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  • 2014.07.28 Monday
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「蝶宮殿の伽人」 沙野風結子 / ill.稲荷家房之介

「せいぜい俺を愉しませるといい」学生時代から恋情を抱く友人・ベノール王国の第一王子であるナイルスに請われ、王国に赴いた望。そこで頼まれたのは、離宮に囚われた第四王子・ムスタファの無聊を慰める仕事だった。鬱屈に荒んだムスタファは手負いの獣のようで、淫らな行為をも強いる。初めはナイルスの役に立ちたい一心だったが、ムスタファの優しさを垣間見るうちほだされていき―。想う男と戯れを許す男―二人の王子の間で心は惑い…?囚われの王子と美貌の翻訳家―淫靡なアラビアンロマンス。

2008年にアルルノベルズから出た「蝶宮殿の王子様」の改題新装版。
囚われの身のアラブの王子様×日本人翻訳家の、沙野さん初のアラブものです。
前に何かの新装版で沙野さんが「新装版でタイトルが変更になっているものは内容も大幅に変わっています」的なことを言われていましたので、けっこうな変更があるのかなと思いきや、そんなに変わっている印象はなかったです。
書き下ろしのSS「蝶宮殿の魔人」も収録されて、ボリューム感はたっぷりです。

私、BLでアラブものっていまいちよさが分からなくて苦手なんです。
如何にもな王道設定に惹かれないのもありますが、やっぱりいくら大富豪だからってむこうの戒律無視して男を(しかも日本人限定で)囲うのはナゼだとか、ハーレクインをそのまま男×男にしたあり得なさについていけないのが大きな要因ですかね。そこをファンタジーとして割り切れないというか…。。
なので、正直なところいくら大好きな沙野さんとはいえアラブものかぁ…と思ってしまったりもしたんですけど、そこはやっぱり沙野さん、アラブものとはいってもハーレクインな王道ものとはちょっと違いました。
アラブものではすっとばされがちな宗教面や背景が丁寧に書き込まれていて、ちゃんとアラブの世界を堪能できました。
キラキラゴージャスじゃなくてエキゾチックでアラビアーンなアラブなのも私的にはポイント高いところですが、典型的なアラブものを求める方からすれば肩透かしかもしれませんね。一応アラブもののお約束は踏襲しているものの、好みの分かれそうな作品かも。


翻訳の仕事をしている望(受)は、学生時代に知り合い友情以上の想いを抱き続けてきたベノール王国の第一王子であり時期国王でもあるナイルスに請われて急遽ベノールへ向かいます。
ナイルスに会いたい一心の望でしたが、国王が倒れて国政に携わっているナイルスは多忙でちゃんと話すこともままならない状況。
いったい何のために呼ばれたのか分からなくなっていた頃、望はナイルスから弟である第四王子のムスタファ(攻)の相手をするようにと命じられますが、過去のクーデターの影響で蝶宮殿と呼ばれるところに幽閉されているムスタファは、母親が日本人であるためなのか望に異常に興味と執着を示してきて望を戸惑わせる。
けれどもムスタファを知っていくにつれ、望は彼の孤独や苦しみが解ってきて、次第にムスタファを幽閉するナイルスのやり方に疑問を持つようになり…。

旧版と大きく変わっていたのは、ナイルスのポジションですかね。旧版ほど存在感がなくなってしまって、彼が優しそうな仮面の下に非道さを持っていたということは伝わったものの、何だかよけいによくわからない人になってしまいました。まぁ望とムスタファふたりの関係性により絞り込んだ内容になっていると思えば、BL的には読みやすいのかな。
でも正直、この三角関係なら逆にナイルスに踏み込んでも良かったんじゃないのかと思ってしまいましたが。。その方が、内容はより濃くなりそうな気がします。
せっかく攻めが望がずっと想い続けてきたナイルスではなくその弟のムスタファというユニークな設定だったので、余計でしょうか。
あと、望がゲイ設定になっていましたね。これは別にバイである必要はなかったようなものなので気にならなかったです。

ちょこちょこ引っかかる所はあるものの、望とムスタファが段々惹かれていく過程はよかったです。
傲慢なのに囚われの身でけっこうな寂しがり屋さんのムスタファ(年下らしいかわいらしさもアリ)は、これまでの伽人のように望が突然姿を消すかもしれないという焦燥と不安のまま望に無体をしてしまいますが、それが階段プレイだったり宙吊りプレイだったりと沙野さんらしいハードさで、切ないながらも愉しめてしまいます。
でも案外印象に残ったのは、噴水でのちょっと和むシーンのほうだったかも。

望とムスタファが徐々に距離を縮めていく前半はいい感じだったんですが、ベノールの行く末を巡っての騒動がメインとなる後半は何だかあらら? という展開になってしまったのがちょっと残念。
まぁこの設定なら最終的には政治的な決着を付ける付けないになるのは仕方がないにしても、ちょっとそれが前面に出過ぎちゃったような。。こういうのはあくまでお話の背景にとどめてほしかったかも;
というか、望がベノールの国政にそこまで関わっちゃうのはどうなのかと、そこがいちばん釈然としなかったです。

望が翻訳家であるためかアラビアンナイトよろしくお話を空想したりとか、夢の中で行きたい場所に連れて行くとか、全体に漂うほのかに不思議な雰囲気がいちばんのツボだったかもしれません。

書き下ろしのSS「蝶宮殿の魔人」は、世俗にもまれた?本編とは打って変わって、幻想的なお話。
本編から5年後、若き青年王としてベノールを導くムスタファを変わらず支えている望の耳に「蝶宮殿に魔人が出る」という噂が届き、望は真相を確かめに蝶宮殿に向かいますが、そこに現れたのは少年ムスタファ。
それは、どうやらムスタファが切り捨てようとしている過去が形となったようで、望は連日彼に会いに蝶宮殿を訪れるのですが…
―という、そこれこそアラビアンナイトにありそうな不思議なお話でちょっと怖さもあったりするんですが、最後は少年ムスタファの幻?を交えた3Pみたいな展開になったりしています(笑)。これはけっこう萌えた(笑)。こんなシチュ、よく思い付きますね!
こういう、ちょっと不思議でアラビアンなBLを、もっと読んでみたいかもと思ってしまいました(笑)。

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