意下さい!!
誰が誰のとは言いませんけど、迫真の瞬間がちょうどベージの変わり目だったりしてかなりまさかと思いました。あれは偶然? それともまさか計算? 後者だったら凄すぎます。
BLでここまでやっちゃうというだけでもこの作品は貴重かも。

それにしても、ラストのイラストには泣かされた…。

「極道スーツ」シリーズ
 ・「極道はスーツがお好き」
 ・「極道はスーツを引き裂く」
 ・「極道はスーツに刻印する」
 ・「極道はスーツに契る」
 ・「極道はスーツを愛玩する」
 ・「極道はスーツに二度愛される」
 ・「番犬は悪徳弁護士に狂う」(諏訪と木崎のスピンオフ)
 ・「極道はスーツを愛で貫く」
 ・「極道はスーツを秘密に閉じ込める」

「友人と寝てはいけない」 鳩村衣杏 / ill.小山田あみ

恋愛なんてあり得ない、昔からの友人だから――共に社長子息で、抱かれるより抱く方が好きなバイ。共通点の多い美馬(みま)と鮫島(さめじま)は、高校時代から二十年近く、“一緒に酒を飲んでも旅行はしない”ドライな友人関係を続けてきた。けれど、経営が傾いた美馬の実家を鮫島が助けたことで関係が一変! 「礼の代わりにセックスしてみる?」鮫島の冗談を引き金に、友人の境界線を踏み越えてしまい…!?

攻め×攻めという個人的に大好きな内容のお話^^半分はイラスト買いなんですけれど(笑)、前のリバものも面白かったので期待して読みました。

美馬(受)と鮫島(攻)は高校以来の友人同士の32歳。見た目もタイプもまるで違うのに、育った環境や境遇が近いためなのか周囲からはよく似ていると評されています。更にバイで男相手にはタチという性的嗜好まで共通していて、お互いを認め合うような対等な関係を築いている。
けれども、美馬の実家が経営している会社が傾き鮫島から助けを得たことでふたりの関係が変わり始めます。
それは鮫島が礼の代わりに軽いノリで「セックスしようぜ」と言い出したのが発端なのですが、もともとお互いを性的に意識したこともなかったのに鮫島の思い付きに美馬がおかしな意地を張りだして引っ込みがつかなくなり、気が付いたら「挿入なし」のセフレもどきになってしまう。
鮫島が美馬を誘ったのはもしかしてもしかして前から美馬に気があったからなのでは…とBLではありがちなことを思ったのですが、そんなことはカケラもなかったという(笑)。徹頭徹尾興味本位でしかなかったようで、これはなかなか珍しいですね。
このお話は終始こんな感じです。

美馬は支配的な父親とそれに隷属することしかしない母親の関係に辟易しながら育ったために、相手をコントロールしたいという関係になりがちな恋愛を苦手にしていて、これまで特定の恋人を作らずにセフレと躰の関係だけを結ぶという極めてドライなことしかしてきていません。遊び人ではない、ある意味生真面目すぎて臆病な面があるわけですが、鮫島という想定外の相手と深く関わってしまったことで初めて恋を覚えるのです。
一方の鮫島は時に無神経と思えるほど自分に素直に生きていて、美馬に対しても挿れたいと要求してきますが、美馬も攻める側なので躊躇する。躊躇するけれども行為を続けているうちに躰も今までにない反応をするようになっていって、それがまた簡単には受け入れられず…みたいな、恋の湿っぽさはないけれどもおかしなところでぐるぐるしている感じです。
結局はお互いのセフレがふたりの関係を押し進めるきっかけになるのが、長い間友人としてやってきたためにどちらもがこの恋に不器用になっていたことを物語っている気がしました。

攻め同士が恋人になるお話は中途半端だったり物足りないことが多い中、これはどちらもが攻めタイプで一歩も譲らない、みたいな緊張感もあって良い感じでした(笑)。
美馬が美人やかわいいタイプを見れば好みだと思ったり、攻めの立場でセフレとやってるシーンががっつりあったり、ああ彼は攻めなんだなと実感させられました。
乳首が弱いのが鮫島の方で美馬がそこを執拗に攻めていたりするのもツボ(笑)。攻め同士ならどちらもが能動的になるのが当然だと思うので、そこをちゃんと描いているのは嬉しいです。
前のリバものを読んだ時も思いましたが、鳩村さんにはぜひぜひこういうものを追求してほしいです…!
というわけで、こういうのが地雷だという方はお避け下さい!(笑)

本編は美馬の一人称で進むので鮫島に関しては何を考えているのか掴めない部分もあったのですが、本編後に鮫島視点のショートがあって、彼が思った以上に美馬にハマっている様子が伺えます(笑)。奔放な印象だっただけに、実は嫉妬心や独占欲が強いのが何だか意外でした。

面白いお話でしたが、美馬がニューヨーク住まいだったり無駄にセレブ設定じゃなくてもよかったのではと思いました。セレブ設定じゃなくても成立するお話でキャラがやたらハイスペックだと、何だか嘘臭く見えてしまう;
もっと血に足の着いたフツーな感じの方が親しみが持てた気がします。

それから、イラストが小山田さんで本当に良かった! 小山田さん、最近こういうシチュの作品担当されることが多いですね(笑)。
こういうお話で受けがかわいい系のイラストだったら魅力も半減してしまいますので、ちゃんと大人の男を描ける方の絵で見られて愉しみも倍増(笑)。良かったです^^

「ふかい森のなかで」 水原とほる / ill.小山田あみ

定職に就かず人目を避け、外出はたまのコンビニだけ―引きこもりの稔明の元へ、父の差し金で三歳年下の大学生・晃二が世話係としてやってくる。追い返そうと嫌がらせを重ねる稔明だけど、「あんたを見てるとイライラする」と、むりやり犯されてしまった!!ところが初めて知ったセックスの快楽に、稔明は次第に溺れてゆき!?閉ざされた部屋の二人だけの遊戯―ダーク・センシティブラブ。

痛さやダークさが売りの作品が多い水原さん、でもどーにも方向性が合わないことが多くて苦手な作品もあったりするんですが;これは読後感の爽やかなとてもいいお話でした。
引きこもりの青年が主人公のお話ですが、人気のない「森」でひっそりと暮らしているとかそんなのではありませんでした。「森」は主人公が子供の頃から大切にしている絵本の世界であり彼自身が引きこもっている居心地のいい世界の例え。小山田あみさんのカバーと口絵イラストがそれを上手く伝えてくれています。

対人恐怖症気味の稔明(受)は、大学を休学したまま父親の所有するマンションでひきこもっている23才。
ある時彼の状況を憂慮した父親から「同世代の世話係を用意した」と連絡があり、数日後稔明より3つ下の大学生・晃二(攻)がやってきます。
腕力もあり世慣れた雰囲気を持っている晃二は稔明の最も苦手にしているタイプで、稔明は彼を何とか追い出そうとしますが短期間でまとまったお金の必要な晃二も一歩も引き下がらず、結局週に3日稔明の部屋に晃二が訪れるようになる。稔明は雇っている側の強みで晃二を徹底的に邪険に扱うのですが、それにとうとう晃二の堪忍袋の緒がキレて彼に犯されてしまう。

稔明はただ引っ込み思案なひきこもりというのではなくて、性格が捻くれまくったかなりヤなヤツです。更にそんな自分の性格や置かれた状況を割と冷静に理解していて、それが彼のどうしようもなさに輪をかけている感じ。
最低限の外出とかネット経由でのウェブデザインの仕事はできるので完全ひきこもというわけでもなくて、ただ弱い人間というよりは、他者とのコミュニケーションのとり方が分からない子供がそのまま大人になってしまったような印象です。
彼がそうなってしまったのは、敏腕だけれども悪辣な噂の絶えない会社経営者の父親が原因で酷いいじめに遭った過去があったり、これまたその父親の浮気のせいで母親が外に男を作って出て行ってしまったりとそれなりの理由があります。稔明という人間に、ちょっとでも共感もしくは好意が持てるか持てないかでこの作品の印象は変わる気がします。

そんな捻くれ者のお話なので、ひきこもりが外の世界を知る他者と関わることでよい方へと成長していくというような、こういうタイプのBLの黄金パターンにはなりませんでした。
晃二に無理やり犯されたことで始まった関係に、稔明は徐々に溺れていくのです。そして彼が自分から去っていくことを恐れるようになる。
晃二というほぼ初めての他者との関わりで少しでも前向きになるのではなく、その存在に依存してしまうというのが彼のどうしようもなさをよく物語っていて何ともやるせないですね。
途中から明らかにすれ違いを起こしているのに、他人との関わりを持ってこなかった稔明にはそのことが分からない。Hの後に、晃二みたいなのが平均的な同世代の姿なのだろうかという思いに捕らわれる稔明の姿がもの凄く切なかったです。
その稔明が晃二という人間との関わりを通してほんの少しだけ前に進んだ時には、ちょっと涙が出ました。

そしてこのお話、晃二が初めて登場した時のように完全無欠なタイプだったならありがちだったかもしれませんが、そんな弱さとは無縁に見えた晃二にも乗り越えてきた過去があったことが大きなポイントだったと思います。だからこそ「感謝する感情を思い出せ」という言葉が生きていたなと。そしてそこにとても共感できました。
いじめを扱ったBLは何作か読みましたが、これはその中でもいちばんそこに向き合っているお話だった気がします。
最後に稔明が父親を訪ねに行くシーンなんて、あー稔明成長したなぁとじんわり来てしまいました。
けっこうエロいというかやらしい部分も多めなのに、読み終えたらじーんと心の暖かくなるお話でした。

ただ、気になることがひとつ。晃次が稔明に初めて手を出したとき、彼には彼女がいたんですよね。恋人がいるんなら他の人間とそういうことをするなよと、そのことがちょっと引っかかってしまいました。
まぁ、まだまだ若いってことですかね。

「好みじゃない恋人」 洸 / ill.小山田あみ

ビール会社の営業マン、香月が密かに惹かれているのは同期入社の八木。八木は常に自信に溢れて考えるより当たってモノにする行動派で、他人と距離を置き恋愛にも消極的な香月とは正反対なタイプ。ある日、可愛い系の友人と飲んでいた香月は偶然八木と遭遇。カップルだと思い込んだ八木に、「男の好みが同じだ」と言われ妙な対抗意識を持たれてしまう。誤解を解けないまま香月は、ことあるごとに競争相手としてライバル視されることに。告白して玉砕するよりライバル同士の関係に甘んじる決心をする香月。ところが、なんと八木は可愛い系の後輩社員をどちらが先に落とすか競争しようと持ちかけてきて――!?

前回に続いて同期でセフレなお話をもうひとつ。これ好きなんです〜。過剰に「泣ける」演出があるわけでもないのにとても切ない一冊です。

ビールメーカーで営業をしている香月(受)はゲイなのですが、ある時偶然ゲイクラブで同期の八木(攻)と出くわして彼もゲイであることを知ります。
八木は人と距離を置くタイプの香月とは逆の華やかな男で、香月は実は秘かにあこがれていて恋人になれるかもと期待するのですが、ちょっとしたことから八木が香月を自分と同じ可愛らしいタイプが好きなのだと勘違いしてしまい、いつの間にか恋愛面でも仕事面でもライバル視されてしまう。挙句に会社の可愛い後輩・武田をどちらが先に落すか勝負する羽目にまでなり、香月はもはや八木とどうこうなる日は来ないと諦めます。
ところが武田は八木でも香月でもない別の男・舞原と付き合うようになり、失恋に沈む八木に「孤独な者同士で慰めあわないか」と持ちかけられた香月はそのまま八木とセフレ関係になってしまい…。

香月は沈着なクールビューティーに見られがちですが、実はけっこう臆病で人前で本心を見せないタイプです。それは家族との複雑な関係が起因しているのですが、八木に対しても自分が彼に恋心を抱いていることを知られてはならないと、柄でもないあとくされのないセフレ役を演じ切ろうとしてしまう。
なぜそこまでしてしまうかといえば、セフレでもかまわないから八木と繋がっていたいくらい香月は八木のことが好きだから。だから突き放せないのですね。その姿がとんでもなく切ないです。
何でもない風を装いながらもベッドの上で武田のような可愛い男ではない自分がどう反応したらいいのかと戸惑ったり、コトの終った後の余韻に浸りかけてこの優しさは自分のものではないと引き離したり。香月がうじうじと悩むのではなく強がってしまうタイプであることが逆に切なさを倍増させています。
で、体を重ね続けていくうちにその想いが後戻りできなくなるくらい大きくなってしまう。

お話は香月視点なので八木がなにを考えているのか、香月のことは完全に遊びなのかそれともちょっとは気があるのか、微妙に分かりません。気があるような行動をとったと思ったら次には反対のことを口にしたり。だからこの恋はちゃんと報われるのかどうなのか、目が離せなくなります。
そこに武田や舞原が絡んでなんだか四角関係状態になってしまい最後までやきもきさせられましたが、ラストはきれいなハッピーエンドで安心しました。
香月が最後の最後で全部ぶちまけてしまったのには驚きましたが、あれですっきりしたというかすかっとしました。
しかし最期まで読んで思ったのは、器用に見える八木も本当のところは香月と変わらないくらい不器用というか恋には慎重な性格なのかということです。あれこれ手を尽くしておきながら、なぜ肝心の一言を言わない(笑)。
そんな何だかんだで憎めない八木や、美人だけど切れると相手をグーパンチで殴ってしまうような(笑)けっこう男っぽい香月のキャラも大好きです。

いい年した男が4人で遊園地とかノンケだったはずの後輩がやっぱりノンケだった男と付き合い始めたりとか、色々BLならではの突っ込みどころはありますが(笑)、それを差し引いてもこれはじーんと切ない、いいお話です。
そんなにボリュームがあるわけではないのにとても読み応えがあり、それはぎゅっと凝縮しているというよりは文章にすっきりとムダがないからだと思いました。
切ないお話がお好きな方にはおすすめです^^

「宿命の婚姻」 剛しいら / ill.小山田あみ

テレビディレクターの安生は友人から、父親の捨てた故郷に行くと言い残し行方不明になった兄・真宮葵を捜してほしいと依頼された。その村は因習深い山里で、女性が決して立ち入ってはいけない場所。好奇心をそそられた安生はふたつ返事で引き受け、村へと向かうが、捜し当てた葵は古い神社に囚われ、淫靡な秘祭の女神・イザナミになるよう強要されていた。そして安生は夫である男神・イザナギとなり、葵を抱くよう命じられ―。

