calendar

S M T W T F S
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 
<< July 2020 >>

latest entries

categories

category 2

archives

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

  • 2014.07.28 Monday
  • -
  • -
  • -
  • by スポンサードリンク

「禁じられた戯び」 山藍紫姫子 / ill.蘭丸

「君は写真よりもずっと美しい男だね」サンルームに入るなり、シェヴィー・ヴォネガットは、ヘンリー伯爵に杖で激しく打たれた。全裸になることを命じられ、従わなければ、容赦なく打ちのめされることを教えられたのだ。そして側には――過去の闇から現れた、実の息子アラン。悶えるシェヴィーの白い肌に渇望の眼差しを注いでいた……置き去りにされて、愛を知らず育ったアランは、心ではなく父親の肉体を欲しがる異常さを持っているのだ。狂った運命の歯車は、父と子を嬲り、禁忌の刻印を与え、やがて淫らな背徳の海に溺れさせ…。男同士で父と子で、歪んだ快楽に溺れる表題作他、妖艶SMショー『禁断の果実』も収録!

タイトルに覚えがなかったのでもしや新作? とついつい期待してしまいましたが、1997年にキララノベルズセレクションから出ていた「密猟者」の改題新装版でした。
カバーイラストがいいですね〜。縛られて転がっている美青年に嗜虐心擽られまくり(笑)
山藍さん、先月の「ラ・ヴィアン・ローズ」といい、懐かしいお話の復刊が続きますね。
書き下ろしの番外編「マーセル1917」「マーセル1921」と、「密猟者」に収録されていた短編「禁断の果実」も併せて収録。

表題作は、義理ではないガチの息子×父+弟×兄の3Pものという、山藍さんでなければ描けないだろう近親相姦もの。
旧版読んでるはずなんですけど、近親相姦ものだったな〜ということ以外はまるで忘れていて(汗)、そんな状態で読んだためか何だか初めて読むみたいに新鮮でした(笑)。
ただいま旧版を貸し出し中で読み比べられないのでどのくらい加筆修正されたのかは全然わかりませんが、もしかしてだいぶ変わってるのかも?


「禁じられた戯び」
★★★☆☆
舞台は第一次大戦前後のヨーロッパ、イギリスに似た架空の国。
美貌の作家シェヴィーはたったひとりの肉親である年の離れた弟エリックを大切にしていますが、夏休みに寄宿学校から戻ってきたエリックがアランという少年を連れてきたことで全てが変わってしまいます。
アランは、かつてシェヴィーがひと夏を過ごした大富豪メイブリッツ家の次期当主になる人物で、シェヴィーは彼がかつての過ちの末にできた実の息子であることに気が付いてしまう。
更にはアランとエリックが友情以上の関係に陥りそうな気配を見せており、大切なエリックを守りたいシェヴィーはアランにエリックから離れるようにと告げるのですが、自分の本当の父親が誰なのかを知っていたアランは、エリックに手を出してほしくなければ身代わりになれととんでもないことを言い出してきます。
けれどもシェヴィーは、アランの毒牙からエリックを守るため仕方なくアランに従いエリックとともに招かれるままメイブリッツ家の館に滞在することに。
そこにはアランの後見人であり調教師でもあるヘンリー卿が待っており、シェヴィーは彼から屈辱的な調教を受けた末に実の息子であるアランに犯されてしまいます。
そしてやがて彼らの関係がエリックにも知られてしまい…。

…すっかり忘れていたのは、私がこうしたガチの近親相姦ものに興味がないためでしょう;
それでよく長いこと山藍作品追っかけてきたよなと突っ込まれそうですが、私にとって山藍作品のツボはそこじゃないので問題がなかったというか(笑)。
なので、こうしたどこを切っても近親相姦なお話は印象に残りにくかったんだと思います。
ところがところが、再読してみるとこれ、時代物ならではの濃厚な雰囲気がたっぷりでたまらなかったです。第一次大戦前後の、日の翳り始めた上流階級の哀愁みたいなものさえ感じられて、山藍さんはこうしたちょっと時代がかった舞台設定のほうが筆が冴えるなと改めて思ってしまいました。
最近はこういうのあまり書かれないのですごく物足りない〜。

シェヴィーは24歳で、アランとエリックはそれぞれ14歳。
シェヴィーとアランはたった10歳しか離れていないという驚愕の親子ですが、14年前メイブリッツの館で何があったのかはどうぞお話でご確認ください(笑)。
エロは濃厚ですが、攻めふたりが結局は愛情を求めてシェヴィーを求めるのであまり酷い感じはしません、またどろどろ愛憎劇というわけでもないです。
アランは初めは少年ながらもやがて支配者になる人物らしく冷酷非道な行いに出るので鬼畜なのかと思いきや、欲しいのはシェヴィーの躰ではなく愛情で、でもエリックに注がれるばかりで自分には一向に与えられないそれに変わって躰を求める、という愛情に飢えた子供なのです。その姿にはちょっと切ないものがありました。
調教師が出てきてあらぬ姿に縛られたりディ○ド使われたりされていても、そこまで酷いことをされているわけでもないので、山藍作品の中ではわりと読みやすい部類に入ると思います(あくまで山藍作品でのハナシですよ!笑)。というか、ぶっちゃけヘンリー卿は影が薄い; 調教シーン期待するとちょっとがっかりですかねー。
まぁ、このお話のメインは歪んだ家族愛の方なので、そこに重点おくとバランスおかしくなっちゃいますが(笑)。
ありえないはずなのに、最後には彼らの関係が家族愛のひとつの形として受け入れてしまえる気になるから不思議です。

