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  • 2014.07.28 Monday
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「ヘブンノウズ 赦罪」 英田サキ / ill.奈良千春

ベストセラー作家の渋澤征武にイラストの才能を見いだされた千野旭は、弟のミツルと渋澤の屋敷で暮らしている。恋人はつくらない主義だと宣言している渋澤に恋した旭は、身体だけの関係でもいいからと訴え、渋澤はそばにいることを許した。渋澤がある過去に苦しんでいることを知った旭は、渋澤の力になりたい、今は無理でもいつか本当の恋人になりたい、そう思っていた。そんなとき、旭はかつて渋澤と寝ていた速水に怪我を負わせてしまう。好きなのに、擦れ違っていく想いに旭は・・・!?

5月も半分近く終わっていることに気が付いて本気で焦ったaliciaです;今月はなんか余裕がなくて、BLゆっくり読めないわここの更新もできないわでちょとストレス。ちょっと体を動かしたら全身筋肉痛になるし(運動不足…)、まったりBLで癒されたいーーー
さてさて、そんな中でやっと読みました「ヘブンノウズ」の最新刊!
前回はたいした進展もなくじりじり状態で終わってうーん…という感じでしたが、それの反動なのか今回は一気に事態が動きました。予想以上に動いていて、ちょっと戸惑ってしまったくらい(笑)。
これまでのような旭たちの周りで事件が起き…みたいな展開とは違って、渋澤の過去を中心に添えた内容だったからでしょうか。

デビュー以来一度も締め切りを破ったことのない渋澤が仕事も滞りそうなほどのスランプ状態に陥ってしまい、らしくない様子に不審なものを感じた旭は、それには渋澤の亡くなった弟が深くかかわっているらしいことを知ります。
少しでも渋澤の力になりたいとがんばる旭でしたが、成り行きで渋澤の元セフレ速水を怪我させてしまったり渋澤との約束を破ってしまったりで、すれ違いばかりを起こしてしまいます。
遂にはやっと手にしたセフレ関係さえも解消されてしまうというピンチに陥ってしまい…。

これまではクールで謎めいた紳士然としていた渋澤が今回はのっけから弱っていて、その意外な姿にびっくりさせられました。まるで別人ですよ。
ここまで「あれ?」って思ってしまったのは、渋澤の変調が今回唐突に訪れているからでしょうね。前回まではそんな気配はまるでなかったので、そのギャップで余計に。
そしてその渋澤の過去がここで全て明かされてしまったことも意外でした。
これまでさんざんひっぱってきた感じだったし、そんなにあっさり明かされないだろうなぁと勝手に思っていたもので(笑)。
謝罪ではなく赦罪し続けていた渋澤が切なかったです。
渋澤がいたからこそ救われた人たちは多くいるのに、彼はひとり苦しんでいたんだなと思うと本当に苦しいですね。
今回は、諦めの悪い旭の勝利といいますか、旭のしつこさが渋澤を終わりのない苦しみから救ったんだなと思いました。
途中、渋澤に見限られたと思った旭が薫に身を任せようとしたのにはちょっと待て!! って思ってしまいましたが(だって男のくせに優柔不断に揺れてほしくないです…)、旭と渋澤が晴れて恋人同士になってくれて良かった。
まぁその一方で、薫がただのいい人として去っていっちゃったのが残念でしたが。。
よく考えたら、人のオーラが見える薫は、最初から解っていたんですよねきっと。そう考えると、なんて切ない役回りだったんだろうかと今更気が付いてしまいました。

私、こういう「いい人」の登場する「いい話」はあまり好きじゃない…というか、押し付けがましさにちょっと醒めてしまうことがあってダメなことが多いんですけど、不思議とこのシリーズは好きです。
全体を覆っている人とのつながりや支え合いがもたらす優しさが心地良いからでしょうかね。
今回も温かい気持ちにさせられました。
唯一、速水があまりにもヤなやつすぎてちょい引きましたが(笑)。子供じゃないんだからあそこまで意地悪しなくてもねぇ。。まぁ、色んなものの裏返しなんでしょうけど、もうちょいどうにかしてほしかったと思ってしまいました正直;

