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  • 2014.07.28 Monday
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「おやすみなさい、また明日」 凪良ゆう / ill.小山田あみ

「俺はもう誰とも恋愛はしない」。仄かに恋情を抱いた男から、衝撃の告白をされた小説家のつぐみ。十年来の恋人に振られ傷ついたつぐみを下宿に置いてくれた朔太郎は、つぐみの作品を大好きだという一番の理解者。なのにどうして…?戸惑うつぐみだが、そこには朔太郎が抱える大きな闇があって!?今日の大切な想い出も、明日覚えているとは限らない…記憶障害の青年と臆病な作家の純愛!!

先日に続きまたまた凪良作品です。
Chara文庫から出た新刊は、記憶障害のある青年とマイナーな小説家のかなり切ないお話でした。

長年一緒に暮らしてきた恋人に突然別れを告げられたマイナー作家のつぐみ(受)は、新しく部屋を借りるのに困っていたところを祖父がアパートを持っているというなんでも屋の青年・朔太郎(攻)と偶然知り合い部屋を借りることになります。
つぐみの小説のファンだという朔太郎は気さくで付き合いやすく、そんな彼に助けられながら一癖あるアパートの住人たちにも馴染んで新しい生活をスタートさせたつぐみ。
初めは元恋人のことや先のことで気が沈みがちだったつぐみでしたが徐々に朔太郎に惹かれるようになりますが、朔太郎から事故の後遺症で記憶障害があるという衝撃の事実と、そのためにもう誰とも恋はしないと告げられてしまう。それでも朔太郎の傍にいたいと願ったつぐみが選んだのは――。

記憶障害という、ヘヴィーだけども最早使い古された感のある題材ですが、記憶障害になる朔太郎ではなく受けのつぐみ視点なためか、ただの可哀想な泣ける話ではなく(いや泣けるんですけど)誰もが抱くことのある普遍的な不安を極端な形で描いたお話という印象を受けました。
つぐみの置かれた状況が極めて不安定で、彼が孤独や先のことで思い悩む姿に同情よりも共感を覚える人は多いのではと思います。
記憶障害ものとしても、BLだから病が元の死別というオチにはならないだろうからありきたりなハッピーエンドだったらイヤだなぁと思っていたんですが、誰かと記憶を共有していくかたちに落ち着かせているのがすごく良かった。
記憶は肉体以上にその人を形作っているかもしれず、その記憶が消えていくということは自分が自分であるということの根幹を揺るがす怖いことだと思います。その恐怖を克服していくふたりの姿がとても印象的でした。
読み終えた直後は実はさほどじゃなかったんですが、これ、後からじわじわきます。

つぐみが単なる売れない作家ではなく、純文学というマイナージャンルを描く作家だったことが良かったです。
純文学ってエンタメ系のように「ああ面白かった」で終わるわけでもなく売れる売れないでは価値を計れない、それこそ必要としない人には何がいいのか解らないジャンルなんじゃないかと思うんですが、だからこそつぐみの小説ではありませんがどんな存在でも「そこにいていい」圧倒的な肯定を与えているのではと思います。
そこが努力ではどうしようもないことで社会から弾かれてしまった朔太郎の心に響いたのだと思えたし、この説得力はつぐみが売れないミステリー作家や恋愛小説家(ヤコ先生の少女漫画の原作になりうるジャンルなのにあえてそうしなかったのが素晴らしい)とかだったら絶対にないですよ。
そして、そんな風に若干典型的なBLから軸足を動かしている作品だったからこそ、あのラストも受け入れられました。

それからつぐみが、かなり難しい状況に置かれているにもかかわらず閉じこもったりせず穏やかながらちゃんと先に進んでいける人だったのも良かった。
最初は十年付き合っていた恋人との別れに参って立ち止まりかけていたものの朔太郎に惹かれ彼の抱える問題の大きさを知ってから変わっていった姿に、これまでの凪良作品の年下攻めものの受けみたいに年下の男の子に手を引いてもらわければ動き出せいないめんどくさいタイプじゃなく、むしろ逆なんだなぁと。
これは、記憶障害という問題を抱えているのが攻めの朔太郎だからというのも大きいかもしれないですね。
というか、攻めの方にこうしたハンデがあるのって凪良作品では初めて読んだかも。そういう意味でもすごく新鮮でした。

こういうお話なのでもしかしたらスルーした方がいいかもですが(汗)、エッチシーンにすごく萌えてしまいました。
つぐみが朔太郎を慰めるつもりで受け入れた最初のシーンの、その時につぐみが自分の気持に気付いてしまうくだりは切ないですし、晴れて一緒になれた時のシーンは互いに求め合っている感じが濃厚でたまらなかったです。
こうしたBLとしての読み応えも外していないところがいいですね。

ラスト、というか本編後のSSは、BLでは賛否両論あると思いますが、記憶障害という難題を乗り越えたふたりのその後をここまで見届けられたたことに私は感謝しました。
「つぐみさんより長生きする」という誓いを守った朔太郎とその側にいたつぐみの生涯は、とても幸せだったのだと実感できて涙がじんわり。
もしかしたら若い時だとこのラストの良さは分からなかったかもと思いもして、これは読んだ人の年齢によって持つ印象が変わるかもしれませんね。今ダメだと思った方でも、もう少したったら逆の想いになるかもしれません。

小山田さんの、いつもよりも抑えた印象のイラストもお話にすごく合っていました。
読んでから気が付きましたが、口絵の一枚目は本編ではなくその後のふたりなんですよね。本編後のふたりの長い時間が、穏やかで優しく幸せなものだったんだなと感じられまたしても涙腺が…。
うーん、こういう読後感が待っているとは思ってもみませんでした。しばらくは浸っていると思います(笑)。

そうそう、作中に登場していたヤコ先生が出て来るお話が他にもあるようなので、そちらも読んでみようと思います。

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