ただ、個人的に状況に流されているだけのシェヴィーに魅力を感じませんでした。実の息子とそんなことになったら普通はもっと抵抗も思い悩みもするんじゃないかと思うんですが、それもないので彼がただ美しいだけの空虚な存在に見えてしまうんですよね。
でも、だからこそこの作品は近親もの特有のどろっとした感じのあまりしない、どこかノスタルジックな雰囲気さえ湛えている仕上がりになっているのかもしれません。

「禁じられた戯び」の番外編となる「マーセル1917」「マーセル1921」は新たに書き下ろされたものですが、山藍さんのオリジナル新作としてはここ最近でかなりまとまった量(60ページ!)になりますね。
両作ともイラストの蘭丸による口絵に触発されて書かれたものらしいです。
内容は、エリックが去った後(「マーセル1917」)と戻った時(「マーセル1921」)それぞれの、家族写真を撮るとか撮ろうとか、そんなのです(え)。
両方とも濃厚な濡れ場たっぷりで、特に「マーセル1921」はシェヴィー、アラン、エリック3人のシーンのためにだけあるようなものでした(笑)。
でも、あの流れなら最後は二輪挿しを期待してしまうのに結局そのシーンがないのは肩透かし。ふたりを受け入れられるよう調教してか…なんて悠長なことしなくても、そこはもう勢いでやってしまえ!…と思ったのは私だけではないはずです!

そんな、複数ものとしてのオチの中途半端さとやっぱり近親ものにさして萌えを感じなかったため読み応えは普通ですかねー。


「禁断の果実」
★★★★☆
「密猟者」に収められていた短編ですが、今回も当時のままの収録です。
淫靡なショーを売りにした秘密クラブ。
客のひとりである宗像は、クラブのホスト役であるマダム・キスミによる無垢な少女への凌辱プレイに不快になってしまう。
その後宗像はクラブの主催者に取り入りホスト役を得て、気に喰わないマダム・キスミを陥れようとショーの見世物にするのですが、マダム・キスミの意外な正体を知ることになり…。

短いお話ですが、こういうある意味直球なお話って大好きです(笑)。
というか、秘密のクラブとかどこか淫靡な匂いのするのが出てくるとどうにも弱くて困ります(笑)。

14になる娘がいた男にしちゃ宗像が36歳なんて若すぎるとか気になることろはあるものの、肝心のショーは道具やらシチュやら美味しさ満点なのでもういいかなと(笑)。
普段のマダム・キスミの冷ややかさは裡に秘めていた脆さを隠すためのものだった…というのがたまらなくて、それを衆人環視の中暴かれてしまうシチュがものすごくエロかった。
そしてマダム・キスミは山藍さんならではのキャラですね。
それにしても、最後に相手に囚われたのはどちらだったのか…。
これ、もうBLですらないお話ですが、個人的には激ツボな作品です。山藍作品がお好きな方には是非とも読んでほしい〜
とはいえ、冒頭の少女の凌辱シーンはけっこうしっかり描かれていますので、苦手な方は避けた方がいいかもしれません。


この一冊、蘭丸さんのイラストもかなりお話を盛り上げていると思います。
旧版は名香智子さんがイラスト担当していましたが、コラボ的には豪華でもあのクラシカルな少女マンガ風テイストはBLに合っていない気がしていたので(だって受けが豪奢な美女にしか見えない;)、今回の個人的激ツボイラストに変更はかなり嬉しい!
蘭丸さんはお名前聞いたことがなかったのでどういう方なのだろうと調べたら、ネット上で作品を発表されている漫画家さんなのですね。
漫画の方は山藍さんが好みそうなフェチ度の高い感じなので好みが分かれそうですが(私は大好きですけどw)、今回のイラストは作品に合わせてかだいぶ耽美寄りな雰囲気で素敵です。
絵柄のきれいな方ってただきれいなだけなこともよくある中で、蘭丸さんのイラストは人物の存在感や感情がしっかり伝わってくるのでそこも好き。
これまでこのレーベルで復刊した山藍作品はイラストが軒並みエロスではなくエロ直球な感じ(どんなのだ)で濃厚エロスが売りな山藍作品にはちょっとミスマッチな気がしていたりもしていたので、今回の蘭丸さんはやっとぴったりな方が来たなという感じで嬉しです^^
今後もどんどん活躍してほしいです!

「ラ・ヴィアン・ローズ」 山藍紫姫子 / ill.本仁戻

「酷いことはしないでくれ、何でも、なんでも君の言う通りにするから…」一眞が最初に男に乱暴されたのは、中学生のときだ。しかも相手は、担任教師。だらしない男性遍歴を繰り返した母親譲りの一眞の美貌が、男たちの何かを呼び覚まし狂わせるのか。次々と現れては、ストーカーのようにつきまとう男たち。しかもどの男も口々に言う、淫らなお前が俺を誘うのだ。俺こそが被害者なのだと―。その美貌ゆえに、生れながらに愛執の鎖に繋がれた、魔性の男の凄まじき日常生活を描く表題作ほか、幻の処女作『神よ、この悩める子らのために』も併録。ボーイズラブ界きっての問題作を、発表当時の危険な状態のママで完・壁・復・刻。

少女革命制覇しました〜(笑)。いやー、初めの頃は摩訶不思議な音楽の流れる中展開する王子様とか薔薇の花嫁とかのオトメな世界観にたじたじだったんですが(笑)、いつのまにかこの奇抜さがやみつきになっちゃって、最終回は泣いてしまいました。あんな悲しい結末になるとは思わなかった。
完全に夫のシュミに付き合った形だったんですが、たまには自分のフィールド外のものを見るのもいいなと思いました(でも夫は個人的に一押しの「ベ○セ○ク」には付き合ってくれないんですが!)。
映画版も観たことだし、これで心置きなくBLに戻れます(笑)。