因習ものって大好きです。閉鎖的な村とか秘祭といったワードに腐ゴコロをくすぐられてしまいます(笑)。なのでこの作品も愉しめました。

テレビ番組制作ディレークターをしている安生(攻)は、親友から婚約者・櫻の双子の兄が父親の故郷に行ったまま連絡が付かなくなっていることを聞かされ、探してほしいと頼まれます。
安生は、その村が女性の数が極端に少ないとても閉鎖的なことや櫻の父親が逃げるように村から出たこと、そして櫻の兄が監禁されているかもしれないという話に仕事のネタになるかもしれないと好奇心をくすぐられ、依頼を引き受けることに。
向かった村の神社で安生はあっさり櫻の兄・葵(受)を見つけ、彼が穏やかそうにしている姿に心配するような深刻な事態ではないようだと思いますが、葵の父親の従兄弟であるという宮司の達明から、7年に一度の祭が間近になっていることを告げられて、その祭のイザナミ役を強要されている葵の夫役・イザナギをやるように迫られ、葵とともに囚われてしまう。

心霊ネタやらのおかしな番組ばかり作っているために超常現象などは信じていないタフなリアリストの安生は、はじめ葵の失踪をそう深刻には考えていなかったのですが、実際に村に赴いて男同士で夫婦神とか祭の完遂のために監禁されたりとかどんどん物騒になっていく事態に危機感を強めて、何としても葵を連れてここから出ねばと思うようになります。
葵はもの凄い美人ですが大学で土壌の研究をやっている大人しい(でも女々しくはない)タイプ。で、研究員なだけに世間知らずで達明の罠にもころっと引っかかってしまうような、ちょっと放っておけない雰囲気があります。安生は完全なノンケなのにそんな彼を守ってやらなければと思わずにいられなくなり、そうしているうちに惹かれるようになっていくんですね。
そして葵も自分とはまるで違う頼りがいのある安生を好きになっていきお互いに惹かれ合っていくわけですが、監禁され外部との連絡も一切絶たれた状態でふたりで何とかここから逃げなければというかなり切迫した状況下にあることがノンケのふたりをそうさせた、という流れがとても自然で違和感なく読めました。

それにしても因習もので秘境の村とか孤島とかが舞台で神やら巫女やらが関わってくるお話って、たいていは昔は女性がやっていたけれども今は不足して男(たいていは受け)が…、な設定のものが多いのに、この作品は最初から「女性の生まれにくい村」が舞台で祭事の夫婦神役も初めから男同士と、ゲイには秘かなパラダイス(笑)になっているのが面白いというか潔い(笑)。
それから他の因習もののように受けが村の男達の慰み者になっていたりはしないので、そういうのが苦手な方も愉しめると思います(達明たちに仕込まれたりはされてますけれど;)。
あと受けが「母親似」ではなくて「父親似」の美人というのも、あまり見かけない設定で何だか新鮮でした。

村に男しか生まれないのには理由があって、達明はそれを巧みに利用して村を繁栄させていることやそのために法に触れるようなこともやっているらしいことが明らかになっていき、彼らに囚われた安生と葵はどうなってしまんだろうかとはらはらさせられるも、ラストはけっこうあっけない印象でちょっと残念でした。もうちょっとページがあってもよかったのかも。
達明があっさり引き下がったのもちょっとすっきりしなかったです。というか用意周到に見えた達明が、安生の素性を洗わなかったのが手抜かりすぎる(笑)。まぁ、そのお陰でふたりは無事助かったわけですけれども。
そして最後の最後まで事実が明かされきれないこともいろいろとありましたが、そこは敢えてどうとも取れるようにぼかしたのかな、と思いました。蓋を開けてみれば超常現象とかの特殊設定ものでは全然ないですが、そうやってぼやかしたことで最後まで不思議な雰囲気に包まれているお話になっている気がします。

それから!
小山田あみさんの肌色率100%の口絵イラストに注意です!(笑)
いや、カバーかけるとかかけないとかそれ以前の話で、ルナノベルズの装丁が変わってこれまで以上に背表紙に口絵イラストがどーん! と出ているので、この作品は書店で買うのはかなり勇気がいるかもです(笑)
背表紙に口絵イラストがあるレーベルなんてたくさんあるし、小山田さんファンの私はこれまでもいろいろ恥ずかしい目に遭ってきましたけれど(笑)、これは一番勇気のいる一冊だったかもしれない…。小山田さんは上手いだけに色っぽさも凄いですから(笑・そういうところも好きですけどね)。
で、結局恥も外聞もなく本屋さんのレジに持っていったわけですが、店員さん(若い女性)が何も聞かずにそっとカバーをかけてくれた時にはなんとも言えない気分になったのでした。

小説Chara vol.25

雑誌をもう一冊。感想書くタイミングを逃していた小説キャラのvol.25です。
のろのろしていたらもう次号の発売が近付いていますね(汗)
キャラは毎回豪華なので手が伸びてしまいます(笑)。全サが逃せない! っていうのもあるんですけれどね。

というわけでざっと感想書いてみます。
でもキャラの看板シリーズの「フレブラ」と「間の楔」は本編を読んでいないので;番外編ショートも読んでいません。。すみません。。。

 ◇ 小 説 ◇

「シガレット×ハニー」 砂原糖子 / ill.水名瀬雅良
 ★★★★★
ヘビースモーカーなクールビューティ受けと年下ワンコ攻めのお話。
名久井(受)は仕事の後輩の浦木(攻)に片思い中ですが、ノンケの浦木は彼女にふられては愚痴ってくる上にホモは気持ち悪いと言う始末で叶わぬ恋だと思っています。けれどもある時苛立つままセフレとやっている現場を浦木に見られてしまい…。
名久井のキャラがいいです! 恋愛相談してくる浦木に「エッチがヘタ」だからだとか言っちゃっいながら(笑)、諦めきれない恋に苛立ってニコチン中毒がひどくなるとか(笑)。
すれ違いは切ないわけっこうエロいわで、とても読み応えがありました。
実は砂原さん初読みだったんですけれど、これは文庫化したら絶対購入する! と決めてしまったくらい面白かったです^^

「Bitch's breakfast」 水原とほる / ill.佐々木久美子
 ★★★☆☆
倦怠感に包まれた大学教授と美青年の、ちょっとコワイお話。途中から本当に猟奇的な方向へ行ってしまうんじゃないのかとヒヤヒヤしましたが、さすがにそうはならず安堵。でも、よくよく考えたら攻めの執着は狂気ぎりぎりな感じがしなくもないラストです。

「キミと見る永遠(不浄の回廊シリーズ)」 夜光花 / ill.小山田あみ
 ★★★★★
今号はこれが目当てで購入したようなもの(笑)。大好きなシリーズの続きが読めて嬉しい限りです^^
プチ旅行に言った先で西条が霊に取り憑かれてしまい…な怪事件から始まって、解決過程で歩がシリーズ通してどうするつもりなんだろうかと引っかかっていた将来のことをちゃんと考えて決断するまでのお話。いつも通りに笑わせてくれて、エロ度も高めです(笑)
その後どうなるのかは、文庫化した際の書き下ろしで読める日を待っています。
にしてもこのふたり、実は西条の方がもはや歩なしではダメなくらいメロメロ(笑)なんじゃ…と思うラストでした。

「眠れる森の博士」 いおかいつき / ill.葛西リカコ
 ★★★☆☆
恋人を亡くした主人公の前に、生前の恋人が残したクローンが現れ、恋人に瓜二つだけれどもそのもではないクローンに戸惑い…というちょっとSFチックなお話。ですがふつうの日常の中で静かに進んでいく感じで、派手な内容ではありません。
クローンが出てくるSFものが好きな私は、この作品の中途半端さが気になってしまいました;まぁ、そこはBLですからこういう風になるのはわかるんですけれども、どうせクローン登場させるのならもっとクローンという存在を掘り下げて欲しかったなぁと思ってしまいました(求めるも部分がだいぶズレているのはわかってます、はい;;)。

「幽霊屋敷の存続人」 神奈木智 / ill.禾田みちる
 ★★★★☆
本好きの高校生・千尋(受)は、ひょんな事で知り合った謎の男・誠一郎(攻)から希少本を貸す代わりに街で有名な幽霊屋敷の掃除アルバイトを頼まれるのですが…。
本好きなためか(笑)、「本」をめぐるお話そのものにけっこうはまってしまいました。BL要素は薄めですが、この雰囲気にはこれくらいがちょうどいいのかなと。
作中に登場する花のお話も幻想的でいいなと思いました。

「公爵様の羊飼い 7」 秋月こお / ill.円屋榎英
最初を読んでいなくて今さらついていけない(汗)ので、読んでいません。。

 ◇ 漫 画 ◇

「不機嫌な猫王子」 夏乃あゆみ / 原作:榊花月
 ★★★★☆
榊花月さんの「不機嫌なモップ王子」の漫画版番外編。
本編は読んでいないのですが、漫画はコミカルで面白かったです。夏乃あゆみさんのちょっと不思議な感じの可愛い絵柄がお話によく合っていました。

お目当てだった夜光さんの「不浄の回廊」シリーズのみならず、砂原さんと神奈木さんの作品が面白くて、文庫化したら買うと思います。
次号は英田サキさんの「ダブルバインド」番外編(しかも新藤と葉鳥の!)だというので、見逃すわけにはいかないです…!

「探偵は止まり木で眠る」 伊郷ルウ / ill.小山田あみ

バー《セラフィム》のオーナー・睦月は、三年前に最愛の人をなくし、恋愛などする気もなく過ごしていた。探偵である杉崎の口説きにも、応じるつもりはなかったのだが――「試してみればいいだろう?」抱かれる側など経験したことのない睦月を、杉崎は強引に組み敷いてきて……!?

なかなかお目に掛かれない攻め同士の恋に小山田さんのイラストと、かなり好みの内容だったので期待しのですが、ちょっと期待しすぎたかもしれませんでした…。

35歳の睦月(受)は3年前に叔父であり最愛の恋人だった人を亡くし、以来恋をすることなく恋人の残したバーを引き継いで生活しています。その睦月に、ある夜バーの客で探偵をしている5つ下の杉崎(攻)が「俺とやらない?」と誘ってきて、その後は熱烈に口説き始める。
睦月はゲイですが、ずっと相手を抱いてきた側―つまり攻めなのですね。だからいくら熱心に口説かれても、そもそも杉崎に抱かれる気がない。亡き恋人のことが忘れられないこともあって、睦月は杉崎の想いに応えられないと返すのですが、杉崎は全く諦める気配を見せません。
そんな杉崎に振り回されていくうち、彼に対する睦月の感情に変化が表れて―という内容が、月と杉崎双方の視点で交互に描かれていきます。

攻めっぽい受けとか受×攻みたいなのは時々見かけますけれど、BLで出会ったふたりが両方とも攻めというのは珍しいと思います。
私はもともと攻×攻なお話が大好きなので、この設定は興味津々、期待しまくりました(笑)。
リバ要素もあるだけに人によっては地雷だと思いますが、これってBLならではというかBLでしか見られない面白さだと思うのです。

そして苦手な方にも無理なく読めるような配慮がされている気がします。
睦月は傲慢な俺様タイプでもやんちゃ系でもなく、客でもある杉崎に終始丁寧な喋り方をする落ち着いた大人です。女々しいところはないですけれども、完全に攻め属性なタイプでもない。杉崎に惹かれるようになっても彼を抱きたいという思いが起きないので、どちらが攻めになるかで争うことにもなりません。正直、睦月はもうちょっと攻めっぽい感じでも良かったのになーと物足りなかったほどです。
そんななので、杉崎とは身長や体格が変わらないというくらいだし攻め同士といってもそんなに極端な感じはせずこれなら拒否反応起こす方は少ないのではと思いました。
杉崎はちょっと強引なところのあるおおらかなタイプ。彼が諦めることなく口説き続けることで恋人を亡くして以来ずっと恋をしてこなかった睦月の心が動くわけですが、ずっと攻めだった彼が抱かれる側になれるのか? という命題がお話の核になっています。
なのでそこだけに焦点を合わせて欲しかったんですが、杉崎の探偵業のエピソードが入ったり終始お話には関係のない脇キャラが多く登場したりで散漫な印象になったのが残念。あくまでふたりが恋人同士になれるまでを追ってほしかったです。まぁ、タイトルに「探偵〜」とありますから仕方ないのかなと思いますけれどもね…。

ぎりぎりまでふんぎりのつかなかった睦月ですが結局収まるところに収まって(笑)、ずっと年上を抱いてきた彼が今度は年下に組み敷かれるのかーと思うと、これってやっぱりBLならでは♪…と思ってしまいました(笑)。
そしてエロシーンは、攻めだった男が受け入れる側の苦しみを理解するみたいな感じで甘さはあまりないんですけれども新鮮です(笑)。
でも、よくよく考えてみれば杉崎もいろいろ隙がある気がして、著者さんがあとがきで触れられているようにこのふたりならいつの間にか逆転…というのもありそうな気がしました(笑)。

「夢魔祓い師〜白き魔狩りの神父〜」 近衛舞香 / ill.小山田あみ

聖白鳩教会の見習い神父・双海郁には、夢魔祓い師―人の夢に憑く悪魔を滅するエクソシストという秘密の顔があった。心優しい神父の桐生と共に暮らすうち芽生えた恋心。ある夜、派手な身なりで出ていく桐生を見かける。ひっそりと跡をつけた郁は、都心のバーで桐生の思わぬ秘密を知るのだった。そんな折、教会に封印されていた上級夢魔が解き放たれる。憑かれた庭師の夢の中で、郁は果敢に戦いを挑むのだが…。

小山田あみさんのイラストに惹かれて購入です。BLというよりはラノベ風なのが何だか新鮮(笑)
お話の内容も、人の夢に巣食う夢魔を退治するエクソシスト青年が主役のラノベっぽい特殊設定でした。

見習い神父の郁(受)は人の夢に憑き衰弱させる夢魔を対峙するエクソシストの家系の生まれで、自身も天からの守護精霊のルカ(いつもは白鳩の姿)と共に新米エクソシストとして夢の中で闘っています。
郁は神父としての修行のため神学校に進むことになり、実家を離れて人格者の神父・桐生(攻)の元に住みこむようになります。心優しく神父として完璧な桐生と共にいるうち、郁は彼に憧れ以上の感情を抱くようになるのですが、ある夜、桐生がいつもとは真逆の人格を持つ二重人格者だということを知ってしまう。
更に桐生の教会に封じられていた上級夢魔が解き放たれて、ふたりに思わぬ事態が訪れます。

