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  • 2014.07.28 Monday
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「碧のかたみ」 尾上与一 / ill.牧

昭和十八年。全盛を誇る南の要塞・ラバウル航空隊に着任した六郎は、喧嘩に明け暮れている戦闘機乗り・琴平恒に出会う。問題児だが操縦士として優秀な恒と「夜間戦闘機・月光」でペアを組むことになった六郎は、行動を共にするうちに、故郷の家族を守りたいという彼の深い思いと純粋さに触れ恒に強く惹かれていく。命の危険と隣り合わせの日々が続く中、二人は互いを大切なペアとしていとしく思うように。しかし、ラバウルにも敗戦の足音は確実に近づいていた…。「天球儀の海」希の兄・恒と六郎の命を懸けた青春の日々。

「天球儀の海」の受け・希の兄で戦闘機乗りの恒とそのペアの六郎のお話。
「天球儀の海」の希と資紀のその後のSS「雨のあと」も入っています。
読むつもりなかったんですが、今回は攻め視点と聞いて結局読んじゃいました。
…なんですが、やっぱり合わなかったなぁという結果に。。
かなり辛口&バレた内容になってますのでご注意ください!

南方の要塞・ラバウル航空隊に着任した偵察員の六郎(攻)は、そこで出会った腕はいいけれど周囲と揉めてばかりいるパイロット・恒(受)とペアとなって夜間戦闘機「月光」に乗り込むことに。
性格に難のある恒に初めの頃は振り回されっぱなしの六郎でしたが、恒の戦闘機を見るきらきらした眼差しや故郷にいる家族への愛情の深さを見るうちに、不器用ながらも真っ直ぐなその姿にだんだん惹かれていくようになります。
しかし戦局は悪化の一途を辿り、無敵を誇ったラバウルの状況も日増しに逼迫していき…。

前作「天球儀の海」とは打って変わって、戦場に身を置く男たちの命をかけた物語。
読んでいちばんに思ったのは、こうしたお話にベタなBL要素は馴染まないなということ。ふたりの関係はあくまで「ペア」でよかった気がして、そこだけが浮いてしまっているように感じました。
そして前作は萌えはなかったけれど言葉ひとつひとつの選び方が繊細な文体が美しくて印象に残った作品でしたが、今回はそうした繊細さがさほど感じられず何だか荒削り。前の雰囲気が好きだっただけにこれは残念でした。
お話の展開や構成も、書きたいことは全て詰め込んだ感は伝わってくるもののそれだけに無駄も多いというか何処か散漫になっている気がして、もしかしてあまり時間をかけずに書かれたお話なのかなと思ってしまいました。

六郎&恒のペアは、萌える部分のなかった前作のふたりよりは好感が持てましたが、大好き! と思うほどでもなかったです。
六郎はもともとは花火職人で、カッとしやすい恒とは逆の忍耐強くて面倒見のいいタイプ。彼の目から恒の姿が描かれている、そんな内容です。
小柄で負けん気が強く喧嘩っ早くて何よりも飛行機を愛するラバウルの五連星・恒が懸命に戦う姿には、きっと多くの人が涙すると思います。

が、私は少々演出過剰に見えもしました。
六郎と恒を乗せた機体は敵によって三機落とされていて、一度目は六郎に恒が無二の存在であることを知らしめふたりが単なるペア以上の関係になるためのきっかけ、二度目は奇跡の復元冷戦のエピソードへの伏線、そして三度目は決死のクライマックスの始まり…とそれぞれが重要な役割を担っているのはわかるものの、防護性が低く被弾したらすぐに燃え上がってしまうような機体が三度も落とされてふたりが無事に生還しているというのは、あまりにも都合の良すぎる気がします。
最初こそ「助かってくれ!」と手に汗握りましたが、何度も続くと既視感も出て来るし何処かで「どうせ助かるんだろうな」と冷めた目で見ている自分がいました。
そしてこうした危機に直面した時、必ず犠牲になっているのは六郎ではなく恒なんですよね。
墜落して意識をなくしていたり大怪我をしているのも、基地でマラリアに罹って生死をさまようのも恒。
そんな、小さな体で一生懸命に生きようとする「可哀想な」恒の姿を六郎の視点で見せられ続けることに、何だか段々と作為的なものを覚えてしまいました。
「ペア」ならば一度くらい、恒が六郎を「しっかりしろ!」と引っ張っている場面が見てみたかったです。
あと、最初に攻撃されて助かった後の恒の「月光と沈みたかった」というセリフ、あれほど家族を守ると言っていた彼が口にするには矛盾するのではないかと何だか引っかかります。