というわけで本日は薔薇繋がりで、復刊ドットコムから復活した山藍さんの「ラ・ヴィアン・ローズ」です(あんま関係ないか)。
そのうちどこかから新装版出るだろうなと思っていた作品ですが、意外なところから出てびっくり(というか、復刊ドットコムってBLが、なんてあるんですねぇ)。
四六版ソフトカバーの本体がラメで光る箱に収まった様式。東○文庫をソフトカバーにしてもうちょっと大きくした感じですかね。
1995年に花音ノベルスから刊行された旧版収録の「ラ・ヴィアン・ローズ」と「ワンダフルナイト」に、山藍さんの商業デビュー作「神よ、この悩める子らのために」(小説JUNE1987年)と「ラ・ヴィアン・ローズ」ドラマCDブックレットに掲載されていた本仁戻さんのショートコミックを加えた内容です。
(本作は加筆修正なしの、当時のままの内容で復刊だそうです)
本仁さんのイラストは、箱と本体カバーは描き下ろしで、本文イラストは旧版と同じ。口絵には旧版のカバー絵が使われていました。

「ラ・ヴィアン・ローズ」
★★★☆☆
魔性の女だった母親の私生児として生まれた一眞。
一眞が偶然就活で面接を受けた先がかつての母親の愛人だった男・佑月の経営する会社で、採用されるはずはなかったのに監視のためなのか、一眞は採用されて異父弟の皓一を上司として働くことに。
けれどもそこで、男の恋人に刺されるという醜態を演じてしまう。
搬送された先はまたしても母の愛人だった大島が経営している病院で、一眞はもう一人の異父弟・真澄に甲斐甲斐しく世話をされる日々。
ところがある時、一眞は共謀したふたりの弟たちに無理矢理犯されてしまう。
そして退院後はふたりの囲われ者にされてしまいますが、そこに今度は義父ふたりまでもが乗り込んできて…。

…と、あらずじだけ見ると花丸BLACKから出ている著者の作品なみのねっとりエロエロな5Pを期待してしまいますが、残念なことに5Pそのもののシーンの描写はありません。それを含め、このお話はエロを求めると肩透かしになると思います。
もともと花音ノベルズというライトなレーベルから出ていた18年も前の作品なので、最近の複数ものに慣れた読者にはどうしても物足りない印象になるかもしれません。
山藍作品なので、どうしても期待してしまいますしね…。

一眞は母親から美貌の容姿を受け継いでいますが、奔放だった母親とは真逆の内向的な性格で、その美貌ゆえに男たちを惹きつけますが、いつも自分は彼らの「被害者」なのだと思っている。
でも読んでいるうちに、実は彼が無意識の内に男たちを支配しているのだと気が付きます。
もしかしたら、半分くらいは確信的にやっているのではとも思えてきて、そのあたりはやっぱり母親の血を引いている証のように見えました。
弟たちも義父たちも、今は亡き一眞の母親の面影を一眞の中に見てそれゆえに彼を自分のものにしたいと思っているのかと思いきや、本当のところは一眞そのものを欲しがっている、けれどもそのことに一眞ひとりだけが気が付いていない、そんなお話です。
なんで自分ばかりがこんな辛い目に…と思いながらも実は、一眞はこの状態に酔っているんじゃないのかとも思えました。
「家族」がほしいとずっと願ってきた一眞が、いびつな形とはいえ最終的にはその家族を得たわけですから…。


「ワンダフルナイト」
★★★★☆
酔った勢いで同僚の一条(受)と関係を持ってしまった望月(攻)。
記憶のさっぱりない望月は一夜の過ちだから忘れてほしいと言い、一条もそれを受け入れるのですが、以来一条のことが気になって仕方がなくなり…。

山藍さんには珍しいコミカルなリーマンもの。
一条に完全に恋しているのにそれに気が付かないままぐるぐるしている望月がかなり可笑しい(笑)。
短いお話ですが、私は攻め視点のBLが大好きなのでけっこう愉しめました!


「神よ、この悩める子らのために」
★★★☆☆
将之(攻)には和弥(受)という男の恋人がいますが、上司の娘との縁談が持ち上がったことで和弥との関係を清算することに。
けれども、職場が同じであることもあって別れたあとも和弥が気になって仕方がない。おまけに、和弥が会社の専務といい関係になったらしいことを知り…。

山藍さんの商業デビュー作になるのだそうですが、何か見た覚えがある…と思ったら「山藍紫姫子の世界」で読んでました。
小説JUNE(1987年)掲載作なので耽美な雰囲気なのかと思いきや、こちらもかなりコミカルです。
そして「ワンダフルナイト」に似た印象なのは、お話の展開だけではなく主人公の空回りなところが共通しているからでしょうか(笑)。
和弥と専務との間柄はすぐに気が付きましたが、最後に明かられた事実はちょっと意外(笑)。和弥、案外魔性の受けなのかも?


というわけで、収録作3つともが耽美な山藍作品には珍しくフツーのリーマンもの(もちろん山藍作品比・笑)という割と親しみやすい内容です。
そういえばどれも主人公の一人称ですしね。
山藍さんらしい濃厚で耽美な世界を求めたら物足りないかもしれませんが、入門編にはちょうどいいかもしれません。
当時のままの復刊なので、今ならホモって言わないなぁなど色々時代を感じる部分もありますが、読みやすい内容だと思います。

私は結局3作とも読んでいたので、ここで初めてだったのは本仁さんの漫画だけだったのですが、この漫画、かなり笑えました(笑)。本仁さんの山藍さんへの愛ですね!
そして、ドラマCDにも使われていた旧版の口絵イラストのリテイクっぽい今回のカバーイラストで、裏表紙に新たに佑月は登場させても大島が絵になっていないことに、これを読んで納得(笑・っていうか、ドラマCD聴かないから知らなかったけれど、そうか、塩○氏が奴の声を担当してたのか!)。
相変わらず、遊びゴコロいっぱいです。

