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  • 2014.07.28 Monday
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「フォルモサの夜」 水原とほる / ill.周防佑未

「貴方の為に、舞い踊りましょう」幼少時から将来有望な京劇役者の卵として励んでいた俊明は、父が亡くなり夢を断念した―。大学生になった俊明は、休暇で台湾に行った際、高級クラブの京劇に代役として出演することに。そこで俊明が出逢ったのは、片足をひきずった元刑事で汚れ仕事専門の私立探偵・三島だった。俊明は日本に戻り、失踪した学友の捜索を三島に依頼するが、手付金代わりに凌辱されてしまう。しかも事件に巻き込まれ、拉致されてしまい―。
作品紹介に凌辱云々と書かれていますが、間違いですね(笑)。水原作品なのに凌辱系でも痛い系でもない作品。
そして水原作品には珍しい男前受け・俊明がいい味出していて、とても面白い一冊でした!

父の亡き後、母の再婚で故郷の台湾を離れ、幼少の頃からの夢だった京劇役者になることも諦めて日本で暮らすようになった俊明(受)。20歳になった今は、日本の大学に通いながら休暇には祖父や友人のいる台湾に戻るという生活をしています。
台湾に戻ったある時、俊明は京劇仲間である友人の頼みで急遽クラブで京劇を演じることになるのですが、そこでちょっとした事件に巻き込まれ、俊明の機転で日本人の探偵・三島(攻)を助けるという予期せぬ事態が起こる。
ピンチを逃れた三島は礼の代わりに「日本で何かあったら、力になってやる」と俊明に名詞を渡します。
胡散臭い三島と関わることはないだろうと思っていた俊明でしたが、日本に戻ると大学の友人・小林がトラブルに巻き込まれているらしいことを知り、助け出すために三島の力を借りようとするのですが。

ワケあり探偵×大学生の事件ものというだけならわりとありがちかもしれませんが、このお話が面白いのはそこに京劇というかなり異色なスパイスを添えてきたところでしょうか。
タイトルにある「フォルモサ」とは台湾の別称で、ポルトガル語で「麗しい島」という意味。俊明と三島の関係がそこから始まるという意味が込められているのはもちろん、水原さんの台湾への思い入れもあふれたタイトルですね。
そんな台湾に生まれた俊明は日本人として生きてはいるものの、自分の本質的な部分は台湾人なのだと感じながら生きています。
日本人として生きることを選びながらも台湾に戻るたびに一度は諦めた京劇をやっている姿にも、彼の矛盾が出ている気がします。
そんな、ある意味自分を演じ分けている俊明の姿を、京劇役者のそれとシンクロしているような描かれ方がなされているのがとても印象的。
彼は京劇では女形を演じていただけに人目を引く美人ですが、芯の強さを持っているので女々しいところがありません。日本と台湾との間で悩みながらも翻弄される弱さはないので、見ていて清々しいです。
その俊明に、三島というそれまで俊明の周りにはいなかった異色のタイプの男が関わってくることで変化が訪れるのです。
三島は片足を引き摺った元刑事の探偵で、良くも悪くもおっさん(笑)。三島の、人のテリトリーに土足でずかずか入り込んでくるような遠慮のなさに眉をひそめつつも、俊明は彼に惹かれていきます。
…そのけっこう大きな原因のひとつが三島の顔が好みだったというのが、いいですね(笑)。ここまで正直に認めているのもBLでは珍しい気がします。
俊明が周囲に見えない膜を張っているからこそ、それを気にしない(気付いていない?笑)大雑把な三島に惹かれたのでしょうね。

ふたりが関わることになる事件の顛末も目が離せません。
けっこうまずいことに首を突っ込んでしまった俊明は、危うく命を落としかけ、遂には三島ともども敵に拉致されてしまう。
拉致された受けの危機を上手すぎるタイミングで攻めが助け出すのがBLのお約束ですが(笑)、このお話ではその攻めまで一緒に拉致されているので三島が颯爽と救出に現れることはもちろんなく、ふたりの危機を救うのは何と受け・俊明の方(!)。そしてここで京劇が大きな役割を果たします!スリリングな駆け引きともども読み応えがありました。
とにかく俊明が男前すぎる! 攻めに頼ることなくピンチを切り抜けるこんな受け、大好きです(笑)。男前受けが大好きな私にはたまらない!!
その俊明の横で三島は緊迫した駆け引きをダメにしかねないようなことをわめいているだけ(笑)というみっともなさもあって、俊明の頭の良さやしたたかさがいっそう際立つという(笑)。
あ、でも三島の足掻きは必死な分だけ俊明への想いが垣間見えてきて、きゅんとくるいいシーンですよ(笑)。

唯一疑問だったのは、三島がなぜあれほど俊明に惚れてしまったのか、その理由がよくわからなかったことですね。まさかこちらも顔が好みだったから?(笑)ともかく、もう一押しほしかったです。
それから、終盤間近に三島の過去が彼の口から明かされていますが、ここだけとってつけたような印象が…。彼の過去がお話そのものに絡むようなものだったらよかったのに。
というか、水原作品ってこういう終盤にキャラ自らが過去を語る・説明するみたいなことがわりとある気がするんですが、説明的に見えてしまってあまり好きではないですね。シチュやプレイ的なもので地雷が…という話はよく聞きますが、実は私はそれよりもこうした作家さん独自のクセや文体などに苦手意識を覚えることが多いです。