もうひとつ気になったのは、斎藤の死。
彼の出撃シーンに「…ああ、もう生きて戻ってこないんだな」と思わなかった人はいなかったんじゃないかと思います。
お気に入りのキャラだっただけに、あそこまで立派に死亡フラグ立てなくても…ともやもやしてしまいました。
どんどん消耗していくラバウルで生き延びようとする兵士たちの日常の、劇的にではなく淡々とした描かれ方がすごくいいだけに、ときどき混ざるこうした過剰な「演出」が逆に嘘くさく見えてしまったというか。
たぶん、さっきまで普通に話していた相手が撃墜されていくのが日常の戦場での死って、こんな「予告」なんかなく唐突にやってくるものなんじゃないんですかね。
そしてその中に混じる後輩の恒への横恋慕やらのエピソード。。BLだから入った部分なのか? 蛇足に見えるんですが…。

…とまぁ、気になる・疑問に思うことばかりつらつらと書いてしまいましたが; ふたりが初めて体を重ねるシーンでの最初のトンチンカンなやりとりとその後のやたら「痛てえ」を連呼する恒(笑)や、花火のシーンはすごく好きです。
ラストは前作で「戦死した」とありましたが、前作がああいう終わり方をしたのでたぶん違うんだろうなー…と思っていたとおりだったというか、予想の範疇でした。
このラストならば、もう少し戦後のふたりの姿を見たかったです。

イラストですが、今回なぜか作中のシーンが一部漫画になっていて戸惑いました。この演出は必要なかったと思います。
そしてこれは前作でも思ったことですが、キャラがみんな予科練生かと思うくらい幼すぎてとても前線で戦う戦闘機乗りには見えない…。嫌煙されがちな「戦争もの」への配慮というか取っ付きやすさを考慮しているのかなとも思いますが、…もうちょっとどうにかならなかったのか。。

そしていちばんすっきりしないのは、取り扱い店3店舗ごとに違うSSペーパーを付ける特典商法に加えてWEBでの番外編3ヶ月限定公開…。
つくづくBL読んでて嫌だなと思うのは、本編に収録されないかたちで発表されるこうしたSSやらの多いこと。入手期間や場所が限られているのがフェアじゃない上に店3店舗ごとって…と今回は本当に引きました。
完成されたお話なのならば、ちゃんと一冊の中に収めるかたちで発表してほしい。
このことや、某映画の上映もあっていつも以上に戦闘機やパイロットに注目が集まっているこの夏に刊行されたことといい、この作品の刊行に果たして誠意が込められているのかがすごく疑問です。
特典商法に力を注ぐのなら、校正さんが寝ていたとしか思えないような見落としのあった校正に力を入れてほしいです。

 ・「天球儀の海」(リンク作)
 ・HOLLY MIX(恒と六郎の番外編「間宮」収録)

「天球儀の海」 尾上与一 / ill.牧

命を懸けた、せつない片想い。希は特攻に行くことを決めた。町の名家の跡取りの、1人息子である坊ちゃん、資紀の身代わりとして――。幼いころ、希は危ないところを資紀に助けられた。資紀が現れなかったら自分に命は五歳で消えていた。坊ちゃんとお国のために死ねるなんて、なんと幸せなことだろう。希は十数年ぶりに坊ちゃんと再会するが……。

戦時下の、それも神風特攻を描いた作品と聞いて手が伸びてしまいました。
実は萌えはほとんどなかったんですけど;それを超えて読み応えのあるお話でした。
…そして、壮大にバレちゃってますので、未読の方はご注意ください!

昭和19年暮れ。予科練を出た希(受)は、町の名家の坊ちゃん、資紀(攻)の身代わりとして神風特攻に行くことになります。
資紀はひとり息子で、資紀の父はどうしても特攻には出したくない、けれども名家であり自身が海軍中尉であるゆえに家からひとりも特攻に出さないのは外聞が悪い…という事情で希を養子に迎え息子として特攻に出す、という時代とはいえ有力者ならではの横暴な話に周囲は気の毒がりますが、ひとり希は資紀の代わりになれることを歓んでいました。
幼い頃、希は資紀に命を助けられたことがあり、以来資紀を敬愛していて資紀のために死ねるのなら本望だと思っていたのです。
召集の命が下るまで希は資紀の家に住まうことになるのですが、13年ぶりに再会した資紀はなぜか希にとても冷たく当たり…。