「スタンレー・ホークの事件簿 IV 冥罰―リトリビューション」 山藍紫姫子 / ill.本仁戻

ハンサムな仮面の下におぞましい性癖を隠し持つ画家、ルイス・クウェンティンに囚われたロスフィールド警視と、精神科医のジン。ルイスは苦悩に歪むロスフィールドの表情を描くことに至上の悦びを感じ、残酷に2人をいたぶっていく。刻一刻と状況が悪化する中、スタンレー刑事は2人を救うことが出来るのか。そして、美し過ぎる男たちの複雑な三角関係の行方は…。ファン必読、めくるめく外伝も収録した、傑作シリーズ完結巻。

あけましておめでとうございます。本年もマイペースにBL萌えな感想を綴っていこうと思いますので、どうぞ宜しくお願いしますm(_ _)m

さてさて新年一発目は、「スタンレー・ホーク」シリーズ新装版の最終巻。
昨年内に出たのが嬉しくて年内に感想を書くつもりでいたのですが、もたもたしていたら年が明けていました; なので今年の初レビューにします。

副題が変更された新装版最終巻は、旧版の4冊目「採集家―コレクター」の残り3分の2の内容(「採集家―コレクター」の続きと「好奇心―パンドラ」)に加え、アンソロジー「薔薇とピストル」に掲載されていた「呪いの骨」も収録。「呪いの骨」は未読だったのですごく嬉しいです!!

(感想かなりバレてます。未読の方はご注意ください。)

「冥罰―リトリビューション」は、タイトル変わってますが、前回から続く「採集家―コレクター」のその後。
ルイスによってロスフィールドとジンが拉致監禁されてしまうというかなりヒヤヒヤな事態になってしまった事件は、スタンレーたちがふたりを救出するまでにジンの目の前でロスフィールドが黒人男性に犯されたりその様子をスケッチしたりとルイスの悪趣味というか変態ぶり全開になるものの、けっこうあっさりと解決を見ます。…ので、事件ものとして期待したら、やっぱり肩透かしなシリーズではありますね(笑)。
でも、最後の最後にロスフィールドが彼にしかできない方法でルイスに報復するシーンは息を呑みます。
ロスフィールドという複雑でミステリアスな男の魅力が見事に表れているシーンでもあり、「冥罰」という新たなタイトルはもうこのシーンのためにあるようなものですね。

続く「好奇心―パンドラ」は、ルイスの事件解決後、バージルシティの有力者の息子誘拐事件のお話。
犯人は身代金の引き渡し役に何故かスタンレーを指名、スタンレーは人質を助けるつもりが犯人の罠にかかってしまい失態を犯してしまう。
スタンレーを陥れようとしたのはルイスにも関わっていたラクロウという男で、ロスフィールドが能力を使ってそのことを突き止めて、スタンレーから汚名をそそぐという筋書きです。
この事件の途上、スタンレーの仕事仲間たちがロスフィールドの能力に気が付いてしまう事態になってしまいますが、これは思いがけずスタンレーたちにとっては頼もしい理解者を得る結果になります。
事件解決後、なんと3人で愉しむというオイシイ展開になっていますが(笑)、山藍さんには珍しく3人のシーンそのものはなし。見てみたかったな〜(笑)。

「呪いの骨」は、バージルシティの負の歴史のある土地で数人の骨を集めた変死体が発見される怪事件のお話です。
スタンレーの要請でロスフィールドは骨から思念を読み取ろうとしますがその強さに取り込まれてしまい、あろうことかジンを傷付けてしまう。愛しいジンを殴ってしまったことが許せないロスフィールドは何としても犯人を挙げようとして、単身、捜査で浮上してきたある男との接触を試みます。
これまでここまで捜査に積極的なロスフィールドは見たことがなかったので、その行動力にはちょっとびっくりなのですが、それだけジンを傷付けたことがショックだったということでしょうね。
そんなロスフィールドの行動に反対するジンを止めるという名目でスタンレーがジンの元を訪れるんですが、、、
何と酒に酔った勢いでジンを…!
いやもう、ジンは受けでも全然いけるタイプ(っていうかもともとあまり攻めっぽくない笑)に見えるから、この展開は全然大丈夫! っていうか美味しすぎます(爆)! この3人にこんな展開が待ち受けていようとは(笑)!
でもね、これでフィジカル的にはスタンレーが3人のトップに立ちましたが、立場的にはいちばんマズくなってしまいましたよね(笑)。で、結局ロスフィールドが問答無用でいちばん強い(笑)。
なんかいいですよねこの3人の関係性!
この3人だからこそ成り立つバランスがたまらないです(笑)。ほんと絶妙な3角関係…(笑)。
事件の方は、犯人に辿りつけたか? と思っていたら、意外なことに未解決なまま幕になってしまいました。
「冥罰」のくだりもそうですが、この「呪いの骨」ではその後の「背徳」シリーズに通じる同害復讐が全面に出ているのが興味深いです。

シリーズはこの「呪いの骨」で完結とのことですが、事件は未解決だしスタンレー3人以外にも秘密を知る仲間?ができたたりしてでまだまだ続けられそうなお話しなのに…と残念になってしまいます。
というか、このメンツで挑んでいく「事件簿」が見てみたくてどーしようもない(笑)。
そして私は地味にフランク・サイトが好きなので、彼が出てくるのをもっと見たかったのですが(笑)。
その後3人の関係性も合わせて、もっと読みたいですねー。
あとはまぁ、このシリーズの新装版はBLのレーベルから挿し絵付きで出てほしかったかな。本仁さんのカバーイラストが素敵なので、なんか余計そう思ってしまいました。
っていうか、角川文庫から出ている他の作品ほど耽美でもなく、かといって本格ミステリーには程遠いこのシリーズが、何で一般レーベルから刊行されたのかが謎です(笑)。
山藍さんによると、この3人は他の作品にも顔を出していたりするそうで(言われてみれば、あれはもしや…なのがあったな笑)、それを確認してみるのも楽しそう。