というわけで、BL的にはめでたくここで一段落ですが、まだ大きな謎がひとつ未解決でしたね。
次回が最終巻だそうですので次はそれメインなのは確実ですが、…なんかいろいろ覚悟しとかないとなぁと思ってしまったり。
今回ミツルがすごくがんばっていて、だいぶしゃべるようになったり再び学校へ行こうとする姿にじわーんときてしまったんですよ。だから、だからこそミツルにとって苦しい展開になりませんようにと切に願ってしまうわけですが…、やっぱりつらいことになりそうな気配…。
このイヤな予感がどうか当たっていませんように。。

「ヘブンノウズ」シリーズ
 ・「ヘブンノウズ」
 ・「ヘブンノウズ 足跡」
 ・「ヘブンノウズ 赦罪」

「DEADLOCK シリーズ」 英田サキ / ill.高階佑


先日、いつも利用している本屋さんに新刊を狩りに行ったんですが、なんと改装中になってました。。売り場の一部は営業中だったそうですが正面真っ暗だったので気が付かず、仕方なく他店舗を回ってみるものの、BL小説の売り場が縮小していて新刊すらちゃんと揃っていないという、BL業界大丈夫か?! な状況に遭遇。酷いところだとそもそも置いてなかったりするから、あるだけマシなのか。。
いつも利用しているところが利用できなくなるとこうも不便なのかとしみじみ実感です。そして、改装後まさかBLコーナー縮小していたりしないだろうなと不安だったり。。BLに力を入れている書店さんなのでまさかそれはないと思いますが、ちょっとこわいですねー。
そんなわけで新刊は読めず、ちょっともやもやしていました。
新刊は改めて狩りに行くとして、ちょっと前に外伝が出た時に振り返った「DEADLOCK」シリーズの感想を書いてみました。先日から英田さん続きになっちゃってますが、書くタイミングを逃したままになちゃいそうでしたので(笑)。
本編が終了してからも外伝が出たり小冊子などで番外編がいくつもあったり遂にはコミカライズ版が出たりととても人気のあるシリーズですが、実は私ははまっておりません;
これに限ったこっちゃありませんけど、個人的にジャンルを問わず大ヒット作ほどツボにこないことが多いんですよね…。あれかな、必要以上に期待してしまうからなのかな。。そういえば何気なく読んだお話がとんでもなくヒットってことがわりとある気もします。
それはさておき。「DEADLOCK」シリーズ本編3冊+外伝「SIMPLEX」まとめて書きます。

photo
DEADLOCK (キャラ文庫)
英田 サキ 高階 佑
徳間書店 2006-09-27
評価

by G-Tools

同僚殺しの冤罪で、刑務所に収監された麻薬捜査官のユウト。監獄から出る手段はただひとつ、潜伏中のテロリストの正体を暴くこと!! 密命を帯びたユウトだが、端整な容貌と長身の持ち主でギャングも一目置く同房のディックは、クールな態度を崩さない。しかも「おまえは自分の容姿を自覚しろ」と突然キスされて…!? 囚人たちの欲望が渦巻くデッドエンドLOVE!!
刑務所、冤罪などのへヴィーなキーワードやあちこちで聞かれる「BLを超えた作品」という評価に期待して読んだんですが、早々にFBIやらCIAやらが出てきたのにああそっちの方か…とがっかりしてしまったのがのめりこめなかった一因かも。
木原さんの「箱の中」のようにムショものや冤罪ものならではのヘヴィーさを描いた作品ではなく、ハリウッド的エンタメなお話だったんですね。読みながら求めるポイントがズレていたのだと痛感。

痛いだけのレイプシーンやらHIVのことやら、やたらリアルに拘っている割に、コルブスはもしやディック? なんてありきたりすぎる、そしてそうじゃないんだろうなと簡単にわかるベタな展開になったりして、終始これはBLなのかハードボイルドなのか、結局どっちにもなれていない中途半端な印象が拭えずそこが引っかかったままのめり込めなかったのですが、どちらもの「らしさ」を求めたらこういう作風になってしまうのは仕方がないですかね。
あと、これはシリーズ通してですが海外が舞台だからか翻訳小説っぽさを狙ったような文体にも終始違和感が;特に会話が不自然すぎてダメでした。私は、「翻訳小説っぽく硬い」文章というのは翻訳者の原文を上手く写しきれていない未熟さの結果でしかないと思っているので(上手い方はなめらかに訳してくれるものです)、それをわざわざ日本語で書かれた作品でやる必然性を感じませんでした。
シリーズ通してといえばもうひとつ、イラストですが、…小説同様どこを見ても絶賛の嵐なので言い辛いですが、華やかなカラーに対してモノクロが不慣れというかぎこちなく見えてしまってダメでした。美麗な絵柄なだけに、表情や動きや奥行きがないのが気になってしまう。。

