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  • 2014.07.28 Monday
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「お菓子の家 〜un petit nid〜」 凪良ゆう / ill.葛西リカコ

リストラされた加瀬は、強面なパン屋の店主・阿木に声を掛けられ、バイトをすることに。無愛想で人との付き合い方が分からない加瀬にとって、店の温かな雰囲気は馴染みがなく、戸惑うばかりだった。けれど火事に遭って阿木と同居することになり、彼の優しい手にどうしようもなく惹かれていく。優しくされればされるほど阿木に依存してしまい、溢れそうになる感情に加瀬は…。

レーベルもイラストレーターさんも変わってますが、花丸文庫から出ている「夜明けには優しいキスを」のスピンオフ作品。いろいろと論議を醸したあのDV男・加瀬のその後です。
私は、前作はとにかく主人公が大嫌いで全然好きになれなかったんですけれど、加瀬があの後どうなったのかがとても気になっていました。作家さんが彼を主役に添えたお話を書いて下さったことに感謝です^^

リストラされて求職中の加瀬(受)は、偶然目にしたパン屋「un petit nid」に貼り出されていたスタッフ募集の記事に目を留めたことがきっかけで、そこの店主・阿木(攻)に拾われてアルバイトを始めることに。
そこは強面だけれども気のいい店主・阿木と彼の亡くなった幼馴染みの未亡人でパン職人の知世、そして知世の息子の央の3人が家族のように仲良くやっているアットホームで温かなお店。
これまでそんな雰囲気とは無縁に生きてきた加瀬は、どうしていいか戸惑うばかりです。
暫くして、加瀬のアパートが火事に遭うという出来事が起こり、加瀬は阿木の部屋に居候させてもらうことになりますが、時間を共にしていくうち阿木の優しさに惹かれていくようになる。
けれども阿木には自分が元で大切な存在を亡くした過去があり、その贖罪のために誰とも恋はしないと決めていることを知り…。

前作では受けに酷いDVをする男として登場していた加瀬が、今作では何と受けになっています(!)。
そこからして受け入れられないという方もおられるかと思いますが、これを読みながら私は、愛情を無尽蔵に与えられたいタイプの彼は攻めでなくむしろ受けになった方が幸せになれるタイプなんじゃないのかと思いました。いや、タイプ的には大柄だし目付きが悪いしでやっぱり攻めっぽいんですけれど(笑)。

加瀬は子供の頃に事故で両親を喪い、その後伯父に引き取られるも虐待を受けてきたという過去があり、それが彼の人格形成に影を落としてしまっているんですね。人とのかかわり方や距離のとり方がうまく掴めず、いつも「ゼロか100か」という極端なかたちでしか誰かと関係を結べない。
それが前作では主人公の要を暴力で縛り付けるDV彼氏という最悪なかたちで出てしまっていました。
その失敗以来、加瀬は「誰かを好きになったら、今度こそ優しくしよう」と誓っていますが、阿木やお店の人たちとの温かさの前にも、やはり他者とどうかかわったらいいのかが解らなくて戸惑うばかりなのです。
虐待を受けた過去から来ているので仕方がないですが、こうした加瀬の「人と繋がれない」感覚は見ていて苦しいです。
もうちょっと神経太かったらまた違っていたかもしれないのに、それとは逆の細かいところに気がついてしまうような繊細さがあったりするから、余計に辛い。
ここまで極端ではなくても、多少はそういう感覚がわかる方には切なく映ると思います。

加瀬を受け止めてくれる阿木は、29歳の加瀬より8つ上の37歳。彼も加瀬に劣らず辛い生い立ちをしていますが、何でもネガティブ思考の加瀬とは違って根が明るく、年の功ゆえの包容力があるのでとことん面倒くさい加瀬という存在を包み込んでくれたのですね。
阿木が重い過去を抱えながらも加瀬のようにならなかったのは、武藤と譲という仲間がずっと側にいたからなのでしょう。それゆえに、譲を喪ったことをずっと抱えて生きていたんだろうなと。そういう面に気が付くと、いつもは軽い調子のおっさんだけどもとても優しい情の深い男なんだとわかってきます。

阿木の過去や知世との関係の誤解などなどいろいろ波紋を広げる問題が出てきますが、どれもそんなに深刻にはなっていない印象です。
というか、どれもこれも加瀬のネガティブ思考がややこしくさせているだけのような(笑)。ひとりでそんなにぐるぐるするなよ! と突っ込みたくなることもしばしば(笑)。
そんな中、「もう二度と感情にまかせて暴力をふるったりしない」と決めた加瀬が衝動的に暴力に出ようとした時になんとか踏みとどまったことや、誰かに真っすぐ愛されたことで加瀬がかつての自分の愚かさに気が付いたことがすごく心に残りました。

主人公はとことんネガティブ思考だし重苦しい話になってもおかしくないところですが、阿木の軽めの性格と知世や理央やクロの存在が全体をほのぼのとさせていて、暗いイメージは不思議とありませんでした。
本編後の阿木視点のSS「甘猫」では、阿木の目から見た加瀬がいかに可愛かが伝わってきて(笑)、もうすっかり甘々バカップルじゃないかと思ってしまいました(笑)。
前作で可哀想で仕方なかった加瀬に、こんな温かな「居場所」ができて本当によかった。
読後はとても温かい気持ちになれる作品でした。

「夜明けには優しいキスを」

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  • 2014.07.28 Monday
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