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  • 2014.07.28 Monday
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「散る散る、満ちる(新装版)」 凪良ゆう / ill.海老原由里

美形だが人のよすぎる如月春水は、部下である里見幸一に密かな想いを寄せていた。叶わぬ恋だと諦めていた如月だったが、皮肉にも、里見もゲイで片思いに苦しんでいることを知る。ヤケ酒に付き合い里見を送り届けた如月は、勢いに押され彼と一夜を共にしてしまう。しかし翌朝、何も覚えていないと焦り謝る里見に対し、如月は傷ついた心を押し隠し彼の恋に協力することを申し出るが…。書き下ろし番外編も収録。

2010年にショコラノベルズから出いていた作品が、書きおろしを加えて文庫で再登場です^^まだ未読の作品でしたので嬉しい限り。
そして凪良さんが「王道」と仰っている通り設定も展開もよく見かけるタイプのものなのに、全然ありがちではないすごーくいいお話でした。

美人で仕事もできるけれどお人好しの如月(受)は、会社の部下の里見(攻)に秘かな片思い中。ノンケの男だろう里見を困らせまいと諦めていましたが、ある時飲んでいる席で実は彼がゲイだということがわかります。そして里見が如月ではない相手に片思いしていることがわかり、ヤケ酒に付き合っているうちに一線を超えてしまう。でも朝には里見は何も覚えていないと言い出すし、如月も気まずくなりたくない一心でなんでもないような振る舞いをしてしまう。挙句に里見の片思いを応援することにもなり、なんとも煮え切らない如月に男ならこの状況を上手く利用してモノにしろよ! …と思いたくなる展開ですが、そうできない理由が如月にはありました。

如月は、早いうちに両親を亡くしています。彼は会社では優秀で気のおけない幼馴染みもいますが、孤独を紛らわすように何かの気配がある方がいいからと動くおもちゃがいっぱいの家で父親にプレゼントされたロボット犬のキンピラと暮らしている寂しがり屋なのです。
如月は誰かと幸せになりたいと思ってもまた大切な人を失ってしまうのではないのかという思いに捕らわれて、先に進むことを躊躇ってしまう。本物の犬ではなくロボット犬のキンピラといるのも、犬だといつか死別する時が来るのが嫌だから。そのくらい臆病なんですね。27の男がおもちゃに囲まれているというのは普通なら引いてしまいそうですが、如月についてはすとんと納得できる状況だと思いました。
だから里見とのこともまだ始まらないうちから身を引いてしまう。

そんな如月ですから里見に素直に想いを告げることは出来ず、そのままずるずるセフレのような関係が続いてしまう。
如月視点でお話が進みますが丁寧に読んでいけば里見が片思いの相手から如月に気持ちが移っていくのはわかるので、そのことに全く気が付かない如月と里見の起こすすれ違いにやきもき切ないです。
そして「いいやつ」のはずの里見が末っ子だからなのか案外甘えたな性格で、セフレみたいなはっきりしない関係をずるずる続けているのにも、もやもやしたものを感じてしまいました。このお話、里見が早い段階で思い切ってくれていればここまでこじれなかったかもしれないですね。
本気で自分の想いはちゃんと口で伝えようよと思ってしまいました。
とか言いながらも、キンピラにはしっかり泣かされてしまったのですが。
如月にとって、キンピラは本当にかけがえのない家族だったんだなと。そのキンピラがふたりの距離を縮めてくれたのは、きっとキンピラが如月に幸せになってほしかったからでしょう。もしかしたら、キンピラを通じて如月の両親がふたりを見守ってくれていたのかも。
見守ってくれていたといえば、縁側のあのシーンはものすごくじんわりきました。そこに繋がる前のエピソードも、本には感動しなかったけれど橋に行って…とか、実際にこういうことがあったらそうなりそうとかそう思うだろうという感覚に溢れていて、凪良さんはこういうところが上手いなぁと思いました。そして如月が橋に行くのは駄目だと言うのにぐ…っときます。
キンピラとこのシーンが特にじわんときました。

片思いの相手や恋敵がゲイだったり、ところどころ都合がいいなぁと思う部分もありますが、そこはまぁBLなので目をつむります(笑)。それでもこの作品は素晴らしいです。

終わりは本編でいい味を出していた如月の幼馴染み榎本視点の「秘密の箱の中」と書き下ろしのその後の二人を描いた「call my name」のSSが収録されてます。
「秘密の箱の中」では、榎本のああやっぱりな部分が見えて榎本がそこを追求していたら今頃は…とにやにやしてしまったのはもちろん、如月との子供の頃のエピソードにまたもや涙腺がゆるんでしまいました。
「call my name」はタイトルの通りといいますが、一緒に暮らし始めて半年経った如月と里見のショートで、そんなに経つのに未だプライベートでお互いを「里見」「主任」と呼び合うのはどうだろう、と悩む如月視点のお話。末永くお幸せに、と思ってしまう内容でした。

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  • 2014.07.28 Monday
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