photo
デッドヒート―DEADLOCK2 (キャラ文庫)
英田 サキ 高階 佑
徳間書店 2007-02-23
評価

by G-Tools

宿敵コルブスを追えば、いつかディックに会える―。密かな希望を胸にFBI捜査官に転身したユウト。彼を縛るのは、愛を交しながら決別を選んだCIAのエージェント・ディックへの執着だけだった。そんなある日、ユウトはついにコルブスに繋がる企業との接触に成功!!ところがそこで変装し別人になり済ましたディックと再会し!?敵対する二人が燃え上がる刹那―デッドエンドLOVE第2弾。
ムショ萌え求めて手にした作品だったのに、二作目ではもう出所してしまっているなんて〜! …と嘆いたのは私だけでしょうか(笑)。
そして前巻でも思いはしたんですが、このシリーズ、どうにも主役のふたりが好きになれないためにのめりこめないのだとこの巻ではっきり悟りました。
特に、作中では「優秀な元麻薬捜査官」とされているのにぜんぜんそう見えないユウトがダメ。ディックが彼を突き放すのはディックの状況を考えればなぜか気がつくレベルのものだと思う(私でさえ気がついたぜ…)のですが、頭の中が完全に恋する乙女になっているあたりがなんだかね…。BLだからしょうがないのかもですが、気になってしまいます。
なのにロブから想われるというのも、BLらしいですよね…。因みに私、このお話の中ではロブがいちばん好きです。あのちょっと残念なところがなんとも…(笑)。だからってわけじゃないですが、正直ディックより彼を選んだほうがユウトは幸せになれるのでは? と思ってしまったり。
そんな、せっかくのハードな内容をBL的「甘さ」が台無しにしている気がしないでもない読後感。でもその甘さがなくなったらBLじゃなくなってしまうんですよね…。難しいところです。

photo
DEADSHOT―DEADLOCK3 (キャラ文庫 あ 4-3)
英田 サキ 高階 佑
徳間書店 2007-06-23
評価

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ディックを復讐の連鎖から解放したい―。宿敵コルブスの逮捕を誓い、捜査を続けるFBI捜査官のユウト。次のテロ現場はどこか、背後に潜むアメリカ政府の巨大な影とは…?ついに決定的証拠を掴んだユウトは、コルブスと対峙する!!ところがそこに現れたディックがコルブスの銃弾に倒れ…!?執念と憎悪と恋情―刑務所から始まった三人のドラマが決着を迎える、衝撃のラストステージ。
シリーズ完結編。コルブスとの決着もきれいに付いて、収拾つくのか不安になるくらい広がった風呂敷も上手く閉じられています。
そして終盤、前回と同じことを繰り返しているディックにはそれならさっさと素直になっておけよと突っ込まずにいられなかったですが(笑)、ラストは心憎いというか良いシーンでした。
そして「来い。……犬」と「ユウティー」には吹いた(笑)。そんなに好きならさっさと言え(笑)!! ずーっと苦手だったディックがちょっと好きになった瞬間です(笑)。

こういうタイプのハリウッド映画や海外ドラマが好きな方にはたまらないお話だとは思うのですが(逆にだからこそダメだという方もあるかも)、そういうものをあまり見ない私には巻を重ねるごとに派手さもスケールも大きくなってしまってちょっとついていけなかったです。難しいとかじゃなくて、単純に合わなかった。
そしてこういう話は、BLではなくニアっぽいくらいの方が明らかに萌える…と思ってしまったのでした。