お話はけっこう迫力のある郁の夢魔退治のシーンから始まり、なんというかとっても異色な感じがしました。
BLに特殊設定ものは割とありますが、それはエロを盛り上げるためのものだったり(笑)付け足し程度のものが多い気がします。が、この作品は設定もバトルシーンも退魔グッズなどのアイテムもけっこう凝っていて、けれども決してそれがエロに繋がったりもせずファンタジー設定の中にBLがあるという感じ。決め台詞のちょっと芝居がかった感じが可笑しくもありますが、それも内容を盛り上げていると思います。
ラノベや漫画っぽいのが好きな方だと、けっこうツボだと思います。
そして何より作家さんがよほどこういうのが好きなんだな、というのがよく伝わってきました。

その凝った特殊設定部分と並行して展開していくBL設定部分も、ちゃんときゅんと萌えられるようになっていてバランスがいいです。
キャラがいいんですよね。ふたりとも表の顔とは別のかなりギャップのある裏を持っている、というのが上手く生かされているといいますか。
普段は大人しくて奥手なくらいだけれど夢の中では誇り高きエクソシストになる郁と、昼は完璧な人格者の神父なのに夜になると相手を取っ替え引っ替え食い散らかすようなプレイボーイになってしまう桐生と。
お互いの二面性が特殊設定とも上手く絡んで相乗効果です。
そしてあとがきで書かれているとおり、「攻めに守ってもらう受け」よりも「攻めを守ってあげる受け」の方が断然イイです! というか、受けには多少なりともそういう部分を求めてしまうので、今までにない上級夢魔と対峙してその強さに怯みかけた郁が桐生を守りたい一心で挑んでいく姿には、つい受けはこうでなければ! と思ってしまったほどです(笑)。攻めを守るために強く成長していく受け、いいじゃないですかっ! この作品、エロよりそういう部分に萌えました。逆だったら、萌えなかっただろうな(苦笑)。
あと、良い人と思いきや実は…な桐生も良い感じです。裏の顔の時でないと本音が言えないというのが、よくよく考えるとヘタレな気もしてちょっと可笑しい。
そしてずっと郁視点で進んでいたお話が、肝心要で桐生視点になってその心情を露呈させるところは「おっ」と思わせられました。で、桐生はけっこう臆病な性格なんだなと。一見頼りないようで実は強さを備えている郁とは、けっこうぴったりなのかもしれませんね。
惜しいのは、桐生が郁に惹かれてしまった理由がよく見えてこないところ。一目惚れということになっていますが、桐生のややこしさを考えるとそれだけではちょっと納得できないんですよね。。そこが残念でした。

因みにエロは標準的な感じです。神父の話ですがラノベテイストなためなのかあまり背徳的な雰囲気はありませんが、桐生のエロオヤジな言葉攻めがえろいです(笑)。
でも精霊のルカは、夜はぐっすり眠ってふたりが行為に耽っている時には気配もないけれど、なんだかどこかでしっかり見ている気がする、絶対(笑)。そう思うと、ちょっと、いや随分とやらしいような(笑)。

大好きな小山田さんのイラストも、カバーのみならずモノクロも力が入っていて見応えありました! セクシーな神父服姿にはくらくら(笑)。こちらもかなり楽しまれているなというのが伝わってきます(笑)。ヒト化したルカまで描いてくれてますし!
小山田さんがこういうテイストの作品を描いているのって見たことない気がしますが、さすが何を描いても上手いなーと感服です。

サブキャラでスピンオフ出そうだなと思いましたが、これ既刊の「極道刑事と可憐巫女」とリンクしているんですね。そちらも近々読んでみようと思います。

「カタギの分際」 櫛野ゆい / ill.小山田あみ

尊敬する組長を亡くして以来、心を閉ざし生きるヤクザの若手幹部・桐生。桐生の車の前に突然飛び出してきた男、上條は元弁護士のワケアリ花屋。彼は、桐生の懐に何故かするりと入り込んできて「おれの気持ちまで、否定しないで下さい」と熱っぽい目で見つめてくる。住む世界が違うと邪険に扱いつつも、気づけば彼のペースに巻き込ま…。そんな折、桐生を庇い上條がケガを負う!!年下のワケアリ男×ツンデレヤクザのゆずれない想いの行方は。

お人好しの花屋×ツンツンヤクザのお話なのですが、カタギ×ヤクザという珍しいカップリングで面白かったです。

2年前に尊敬していた組長が亡くなって以来、どこか空虚に生きていたヤクザの若手幹部・桐生(受)は、ある時お人好しで元弁護士の花屋・上條(攻)と出会います。
桐生は組の稼ぎ頭の頭脳派で、美形ですが如何にもヤクザな感じのツンな男。女々しいところは全くありません。
その桐生に年下大型ワンコな上條が何故か尻尾を振って懐いて、ハーブを育てさせたり食事を作ってやったりとおせっかいを焼いて、桐生のことを「可愛い」とまで言ったりする。
桐生はそれを鬱陶しがるんですが、気がついたらいつの間にか上條のペースに巻き込まれてしまいます。それは お人好しのくせナチュラルに押しの強い上條の性格のせいなのと、桐生がヤクザのくせに育ちのいい世間知らずだからでもあるんですね。上條に散々「お人好し」と言う桐生自身もかなりのお人好しだと思います(笑)。
ふたりのどこかズレたやりとりが可笑しく微笑ましい。

そして、真っ直ぐで邪気のない上條に関わっていくうち、先代の組長を亡くして以来忘れかけていた人としての温もりを取り戻していきます。
桐生にとって、先代は親以上に恩義を感じている人物。彼が上條を鬱陶しがりながらも受け入れたのは、上條が先代に似ていたためでもあるんです。
けれどもある時、桐生をかばった上條が怪我を負う事態になってしまい、そこで桐生はカタギの上條が自分に関わったせいで危険に晒されてしまったことに気が付く。これ以上こんなことがあってはいけないと桐生は上條を遠ざけようとしますが、その上條から「好きだ」と思いもよらないことを告げられてしまう。

その後はふたりの恋模様に桐生の組の抗争が絡んでくる展開となって、…まぁ、だいたいのことは早い段階で読めてしまい、ヤクザものとしてはぬるいのかなとも思いますが、まぁBLですからね(笑)、このくらいがちょうどいいのかも。殺伐とした感じではなくハーブの香りでもしそうな爽やかさが全体に漂うのは、上條の性格のせいでしょうか。
ただ、惜しいのは、ノンケである二人がなぜお互いに惹かれるようになったのかが説明不足なところですね。桐生の感情が年下男に翻弄されて変化していく様子は丁寧に書かれていますが、上條がなぜそこまで桐生を好きになってしまったのかが謎。この手の作品によくある「一目惚れ」というわけではない様なので、世話を見ているうちにだんだん…ということなのでしょうか? 上條が押しまくったことで成立する恋の話なので、そこは書いてほしかったです。

…と、ここまでなら☆3つというところなのですが、…事態の収集がついたその先の、ベッドの上での展開に激萌えしてしまいました(笑)。
何と土壇場でどっちが突っ込むかで争うんですよ(笑)!
攻め×攻めなふたりが好物なワタシは、これで☆ひとつ増えました!
今まで、年下攻めものを読むたびいつも引っかかっていたのが、受け、そんなにカンタンに年下に押し倒されてどうする〜、ちょっとは年上としての矜持を見せろよ〜、ということでした。いやもう、年下攻めに限らず男ならカンタンに流されるなよ〜と思うことしきりです;
男同士で初めてなら、この二人みたいな展開になるだろ、と(笑)

それにしても、そこに至るまで自分が受け身になる可能性を考えもしなかった桐生って…(笑)。世間知らずと言うよりは、天然気味なんでしょうか。で、上條を「抱いてやる」つもりでいた桐生がベッドでは予想外に上手(!)の上條に翻弄されて戸惑ったりとか、もの凄く萌えます…! で、あれよあれよという間にやっぱり上條のペースになって自分が受ける側になるという…(笑)。男前だけれどもスキの多い桐生は十分受けだと思います(笑)
でも、正面からはイヤだとか顔を見るなとか声を出したくないとか、最後まで男の意地を捨てないのがいいです。ヤクザですものねっ、そんなカンタンにあんあん言ってほしくないですよね(笑)。
でも声を無理矢理出させられてしまうところとか、大好きですけど(笑)。
そして背中に刺青のあるヤクザがカタギにやられるというのも珍しいですね。ヤクザモノって大抵はヤクザ×カタギかヤクザが受けでもヤクザ×ヤクザなものばかりなので、何だか新鮮です。小山田あみさんのイラスト効果もあってもの凄く美味しかったです(笑)
Hはこの最後の一回のみ(その一回で何度もやっちゃってますが・笑)なのですが、長いし濃ゆいし充分お腹いっぱいになりました。

というわけで、意外な愉しみ方のできた一冊でした!(笑)男前な受けがスキな方にはとってもオススメです^^

「詐欺師は恋に騙される」 洸 / ill.小山田あみ

「お前の腕を買ってやろう」 正体がバレた時の対応は三つ。まずはとぼけて言い逃れる。そして相手の情報を引き出し、最後はとっとと逃げ出す。 ――詐欺師の里見は、保険会社で成績優秀な外交員となっていた。入社して二ヶ月、突如、役員から呼び出される。専務の宇崎は三十代半ば。整った顔立ちに、思い当たる記憶はあった。幼いころ、養父とともに騙した新人外交員の顔だ。事件にしない代わりに、社内の横領を突きとめる片棒を担ぐことになった里見。監視を理由に宇崎と同居することになり…!?

タイトルやあらすじでクールな感じなのかなと思いきや、可愛い詐欺師の登場する甘めのお話でした。
詐欺師の里見(受)はある目的のために保険会社の優秀な外交員として働いていますが、ある時会社の専務である宇崎(攻)に呼び出され詐欺師であることを見破られてしまいます。宇崎は里見が子供の頃、義父と共に騙した相手で、宇崎はそれをしっかり覚えていたんですね。けれども宇崎は里見を訴えず、代わりに社内で起きているらしい横領を探るよう協力しろと言い出します。かつて騙した相手への罪悪感も手伝って、里見は宇崎に従うことにします。
監視目的なのか宇崎は里見を自宅に住まわせて、ふたりは奇妙な協力関係のもと横領疑惑を探り始めるんですが、その中で段々里見の詐欺師らしからぬ甘えたな部分が出てきて、なにこの子めちゃくちゃ可愛いいんですけど! と母性本能くすぐられまくり(笑)最近こういうタイプの受けが出てくるBLを読んでなかったので余計にキました(笑)
そして所々に散りばめられた切なさに胸がきゅんとしました。

里見は子供の頃から詐欺師として生きていて、そのために誰にも本当の自分を見せてはこなかった孤独で不器用な部分があるんですね。けれども彼が詐欺師であることを知っている宇崎には取り繕う必要がなく素の自分でいられて、今では愛想の無くなった宇崎がそれでも時々里見に対して子供の頃に知っていた「優しい保険のお兄さん」が持っていた優しさを見せたりすると、それに甘えたいような気分になってしまう。でも心が通ったかと思った次には宇崎がかつて自分を騙した詐欺師をまだ疑っているのでは、と不安になる。騙した/騙されたという関係が、ふたりの間にちょっとしたすれ違いを起こしてしまって、それが切なかったです。
里見は実の親のもとでは育っていない哀しい過去があって、そのために甘えたなところがあるんでしょうね。同じような過去を実は宇崎も持っていて、このふたりタイプは違うけれどもお互いに似たような寂しがり屋なんだろうなとも思えました。
ふたりのそんな過去を思うと暗い雰囲気になりそうなものですが、全体が柔らかな感じだからなのか重いとか読んでて辛いというのはなかったです。
社内の横領疑惑の顛末も、里見が詐欺師としての本領を発揮してくれて面白かったです。
そしてもう忘れかけていた里見が保険外交員になった本来の目的が明かされ、ああそういうことだったのかと納得のラスト。綺麗なまとまり方でした。里見はどこまでも母性本能をくすぐる詐欺師ですね。
ただ、宇崎がゲイだと分かってからの顛末はちょっと急な気がしなくもなくて、そこが残念なところですかね。

終わりのクリスマス前夜のふたりのショートも、これを読んだ時期がちょうどクリスマスの時期だったせいもあって、ほのぼの温まりました。

ところでそういえば今月のガッシュ文庫、初回限定SSカード封入になってましたが今後もそうなるんでしょうか? そうなると特定の書店のみでの配布みたいなうっかり入手し損なった的なストレスはなくなりますが、ばっちりフィルム包装されてしまうので試し読みとかイラストチェック(重要です!)ができなくなってしまう。。。
う〜ん、どっちがいいんだろ??