このシリーズは、山藍作品にしては珍しくエロ面はハードではなくむしろ控えめな印象なので(笑)、キャラクターの魅力と合わせて読みやすいと思います。
まだ山藍作品を読んだことのない方にもオススメの作品です。

「スタンレー・ホーク」シリーズ
 ・「スタンレー・ホークの事件簿 I 仮面―ペルソナ」
 ・「スタンレー・ホークの事件簿 供ヽ詁―アンビヴァレンツ」
 ・「スタンレー・ホークの事件簿 掘‘鷭甜我―ドッペルイッヒ」
 ・「スタンレー・ホークの事件簿 検〔夙魁愁螢肇螢咼紂璽轡腑鵝廖
 ・「スタンレー・ホークの事件簿 仮面〜ペルソナ」(コミカライズ版)

「スタンレー・ホークの事件簿 掘‘鷭甜我―ドッペルイッヒ」 山藍紫姫子 / ill.本仁戻

バージルシティで、臓器を抜き取る連続殺人事件が発生。スタンレー刑事は難航する捜査だけではなく、美し過ぎる上司・ロスフィールド警視との関係にも頭を悩ませていた。彼への感情は確かに愛なのに、謎めいた精神科医のジンとの三角関係など、人間関係の鎖が邪魔をするのだ。そんな中、新たな犠牲者が発見され、事件は心震える驚きの展開へ…!スリリングで濃密な、ドラマチック・サスペンス。傑作シリーズ、急展開の第3弾。

「スタンレー・ホーク」シリーズ第三巻「二重自我―ドッペルイッヒ」の新装版です。
1997年刊の花音ノベルズ版の内容に、旧版第四巻収録の「採集家―コレクター」の前半部を含めた内容。時代的に合わなくなった部分などの細かい修正はありましたが、大幅な加筆はありませんでした。
 
バージルシティの運河に臓器のない死体が浮くようになって数ヶ月。
一向に進まない捜査に手を焼いているスタンレーは久々にセフレの巡業舞台女優ミランダと逢いますが、彼女にロスフィールドとの関係を気付かれ怒らせてしまう。その上ミランダに「浮気相手の男に会わせろ」と迫られて、仕方なく彼女とロスフィールドの元へ向かう羽目に。
ロスフィールドに闘争心を燃やしたミランダは、彼に自分の舞台のチケットを売りつけて見に来るようにと言い出しますが、これが悲劇を呼ぶことになります。
舞台のあと、ミランダは何者かによって惨殺されてしまう。
スタンレーはミランダと最後まで共にいたために重要参考人扱いされ、事件が起きた時間帯の記憶がすっぽりとないロスフィールドは、自分がミランダを手にかけた夢を見て、ふたりの関係に嫉妬を覚えた自分が彼女を殺したのではないのかという思いに囚われる。
果たして、ミランダを殺したのは誰なのか…?

BLなのに男女の激しいベッドシーンで始まるのでご注意ください(笑)。
これまでは一話完結型で進んできたお話でしたが、今回は最終巻となる次巻へ続く形になっています。事件そのものも、スタンレーと深い付き合いのあった相手が被害者であるため主要メンバーも直接関わってくるというこれまでにない内容で、今まで以上に緊張感や焦燥感が増しています。

普通BLで主人公に女性のセフレがいるなんてだいぶイレギュラー、というか人によっては十分地雷になる設定だと思うんですけれど、このお話のスタンレー、ロスフィールド、そしてジンの三角関係はかなり特殊なので仕方がないのかなと思えます。
というのもスタンレーが惚れた相手ロスフィールドは、人の残留思念に感応する憑依体質で、それゆえにどうも何かに執着することを避けているところがあります。スタンレーは彼のそうした「普通ではない」ことを知っているしジンもいるし(笑)で、いろいろもやもやしているんですね。だからミランダという存在が必要だったんでしょう。
そのミランダの存在を、ロスフィールドは外見上は何でもない風を装いながらも、実は激しく嫉妬してしまう。その想いが強かったために彼女が殺されたことに敏感に反応して、自分が殺したのだと思ってしまうまでになる。これが感応体質のややこしさなんですが、そうなってしまうほどロスフィールドの中でスタンレーの存在が大きくなっているということでもあるんですよね。
因みに、今回いちばんハラハラさせられ見応えがあったのは、そのロスフィールドが自分が殺したのかもしれないという思いに囚われていくところでした。
ジンは当然ロスフィールドの変化に気が付いて物騒なことを言い出していますが(笑)、ジンとロスフィールドのやり取りを見ていると単細胞なスタンレーではこうはいくまいと思わざる得なくて、ロスフィールドには彼の存在も不可欠なのだなと思うのです。
やっぱり、奇妙でありながら絶妙なバランスの上に成り立つ三角関係です。
他の話でならそれはないだろな関係のはずなのに、この三人だとそうならざるを得ないと思わせるのがこの作品の面白いところですね。

事件の方も目が離せません。
犯人は、…まぁ、やつが再び登場した時点で確定したようなものですけれど、強行に及んだ謎とそのイカレっぷりには驚かされます。サイコキラーを前にして、贖罪するのではなく犠牲者の無念のためにも生きようと決意するロスフィールドの姿が印象的でした。
そしてかなり気になるところで「つづく」になっていますが、今回「採集家―コレクター」の内容の半分を含んでいるということは、最終巻となる次巻はけっこうな加筆があるんじゃないのかと期待してしまいます(笑)。

「スタンレー・ホーク」シリーズ
 ・「スタンレー・ホークの事件簿 I 仮面―ペルソナ」
 ・「スタンレー・ホークの事件簿 供ヽ詁―アンビヴァレンツ」
 ・「スタンレー・ホークの事件簿 掘‘鷭甜我―ドッペルイッヒ」
 ・「スタンレー・ホークの事件簿 検〔夙魁愁螢肇螢咼紂璽轡腑鵝
 ・「スタンレー・ホークの事件簿 仮面〜ペルソナ」(コミカライズ版)

「クリームな僕」 山藍紫姫子 / ill.ぽ〜じゅ

僕、ミナト。猫耳とふさふさの尻尾をもつキャットピープル。グランマが死んで競り市に掛けられ、ご主人様のおもちゃになったの。さっそくバナナを入れられて、他の猫と交わるように命じられて!?