この作家さん、これが初読みでしたが文章がとてもうまいです。こういうお話って、設定がよくてもそこがお粗末だとすーっと醒めてしまうんですが、そんなことは全くありませんでした。また、取材も丁寧にされていて、疑問に思うところがなかったのも良かったです。
比喩が上手くそれを絶妙なところで使っていて、そのためなのかとても柔らかい印象の文体。このお話によく合っていると思いました。手の甲のオリオン、トンボ玉、ジャノヒゲの実、ルリビタキなど、散りばめられたモチーフもノスタルジックな雰囲気を醸し出させながら上手く使われているなぁと。
また、登場人物の怒りや哀しみを直接書くのではなく心情を追うように描いているのでじわじわくるんです。
お話そのものよりも文体にぐいぐい引っ張られてページを繰ってしまった気がするくらい(笑)。
…いやいや、お話も凄いんですよ!
ある意味こんなにヘヴィーな内容のBLも、なかなか見られないと思います。

学者を父に持ち、末っ子として兄や姉たちに可愛がられて育った希は、優しくおおらかな少年です。そして子供の頃に自分を助けてくれた、たったそれだけで資紀を想い続ける(恋というより敬愛の念ですが)一途さを持っています。
軍人になったのも海軍に所属した資紀の下で働けるかもしれないという一縷の望みのため、というくらい資紀に心酔していて、だから彼の身代わりに自分が特攻に出ることで資紀の命が助かるのだと歓んでいる。
そんな希に対して、資紀は軍人としての矜持を持つ沈着な性格。端々から不器用なだけで優しいのだろうということは伺われるのですが、何故か希に対してはとても冷たい態度をとります。そして八つ当たりのように希を陵辱するようにもなってしまう。
それは果たして希によって軍人の誉れを奪われたためなのかそれともほかになにか理由があるのか、希視点で進むお話からはちょっと見えてきません。
この、資紀のわかりにくさがポイントですかね。
それでも希の資紀への想いは変わらず彼の命が助かるのならという一身で特攻に臨もうとしますが、希の召集が間近になった時、まさかの出来事が起こってしまいます。
…本当にまさかの。。
ルリビタキの流れから、これでふたりはすれ違いを解消して心を通わせるのかな…ときゅんきゅんしながら読んでいたら、、
資紀が希の右手を切り落してしまうという。
瞬間、何が起こったのか目を疑ってしまったほど衝撃でした。
流血沙汰が…とか猟奇的過ぎるとかそういうことでのショックではなくて、なんで希がこんな仕打ちを受けているのか、ということがあまりにもショックで…。
こんなショッキングなシーン、BLで見たことあっただろうか?

衝撃の展開に、読んでいるこちらも希同様資紀が何を考えているのかわからない…とぐるぐるしてしまいましたが、切り落とされたのは右手(操縦桿を握りますね)でその後結局資紀が特攻出撃することになるという顛末に、あぁそういうことかと思い至りました。
これは、資紀の希を救いたい想いゆえの行いだったんですね…。
時代のせいとはいえ、そうしないとどうにもならなかったのいうのが切なすぎます。
資紀を助けるために身代わりとして特攻になった希と、その希を救うために希に憎まれるようなことをしてまで自分が特攻出撃した資紀と。
そして希よりも先に資紀の想いに気が付いちゃったので、希、早く気付いてくれーー! と心の中で叫んでしまいました。
だって、彼らにはもう先がないのですよ。ここで気が付かなかったらもう永遠に和解することも叶わない。
それもあって、資紀の出撃のシーンは泣いてしまいました。

そこで暫くページを置いたほど胸がいっぱいになってしまったのですが、ふたりにはその後がありました。
その戦後のエピソードは、これまで見えてこなかったかつての資紀の胸の内も判って微笑ましかったですが(特に餅のエピソードは可笑しいです)、個人的にはなくてもよかったかなと思いました。
いや、ハッピーエンドに越したことはないんですけど、あれほどのことがあって状況が状況なだけにそれなりに覚悟もしていたし、なによりあの涙を返せ…とまでは言いませんけど、あのまま終わってもよかったんじゃないのかと。戦中もの、それも神風特攻ものだからこそ、ありがちな甘いラストにはちょっと違和感が残りました。
まぁでも、それだと昔のJUNEなお話になってしまいますね(苦笑)。そしてそれは今は求められていないのでしょうね、きっと。
ともかく今のBLは、かつてのJUNE時代と違ってそこまでバッドエンドに躊躇いがあるのだろうか?? と思わずにいられなかったです。
いろいろダメ出ししてしまいましたが、尾上さんは今後も楽しみにしたい作家さんです。

あと、冒頭で萌えはほとんどなかったと書きましたが、希が出会いから戦後再会した後もずっと資紀を「坊ちゃん」と呼ぶところにきゅんときました(笑)。彼にとっては時代が変わっても資紀はずっと大切な坊ちゃんなのでしょうね。でもそれでは資紀は不満だろうな…と、思ってしまいました(笑)。
この先ふたりの関係が、新しい時代とともにゆっくり変わっていけばいいなと思いました。

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