「池上准教授の恋愛学異論」 野坂花流 / ill.小山田あみ

頭脳明晰。容姿端麗。人当たりもよくて、いつもにこやか。池上和也は、ずっとそんな自分を演じてきた。でも、別に苦でもなんでもなかった。そのほうが人生は生きやすいし、面倒も少ないからだ。本当の池上は他人に興味もなければ、自分の外見の魅力を利用することも厭わない、どちらかといえばエゴの強い、性格の悪い男だった。そんな池上だが、幻馴染みに密かな想いを抱いていた。けれど、自分の想いが永遠に叶わないことはよく知っていた。そんなとき、仕事相手として、池上の片想いを知る男・榛名が現れる。いつものように適当に相手をするつもりが、なぜか榛名は池上の思惑通りに動かなくて…!?高飛車な准教授・池上と、年下の男・榛名の恋の行方は。

例によって、小山田あみさんのイラスト目当てに手にした作品。
いろいろ突っ込みどころはあるんですが、わりと愉しめました。
准教授の池上(受)は容姿の良さと外面の良さで世間を欺いて生きていているけれど、本当はかなり性格の悪い男。そんな彼が素の姿をさらけ出せるのは幼馴染みの隆司だけで、いつの間にやら隆司に対して報われることのない恋愛感情を抱くようになっている。
そんな彼のもとに、雑誌の取材に訪れた隆司の後輩でかつての自分を知るという榛名(攻)が現れます。榛名は池上の裏の顔も池上の隆司に対する気持ちも知っていて、その上で池上を想っている。そんな年下の男を適当にあしらうつもりでいたのに、予想に反して榛名は諦めが悪くて池上を翻弄するようになります。

池上の性格は最悪です(苦笑)。仕事でやってきた榛名を、「はるな」という音だけ聞いて春っぽいいい名前だなと思っていたのに名刺を見て春と関係のない紛らわしい名前しやがって、と見当違いなことを内心で毒づくような、そんな男。
で、榛名がなんでこんな最低な男に惹かれたのかというと、彼は偶然池上が隆司とふたりのときに素をさらけ出していたのを見たんですね。いつも愛想のいい池上の意外な一面に驚くと同時に興味を持ち、やがて自分にも仮面ではない素のままの顔を向けてほしいと思うようになったんです。
榛名の池上に対する想いや感情はわかるんですが、池上に関してはちょっとわかりづらいです。
池上がなぜ隆司にそれこそ10年を超えるような長い時間恋をしているのか、具体的なエピソードが欠けているので説明不足。そう書かれているからそうなんだな、と納得するしかありません。
そして池上が、しがみ付いているうちに隆司に対しても自身を取り繕わなくてはならなくなっているようにも見えて、はたして本当に池上にとって隆司が唯一素の自分をさらけ出せる存在なのだろうかと疑問に思えてきます;そういう存在だったからこそ隆司に惹かれている、というのなら尚更気になってしまいました。
そんな長い恋を引きずっている池上が、榛名になぜ惹かれたのかもちょっとわからなかったですね。榛名に対する想いが隆司に対する感情よりも大きくなってしまってからの池上のやり場のない感情がとても丁寧に上手く描かれているだけに、そこにいたるまでの説明がもうちょっとあればなぁと残念です。
お話の流れも、事を進めるために無理矢理作ったかのような状況が多くて不自然な印象のある箇所がちらほらあって気になってしまいました。
あともう一つ気になったのが、脇キャラの扱い。
池上の本性を知る数少ない人物だという池上の弟は名前だけで登場しなかったし、珍しく池上が気に留めた幹事をやっていた女の子はその後どうなったんだろうかとか、これはどうしても必要な配置だったのだろうかと思わなくもない印象です。
いちばん?だったのは、冒頭からしつこいくらい出てきた池上の同僚の准教授。意味深なことを言っていたわりにはオチもないまま登場しなくなってしまい、もしかして他の作品にでも繋げるつもりだろうかと思ってしまいました。この作品に限らず、最近はこうしたスピンオフを匂わせる作品が多くてちょっと辟易しています。スピンオフって、まさかこれで出るとは! という意外性やサプライズ性が嬉しいのに、思い入れもできていない状態であらかじめ予告的なことをされても…と微妙な気分になってしまいます。

いろいろダメ出ししてしまいましたが(汗)、すれ違いラヴとしては面白いんじゃないのかな、と。
仮面を被って上手く世渡りしているように見える池上が、年下の男に翻弄されていくうちに実はとても不器用で頑なな人間だったことが露呈していく、というのがミソですね。初めはヤなヤツだなーと思っていたのがだんだん可愛くなってきて、気がついたらこの恋が上手くいくようにと応援していました(笑)。
最後の最後まですれ違いを繰り返しているのでこのふたりはちゃんとくっつけるんだろうかとやきもきしてしまいましたが、ちゃんとハッピーエンドです。榛名の一途な想いが勝ったという感じですね。これからは池上が素直になることを祈ります(笑)。

「探偵は危険を運ぶ」 中原一也 / ill.小山田あみ

何事もきちんとしないと気がすまない検事の笹原は、不審な点があるジャーナリストの殺人事件の起訴を躊躇っていた。そんな笹原の前に現れた胡散臭い探偵の新堂。笹原についてまわり、事件を嗅ぎ回るこの男の真意は!?いつものペースを乱され、ついには躰中のホクロの数を数えられ、指で淫らになぞられて!!男同士の仕事と恋の駆け引きは、熱く激しく互いを結びつけ!?

中原の新刊は探偵オヤジ×几帳面な検事もの。
仕事もプライベートもきっちりしないと気が済まない几帳面な検事・笹原(受・29)は、ジャーナリストの殺人事件に何か腑に落ちないものを感じて起訴をためらい事件の現場に向かいますが、そこで被疑者の身内に雇われているという探偵・新堂(攻・40前後)とはち合わせます。その後、新堂はたびたび笹原の前に姿を現しては事件について嗅ぎ回りますが、くたびれた身なりの如何にも胡散臭いオヤジ探偵を笹原は相手にしません。けれども新堂の存在は笹原にこの事件に無視できないものがあると確信させ、事件の裏に潜む真相を探らせようとします。
で、なんだかんだでふたりは共にこの事件を追うようになってその過程で惹かれあうようになっていくのですが、そうなるまでの感情の説明が不十分で唐突な感じが拭えないです。最近のBLには珍しく受けも攻めもノンケなので余計にそう思ってしまいました。事件を追う途中で危機的な事態に陥ったことが彼らをそういう関係にさせるきっかけになっていますが、それまでノンケだったふたりがそうなるにはちょっと唐突ではやりそこに至るまでの感情の丁寧な描写があった方が納得できた気がします。
だらしのないオヤジと几帳面な堅物という対照的なふたりのやりとりは可笑しくて、カプとしては好きなんですが。
あと、事件そのものはありがちな展開で新鮮さはないので、そこを期待して読むと肩透かしかもしれません。

この作品で一番のみどころはやはりオヤジ探偵の新堂のキャラですかね(笑)。無精髭やらボサボサの髪やらはもう今更にしても人の家に上がるなり足粉とはさすがにそう来たか! と笑ってしまいました。この他頼んでもないのにストリップショー始めたり、中原さんらしいというか、いい感じのワイルドなおっさんです(笑)。
彼は妻子を亡くしていて笹原に対して時おり時間がとまったままの父親の一面を見せることがあるのですが、笹原がそのことに気が付くシーンが切なかったです。このお話、事件の顛末そのものはわりとあっさりしていますが、事件が大きな組織や権力のはらんでいる矛盾や歪みゆえに生じたことや、新堂がその抱えている過去ゆえに今の仕事をしていることなどけっこう重いものがありますね。
あと、ホクロ! この作品、エロ度はむちゃくちゃ高いというわけでもないのですが、普段は隠れている躰のホクロを暴かれるというシチュは何かエロくて萌えます(笑)。といって、作品解説にあるように体中のホクロを数えられ…、なハードなシーンはありませんが、そういうのがあってもよかったくらい(笑)。
最近ホクロは最大のエロアクセントではないのかと思い始めています(笑)。

「魅入られた虜囚」 矢城米花 / ill.小山田あみ

若い男の連続失踪という怪異な事件を追って、新米刑事の桜井は警視庁キャリア組の東條とコンビを組む。傲岸でサディスティックな東條に、桜井は逆らうことがまったく許されず、下僕のように捜査に付き従うだけだ。だが、勘の鋭い東條が事件の糸口を掴んだとき、桜井は若くて綺麗な男に拉致監禁されてしまった。「アレは男の体液が大好きなんだ。被害者がどんな状況だったか、自分で体験してみるといいよ、刑事さん」桜井はある研究の実験台にされて――!?

エロ度の高いBLが好きなくせに、なんかきっかけがなくてまだ読んだことのなかった矢城さん。小山田あみさんがイラスト描かれているので、遂に手にとってみました。
9割りがたエロだったイラストはもちろんですが(笑)噂通りにハードな陵辱系で、そういうのが大好きな私は大満足でした…! 他の作品も読んでみよう♪

新米刑事の桜井(受)は、奇妙なバラバラ殺人事件の捜査で警視庁キャリア組の東條(攻)とコンビを組むことになる。元研究者という変わった経歴の持ち主の東條はドS気質の変わり者で、桜井は高圧的に扱われそれに従うばかり。そんな間柄のまま聞き込み捜査していくうち、東條がこの事件にある宗教団体が関わっているのではないかと考え始めます。
ところが捜査の途中で桜井が何者かに拉致されてしまう。
それは東條が睨んだ通り例の宗教団体の犯行なんですが、彼らはコリンという美貌の青年研究者のもと麻薬の原料となるあるものを作り育てていて、桜井はそれの実験台にされてしまう。

そのあるものというのは、イソギンチャクみたいな巨大な化け物。
…いや、カバーイラスト見た時に、矢城さんだし主人公に巻き付いているアレはリボンとかではないんだろうと予想はしていましたが(笑)、そう、やっぱり触手が出てきました。しかも男の精液を養分にするだけの触手ではなくて、何と男の体内に卵を産み付ける(!)というどんだけエロエロなんだな設定で、その上その卵が教団の資金源である中毒性の高い麻薬の原料になっていて、桜井は卵を産み付けられる「苗床」にされてしまう。
で、その後桜井は触手に犯されて卵を産みつけられて、それを衆人環視の中で産み出す羽目に陥るわ複数の男たちに輪姦されてしまうわと、これでもかというくらいの陵辱を受けてしまいます。
かなり酷い目に遭っているにもかかわらず、刑事としての意識を失わない桜井が打たれ強いというか肝心な所でしぶといので、あまり悲惨な感じではないです。けれどもまるで甘さはありませんから苦手な方はダメだと思います;
でもでも陵辱やら輪姦やらよりも東條のドSっぷりが凄すぎて、その衝撃が吹っ飛んでしまうほど。特に、桜井を救出した後の展開が酷過ぎる(笑)。
普通なら媚薬の効果にあえぐ受けを慰める展開になるところだろうに、触手に陵辱された時に体内に残った媚薬成分に苦しめられている桜井の躰を鎮めるために、東條は彼を拘束した上で氷で攻め足で嬲り、更には拉致監禁されていた間にされたことを強制的に供述させて侮辱感を与えるという酷さ!
色んなBLで鬼畜攻めというフレーズを目にしてきましたが、これを前にしたらどれもまだまだ生ぬるいですね(笑)。これこそまさに鬼畜攻めと呼ぶに相応しいです!
…それにしても東條、普段はあの部屋を何に使っていたんだろう(笑)
そんなドS気質の東條ですが最後の最後で意外な面を見せて、桜井に対する仕打ちが実は彼なりの優しさだったというオチには口元がゆるみます。普通がわからないという彼は確かにちょっとおかしいんですが、決定的な悪人ではないんでしょう。
そんな東條と、反発心を潜めながらも何処かMっ気のある桜井は案外相性がいいのかもしれません。
あと、最後の最後まで桜井が東條を名前ではなくて「警部」と呼んだり、ふたりが上司と部下の関係性を崩さないのが何だかツボでした(笑)

打たれ強くてM気質のある桜井は東條の嗜虐心をくすぐるばかりで格好の餌食だし、桜井もなんだかんだと言って東條に惹かれているのは明らかなのですが、最後の最後までふたりの関係は恋人同士とかの甘いものにはなりません。なんだか発展途上という印象で逃げたコリンのこともあるし続きがありそうな気配。続編を期待しています!

「欲しがる唇」 浅見茉莉 / ill.小山田あみ

「黙っててほしいなら、どうすればいいかわかるだろ?」誠のマンションに同居することになった義理の甥・海渡。見上げるような長身で精悍な彼から吐かれたのは、誠の秘密の恋の暴露と、口止め料代わりに身体を要求する言葉だった……!! 初めて後ろを使うセックスを強要され、濡れて開花する身体。貫かれながら感じる彼の汗と体温、そして卑猥な責め言葉が生み出す快楽に溺れ、いつしか海渡自身に惹かれていって――。傲慢年下攻の禁断エロスラブ。

甥×叔父の年下攻めもの。
小説b-Boyに掲載されていたものと書き下ろしの「欲しがるカラダ」の収録です。

塾の講師をしている誠(受・28)は、大学受験で日本に戻ってくることになったアメリカで暮らす姉夫婦の息子の海渡(攻・18)を預かることに。甥とはいえ、姉の夫・邦彦の連れ子である海渡とは血が繋がっておらず、姉夫婦の結婚式以来顔も見ていなかったような間柄。それが6年という歳月の間に見違えるほど成長し、ちょっとふてぶてしいまでの若者となって誠の前に現れます。
実は誠は若い頃に姉の夫である邦彦に叶わぬ恋をした過去がありそれを今でも引きずっていて、誰とも真剣な恋をしたことがない。そのことに気付いていた海渡は、父親に黙っていてほしかったらと、あろうことか誠の躰を要求してきます。義兄に知られたくない一心で誠はそれを受け入れ、さんざん嬲られ嘲られてプライドをズタズタにされてしまう。
誠視点で見る海渡はとても18には思えないような傲慢で酷い男。なのですが、海渡は海渡でそうしてしまう理由があります。
海渡はずっと誠が好きなんです。でも誠はそんなことは夢にも思っていないから、彼のやることなすこと全て父親を邪な目で見ていた分への侮蔑なのだと思う。
始まり方が始まり方だったので、誠はすっかり海渡が苦手になるんですが、普段の海渡が見せる優しさや気遣い、年相応な一面に徐々に心惹かれてゆく。でも、その感情の正体が何なのかわからないまますれ違いが続いて、やきもきします。
結局あるハプニングがきっかけとなってお互いの誤解は解けるんですが、そこに至るまでのいざこざは、終わってみると可笑しいす(笑)
そして後から見てみると誠は、実は無自覚に海渡をそれこそ子供のうちから誘惑して振り回している天然誘い受けであることが判明して、けっこう罪深いですね(笑)
めでたくくっついたあとはこのふたり、もうラブラブ状態。

後半の「欲しがるカラダ」はそんな晴れて恋人同士になったふたりのその後なんですけれど、最初の傲慢さはどこへ行った?! というくらい、海渡が一途で頼りがいのある年下くんになっています。
そんなふたりの幸せに水をさすように、かつて誠が関係を持ったことのある男・外岡が現れて一騒動あるんですけれども、…まぁ、外岡がどうしようもない男だったので、ふたりの関係をこじらせることにはならず、むしろ海渡の頼もしさが強調されるような顛末に。
このふたりはこの先も幸せにやっていくんでしょう。

実を言うとBLを読み始めた頃、年下攻め、それも10前後も年の離れたものの良さがいまいちぴんとこなかったんですけれど、そのツボが最近わかってきました(笑)。立場が上の年長者が下にいたはずの年少者に、っていうのはいろいろひっくり返してくれるのが爽快。下克上萌えに近いんですかね。
ただあまり攻めがゴージャスな優秀くんだったり何もかもを達観したように老成していたりしたら萎えます(笑)。10代、いやハタチそこそこの若造のくせにそれはないだろ、と。
まぁでも年下攻めって大抵その年でそれは出来過ぎだろー、な現実離れ設定ばかりで、この作品も充分そうなんですけれども、年下くんにちゃんと年下らしい可愛さやスキがあるかがその有り得なさを超えて萌えられるかどうかの分水嶺ですね。
この作品は、傲慢で優秀と見せかけて実は一途に思い続けてきたひとには素直になれない海渡の不器用さや健気さがツボで、いい感じで楽しめました。彼が誠を好きなんだなーというのも、最初からバレバレ(笑)。だからこそ、ああ、嫉妬してるんだなーとか彼の苛立ちが伝わってきてついつい彼の方を持ってやりたくなりました。
だから逆に、海渡がダメだーという人は楽しめないかもしれません。