photo
SIMPLEX DEADLOCK外伝 (キャラ文庫)
英田 サキ 高階 佑
徳間書店 2008-11-22
評価

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犯罪心理学者ロブの誕生日パーティに届いた謎の贈り物。送り主はなんと、かつて全米を震撼させた連続殺人鬼を名乗っていた―!!ロブの警護を志願したのは、金髪の怜悧な美貌のボディガード・ヨシュア。すこぶる有能だが愛想のない青年は、どうやら殺人鬼に遺恨があるらしい!?危険と隣合わせの日々を送るうち、彼への興味を煽られるロブだが…『DEADLOCK』シリーズ待望の番外編。
ロブが主役の外伝。内容は本編のような派手なものではなくミステリー仕立て。正直ミステリーは好きじゃない(そしてそのミステリー部分はたいしたことない)のでなんだかなーとは思うんですけど、私はロブがお気に入りなのでシリーズの中でこのお話が一番好きです(笑)。
そして本編ではとほほな役回りだったロブにかわいいコが現れて、やっと報われています(笑)。ロブよかったね!

ロブが好きなのは、作中でユウトやディックたちが真剣にビーチバレーに興じ超絶技巧を披露して周囲の注目を集める姿に「大人げない」と言っておきながら、すぐ後に誰よりもビーチバレーに熱くなっちゃうような子供みたいなというか、どこか残念なところが魅力的だから(笑)。
そのロブのお相手は、美形だけども愛想のないヨシュア。不器用なところが可愛いですが、ロブがなぜ彼に惹かれたのかがいまいち伝わってこなくて残念。まるでロブを幸せにするためだけに出てきたキャラのように見えなくもないです。
それからあとがきにヨシュアの最初のキャラ設定(口の悪いオタクだったとかw)のことが書かれていて、そっちの方が魅力的だったんじゃ?? とも思ってしまいました;

それにしても、冤罪だったユウトや潜入捜査中だったディックはともかく犯罪者として服役していたネトやトーニャまでがロブやパコたちに受け入れられているってユートピア過ぎませんかね? いくらBLだからってここまで「いいヤツ」しか出てこないとどうなんだと思ってしまう。
そんな彼らの姿に、シリーズ最初の売りは「刑務所もの」だったなーとか、もうそれっぽさが全然なくなっちゃたなーとか思ってしまったのでした。

「アウトフェイス ダブル・バインド外伝」 英田サキ / ill.葛西リカコ

極道の一大組織である東誠会三代目を、凶暴な狂犬が狙っている!?会長となった新藤の愛を受け入れ、本宅で暮らし始めた葉鳥。ところが襲名を逆恨みする元舎弟の稗田が、新藤の命を狙うと予告!!「新藤さんに何かあったら殺す」心配で焦燥を募らせる葉鳥は行方を追って奔走するが!?極道の愛を得て成長した葉鳥の覚悟が試される!!若き日の新藤と葉鳥を描く「名もなき花は」も同時収録。

待ちに待った「ダブルバインド」シリーズの葉鳥が主役の外伝です^^
本編キャラも大好きでしたが、その後が気になっていたのは断然葉鳥と新藤の方だったので、こうして一冊出してくださったことに感謝です!
小説Chara vol.26に掲載されていたふたりの過去偏「名も無き花は」(全体の3分の1くらい)と、本編終了後のふたりを描いた書き下ろしの「アウトフェイス」(残り3分の2ほど)の収録。
感想はいろいろバレちゃってますので、本編含めて未読の方はご注意ください!

「名も無き花は」は小説Chara vol.26を読んだときに感想を書きましたが、小冊子収録の二人の出会い偏「存在理由」の後、葉鳥が新藤の愛人に認められたときのお話。ふたりの初エッチが見られます(笑)。
また、新藤が妻・美津香と結婚して2ヶ月という時期なので当然美津香もまだ健在で、新藤を喰っちゃってるくらいの強いインパクトを残しています。っていうかその後の葉奈誕生の経緯にもつながるお話なので、実は彼女の物語という側面もあるかもしれませんね。

「アウトフェイス」は本編後のふたりのお話です。
組の三代目を継いだ新藤の「本妻」として共に本家で暮らすことになった葉鳥。けれども襲名を逆恨みしている元舎弟の稗田が新藤の命を狙っており、大人しくしてはいません。新藤が止めるのも聞かず独自に稗田を追うのですが、ちょっとしたスキに稗田に葉奈を人質に取られるというピンチに陥ります。

