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  • 2014.07.28 Monday
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「erotica」 榎田尤利

評価:
榎田 尤利
(2012-08-20)

大人気小説家・榎田尤利が『エロティック』をテーマに描く、3P、SM、極道、●●●●など、いろんなHがたっぷり詰まった贅沢な【エロ特化】初短編集!! 中村明日美子のカバーイラストをはじめ、今市子、えすとえむ、円陣闇丸、鬼嶋兵伍、腰乃、豪華美麗イラスト陣が、華を添える★

「エロティック」をテーマにした榎田さんの短篇集。
べつだん榎田さんファンというわけでもないのでどうしようか悩んでいたんですけれど、リブレさんのアンケート結果を見たら何と「リバ」が堂々の一位を獲得しているのを発見、購入です(笑)。
その「リバもの」を描いた「ストロベリー」はじめ、書き下ろし3作と既に雑誌などで発表されている3作品の収録。榎田さんの他では見られない書き下ろしエロ特化作品集かと思っていたので、書き下ろしが3作品というのはちょっと肩透かしでしたが、読み応えはばっちり。
因みにイラストは各作品とも表紙1枚のみ。中村明日美子さんのモノクロは「エロとじ」と全く同じなので、明日美子ファンには物足りないかも?

「痛い靴」 ill.えすとえむ
★★★☆☆ ※合同同人誌「エロチカ」掲載
ハイヒールに赤いペティキュアに足の剃毛…と書いたら足フェチもののようですが(いやそうなんですが)、シチュとしてはSMと言った方がしっくりくる内容。けっこうイタイです。
生真面目な日高(受)が変態的な嗜好を持つ上司の久我(攻)に執着され陥れられ、気が付かたらその虜になってしまうお話で、上に挙げたようなプレイの数々が登場します。

慣れないヒールを強制的に履かされた日高が靴擦れするシーンもイタイですが、ローターが入った状態で攻められるシーンの恐怖ときたらその比じゃなかったです。描かれ方が怖いんだもん…。
そんな鞭や拘束具も登場しないのにばっちりSMな内容ですが、いかんせん「モノ」単体に萌えるフェティッシュな嗜好はないので、このお話はあまり合わなかったです。

「ストロベリー」 ill.腰乃
★★★★☆ ※書き下ろし
リーマン×リーマンのリバもの。
篠田(受)と舘野(攻)は付き合い始めて1年目を迎えるカップル。けれどもある誤解がきっかけで、篠田は近いうちに舘野に捨てられるかもしれないと思っている。ならば今日だけは自分の好きなことをしようと、篠田は舘野を…!
…という展開でリバになるお話ですが、私みたいなリバ大好き人間は美味しく(笑)、けれどもこういうのがダメな方でも無理なく受け入れられる内容だと思いました。
まず、篠田も舘野も、どっちもがどっちでもいけそうな雰囲気なのです。決して「攻め×攻め」というのではなくて、何というのかな、受けが意外に男で攻めにはけっこうスキがある感じ(笑)。
ふたりそれぞれの一人称で交互にお話が語られて、それが何処となくコミカルなのも読みやすさの一因かも。とにかくふたりが可愛いいのです!
この先も、時々は交代したりしちゃうといいですね(笑)。

ところで他の作品のイラストが作品をイメージした一枚絵な中、腰乃さんのイラストはお話の各シーンを1枚の中にぎゅっと詰め込んでくれているという大判振る舞い! 他でもない「リバもの」だからこその嬉しいさでした♪
それにしても、アンケートで堂々一位を取っちゃうくらいはリバ需要はあるってことですよね!? なのに中々見られないのは、出版する側のNGコードってことなんでしょうか。
リバの何が「NG」なのか分からないんですが、もっと増えてほしいと願ってやみません!!

「10×3」 ill.円陣闇丸
★★★☆☆ ※書き下ろし
ヤクザ×顧問弁護士+舎弟の3Pもの。
ヤクザの辻(受)は大の女好きで、危険な色恋に燃える質の男。その辻が組長の娘を相手にスリルを味わおうとしていたところを組の顧問弁護士の財津(攻1)に見られ、口止め料として財津に躰を求められます。
辻は男らしくそれを受けるのですが(笑)、何故か自分の舎弟・菊池(攻2)まで現れて、二人がかりで躰を弄ばれてしまう。
ヤクザものとはいうものの、ヤクザをめぐる3Pお話(笑)なので痛い雰囲気はないです。辻がヤクザらしく男っぽくて女好きなのがいい味を出しています。対する財津は怜悧なタイプで、菊池はワンコです。
菊池はサイズ的にまだムリだという判断(笑)で最期までやってないっていうのが、ヘンにツボに来ました。

お話としては面白かったんですけど、正直、本書の中でこれがいちばん凡庸に見えました。
ちょっともう3Pはありきたり感が拭えないです。。
榎田作品としてはなかなか見られないシチュかもしれませんが、もはやBLで3Pは珍しくもないですよ…。
どうせ書き下ろすのなら、アンケートで挙がっているものや他では見られないものを取り上げてほしかったです。