スラッシュなだけにエロも濃ゆいです。浅見さんがあとがきで頑張ったと書かれていた剃毛プレイにもニヤニヤしたんですけれど(笑)、その後に続く鏡を使った鑑賞プレイ(?)がエロ過ぎます!
というか、鏡にセックスしている姿を映して盛り上がるっていうのはよく見ますけど、受けが鏡に写った自身の躰をその反応ごと客観視して羞恥を覚えるっているのはなかなかないというか、倒錯した感じでとっても新鮮。ごちそうさまでした。

もひとつあとがきで、起きたら畳のあとがほっぺに残るような古いアパートで暮らしている庶民(とは言わないですねこれは)ものを書きたいみたいなことを書かれていて、それは読んでみたい…! と思ってしまった(笑)
いつか地味な暮らしの庶民モノを読めるんでしょうか(笑)

そういえば小説b-Boy、隔月刊化するんですね…。
震災以降隔月刊行されていたのは震災の影響だったんだと思いますが、此のタイミングで隔月刊化するのはもしや都条例の影響もあるのかな…? と思わなくもないです。
ともかくBL業界が萎縮しないことを祈るばかりです。

「極道はスーツに二度愛される」 中原一也 / ill.小山田あみ

仕事一筋の真面目な仕立屋、榎田。彼の恋人は借金が縁で知り合ったヤクザの芦澤だ。そんなある日、『テーラー・えのきだ』に桐野組長が…。芦澤を次期組長にしたい桐野から、恋人の極道としての冷酷な一面を知らされる榎田…どんな姿を見ても彼を愛している、一緒にどこまでも堕ちていくと心に誓うのだが…。なんと突然の事故で、榎田は芦澤の存在を記憶の中から失ってしまう。罪深き緋焔の恋ふたたび。

「極道スーツシリーズ」第6弾。
今回は記憶喪失モノでした。
ある日榎田の店に芦澤の組の組長がやってきます。単刀直入に芦澤と別れろと言い出すのかと思いきや、芦澤のヤクザとしての面を見せで動揺させるというもっと狡猾な、善良な一般市民である榎田がいちばん打撃を喰らう方法で芦澤との関係を見直すように迫ります。恋人のそういう面を見たことのなかった榎田は、当然かなりのショックを受けるわけですよ。
更には、榎田が贔屓にしている喫茶店がかつて芦澤の営んでいた闇金から金を借りていたことがあったことが分かる。
彼ら親子が未だにその頃のことで苦しんでいることを知って複雑な思いになりつつも芦澤への想いは変わることはなくて、罪悪感を抱えた状態のまま交通事故を起こし、何故か芦澤に関することだけをすっぽりと忘れてしまう。
そこからはあとがきで中原さんが「もう一度榎田に恋をさせたかった」と言われている通り、記憶をなくした榎田が再び芦澤に惹かれていくという感じで、そこに組長やら喫茶店の親子やらとの関係が絡みながらお話が展開していくんですが、まぁ、榎田が芦澤に付いて行くという覚悟が揺るがないものとなるための試練だった、という感じです。
展開は予想どうりで読めちゃいますし、いろいろ甘いなぁと思いもしますけれども、恋人がヤクザあるという事実に向きあうという内容は、ヤクザものBLは数あれど私は知らないので新鮮でした。榎田が生真面目な人間だからこその葛藤ですし、スルーするには無視できない点だったかもしれないですね。
そんな真面目な恋人のためなら芦澤は組を抜けてもいいと発言してますが、このお話はどういう決着に向かうんだろう?? と思ってしまいました。

恒例の諏訪と木崎のお話ももちろん入ってますが、、タイトルが「デッド・エンド」ってどういうことっ?! …な内容で、もうこのふたりほんとどうなるんだろう…。
木崎は組長の孫娘との交際を進めている一方で、諏訪との関係も変わらず続けている。それを嗅ぎつけた舎弟がいて、そいつがあることを条件に黙っていてもいいと言い出して、それに切れた木崎が彼を殺害してしまい…という、もうどうしようもない展開です。進展があったとすれば、この状況下で木崎が漸く諏訪への思いに気が付いたということ。でもまだ伝えていないし、諏訪は相変わらずというもどかしいままです。
…これ、バッドエンドになったりしませんよね…? と不安で仕方がないです。

「極道スーツ」シリーズ
 ・「極道はスーツがお好き」
 ・「極道はスーツを引き裂く」
 ・「極道はスーツに刻印する」
 ・「極道はスーツに契る」
 ・「極道はスーツを愛玩する」
 ・「極道はスーツに二度愛される」
 ・「番犬は悪徳弁護士に狂う」(諏訪と木崎のスピンオフ)
 ・「極道はスーツを愛で貫く」
 ・「極道はスーツを秘密に閉じ込める」

「極道はスーツを愛玩する」 中原一也 / ill.小山田あみ

雑誌の取材を受けたテーラーの榎田。だが取材後、同席したカメラマンの立野から、極道の恋人がいることをネタに一千万を要求される。卑劣な脅迫などには屈しない…榎田は恋人、芦澤には敢えて相談せずに立野の要求を突っ撥ねたのだが…。その夜、事の真相を知った芦澤は立野にある取引を持ちかける…。一方、芦澤の側近、木崎は弁護士、諏訪の警護を命じられ…。猛りたつ契り愛もどかしい焦れ愛。

「極道スーツシリーズ」第5弾。
今回は榎田と芦澤の本編と、諏訪と木崎のお話「The watch dog 番犬」の収録。
まずは榎田と芦澤のお話。
榎田の店がある雑誌の取材を受けることになるんですが、取材後その時撮影を担当したカメラマン・立野に、極道の恋人がいることをネタに一千万を要求されてしまう。榎田は芦澤に相談することはせずひとりことにあたろうとするんですが、芦澤はもちろん気がついていて(笑)、自分の恋人を脅迫した卑劣な男を陥れる、ある取り引きを持ち出すんですが、それが何故か自分たちのベッドシーンを立野に撮らせること(!)。もちろん考えあってのことで、それに乗った立野はとんでもない目に遭わされるんですけれど、策略とはいえ芦澤、単純に楽しんでるだけなんじゃなのかと疑ってしまう(笑)。
…とまぁ、今回はこれまでと違って敵がしょぼいので(笑)、ここのところ続いていたはらはらさせられっぱなしの展開とは違う、何処か(いい意味で)肩の力の抜けた感じです。
そんな感じでギャラリーに見せつけたりとかエロもいろいろ濃ゆいんですけれど、いちばん驚いた?のは芦澤のうさぎ発言(笑)。29の男に向かってなんちゅー恥ずかしいこと言ってくれるんですか!
そして榎田も、これまでとんでもない目に遭ってさすがに度胸がついたのか、これしきのことでは動じない肝の座った感じになりましたね。

主役カプはもうこんなことでは揺らがない、深〜い絆を築いて安定した感じですが、問題は諏訪と木崎ですよ。
正直もう、榎田たちよりもこの二人のほうが気になって仕方がないです(笑)
今回、諏訪の母親が出てくるんですが、これがもうどうしいようもない(苦笑)。男のことしか頭にない上、実の息子を金をせびる相手としか見ていない究極のダメ親ですよ。この母親が諏訪がここまで自虐的になってしまった原因なんでしょうね。
その母親への腹いせの行動をとった諏訪にいつものごとく木崎が止めに入って、交換条件に組長の娘をデートに誘うことになってしまう。
なんだか、すれ違ってばかりでふたりにヤキモキしながら眺めていたこの関係が、どんどん雲行きの怪しい方へと流されている気がするのは私だけでしょうか。。
ひたすら破滅的なラストにならないことを祈るばかりです!
今回、諏訪のバックグラウンドが分かったことで、彼の苦しみや自虐的な思いに切なさが増してきました。いつになく思い悩む木崎の姿にもキュンときて、もーそこまでお互いの事ばっか考えてるくせになんで肝心なところに気が付かない?! とじれったくて仕方がないです。
このふたり、何とか幸せになってほしですねぇ。

というわけで、本編よりも番外編に軍配の上がった5作目でした。

「極道スーツ」シリーズ
 ・「極道はスーツがお好き」
 ・「極道はスーツを引き裂く」
 ・「極道はスーツに刻印する」
 ・「極道はスーツに契る」
 ・「極道はスーツを愛玩する」
 ・「極道はスーツに二度愛される」
 ・「番犬は悪徳弁護士に狂う」(諏訪と木崎のスピンオフ)
 ・「極道はスーツを愛で貫く」
 ・「極道はスーツを秘密に閉じ込める」

「極道はスーツに契る」 中原一也 / ill.小山田あみ

極道の恋人を持つ若きテーラー、榎田―ある晩、たまたま店を訪れていた弁護士の諏訪と共に何者かに拉致され、檻の中に監禁されてしまう。そこは中国マフィアたちが密かに人身売買を行なう屋敷。恋人の芦澤と敵対する男の企みによるものだった。榎田の目の前でクスリを打たれ、淫獣と化す諏訪…。一方、罠と知りつつも屋敷に乗り込んでいった芦澤と側近の木崎は…。

「極道スーツシリーズ」第四弾。冒頭の甘々別荘バカンスから一転、シリーズでいちばんハードでデンジャラスな展開の4作目です。
芦澤とのバカンスから戻ってから数日後、榎田はその日偶然店に来ていた諏訪と共に中国マフィアに拐われ、人身売買をおこなっている屋敷に監禁されてしまいます。実はそれは芦澤が組の中で敵対している男の仕業で、芦澤は木崎とふたり榎田たちが捕えらてれいる屋敷に侵入しますが、彼らも敵に捕まってしまう。
芦澤までもが捕まってしまうだなんて、もう、今回は本当に絶体絶命のピンチで、これでもかというほど危険なイベントの連続です。榎田は捕まって早々クスリを打たれて男たちに陵辱されそうになるし(結局諏訪が身代わりに。。)、とんでもない状況で殺されかけてしまうし、更には虎が出てきた(!)
読んでてつくづく、中原さんハードボイルドが大好きなんですね…、と思ってしまった。
そんな危険をかいくぐった後にふたりが互いを貪るように求めてしまう場面には萌えました。今回もバルーンやらグミやら使っての尿道プレイは健在(笑)で、他にも道具を使ったりしてるんですが、いちばん萌えたのは脱出後のあれでした。
それにしても榎田、巻を重ねるごとにMっ気が増してますね。このままどんどん芦澤好みのマゾヒストになっていくのでしょうか(笑)
 あとあと、今回は小山田さんのイラストが今まで以上にエロ全開で、作品さらに盛り上げてます! 毎回ステキなんですけれども、今回は特に見応えがありました(笑)
今回とうとう榎田の存在が組に知れてしまって、晴れて芦澤の愛人認定! とすんなりいかないのがもどかしいです。組長の孫娘との縁談が持ち上がっていたくらいですから、芦澤も立場上大変なんだなぁと。それが今後も影を落としてしまうことを思うと、榎田がこれ以上危険な目に遭いませんように!…と祈るばかりです;

諏訪と木崎のお話「コールド・ターキー」も入っています。
拉致事件後、予想以上のクスリの後遺症を引きずっている諏訪は、それまで以上に毎夜男を取っ換え引っ換えしていて、それを見咎めた木崎が…、という展開なんですが、まぁすれ違ってばかりです。ラストの木崎の言動が切ないやら何やらで、見ていてもどかしいー
主役のふたりよりも、こっちの行く末が気になってしまったお話でした。

「極道スーツ」シリーズ
 ・「極道はスーツがお好き」
 ・「極道はスーツを引き裂く」
 ・「極道はスーツに刻印する」
 ・「極道はスーツに契る」
 ・「極道はスーツを愛玩する」
 ・「極道はスーツに二度愛される」
 ・「番犬は悪徳弁護士に狂う」(諏訪と木崎のスピンオフ)
 ・「極道はスーツを愛で貫く」
 ・「極道はスーツを秘密に閉じ込める」

「極道はスーツに刻印する」 中原一也 / ill.小山田あみ

テーラーの榎田のもとにある日、弟子入りを乞う青年が…。その青年、佐倉の熱意にほだされ雇い入れた榎田だが…恋人である極道の芦澤は佐倉を見た途端、クビにしろと言い出す。理由も語らぬ芦澤に榎田は不信感を募らせ、思わず「僕はまだあなたの愛人なのか?」と詰問。そんな榎田に、芦澤は強引に所有の印―刺青を彫ってしまう。…佐倉の正体は?そしてこじれた二人の関係は?狂気を孕む焔愛。

「極道スーツシリーズ」第三弾。デンジャラス度が上がっています。
 
榎田のもとに、どうしても見習いとして雇ってほしいというテーラーを目指す青年・佐倉が現れる。受け入れるつもりはなかった榎田だけれど、食い下がらない佐倉に押し切られて結局彼を雇うことに。
ところが佐倉は芦澤のかつての想い人に生き写しで、それを知った芦澤は理由も告げずに佐倉を首にしろと榎田に言います。そんな自分の言葉には耳を貸さない一方的な芦澤に榎田は不信感を持ってしまい、二人の関係がこじれてしまう。
そんな榎田を自分から決して逃すまいと、芦澤は何と榎田に刺青を彫らせてしまいます。
今回これまで以上に危険な事態になって色々びっくりな展開の連続でしたが、いちばん驚いたのはこのことでしたね。素人相手にそこまでしちゃうとは、、芦澤の榎田に対する執着がどれだけのものか伺えるというものです。極道の恋人になった時点で片足突っ込んでいたとはいえ、榎田はこれでもうある意味本当に堅気ではなくなってしまって、もう一生芦澤から離れられないですね。
なかなか尻尾を出さなかった佐倉の正体にも、えー! という感じ。執念とはいえそこまでするとは。
今回はかなりデンジャラスでハードな展開で、榎田も芦澤も命の危機に晒される事態になりますが、死を覚悟した榎田の胸に去来した芦澤への揺るぎ無い信頼には、感動してしまいました。そんな榎田を見事助け出す芦澤もかっこいい。傲慢でもなんでも、こういう姿を見るとやっぱりいい男だと思うのでした。
榎田はなんというか芦澤を信じる前に疑ってぐるぐる悩む傾向にあるので、ここでしっかりと結ばれた絆を信じて揺らぐことなくなってほしいな、と思いました。