…とまぁ若干気になるところはあるものの、男前な敏明に惚れること間違いナシ! な一冊です。
水原作品にしてはエロさは普通ですが(笑)、男前受けがお好きな方はぜひ♪

「地下室のワルツ ─蜜と罰─」 華藤えれな / ill.周防佑未

小児科医の夏生はパリでヴォルフと名乗る外科医と出会い、驚愕した。髪も目の色も、そして素性も違う、けれど見間違うはずもない―その男は、行方不明だった幼馴染み、そして家族の仇・アレク。彼が隠す危険すぎる過去を知る夏生は、邸に囚われ、鎖に繋がれてしまう。その日から誰もこない地下室で、甘いワルツの流れるなか、アレクに支配され、狂おしい官能に溺れさせられて…。

イラストレーターさんが変わっていたので気が付いてなかったんですが、「あなたは僕を愛していない」のスピンオフ、しかもその後が気になっていたキャラ、オスカーも登場していると聞いて手にとってみました。
でも主役は小児科医の夏生と心臓外科医のアレクという新キャラだし、前作品のキャラのその後がわかればそれでいいやな程度の気持ちで読んだのですが…
これがもの凄く良かった!!
今年読んだBLの中でもダントツで面白くて読み応えのあるお話でした。

母親がボスニア人男性と再婚したためにサラエボの郊外で育った夏生(受)は、その後勃発した内戦を生き抜き30代半ばの現在はNPO所属の小児科医としてアフリカで活躍しています。けれども裏表のない白黒はっきりさせないと気が済まない性格か災いして仕事での人間関係は上手く行かず、挙句に横領の濡れ衣を着せられて職を追われてしまう。
夏生が頼った友人オスカーからパリでの働き口を紹介されて、夏生はアフリカから身一つでパリにやって来ますが、新たな職場で衝撃的な人物と再会することになります。
それは、かつての級友であり初恋の相手でもあり、そして家族の仇でもある男・アレク(攻)。今は国際指名手配犯となっているアレクはヴォルフという名の別の人間になりすまして心臓外科医として働いていたのです。
十数年行方不明だった彼に、夏生は復讐を果たそうとしますが…。

男らしくて湿っぽいところのかけらもないからっとした性格の夏生のキャラがとてもいいです。
アフリカでマラリアに罹って路傍で死にかけている冒頭のシーンもびっくりですが、そんな状況でも明るく前向きでまるで悲壮感がなという(笑)。脳天気一歩手前といってもいいくらいですよ(笑)。
華藤さん作品では珍しい受けキャラですよね。
対するアレクはひどい奴かと思いきや、半分夏生のストーカー状態の変態執着攻め。でも実は純で(だからこその変質っぷりか?)可愛いところのある憎めない男です。

お話は現在の時間と過去の出来事とが交互に進みながら夏生とアレクの間に何があったのかが徐々に明かされていく構成で、どんどん引き込まれました。
実際の紛争のことが絡むので民族とか宗教とかがややこしいと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、要は敵対する民族同士のふたりが惹かれ合ってしまったという、ロミオとジュリエット的なお話です。
とはいえ夏生は生粋の日本人なので厳密には違うのですが、彼を愛し受け入れてくれた第二の父親の家族として生きてきたのだから、その仇である存在とは対立しているという構図。
最初はコテコテの大阪っ子が東ヨーロッパに移住してそこで運命の人に出会うという設定に、そんな有り得ないことにせずに主人公を初めからボスニア人にすればいいのに…、と違和感を覚えたんですけれど、そうした民族の対立やしがらみとは無関係なところから現れた人間だったからこそアレクは夏生に惹かれたんだと気が付きました。

華藤さん作品はたいていこの二人のように誤解やすれ違いを起こしていてぎりぎりでやっと丸く収まるるカプのお話が多いですが、お話によってはそんなことで意地を張らなくてもとかぐるぐるしすぎだと思うことがあっていまいちのり切れないことがありました。
でも、このお話は内戦という生死にかかわる凄惨な事態が絡むので、中途半端に感じるところが少しもありません。
夏生の歩んできた壮絶な過去を思えば、彼の医師としての想いやアレクへの許しもとても自然なものに見えますし、感動的でさえあります。アレクにしても同じ。
下手をすれば陳腐に見えかねないのに、とても深みと説得力のある展開に涙です。
そしてこういうお話は内容が内容なだけに暗く重たいだけのものになってもおかしくないのに、主人公の夏生が前向きな性格なためにそういう雰囲気はあまりなく、読んで陰鬱な気分になったりしないのもいいところですね。

途中、夏生がアレクによって地下室に鎖に繋がれて監禁され…な状況にもなりますが、アレクの夏生へのどうしようもない執着心の結果だと思うと切なくなりますし、そんな状況でも夏生が前向きなので酷さや痛さはありません。
…そして夏生にコスプレ(?)させたり踏み付けられて悦んだりと、夏生にも言われちゃってますがアレクの中々の変態ぶりの方が印象に残ってしまったという(笑)。いや、とても切ないところなんですよ…!
そしてこのお話は、受けよりも攻めの方が実は純情なのですね。
地下室は、監禁の場以外にももうひとつお話の重要な場として登場しています。

夏生のよき友人、よき理解者として登場するオスカーの他、夏生の先輩として海堂も姿を見せているのが嬉しいです。ミハイルとは相変わらすなのでしょうかね?
特典ペーパーでアレク視点のSSが読めますが、同郷の人間ということで夏生と親しい海堂に(見当違いもいいところの・笑)嫉妬をしながらも、アレクが夏生のために海堂から味噌汁の作り方を教わっていたりして微笑ましかったです(笑)。
そんな夏生やアレク、そしてオスカーや海堂の姿をもっと見たいと思いつつも、ルナノベルズなくなっちゃったからな…。続編、スピンオフはもう難しいかもしれないですね。惜しすぎる…><

<関連作品>
 ・「あなたは僕を愛していない」