久々の山藍さんの新作!? しかもケモ耳…!? …と思っていたら、昔の作品の出直しでした。しかも家に帰って読み始める段まで短篇集だということに気が付いていませんでした;
というわけで「クリームな僕」「ディナーには僕を」「天児」「妖精王子東京へ行く」の、山藍さんの昔の短編・中編4編から成る一冊です。
思いがけず懐かしい作品も読めた一冊でした(笑)。

「クリームな僕」
★★★★☆
昔の作品なのだそうですが、初出がどこなのかが解らず、いつ頃の作品なのかも不明。とにかくエロかったです(笑)。

近未来。
愛玩用の混合動物として人工的に造られたキャットピープルの少年・ミナトは、彼を人間と同等に扱ってくれた飼い主が亡くなったため競売に賭けられ、新たな主・加賀田に買い取られます。
ミナトはさっそく性奴として加賀田を満足させられるよう調教されますが、その時に現れた自分と同じキャットピープルのシャオに恋をしてしまう。

ケモ耳でショタで全編エロいお話しです(笑)。
そして主人公の一人称で語られていて、それがまだまだ拙く幼いためにいちいちとんでもなくいかがわしくなってしまっています(笑)。ケモ耳はもちろんショタが好物な方はとても愉しめるでしょう。
そこまでならありがちなとこですが、さすが山藍さん、こんなちっちゃい子でリバもしちゃうのですよ(!)。その後は加賀田も参加してのサンドイッチ! すごいですねー。ショタ苦手な私もかなり愉しめました。
この他にもバナナはもちろんまさかの噴水とか(笑)なんでそんなこと思い付くのなアイテムも登場して、最初から最後までエロエロなお話しでした。

「ディナーには僕を」
★★★☆☆
1999年刊のバニラ新書「愛と憎しみの迷宮 下巻」に収められていた短編。
ガタイのいい警備員に万引きを疑われた少年・浩弥が、引っ張られた先の部屋でSM行為を強いられる…というお話で、短いですが浣腸やらス○トロやらそこまでするかのオンパレードで、苦手な方はご注意下さいな内容(笑)。
実は浩弥の欲望だったのか、なラストがいいです。

「天児」
★★★★★
1998年刊のバニラ新書「シシリー」に収録されていた王朝もの。大好きなお話で、当時のイラストが山本タカトさんだったのにびっくりしました。

高貴な生まれでありながら今は帝の后となっている双子の妹の穢れを代わりに受ける存在・天児として娼館で生きている安寿は、時おり訪れる陰陽師の男の存在を心の支えにしています。けれども愛しい男を後輩の乙彦に奪われて、沈む心のまま贔屓の寺に召されて陵辱の限りを受け…。

短いお話なんですけれど、その後の「王朝恋闇秘譚」「とりかえばや」の原点みたいな作品でとても読み応えがあります。
いやもう寺での場面はそれ以上かも。僧はもちろん荒れくれの雑兵たちからも陵辱され挙句に犬にまで舐められてしまうという、壮絶なエロの連続です。
それにしても山藍さんは時代もの上手いですね。しっとりとした雰囲気がよく伝わってきて、だからこそエロいのだと思います。そしてお話の中に民俗的なモチーフを取り入れる上手さも絶妙。
しかしこのお話のいちばんの(私的)ツボは乙彦ですよ(笑)。成長した乙彦が安寿を奪いに行くとか、そんなおいしい話にならんかしらとモーソーしてしまいます(笑)。

「妖精王子東京へ行く」
★★★★☆
1992年白夜書房刊の短編集「金環蝕」に収録(イラスト:竹田やよい)されていたちょっとコミカルなお話。
今回の収録作の中で一番ボリュームがあります。

妖精画家の武彦は、イベントで向かったイギリスで本物の妖精を偶然捕獲して日本に持ち帰ります。妖精はリーンという名の王子さま。
Sっ気のある武彦は小さく愛らしい姿だけれども生意気なリーンをやがて道具を使って性的にいたぶるようになるのですが、「満月の晩の呪い」によってリーンが人間サイズに変身し立場が逆転してしまう。人間サイズになったリーンはなぜか小さい時とはまるで違うワイルドな男(でも美形)になって、これまでのお礼とばかりに武彦を犯してしまうのです。
屈辱でしかなかったのに、武彦はいつの間にか感じるようになってしまう。

最初は愛らしい妖精が大きくなって相手を掘っちゃう! …というある意味リバな展開が激ツボなお話です(笑)。さすが妖精というかリーンはかなりのしたたか者で、やっぱ妖精に人間は勝てないかなと思ってしまいました(笑)。
武彦の一人称なので、彼の慌てぶりやら驚きぶりやらがとても可笑しい(笑)。全体的にコミカルな雰囲気です。


4作品ともそれぞれにカラーが違いますが、エロいという点は共通しているというのが山藍さんらしいです(笑)。長編のような奥行きはないですが、お好きな方はきっと愉しめる作品ばかりだと思います。