そしてエロも、マドラーやらカテーテルやら、こっちが心配になってしまうほど(笑)な尿道プレイあり、テレフォンなんとかありと、いろいろオイシイですww

本作から諏訪時崎の番外編が収録されるようになって、ここでやっと?ふたりがそういう関係になります。けれどもお互いが不器用なので上手く心を通わせられておらず、なんだかじれったい状態です(笑)
そして今までの作中の、ふたりの間にあったらしいやりとりからは、お互いに愚痴り合いでもしているようなもう少し近い関係なのかと想像していたんですが、ずいぶん遠いですねー(笑)
ふたりがめでたく幸せになる日が来ることを祈っています><

「極道スーツ」シリーズ
 ・「極道はスーツがお好き」
 ・「極道はスーツを引き裂く」
 ・「極道はスーツに刻印する」
 ・「極道はスーツに契る」
 ・「極道はスーツを愛玩する」
 ・「極道はスーツに二度愛される」
 ・「番犬は悪徳弁護士に狂う」(諏訪と木崎のスピンオフ)
 ・「極道はスーツを愛で貫く」
 ・「極道はスーツを秘密に閉じ込める」

「極道はスーツを引き裂く」 中原一也 / ill.小山田あみ

美形ヤクザ、芦澤の“期間限定の愛人”からあれやこれやを経て“本物の恋人”になった、老舗テーラーの二代目、榎田。以来、その筋のお客さんもずいぶん増え…。そんな折、顧客の一人、塚原が、芦澤と組長の孫娘との結婚話を榎田に吹き込んだことから怪しい雲行きに…。実はこの塚原は芦澤の天敵。二人の関係を嗅ぎつけ、芦澤を陥れようとして…。ビースティ・エロス全開、愛の仕立屋稼業、書き下ろし第2弾。

ヤクザ×テーラーの「極道スーツシリーズ」の第二弾。
個人的にはこの二作目が、シリーズの中でいちばん好きです! だって続編で珍しく期待を裏切らない面白さでしたから!
ことBLに限った話じゃなく、シリーズの二作目って一作目を超えられないビミョーな、これなら一作完結にしてくれた方がよかったじゃないかなものが多いのが現実です。が! これはそうではありまでんでした。

前回から数ヶ月。芦澤の恋人になった榎田は、これまでヤクザお断りだった仕事の方針を変えて、今ではヤクザの客も受け入れるようになっている。
その中には芦澤の天敵・塚原もいて、それが波乱を起こします。
塚原はヤクザに見えない紳士的な印象の男だけれどその内側はかなり極悪で、男気のある芦澤とはタイプが違う。塚原はひとのいい榎田を利用して宿敵・芦澤を陥れようと画策します。
塚原から芦澤に組長の孫娘との結婚話が持ち上がっているという全然聞いていなかったことを聞かされ、芦澤のことで頭がいっぱいになっていた榎田は仕事で初歩的なミスをしてしまい、それが塚原に付け入られるスキを作ってしまう。
そしてそれが原因で、榎田と芦澤の関係にも危機が訪れます。

最後までハラハラさせられる展開なんですが、悩んでいる時の榎田の心理描写とか真剣に誰かを想うことに慣れていない芦澤の子供みたいな一面とか、波乱を乗り越えながら見せるキャラの心理が丁寧に書かれていてとても読み応えがありました。
木崎や諏訪、そして榎田の店で働く大下などなど、脇役たちも大活躍しています。
あと、榎田のテーラーとしての姿もいいですね。スーツ萌える〜
晴れて恋人同士となった本作は前回よりラブ度が、そしてエロも増していて、榎田はドSな帝王・芦澤にどんどん開発されてます(笑)。
塚原のいざこざで二人の関係がこじれて、嫉妬のあまり暴走してしまう芦澤は可愛かった(笑)。榎田はたまったもんじゃなかっただろうけれども。。
なんだかんだでこのふたり、相性ぴったりなんでしょうね(笑)

「極道スーツ」シリーズ
 ・「極道はスーツがお好き」
 ・「極道はスーツを引き裂く」
 ・「極道はスーツに刻印する」
 ・「極道はスーツに契る」
 ・「極道はスーツを愛玩する」
 ・「極道はスーツに二度愛される」
 ・「番犬は悪徳弁護士に狂う」(諏訪と木崎のスピンオフ)
 ・「極道はスーツを愛で貫く」
 ・「極道はスーツを秘密に閉じ込める」

「極道はスーツがお好き」 中原一也 / ill.小山田あみ

「俺が満足するスーツを作り、それが仕上がるまで愛人を務めれば、借金は帳消しにしてやる」―傲慢な口調で無体な要求を突きつけてきた男、芦澤。高級なスーツを嫌味なく着こなし野生の色香を放つその男の正体は、ヤクザだ。真面目な二代目テーラーの榎田は、老舗の看板を守りたい一心でデンジャラスな世界に足を踏み入れ、男の味をたっぷり教え込まれることに…。危険な愛の仕立て屋稼業。

先日出た諏訪と木崎のスピンオフ読んだら、改めてこのシリーズ読み返したくなってしまいました(笑)。
というわけで、「極道スーツシリーズ」の第一弾でごさいます。

真面目でお人好しのテーラー・榎田(受)は、従業員に騙されて二千万もの借金を背負うことに。その取立てに店に来たのは、危険で野性的な色香を放つヤクザの若頭・芦澤(攻)。芦澤は自分が満足する出来のスーツを作ることと、スーツが仕上がるまでの期間愛人を務めることを呑めば借金を帳消しにしてやるという、真面目な榎田には絶対受け入れられない条件を突き付けてきます。
おまけに、その期間内にオトしてやるとまで豪語する。
その傲慢さに、最初は誰が受け入れたりするかと強気で突っぱねた榎田でしたが、芦澤の示した期限内に金を作ることができず、店を守るため無茶苦茶な要求を呑むことに。
真面目でヤクザが大嫌いな榎田は、どんなスーツも見事に着こなしてしまう色男だけれども傲慢な帝王・芦澤を最初のうちこそ毛嫌いしていますが、芦澤が時おり見せる優しさに徐々に気持ちが傾いていきます。芦澤に忘れられない女性がいるという話を聞いてからは、彼のことがますます気になって仕方がなくなる。
そしてゲームで始めた取り引きが、榎田のみならず芦澤にとってもだんだんそうではなくなってしまうんですね。自分の持つ地位や財力、そして与える快楽にはまるで靡かない榎田を、徐々に真剣にオトしてやろうとするんです。そしてセックスフレンドである美貌の悪徳弁護士・諏訪と引き合わせて榎田の反応を見たりと、何だか子どもっぽいことをしたり、知らずと榎田にのめり込んでいる証拠か、彼を愛人としているうちはそれまで男も女もお構いないしに喰いまくっていたのが嘘のように、榎田以外の誰も抱こうとしなくなる。
期間限定の関係が徐々にそれではすまなくなりそうな気配になった頃、何と芦澤が逮捕されるという事件が起こります。そしてそれは、思わぬかたちで芦澤の過去と絡んでいきます。
そして一波乱の末、ふたりが期間限定の愛人関係から正式な恋人同士になるまでが、一作目の内容。

要するにBLには数多くある、借金の形にヤクザに身を売り…的な内容の作品のひとつなんですが、この作品はヤクザとテーラーという、他では見られない組み合わせがいい味を出しています。BLでヤクザが出てくれば、相手は必ず同業者か警察関連なのに、テーラー(笑)。
そのテーラーの榎田のスーツ作りに対する情熱がいいし、何よりスーツの似合う男は萌えます(笑)。
内容もユーモアに富む場面が散りばめられつつテンポよく進んで行くので面白いです。諏訪と自分を比較して自分をお茶漬けに例えてひとり突っ込む榎田の姿が、何度読んでも笑えます。
そしてなにより、どんなスーツも着こなす危険な香りのする男前でオヤジっぽい部分も合わせ持つ、如何にも中原さんらしい芦澤のキャラがいいです。ラストはありがちな制裁で終わるのかとおもいきや、受けをあんな目に遭わせた相手を許してしまう度量の大きさには感動。
それから、諏訪ってそういえば最初の方は「氷の王子」だったんだなぁと思ったり。

エロは、無垢な榎田が無理難題を押し通す傲慢な男に一から仕込まれていく出だしから始まって、ずっと濃ゆいです(笑)。このシリーズの醍醐味ともいうべき尿道攻め(お初は綿棒ww)はもちろんですが、個人的には芦澤の背負う刺青がセクシーでたまらん(笑)。
この刺青を榎田が気に入ったと知るや自分の寝室を改装して天井に鏡を嵌めこみ、鏡に映る刺青をじっくり見せつけながら榎田を攻めるというプレイがね、なんだかもう…!
鏡に映るのは、受けのあられもない姿以上に攻めの淫らな肉体の方なんですよね。ここまで攻めの肉体がエロティックに表現された作品は、BL広しと云えども見当たらない気がします。

お話もエロもすごーく面白いんですが、もう少し心理描写を掘り下げていたら深みが出たかなとも思うので、そこがちょっと残念な点。でも好きなシリーズ第一弾です^^

「極道スーツ」シリーズ
 ・「極道はスーツがお好き」
 ・「極道はスーツを引き裂く」
 ・「極道はスーツに刻印する」
 ・「極道はスーツに契る」
 ・「極道はスーツを愛玩する」
 ・「極道はスーツに二度愛される」
 ・「番犬は悪徳弁護士に狂う」(諏訪と木崎のスピンオフ)
 ・「極道はスーツを愛で貫く」
 ・「極道はスーツを秘密に閉じ込める」

「番犬は悪徳弁護士に狂う」 中原一也 / ill.小山田あみ

淫乱で悪徳…を自認する弁護士の諏訪。彼を苛立たせているのは若頭、芦澤の右腕を務める木崎の存在だ。泥まみれの姿で現れ激しく自分を抱いたあの日を最後に、このサイボーグじみた男との関係が途絶えていた。そんな折、事故に遭い入院を余儀なくされた諏訪は、木崎の意外な一面を知るのだが…。極道スーツシリーズの脇カップル、木崎と諏訪。二人の関係が急展開…。向かう先は…破滅?…狂おしく迸る激情★愛。

待ちに待った「極道スーツシリーズ」のスピンオフ、やっと出ました〜!
本編カプの攻・芦澤の組の汚れ仕事も受け合う病んだ淫乱悪徳弁護士・諏訪(受)と、芦澤のサイボーグみたいな側近・木崎(攻)が遂に…! な、このシリーズを読んできた者なら待ってましたな一冊です! 正直マンネリ気味かなぁと思わないでもない(苦笑)本編カプよりも、このふたりの方をどうにかしてくれとヤキモキしていたこの頃でしたので、嬉しくてたまらないのでした。
このふたりは本編シリーズの3作目「極道はスーツに刻印する」に収録の短編でくっついて、以来本編後に彼らメインの短編が収まるようになっていますが、どちらもが不器用で誤解を重ねたまま実は想い合っているのに共に自分の気持ちに気が付いておらす、諏訪は木崎が芦澤の恋人・榎田に叶わぬ想いを抱いていると思い木崎に組長の孫娘との縁談を取り持って彼を自分から遠ざけようと画策するし、木崎は諏訪がまだ芦澤を想っているのだと考えて、すれ違ってばかりでただ躰の関係のみが続く、というヤキモキした状況でした。
けれども諏訪を巡り自分の弟分を殺害してしまった木崎がそれによって諏訪に対する気持ちに気が付くも、罪を犯してしまった自分に彼を想う資格はないと諏訪から離れる決意をしたのが、これまでの流れ。

今回、本編のような派手な事件や出来事が起こるわけではありません。
前回から約一ヶ月後、木崎の起こした殺人は木崎の隠蔽工作の効果で誰の犯行かわからないままだが組長の孫娘に付いていた人間の失踪とあって、大きな波紋を呼んでしまっています。そして何の因果か、その捜査に当たっているのは当の木崎。
一方の諏訪は、唐突に躰の関係をやめた木崎に純な榎田とまるで違う自分にとうとう嫌気がさしたのかと、また自虐的な思いにとらわれている。何故そこまでうねうね考えてしまうのに木崎に対する感情が恋だと気が付かないんだと、じれったいです。
その上またしてもあのややこしい母親が姿を現して、何を思ったか「親子関係をやり直したい」なんて言い出して、溜まっていたストレスが限界に来てしまう。
諏訪はもの凄い美形であるのをいいことに手当たり次第男を食い散らかして自らを淫乱と言って憚らない男。でも自分に開き直っているタイプではなくて、実はもの凄く不器用で自虐的な思いにとらわれてしまいがちな病んだ人間なんですね。今までもそれはわかっていたんですが、今回一冊じっくり彼視点で進んでいくお話を読んで、よりそれが実感できました。母親との確執で生じたんだろう自分に価値を見出せないでいる姿や自分は榎田のような無垢な人間にはなれないという思いなど、彼の抱える色んな感情が本当につらい。
そんな追い詰められた諏訪がそれと知らずに死のうとして、人から指摘されて初めて自分の取ろうとしている行動を客観視できて気が付くとか、さすが中原さん上手いです。ああいう時の人の心理状態ってあんな感じなんだろうなと思わずにいられない。
そしてそんな切羽詰まった状態での木崎の漸くのあの言葉…! ああやっと、とぐっときました。どのくらいこの時を待っていたことか(笑)!
これまで散々すれ違ってきたふたりがやっとお互いの誤解を解いて気持ちを通わせたのには、ここまでの長い道のりを思い返すと、もう本当に感無量ですよ…!
そして晴れて恋人同士になったあとも敬語のままの諏訪と慇懃なままの木崎の姿に、何だか萌えます(笑)。
このままハッピーエンドになってくれればいいんですが、状況が状況なだけに一波乱二波乱ありそうです。何しろ木崎が起こしたあの事件は解決しておらず、それどころかいっそう暗雲が立ち込めそうな気配。そして諏訪が破滅的結末に魅了されているような気配濃厚で、そのままバッドエンドになだれ込まないで〜!!!…と心の中で叫んでしまいました。

このふたりが無事ハッピーエンドを迎えられるかは…中原さん次第という感じですね…。ハードボイルド好きらしく破滅的な顛末に惹かれるのは何となくわかるし、そういうBLがあってもいいとは思うんですけれども、ことこの作品に関してはバッドエンドだけは避けてほしいです。これだけ長いシリーズになってどのキャラにも愛着があるし、何よりこれまで散々つらい目に遭っている諏訪には絶っっ対に幸せになってほしいので。
榎田と芦澤の番外編も入っているんですが、タイトルが「嵐の前」…。
ふたりのラブラブな時間を描いたお話(尿道プレイはなです;)ですが、きっとこの後は試練の連続で、ひとり何も知らずにいる榎田が歓びの中にいられるのはもう僅かな時間なんでしょうね…。
これはもう、芦澤に期待するしかない気分です。そもそもシリーズ一作目で木崎を許した芦澤、きっと今回もふたりのために動いてくれるはず…! 榎田のためにも、頑張れ、芦澤…!
試練の先に、諏訪と木崎ふたりの幸せが待っていることを切に祈ります。

というわけで、番外編となっていますが今後の本編の流れにも大きく関わってくること間違い無しの内容になっていました。次回作につながるんだろう伏線も張られていて、これはもう絶対見逃せないですね! この続き、早く読みたいです…!