「カルメン」 ill.鬼嶋兵伍
★★★★☆ ※小説b−Boy2009年7月号掲載
女装もの…ですが、女装するのは可愛い受けではなくてマッチョな攻めの方だった(!)というびっくりなお話(笑)。
小柄なことを気にして密かに筋トレを趣味にしている千歳(受)は、新しく入ってきた会社の後輩の桐生(攻)にコンプレックスを抱いています。
桐生は、千歳が羨む長身と立派な筋肉をまとった男。近くにいるだけでも劣等感を刺激されるのに、なぜか桐生は千歳に必要以上に懐いてくる。
その桐生がゲイであることを知り、更に千歳を好きだと告げられ千歳は困惑しますが、桐生が秘密であるドラァグクイーン姿で千歳の前に現れて…。

BLで女装といったら美しかったり可愛かったりする受けがするものと相場が決まっていますが、それを敢えて攻めにさせているのが面白かったです。しかもただの攻めではない、身長186僂離泪奪船臾醢困任垢茵(笑)
女装ものってBLジャンルの中でも群を抜いて興味が無いんですけれど(汗)、この意外性にはやられてしまいました(笑)。
そしてそんな奇抜な趣味を持った攻めが、受けの前では完全に年下ワンコなので可愛らしさもあってあまり違和感を感じさせないのがまたいいです。
そしてお互いに素の自分をさらけ出せるようになるのには、じんわりきました。
あとあと! まさに適所適材な鬼嶋兵伍さんのイラストに拍手です!

「クリスタル」 ill.中村明日美子
★★★★☆ ※アンソロジー「エロとじ」掲載
密室+スカ○ロプレイ(!)

父親の経営する会社の跡取りとして27歳の若さで取締役の立場にある狩野(攻)は、秘書の芳原(受)とともに故障したエレベーターの中に閉じ込められてしまいます。
怜悧な芳原とは若い頃からの仲で、彼に認められたくて狩野はこれまで努力を重ねてきていたのですが、ちょっとした勘違いが元で芳原に不審感を抱いている―そんな微妙な関係にある相手と思わぬ事態に陥ったことで、狩野の嗜虐心がくすぐられます。
しかも、芳原が尿意を堪えていることに気付いて…。

単純に「エロさ」でいうならこれがいちばんエロかったかもしれない。
スカ○ロというか放尿プレイで絶頂という感じです(笑)。
でもそれだけではなく、短編にもかかわらず切なさやキュンとくるもどかしさまであるのだから凄いですね。そいうい部分があるからこそ、際どいプレイも受け入れられるというか。
これは、キャラふたりに愛着や共感が持てたからこそエロスも倍増した作品かもしれません。

「書生の戀」 ill.今市子
★★★★☆ ※書き下ろし
戦争前夜〜戦中の昭和を舞台にした小説家×書生の、本書では唯一のプラトニックな内容。
作家の廿楽の元に、ある熱心な文学青年からの熱烈な手紙が届きます。手紙の中には青年・松岡の習作も同封されていて、廿楽は最初は文学青年にはありがちなこと程度に思っていましたが、徐々に松岡の習作にそして手紙に没頭していきます。
ふたりは互いに逢うこともないまま書簡のみの不思議な交流を続けていくのですが、徐々に不穏な気配を漂わせ始めた時代に、ふたりも呑み込まれてしまう。

本作は松岡が廿楽に宛てた手紙と彼の習作、そして廿楽の日記のみで構成された、いわゆる「書簡小説」のスタイルです。一応ラストに「現代」という視点が出てきますが、本編はあくまで書簡小説。
書簡小説には、書簡と書簡の「間」があるんですね。でもそこは描かれないから、読んでいるこちら側はそこに何があったのか、人物の感情がどう動いたのか想像してしまう。
この作品にはその「見えてこない」部分へのもどかしさがどんどん募って、そこにエロティックな気配が漂います。
そして何より巧みだな〜と思ったのは、松岡の習作の扱いです。
手紙の内容だけで、松岡が廿楽に熱心なファン以上の想いを抱いているのは伝わってきます。松岡は手紙でそれを直接語りませんが、習作で激情を綴っている。
そしてそれに気が付き困惑しつつも受け入れようとする廿楽も、やはり直接ではなく彼の物語の続きを書く形でそれを告げている。
書簡小説ならではの、もの凄くエロティックな行為だと思いました。

時代背景を思えば多分そうなるんだろうなという予想はついたんですが…、途中で読むのが辛くなってしまったほどです。
ラスト、廿楽の子孫が全てを見届けるシーンはいいなと思っていたんですが、何も彼までそうじゃなくても…な部分が個人的にマイナス。これで、それこそ純文学を読んでいたような気分が一気にBLになってしまった感じがして、何だか惜しいと思ってしまいました。

…というわけで、それぞれにティストの違う作品の味わえる贅沢な短編集でした。
装丁もBLらしからぬハイセンスぶり(笑)。きれいなので大好きです。
ただ、本体の紙質かしっかりしていて全体に重いわりに見返しが2枚とも遊んでいるので、本体表紙が折れそうというか脆い感じがして何だか残念。せっかくここまでデザインの凝った装丁に仕上げそれなりのお値段にするのなら、そこもしっかりしてほしかったなー。

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