まず何より、愛しい新藤を守るためならば危険なことにも怯まず突っ込む葉鳥の姿に、新藤への一途な想いの深さが表れていてぐっときました。そして葉鳥が決して考えなしに突っ走るタイプではなく、飄々としながらもかなりしたたかで非情な面を持ち合わせているのがいい。
それから、BLには珍しくご都合主義的になることなく容赦なく決着を付けているのもいいですね。残酷だったり痛かったりで苦手な方もいるかもしれませんが、葉鳥や新藤の置かれた立場を考えれはこのくらいは当然ではないいのかな、と思いました。

今回のもう一つの見所は、葛藤しながらも葉鳥がちょっとだけ成長しているところでしょうか。
本編で事実が明かされた時この後いろいろあるんだろうなーと思っていたんですが、やはりというか何というか、彼にとって実は自分の娘だった葉奈という存在は、かなり大きく、そして重いものになっています。
葉鳥は、たぶんこれまで誰に対しても感じたことのなかった責任を初めて覚え戸惑ってしまうんですね。そりゃあ、これまで他人の子だと思って可愛がっていた子が実は自分の子供でした、では、それまでと同じにとはいかないでしょう。
そんな葉鳥に、「親になるには時間が必要なんだ」と応える新藤にはじーんときました。なんて懐の広い男なんだ!
というかあのラストシーンは、そこから続くプロポーズといい屈指の名シーンではないかと思います。
そんな新藤はもちろん、葉鳥は多くの人たちに温かく見守られながらここまできたんだなーということがわかって、ちょっと涙腺ゆるんでしまいました。
やっと「家族」を得られた葉鳥。末永くお幸せに! と願いつつ、成長した葉奈ちゃんに新藤とふたりいつかあたふたする日が来るのでしょうかね(笑)。

最初の方で、瀬名と上條、そして祥も姿を見せています。瀬名たちが相変わらずなのに微笑みつつ、葉鳥が瀬名を「蛇女」だと評したり大蛇になった瀬名にぐるぐる巻きされている上條を想像したりなところは笑ってしまった(笑)。
そう長いお話ではないですが、そんなニヤリなところも含みつつ事件の展開も無駄なく面白く読み応えありました。

満足な一冊だったのですが、葉鳥&新藤で一冊出すのなら誰もが読みたいはずのふたりの出逢い編「存在理由」は収録してほしかった…という点が残念なので★は−1です。
ついでにもうひとつ、このレーベルで出た英田新作に久々に連動企画のなかったことに安堵していたんですが(苦笑)、あとがきで「アウトフェイス」と今年のChara文庫番外編小冊子(私は応募していません…)に収録されている瀬名&上條のショートがリンクしている、ということが書かれていて何だかなーという気分になってしまいました。
このシリーズ、英田作品の中でいちばん好きなのですよ。それだけに某シリーズのように特定の人しか読めない番外編やSSが、これ以上増えないことを祈ります。。

「ダブル・バインド」シリーズ
 ・「ダブル・バインド」
 ・「ダブル・バインド」2
 ・「ダブル・バインド」3
 ・「ダブル・バインド」4
 ・番外編「存在理由」(英田サキスペシャル小冊子収録)
 ・「アウトフェイス ダブル・バインド外伝」(葉鳥&新藤の外伝)

「ヘブンノウズ 足跡」 英田サキ / ill.奈良千春

ベストセラー作家の渋澤征武にイラストの才能を見いだされた千野旭は、幼い弟のミツルと一緒に渋澤邸で暮らすようになった。渋澤は恋人をつくらない主義だと自ら宣言していたが、旭は渋澤のキスが忘れられずにいた。あのキスはなんだったのか、何か意味はあったのか?本当は自分の気持ちに気づいているのではないだろうか?旭は渋澤が気になってしかたがなかった。そんなある日、旭は渋澤たちと温泉に行くことになって!?