イラストのぽ〜じゅさんは男性向けショタ作家さんのようですね。
ショタは好きじゃないので実は苦手系だったりしますが(汗)ネコ耳な「クリームな僕」なんかはぴったりはまっています。あと、時々攻め側の男たちの顔が男性向けエロで見られるように影のようになっていたりして、何だか納得でした(笑)。
あとがきによれば山藍さんがこの方のファンだそうで、そこからのご縁のようです。
花丸BLACKからは最近続々と山藍さんの名作が復刊して嬉しい限りですが、イラストがいつもエロ特化タイプの方々なのが気になります。。山藍さんの好みなのか編集の采配なのかは微妙なところですが、今活躍されているBLレーターさんたちと組んだ作品もぜひ見てみたいです…! それってBLならではの愉しみだと思うのですよ…!
あともうひとつ、花丸さんは作品の初出データくらいは記載してほしいですねー。
今回「クリームな僕」がいつ頃の作品なのか結局分からなくて、ちょっともやもやしています。ご存じの方いらしたら教えてくださいませ〜><

「蘭陵王」 山藍紫姫子 / ill.小島文美

評価:
山藍 紫姫子
(1994-11)

北斉の蘭陵王長恭は、世にもまれなる美貌を隠すため、獰猛な仮面を着けて出陣し、敵の大軍を撃破した―。中国南北朝の故事の材を得た奔放な創作バレエ「陵王」。一方、妖しく踊る天才ダンサー土御門玲司にも、醜悪と艶麗、淫蕩と無垢、いずれが仮面とは知れぬ二つの顔があった…。

久々に再読してみました。
蘭陵王というのは、中国南北朝時代の北斉に実在した武将の名。あまりに美しい貌をしていたために戦場では怖ろしい怪物の仮面を付けて闘ったといわれています。雅楽の「陵王」でも有名ですね。でも婦女子が歓びそうなエピソードは全くない人物だったようです;
最初にこの作品を知った時、山藍さんはこれをどう料理した? と興味津々でいられずにいられなかったのですが、創作バレエの演目「蘭陵王」を十八番とする2つの顔を持つダンサーのお話しです。

刑事の桐生は身重だった妻を殺され独自に犯人を追っていますが、その途上で妻が贔屓にしていたキドバレエの花形ダンサー・玲司にたどり着きます。
キドバレエは裏でダンサーたちに売春まがいのことをさせていて、玲司も躰を売っています。桐生は偽名を使って彼を買い玲司という人間を探ろうとしますが、会を重ねていくうちにその妖しい魅力の虜になっていく。
そのままふたりは愛し合うようになるのかと思っていたら、お互いの秘密を知ってしまったことで予想もしなかった展開になります。

玲司には大きな秘密がありました。
血を見ると全身が赤い痣に覆われ、血を浴びることで元に戻るという特殊な体質をしていて、赤い痣が出だ醜い姿を見られることを何よりも恐れています。そして人に見られてしまう度に相手を殺している。
バラしちゃうとアレな気もするんですけれどもこれを明かさないとお話の核心に迫れないので書いちゃいますが、自分の醜い姿を見られたこととその正体を知った反動で、玲司は桐生を殺してしまいます。
予期せぬ唐突な展開に何故!? と思わずにいられないところですが、玲司のうちに潜んでいた狂気が桐生の愛情を持っても静まらないものなのだということなんですよね。彼は特異体質の自分を嘆くか弱い存在ではなく、それゆえに人ならぬ獣性を秘めた生き物なのです。
その玲司を、桐生の妻の兄で同僚の刑事である佐野が捕らえて監禁してしまう。
桐生と入れ替わるように玲司をからめ取った佐野は優しい印象だった桐生とはまるで違う、獣性を秘めたかなり危険な男です。
彼は桐生に恋愛感情ではないけれども友情以上の特別な想いを抱いていて、だから決して玲司を許さない。最初に読んだ時は気が付かなかったんですが、再読すると佐野にとって如何に桐生が大切な存在だったのかを思わせるエピソードが散りばめられていることがわかりました。
佐野は怒りのまま玲司を徹底的に陵辱し痛めつけます。

絶対に許し合い分かり合えることのないように見えた玲司と佐野でしたが、実は似た獣性を秘めているという共通点がふたりの心を共鳴させていくようになり、ああつまり玲司は、獣性などはらんでいないために自分を「わかる」ことのなかっただろう桐生ではダメだったんだな、と思いました。その桐生が玲司と佐野をを結び付ける役割を果たしているんですけれども。
そして美しい面を醜悪な仮面で隠した蘭陵王とは逆に、玲司は美しい面の奥に狂気を潜めていると思っていたんですけれども、佐野に監禁され痣の現れた玲司を見ていたら逆かもとも思いました。
玲司と佐野の関係は愛ではないですが、より深いところで理解し合えるという意味ではそれに近いのかもしれません。

そんなお話しなので、エロシーンは桐生と玲司のところは甘いですが全体的に痛くてハードな場面が多いです。特に佐野に監禁されてからは卵入れられたりフィ○ト○ァックされたり凄いです。切れたり出血したり、けっこうではなく本当に痛いのでご注意下さい。
でも圧巻は、玲司が地下劇場の舞台上で不特定多数の客にヤラれてしまう公開プレイ。淫靡な気配濃厚です。

だいぶ前の作品なので桐生の妻やバレエ団のパトロンの姿に時代を感じてしまったりはするものの、その「今よりもちょっと前」のお話しであることが、19世紀のオペラ座じゃあるまいしなバレエ団の売春行為なんて無茶な設定もアリに思わせたり、暗くて妖しい雰囲気を際立たせたりしています。

数ある山藍作品の中でも屈指のハードさですが、「堕天使の島」とか最近のタリオシリーズがお好きなら大丈夫…かな?