「極道スーツ」シリーズ
 ・「極道はスーツがお好き」
 ・「極道はスーツを引き裂く」
 ・「極道はスーツに刻印する」
 ・「極道はスーツに契る」
 ・「極道はスーツを愛玩する」
 ・「極道はスーツに二度愛される」
 ・「番犬は悪徳弁護士に狂う」(諏訪と木崎のスピンオフ)
 ・「極道はスーツを愛で貫く」
 ・「極道はスーツを秘密に閉じ込める」

「あなたは僕を愛していない」 華藤えれな / ill.小山田あみ

生涯、私以外の人間に唇を許してはならない―。初めての男・ミハイルがかけた呪縛に今も囚われる海堂。眉目秀麗な天才脳外科医でありながら、どんな男と寝てもまるで娼婦のようにキスを拒んでしまう。やっぱりミハイル以外愛せない…全てを捨て彼の元へ向かった海堂だったが、既にミハイルには恋人がいた。しかも病によって子供のまま時を止めた恋人は彼の異母弟で―!!最悪の醜聞からミハイルを守るため海堂はカモフラージュの恋人を演じることになり…。

屈折した天才脳外科医ふたりの、タイトル通りの切ないお話でした。
天才脳外科医として評判の海堂一臣(受)は、ウィーンでの研修医時代に初めて付き合った男・ミハエル(攻)のことが忘れられないまま7年を過ごしていた。
交通事故に遭い九死に一生を得たものの執刀できない体になった一臣は、もう一度ミハイルに会うため彼のいるベルリンに向かいますが、7年ぶりに再会したミハイルは想像以上に冷淡な言葉を一臣に浴びせます。
更には彼が、異母弟のマリオンを愛しているらしいことがわかる。
マリオンは脳に悪性の腫瘍があり、20歳になるのに幼いままで、朝起きたら昨日の記憶が無くなってしまうという難病を抱えている。そんなマリオンを愛し支えるミハイルを醜聞から守ろうと、一臣は捨て身の覚悟でベルリンに留まりミハイルの偽の恋人を演じることになりますが…。

一臣もミハイルも、とにかく素直じゃないんですよ(笑)
お互い状況はまるで違うけれど育った環境が影を落として歪んでしまっていて、一臣は笑顔で、ミハイルは無表情でいることで本心を隠している。
ミハイルが酷いのは彼が実はとても不器用な男だからなんだろうな、というのは読みながらなんとなくわかるんですが、対する一臣の歪み方は…。
再開したミハイルがとんでもなく酷いことを言ったり要求しても、一臣はそれを受け入れてしまう。普通なら絶対受け入れられないと思うんですけれど…、一臣は一見穏やかに見えつつも内面はかなり壊れているってことなんでしょうね。
彼らの、いろんな思い違いやすれ違いの重なりでどうしようもなくねじれた関係を救ってくれるのは、記憶が保てないために天使のように純粋なマリオンの存在。病気のために記憶が保てない彼の、兄を想う気持ちがいろんな意味で切ないです。ミハイルが彼を純粋に肉親として愛しているのは、最初から伝わりました。彼の誤解を解こうとしない態度やねじくれた性格が、一臣はじめ周囲の目に弟との性的関係を在り得ることにしてしまってしたんですね。

ミハイルが旧東ドイツ出身という設定で、ウィーン研修時代にもチームを組んでいた研修生がボスニア出身だったりと、ベルリンの壁崩壊前後のヨーロッパの状況を知らない、もしくは興味がない方にはちょっとややこしい部分があるかもしれません。けれどもそうした丁寧な取材に基づく舞台作りが、お話に深みや切なさを与えていると思いました。しっとりとしたベルリンの街並みが浮かんでくるよう。行ったことないですけど;
それから、若き日のミハイルが一臣に言った「死んだときは私に献体しろ」という悪趣味すれすれの言葉も、医者である彼らの関係を考えるとなんともすごいとどめの言葉だなぁと。どことなく倒錯した気配さえします。
ただラストはもうちょっとひねりが欲しかったかな。しっかり読ませるお話なだけに、マリオンの遺したノートが全ての決着を着けてしまうというのは、ご都合主義的に見えなくもないのが残念でした。いえ、「忘れることのノート」には泣けてきたんですけれどもね…。

本編と、あとがきのあとにミハイル視点の後日譚「エゴイストMの憂鬱」が収録されているんですが、これを読んだら不器用な男ミハイルがかわいく思えて、愛しささえこみ上げてきました(笑)。そんな彼の一面をわかった上で本編を読んでみたらなお一層ww

それから読みながら「おや?」と思っていたら、この作品はリンクスロマンスから出ている「シナプスの柩」のスピンオフだったんですね。実は初読みの作家さんでしたのでそうとは知らず(汗)、作中に前作のキャラが出てきているのを見てあれれ、と思ったのでした。。彼らのお話も気になるので、「シナプスの柩」も近々読んでみようと思います。

「唇に嘘が滴る」 かみそう都芭 / ill.小山田あみ

父を殺した犯人を捜すため、男娼としてマフィアに飼われる道を選んだ香鳥。自らを抱かれる体に変えようと、闇のオーラを放つ謎の男・燈吾に無垢な身を委ねた。二年後、首領の愛人となった香鳥は、取り引き先企業の秘書として現れた燈吾と再会する。ストイックな秘書の仮面に潜めた闇の閃き。彼はいったい何者なのか―疑惑を抱えながらも、惹かれる想いに身を焦がす香鳥は…。燈吾の目的は?敵か、それとも…。

小山田さんのイラスト目当てで購入したんですが、シチュやら何やらいろいろ美味しくて面白かったです!
父親の仕事でミラノで育った香鳥(受)は、その唯一の肉親だった父親を何者かに殺され、たった18才で天涯孤独の身に。さらに仕事でマフィアと繋がっていたらしい父親の借金の形にマフィアに売られ、死で償うか男娼として生きるかを選ぶことになる。途方に暮れた香鳥だが、ある時父が敵対する組織の人間に殺されたらしいという情報を得る。彼は父の敵を探し出すため、男娼に身を落としマフィアから父の死の真相を探ることを決意する。
そして、そのために自分のまっさらな身体を男を悦ばせるものに変えるため、人の上に立つ者のみが持つオーラを纏う謎の男・燈吾(攻)に身を委ねる。
見ず知らずの美青年に「男に抱かれる体にしてください」なんて頼まれて、それを受け入れられる男の確率ってどのくらいだ? とか、またヘンなところで引っかかってしまったんですが、そこはBL、あくまでファンタジーとして割りきって、あまり野暮なことを言うのは止めましょう(笑)。
ともかく燈吾によって身体を開かれた香鳥は、燈吾の「最高の娼婦になれ」という言葉を支えに、男娼に身を落とします。
ここまでがプロローグという感じで、お話が本格的に動き出すのはそれから2年後、マフィアのドン・ガルディノの愛人にまで登りつめ今や「夜の宝石」と讃えられる高級男娼になった香鳥が、ガルディノが取り引きに手こずっている日本企業タタラグループの会長・多々良耕造のご機嫌を、体を使って取るため日本にやってきたところから。ミラノでの情報収集が手詰まりになっていた香鳥は、日本で新たな情報を得ようと考えていたんですが、そこで待っていたのは、なんとあの燈吾だった。髪を整えメガネとスーツで身を固め、今は多々良の秘書を務めている彼は高槻、と名乗った。
香鳥は燈吾が実はタタラグループを影で繰っていることに気付き、更には彼が父親の死にも関わっているらしいことも知ります。けれども自分がどうしようもなく彼に惹かれていることにも気付いてしまう。燈吾は一体何者なのか。香鳥の想いは叶うのか。
…というお話が、ふたりの関係が香鳥の父の死の真相や燈吾の目的と絡み合いながら展開して、一度読み始めたら止まらなくなりました。もっとページがあってもいいくらい。

男娼に身を落とすとかマフィアのドンの愛人とか、BLではわりと見るフレーズですが、この作品の面白いところは、受けが攻めに飼われやがて救われるとかその愛人にされたりするのではないところ。燈吾によって身体を開かれた香鳥はその後誰に頼るでもなく自力でマフィアのドンの愛人にまで登りつめ、自ら答えをつかもうとする。
男娼らしくビッチなのに心は健気で純、な香鳥がいいです。今まで読んできたBLの中でこういう受けはいなかったので、何だか新鮮でした。そして香鳥が前向きで全く挫けないし、彼を囲っている男たちがわりとフツー(酷いことをしないという意味で)なので悲壮感はないです。
そしてなかなか真意を見せない燈吾も魅力的。素の底の知れない雰囲気の時と、秘書に化けている時のギャップに萌えました(笑)。だって秘書に化けたら香鳥とふたりでいるときさえも慇懃に敬語で接するという徹底ぶりですよ…!
父親の死の真相も最後まで引っ張りますが、同じくらい燈吾の本音もなかなか見えてこなくて二転三転、どうなるんだろーと思いましたがラストはちゃんとハッピーエンド、いい意味で諦めの悪い香鳥が最後まで諦めなかったからこそのハッピーエンドです。
そしてお話がお話なのでエロもボリュームいっぱいです(笑)。恋を知るより先に快楽を覚えてしまった香鳥が燈吾への恋心を自覚してからが、いろいろと萌えました(笑)。
でも、香鳥が男娼という設定なので、攻め以外の男とのシーンもあったりするので、そういうのが苦手な方はご注意を。
 
それから小山田さんのイラストがいい! きれいでかっこよくて艶っぽくて、萌え死にそうなくらいもうたまらんです(笑)。これだけでも一見の価値はあります!
 
というわけで、予想以上に楽しめた一冊でした! 

「落園の鎖 〜狂犬と野獣〜」 沙野風結子 / ill.小山田あみ

警視庁公安部の美しい狂犬・靫真通と指定暴力団の野獣・峯上周。峯上は、靫の身体をエサに情報を運ぶ、靫の「協力者」だ。靫は曲者の峯上を飼いならそうとするが、峯上は逆に靫を屈服させようとする。精神の深部まで喰らうような野獣の凌辱。靫にとっては、耐えられない脅威だ。しかし、テロ事件の解決とともに「協力者」との関係は終わった――はずだった。峯上と再会するまでは。「あんたは俺を必要としている」新たな事件の下、再びふたりは接触を持つ。野獣の破壊的快楽に、狂犬は服従させられるのか!?

待ちに待った第二弾です!
前作より(いろんな意味で)凄いことになっています!

礎苑教の事件が一応の決着を見せてから4ヶ月、警視庁公安部での礎苑教班は縮小され、靫も環境保護団体「ソイルロード」の捜査に配置されていた。その潜入捜査中、靫は再び峯上とめぐり合う。
今回の敵・ソイルロードは、元左派の祖父とその孫の双子の手による環境保護団体でエコや環境保護といった耳障りの良い言葉を餌に若者を釣っていて、セミナー参加者に失踪者が出たことで公安が動いている。このソイルロードは前回のカルト集団よりも現実味があって、なんだか現実にありそうな気がしました。
彼らは若者を洗脳させるためにリズム―、礎苑教のものに似ているけれど微妙に違い、更に光と映像を駆使している独自のリズムを使っていて、それに靫も捕らわれてしまう。
靫は今回の潜入捜査のために中島透という普段とはまるで違う冴えない男に扮装しているんですが、徐々に徐々にこの中島と自分との切り替えが上手くいかなくなって、自分のつくり出した人格の方に取り込まれそうになる。そこに至るまでには思うように進まない捜査への苛立ちや同僚への不信、更には峯上との関係のねじれなどなど靫が追い込まれていく過程があるのですが、靫ってあれで実はけっこう神経細いのかなと思いました。自分の内側深くに他人に踏み込まれたくない、自分の外側に支えとなるものを作りたくないというのは、そんな彼の究極の自己防衛ですね。彼は過去のトラウマを引きずっているというよりは自分の中に確実にある凶暴性に呑まれまいともがいていて、ぎりぎり踏み止まるためのストッパー、というか安定剤が峯上なのでしょう。

ふたりの思い違いからくるすれ違いが絡みながら物語が展開して、前回より格段に萌えなところが多かったです。これだけハードな展開なのにきゅん…とくるエピソードが多いというか。
そしてなんだか前回に増して峯上が可愛く思えた(笑)。前作でも下の名前で呼ばないと拗ねるとかあったけど、今回は更にひどくなっていて(笑)、拗ねて靫に八つ当たり的暴走をしちゃったりしています。靫は気の毒なんだけど、読んでて峯上の気持ちがわかってしまったのでむしろ可愛いとさえ思えてしまうんです。あれだけ図体でかいくせに峯上には年下の可愛さがあるんですよね〜。絶妙なキャラだと思います。

あと、リズムと音がシリーズを通しての重要なファクターだと思いました。敵がつくり出すリズムやバイクの躍動のリズム、そして靫が峯上の名を呼ぶときの音。「あまね」とひらがなで表記されてるのを見ると、あれは言葉がというよりはその音の響きが二人を結び付けているんじゃないかなと。