「ヘブンノウズ」シリーズ第二弾。
発売が遅れに遅れて、一時はどうなるのやらと思ったりもしていたので、無事に刊行されて何よりです^^

人気作家・渋澤の新作のイラストレーターとして抜擢され、幼い弟・ミツルと共に渋澤邸で暮らすようになった旭。渋澤はや屋敷の個性的な住人に囲まれて、これまでのように疲弊することなくイラストの仕事に専念してしますが、渋澤への恋心を自覚してしまったことと前に渋澤にされたキスの真意が解らないことに悩んでいます。
しかも、ここのところ渋澤が自分と目を合わせるのを避けていることに気が付いて動揺してしまいますが…。

忘年会やクリスマスなど、年の瀬のイベント盛りだくさんでほのぼのしたシーンが続く今回は、前回のように大きな事件は起こりません。敢えて言うなら、薫の過去絡みで女性の幽霊が出てきますが、ちょっと取ってつけた感じというか幽霊ものの特性を生かすためのエピソードを加えてみましたという感じで全体から浮いてしまっています。
他にも、もしかして旭たちの母親を殺した犯人への伏線? と思える人物が登場していますが、登場しただけなので今は何とも言えないという。。いや、出てきたからには何か関わりがあるんだとは思いますが、え? それだけ?? とモヤモヤ。。
前回はこのあたりも含めて見事に展開していたのに、今回はどうした?? という感じが拭えません。

ならば渋澤と旭のラブ面が進展しているのかというと、…それもそうでもないんですよね。。
渋澤を好きになってしまった旭は前回のキスの意味を知りたいと思うのですが、相手は恋人をつくらない主義なのだと宣言しているような面倒くさい男。どうしたって渋澤の方が一枚上手なんですね。
渋澤が恋人をつくらないのはどうも過去に原因がありそうですが今のところはなにもわからず、ますます何を考えているのか分からない男状態です。
でも、何だかんだ言って旭に特別な想いを抱いているのはバレバレなんですが(笑)。

エロ面も、前回よりは進んでいますが(でも相変わらす本番はナシ)、BLとして読むとやっぱり物足りないかなぁ。
あと、旭が言い寄ってくる薫にくらっといきそうでちょっと複雑。。渋澤が好きだと言いながら、薫との間で揺れるのはナシだろうとか、そもそも薫は何で旭をここまで気に入っている?? …とか色々釈然としない部分も出てきて、この2巻は前回に比べて消化不良な印象です。
…っていうか、主人公ひとりがモテモテ状態のBLって好きじゃないので、そうならないことを祈ります。。
そして、次回はもうちょっとお話が進展していますように…!

「ヘブンノウズ」シリーズ
 ・「ヘブンノウズ」
 ・「ヘブンノウズ 足跡」
 ・「ヘブンノウズ 赦罪」

「ヘブンノウズ」 英田サキ / ill.奈良千春

「私はね、君の絵に恋をしたんだ」ベストセラー作家の渋澤征武と知り合ったその日、旭はそう告げられた。半年前にある事件で母を亡くし、ショックから言葉を失った幼い弟と暮らしている旭は、もしあの日、もしあの時…そんな後悔に囚われて毎日を送っていた。けれど、渋澤に会った日から、すべてが変わり始めた!恋人はつくらない主義と宣言する渋澤、男女問わず恋をする薫、執事の宇喜田を始め、個性豊かな渋澤邸の住人たちに、最初は反感を覚えた旭だったけれども―。

風邪を引いてしまいました。。毎年この時期に罹る喉からくるヤツ(そしてものすごく長引くヤツ;)…。お陰でせっかくの三連休も半分寝込んで過ごしてしまって、お出かけの予定が全てパァになってしまいました。おまけにこういう時に限って旦那が曜日を勘違いして、夫婦でうっかり生ゴミ出すのを忘れたりともう散々です。トホホ。。
そんなわけでこの3日間は積読(主にBL・笑)消化に勤しみ、長らく積んだままだったこのお話もやっと読みました。いつもの英田作品とはちょっと違うテイストで、けっこう面白かったです。

旭(受)は幼い頃に父親を亡くし母親と年の離れた弟のミツルとでやってきましたが、何者かに母親を殺害されてしまい、事件以来自分の殻にこもって一切喋らない状態になってしまったミツルとふたり誰に頼ることもなく生活しています。
大学もやめてバイトに明け暮れるだけの毎日の旭の息抜きは大好きな絵を描くこと。秘かにサイトを作ってそこに作品を発表しているのですが、ある時旭の絵を気に入った人気ミステリ作家の渋澤(攻)が新作の児童文学作品のイラストレーターに起用したいと申し出てきて、旭たちの生活は変わっていきます。