「王朝恋闇秘譚」 山藍紫姫子 / ill.小林智美

時は平安王朝時代。高貴な家に生まれながら、政変に巻き込まれ離ればなれになった綾王と吉祥丸の兄弟。寺から寺へ高値で売買され高僧に体を捧げる笛人に身をおとした兄のもとに、ある日雅な文が届く。今宵、お迎えに参ります、と。しかしそれは巧妙に仕組まれた罠だった。時代に翻弄された美しき兄弟の確執の行方は?そしてあの日の慟哭の別離の真相とは?めくるめく禁断の官能と真実の愛とを描き切る究極の耽美世界。

ここのところ何度めやらの山藍さんブームが来てまして(笑)、この作品も10年ぶりに再読してみました。
昔読んだのは2002年に角川書店から出ていたハードカバー版(イラスト:水上有理)でしたが、今回は文庫化した新装版を。全体的に大きな加筆修正はなかった印象です。
実の兄弟ものな上に稚児弄りあり陵辱あり複数プレイありと禁忌は一切ナシ! な王朝ものです。

綾王(受)は高貴な生まれですが子供の頃に政変に巻き込まれてしまい、弟の吉祥丸をかばって寺の中童子(稚児みたいな僧のお相手をする存在。山藍さんのオリジナルです・笑)に身を堕とします。
その後も高級男娼の笛人(これもオリジナル)となって受領に囲われ、色欲の世界に溺れた生活をしていましたが、ある時「お迎えに参ります」という文を送ってきた謎の男によってさらわれてしまう。男の正体は、今は中将に登りつめた生き別れになっていた弟、かつての吉祥丸(攻)。中将は色欲に堕ちた兄を憎み陵辱してしまいますが。

実は、私の読んだ山藍作品第一号はこの作品でした。
購入した帰りの電車で読もうとして(カバーはかけてもらいましたよ!笑)、のっけから綾王が寺の僧都ジジに仕込まれているあのシーンだったのにびっくりしてしまい、あわてて閉じたことは忘れもしません(笑)
…しかしこの作品を一般書籍と同じ体裁で出した当時の角川書店、今考えるとなかなか凄いですよね(笑)。当時はこれがふつうに一般文芸の棚に並んでいたことを思い出します(笑)。
というわけでそんなエロエロなシーンの初めから最後まで、綾王があの手この手で責められてしまう、とってもエロい王朝絵巻です。

綾王は薄幸の麗人ですが、子供の頃僧たちの相手をしているところを弟に見られてからは、一方的に辱められるならばいっそ相手の快楽ごと支配してしまえと閨房では男娼の顔になるしたたかさを持つようになっています。
中将の命令でその部下たちに陵辱されたときでさえそうです。
ところが相手が弟である中将となるとそうはいかず、禁忌を犯してはならないと抵抗するあまり取り繕う余裕がすっかりなくなってしまうんですね。ある意味素の自分をさらけ出してしまっている。
で、体を重ねているうちにどんどん深みにはまってしまうという状況に陥って、相手は実の弟なのにと愕然としてしまう。
中将の方も、最初は憎い兄を犯して気を晴らすつもりが、気が付いたら兄の甘美な肉体に溺れてしまうという予想外の事態になって困惑してしまいます。
若くて勢いはあるけれども経験は少ない弟が、男娼として仕込まれてきた兄の体がもたらす快楽に骨抜きにされてしまうというのは、シチュ的においしくて萌えてしまいます(笑)。逆に、記憶の中の幼い弟しか知らなかった兄が知らぬ間にたくましい男になっていた弟に戸惑わされる、というのもいいです(笑)。
ふたりはこのまま愛欲に溺れながら和解していくのかと思いきや、途中で邪魔が入ってしまいます。
中童子だったころの綾王を見初め、以来執心している式部卿宮が、中将から綾王を奪ってしまう。
でも、宮さまの相手するときの綾王はただの「囲われた男娼」に戻ってしまって、それが宮さまにはなんとも物足りない。結局綾王を乱れ狂わせるのは、弟ただひとりだったというオチです。

実は、どろどろしがちな兄弟ものをはじめとする近親相姦モノは苦手なんですけれど、この作品は愉しめました。愉しめたからこそその後他の山藍作品もどんどん読んできたんですよね(笑)。
何故と考えて、これ、兄弟もののわりにはあまりどろっとしていないからだろうなと思いました。
弟が兄を執着するよくある兄弟ものですが、けれども弟の執着心を書き込みすぎておらずどろどろした印象が薄いのです。変わって、細部にわたるまで王朝ものらしい雰囲気や道具使いがお話を彩っていて、お話に深みを与えています。バランスが絶妙なのです。
そして長く生き別れていた綾王と弟が久しぶりに再会して昔とは違うことに戸惑ったり、個人的においしい部分が多かったこともポイント高し! という感じです(笑)。
ただ、ラストがちょっとご都合主義的すぎるというかもう一捻りあればなと思わなくもないのですが。

エロシーンはとっても濃いです。のっけの仕込みシーンに始まり、陵辱、輪姦、SMとよくまぁこんなにバリエーションに富むものだと感嘆してしまうほどです(笑)。特に終盤のプレイは凄い発想だと思います!
そしてなにより、桜、琵琶、蛍などなど、王朝物ならではの道具使いが効いてます(笑)。というか、よく思い付きますねっ!
というわけで、受けが攻め以外に犯られてしまうしその場面は濃厚に描かれてもいますので、そういうのが苦手な方はご注意ください。
でも輪姦シーンも綾王が相手を手玉に取っていたりするので酷い印象はなく、むしろとてもやらしい感じです(笑)。
私はといえば、BL作品の本格的な出会いの一冊だったたこの作品がスタンダードになってしまっていて、その後他のBL小説を読むようになりいろいろタブーが多いことに気が付いてびっくりというか物足りない思いをよくしました(笑・最近はだいぶ変わってきましたが)。

というわけで、ある意味王朝文学、とくに「源○物語」のパロディとも取れる作品(笑)。
そんなにボリュームはないにも関わらず、もの凄く濃厚で読み応えのある一冊です。

| 1/3PAGES | >>