エロももちろん裏切ってません。ポーションバター使ったり声を出せない状況下でとか、小道具やらシチュエーションやらさすが沙野さんという感じです(笑)。前回はドライな感じだった靫と峯上も、お互いの距離がぐっと縮まったことで甘さを増しているので、前回はダメだった方もこれなら大丈夫かと。
でもいちばんキたのはやっぱりあれですね、…3P! 前回同様主役カプ以外のキャラ間でのプレイですが、リズムが起爆剤になって…っていうのがもう…! 萌えつきそうでした(笑)
あと、マニアックなところをあげるなら、潜入捜査用に変装した靫が双子の兄にセクハラされるところ(笑)。いつもと違っておとなしくて冴えない男・中島として潜入捜査中の靫がセクハラされて状況を冷静に判断しながらそれらしい反応を返す、と見せかけて実は手玉にとっていく、みたいな。いったいどんなプレイですか(笑)。
小山田さんのイラストがまたエロくてエロくて、さらにエロさを倍増させています(笑・でもいちばんのお気に入りは井戸のあのシーンですけどね)。
それからこのシリーズはキャラがいいです。靫や峯上はもちろんですが、靫の後輩の宮木のいじられキャラっぷりがいい味出してます。そんな彼は今回とんでもないことになるんですが、このあたりは次作への伏線にもなっているのかな。
 
内容はハードだし痛いシーンもあるので、そういうのが苦手な甘いのが大好きなかた方にはおすすめできませんが、前作ともどもとにかくいろんな意味で読み応えのある作品です。
次回は櫟との対決になるのだとか。もう、絶対読みたいので、期待してていいですよね、ラヴァーズさん?(笑)

「狂犬と野獣」シリーズ
 ・「タンデム 〜狂犬と野獣〜」
 ・「落園の鎖 〜狂犬と野獣〜」
 ・「堕楽の島 〜狂犬と野獣〜」
 ・ラブコレ 6th anniversary(番外編「黒い傘」収録)

「タンデム 〜狂犬と野獣〜」 沙野風結子 / ill.小山田あみ

警視庁公安部において、特上の容姿とS気質の凶暴な性格をそなえる靫真通は、「公安の綺麗すぎる狂犬」と称されている。目下のミッションは、あるカルト教団のテロを阻止することだ。靫は、教団とつながるやくざの峯上周を取り込み、公安に情報を流す協力者に仕立てようと目論む。しかし峯上は仲間内でも野獣扱いされる男で、靫に三十分間無抵抗でいることを条件に出してきた。その三十分間で容赦なく身体の内部までいたぶられ、靫は完全に支配権を握られてしまうが…。狂犬を服従させるか、野獣を懐柔するか。タイトロープな駆け引きがぶつかり合う。

続編の発売が迫ってきたので、再読してみました。やっぱり面白い!
甘さのまるでない「攻め×攻め」な男たちのこのお話、個人的には激ツボです!
警視庁公安の靫真通(受・30)は、カルト集団・礎苑教を追う中で自分に接触してきた礎苑教と繋がりのあるやくざ・藜組の峯上周(攻・25)を情報提供者として取り込もうとする。
靫は、「公安の綺麗すぎる狂犬」と呼ばれているような美形(でも身長は179もある)なんだけどドS気質な男で、暴走族上がりの峯上は藜組の中でも「野獣」と言われている男。
靫は自分の体を餌に彼を懐柔して協力者に仕立てようとするけれども、相手は「野獣」、しかも単細胞かとおもいきやなかなか頭の切れる男で、手懐けさせるつもりが逆に服従させられそうになる。靫は全然受けらしくなくて、受け的な男前さではなくて攻め属性の男っぽさを持っている。それ故に仕事であれセックスであれ何であれ、主導権を渡してたまるか、という、まさに男を賭けた(笑)攻防が続くのですが、これはなかなか他のBLではお目にかかれません。まさに「漢」といった感じです。そして「攻め×攻め」っぽいのが大好きな私にはたまらんです(笑)。ほんと、こんなの待ってました! という感じ。

余談ですが、最初の方に「花シリーズ」でお馴染みの阿南が出てきてて、それも嬉しかったです。靫に頼まれて峯上の情報を持ってくる役回り。

靫が追う礎苑教は数年前に先代のひとり息子の礎野田櫟に代替わりした後、派手なクラブイベントを使って若者を中心に急速にその勢いを増しているんですが、この教祖の礎野田櫟がなかなか曲者です。男とも女ともつかない中性的な容姿と不思議なカリスマ性を持っていて、その上聴く者を洗脳させる作用のある独自のリズムを編み出してそれを使って人間をとり込んでいる。誰もが抱える瑣末なトラウマに訴えかてくる櫟のリズムは、靫にも作用してしまう。けれどもその櫟のリズムを峯上のあの律動で消す、というのが、ふたりの強い結び付きを思わせて、もう、いいです…!
靫の危機を救うのは峯上の存在なんですが、基本的に頭も良ければ行動力もあり、おまけに十人並み以上に強い靫は峯上の助けがなくても何でもひとりでさっさとやってしまえる(実際やる)ので、物理的な援助ではなくて精神的な支えという感じですね。その方が何だかこのふたりにはしっくりくる…というか、何だかエロいです(笑)。

エロといえば沙野さんなんでまぁ言うまでもないんですが、こちらもいろいろとオイシイですよ(笑)。靫と峯上の甘さのカケラもない、まるで大型犬が噛み合っているようなやりとりもニヤリですけど、極めつけは4Pとエネマグラ(爆)。そして櫟が実はという(おいしすぎる)意外なオマケ付きで、沙野さん、やっぱりやってくれますね(笑)

読んでてどんどん引き込まれるストーリーも秀逸! 張り巡らされた伏線や無駄のない展開で最後まで目が離せません。礎苑教も、ああ、何だかこれ実際にあったら怖い、というかありそうと思えるリアリティがありますし。ただ、事件そのものはすっきり解決とはいかず、このまま続編へなだれ込みそうな終わり方。
著者曰く、これは靫と峯上の出会い編とのこと。なのでふたりの関係も、まだまだ発展途上な雰囲気でとても恋人同士みたいな甘さはないです。お互いを認識した、というところでしょうか。
この先ふたりに甘い展開はあるんでしょうかね? 続編が待ち遠しいです!

「狂犬と野獣」シリーズ
 ・「タンデム 〜狂犬と野獣〜」
 ・「落園の鎖 〜狂犬と野獣〜」
 ・「堕楽の島 〜狂犬と野獣〜」
 ・ラブコレ 6th anniversary(番外編「黒い傘」収録)

「真夜中クロニクル」 凪良ゆう / ill.小山田あみ

太陽の下に出られない病気を持つニーナは、気難しくて偏屈だ。そんなニーナが、夜の公園で7つも年下の陽光と出会う。どんなに邪険にしても無邪気に寄ってくる陽光を煩わしく感じるが、ニーナは次第に心を詳していく。そんな二人がすべてから逃れるため、星降る夜に飛び出した―。温かな恋心でニーナを包み込む陽光と、寄せられる想いに戸惑って踏み出すことができないニーナ。時を経て変化に呑まれながらも、成長していく二人が辿り着いた先とは。

凪良さん初読みだったんですが、すごくよかったです。
生まれつき陽の光に出られない病気を持つニーナ(新名・受)と、彼と7つも下の天真爛漫な陽光(攻)の長い長い成長のお話。ニーナ視点の18才と11才の時のふたりの出会い(「真夜中クロニクル」)から、陽光視点の23才と16才になったふたりの距離がちょっと縮まるお話(「月が綺麗ですね」)、そしてまたニーナ視点で26才と19才になったふたりが本当の恋人になる(「LOVE SONG」)までが丁寧に、けれども長さを感じさせられることなく書かれています。

病気のせいで子供の頃酷いいじめにあい小五で不登校になった18才のニーナは、以来昼と夜の逆転した引きこもり生活を送っている。病気と過去の経験のせいで、実はすごくきれいなのに自分の容姿にコンプレックスを抱いていて、おまけに人嫌いで偏屈で愛想がなくてとっつきにくい。そんな「しね、ボケ」が口癖のニーナがひょんなことから出会った7つ下の陽光は、名前のとおり明るくて、ニーナがどんなに邪険に扱ってもめげることなくまとわりついてくる。天真爛漫に見える陽光だったが、実は児童劇団に入っていることが原因で学校ではからかいの対象になっていて友達がいない。そんな意外な共通項がふたりを近付けていきます。
まず、ニーナの境遇が境遇なだけにかわいそうなお話になっていないのが凄い。
そして、出会いが18才と11才というのを不自然になることなく書いてあるのも凄いです。始めの頃のニーナと陽光の漫才みたいな掛け合いは、テーマがテーマなだけに重くなりそうなのを和ませてくれます。
一話目の「真夜中クロニクル」が終わったときに、このあとイイ男に成長した陽光がニーナを迎えに来て幸せにする、とか、ありがちな話だったらどうしようと思いましたが、杞憂に終わりました(笑)。
そこから先は、ニーナと陽光の成長物語。もちろん、ふたりの恋も育ちます。
内にこもりっきりだったニーナは、子供向けの楽曲を作曲するソングライターになり、叔父が経営しているバーでアルバイトをしたりと徐々に変わり始めていく。
一方の陽光は自分が年下であることもあって、ニーナを支えられる立派な男にならないと! と焦っているけれども、子供の頃に無邪気に信じていたようには現実は上手く進まない。才能はあるのに「元子役」の看板が邪魔をして上手くいかない。どんなに才能があっても、世間は理想通りにそれを認めてくれるわけではなくて、それにがんじがらめになっている様子が、べたなくらいちゃんと描かれています。正直、こんなにダメっぷりを露呈している攻も珍しいのでは?
その陽光が、ある大事な場面で自分の体質のために一歩を踏み出せないニーナにこう言います。
「ニーナは自分のこと『こんなん』って言ったけど、俺も『こんなん』だよ。でも『こんなん』同士、ジメジメ慰め合ったりするのは俺は嫌だ」
ああ、これはちゃんと地に足の着いた話なんだな、と思いました。
ニーナも陽光も、最後はちゃんとそれぞれに「目指したもの」になれるけれども、それが上手く行き過ぎとか運が良すぎるとか思わないのは、そこに至るまでの過程が丁寧に書かれているからだと思います。まぁ、下半身はユルイけれども仕事には誰よりも真剣な映画監督とか理解あるレコード会社の人間とか、充分ファンタジーになってはいるんですけれども(笑)。
芸能界もののBLには現実離れしがちなものが多い中で、これはとても真面目にキャラクターの葛藤が書かれているので、リアリティがあるんです。
個人的には、ツンツンしてばかりだったニーナが、成長していく陽光に少しずつ柔らかくなっていくところがまたまたらない。そしてそんな彼が、いざエッチシーンになると余裕なくして可愛い。対する陽光がそういう時だけはちょっと強引になるのが、上手く合っている。
あと、惹かれ合っているふたりが結ばれるそのときまで純潔のままでした…みたいないったいどんなお伽話よ? な設定には、今時受はともかく攻までそんな純な野郎がいてまたるか! と、まるでついていけない私でも(そこに萌を見出せないのはトシのせいですかね…)、これは受け入れられました。このふたりにはそれが必然だったんだと。
他の作品でならいろいろ突っ込みたくなる設定やエピソードも、この作品からは不思議と違和感を覚えなかったのは、人物が「ちゃんと」描かれているから、だと思いました。
そして最後にイラストの小山田さんの表紙。これが、物語を全て語っています。

「恋愛の系譜」 火崎勇 / ill.小山田あみ

「組を継いで下さるなら、相手をしても構いません」初めて見た彼の笑顔は、冷たく美しく作り物めいていた。―IT企業の社長・穂高はヤクザの組長の私生児。縁を切った父親は忘れて、友人と起業し名のある会社に育て上げた。ところが、父親の使いと称する秘書の白河が訪れる。今更ながら父親の組を継いで欲しいというのだ。穂高がすげなく断っても、白河は食い下がる。「俺に抱かれるなら考えてやる」極道らしくない美貌の白河を揶揄うつもりだった。だが、白河は自らの身体を冷静に差し出して…。
ええと、小山田あみさんのイラスト目当てで購入しました、すみません(笑)。でもでも本作は攻の一人称で書かれていたせいもあってけっこう面白かったです。…何故か攻めサイドで書かれたものが好きなのです(笑)
 
攻めの穂高(32)は大学時代に友人と起こしたIT企業の社長として成功している男ですが、実はヤクザ大角組組長の私生児。そのために苦労を重ねているんですが、もともと前向きなのと持ち前のバイタリティで過去をいちいち振り返らない。そんな彼のもとに、父親の秘書で彼に育てられたという男・白河(受・25)が現れて、父親が脳溢血で倒れたこと、そして組を継いでほしいと告げる。
父を父とも思わず、ヤクザが嫌いな穂高はこれをあっさり断りますが、白河はまるで諦めずそれどころか穂高の会社を巻き込んで脅しまがいのことまでしてくる始末。
おまけに煙に巻くつもりで言った「俺に抱かれるなら考えてやる」という言葉に、「それで継いでくださるならお相手しますよ」と涼しい顔をして返してくる。
ヤクザに育てられ、ヤクザのもとにいるが自身はヤクザではなく、父親に恩ばかりを感じているようでもない白河がなぜそこまでするのか、穂高は彼に興味を持ち、彼本人を知るにつれ、惹かれていきます。そして、白河が本当は何を望んでいるのかをを見極めようと、彼を父親から引き離して自分のもとに住まわせ会社でも働かせてみることにします。
実は白河は穂高の父が原因で両親を失い、引き取り手がなくて穂高の父、つまりヤクザの元に引き取られ育てられたという過去がある。特殊な環境下でしかも親の仇でもある男に育てられた彼は、これをどういう感情で受け止めればいいのか分からないままでいて、いつの間にか本心を表に出さず仮面を被るようになっていた。
それに気付いた穂高は彼を解放してやりたいと思い、ある行動に出ます。

ずっと穂高の視点で物語が進むので、彼だけが知っていることがあってそれ前提で事が進んでいくのでちょっと解りづらい部分があります。終盤の種明かしで、ああそういうことか、とストンと落ちるんですが、解った上でもう一度読むと、ここってそういう事だったんだ、とかいろいろ見えてきて更に面白いかも。
 
普段はつんとクールなのに実は不器用な白河が可愛いです。
そのどこか無防備なところが穂高をメロメロ(笑)にしちゃうわけですが、メロメロなのは白河も負けちゃいません。本編のあとに白河サイドによるその後のふたりのショートが入っていて、白河の穂高への溺れっぷりが書かれています(笑)。そつのないに見えて実は自分の感情すら上手く表せない不器用な白河の姿に、穂高と巡り合えてよかったね、と心底思いました。
それから小山田さんのイラストがイイです。まず口絵がたまらんです(笑)。エロシーンは少なめな作品なのに、ふたりが漸く結ばれる場面などなど、イラストが色っぽさを増している気がしました。

というわけで、エロは少なめですが萌がいっぱいで結構楽しめました。