旭は責任感が強くてなんでもひとりで背負い込んでしまう、人に甘えるのが下手なタイプ。何でもかんでも溜め込んでしまう癖もあって、最初の方は内心でウジウジている姿にだったらはっきりそう言えばいいじゃんとイライラすること数回。男の子のウジウジ系はちょっと苦手ですね;
それが、渋澤に関わっていくことで変わっていきます。
渋澤はよくわからなくて掴みどころのない男。常に慇懃な物腰をしているけれどもさらっと嫌味を返してくるような一面もあって(笑)、傍目には面白いんだけれどもちょっと得体が知れないですね。
そんな何処か胡散臭いところがあるのみならずなんと幽霊が見えると言い出すものだから、旭はいい大人がそれでいいのかと不審感を募らせてしまいます。
けれども、幽霊が見えるのは渋澤だけではなくなんとミツルもで、それがミツルが引きこもった最大の原因らしいと知って、旭は衝撃と兄なのになにも気付いてやれなかった深い後悔を覚えてしまう。
おまけにミツルが同じように幽霊が見える渋澤に懐いて、旭は更に複雑な心境になってしまいます。

そんな彼らの関係に、旭のバイト先の突然消息を断った女性従業員の謎が絡みながら展開していくのですが、渋澤たちの幽霊が見える能力が謎を解く大きな鍵になっています。
ある意味ミステリー仕立てですが、ミステリー部分はわりと早くに予想がついてしまう感じなので期待し過ぎないほうがいいです(笑)。

いちばんの見所は、苦しい状況に頑なに心を閉ざしていた旭が、渋澤とその屋敷の住人と関わるうちに成長していく姿ですかね。
先にも書きましたが始めは内に溜め込んでウジウジしている感じだった旭が、渋澤に対しては反発したり歯向かったりとけっこう素直な姿をさらけ出しているんですよね。それはたぶん、渋澤という人間に旭でさえ遠慮したりお愛想を言ったりするのがバカバカしいところがあるからだと思うんですが(笑)、彼に出会えたことは旭とそしてミツルには大きな出来事だっただろうなと思いました。
そして、時にトンチンカンに見えてしまう渋澤と旭のやり取りが楽しいです(笑)。

シリーズ第一弾だからかラブ面は、酔った勢いでとかレッスン(?)だとかでのキスシーンのみで、甘いシーンはほとんどありません。まだやっと旭が渋澤への気持ちに気が付いたところ。そして旭が渋澤に惹かれた理由がもうひと押し欲しい感じがして、BLとしては物足りないかもしれません。
また、旭が渋澤邸の住人・薫に言い寄られてのキスシーンもあったりしますので、苦手な方はご注意を。

BLっぽさはそれほどありませんでしたが、旭や渋澤のみならず渋澤邸の他の住人も魅力的ですしその屋敷の雰囲気や幽霊のお話(ホラーではない)も好きなので、今後を楽しみにしたいシリーズです。

「ヘブンノウズ」シリーズ
 ・「ヘブンノウズ」
 ・「ヘブンノウズ 足跡」
 ・「ヘブンノウズ 赦罪」

「HARD TIME DEADLOCK外伝」 英田サキ / ill.高階佑

酒に酔って一夜を共にした相手が、殺人事件の第一容疑者!?しかも自分にその記憶が全くない―!?皮肉な運命に呆然とするロス市警殺人課の刑事・ダグ。容疑者のルイスは、気鋭のミステリ作家!彼の無実を信じたいダグは、先輩刑事のパコと共に真相を追ううちに、次第にルイスへの興味を煽られて…!?男相手の初めての恋に悩むダグが相談するのは、同僚刑事のユウト。なりゆきでルイスを警護することになった、腕利きのボディガード・ディック―。

「DEADLOCK」シリーズの外伝。今回はユウトとパコの同僚刑事ダグが主役のお話です。
別段このシリーズが好きというわけではないので購入しようか迷ったんですが、これまでのシリーズを読んできたのだしということでやっぱり購入。
というわけで、熱心なファンでもない人間の感想です。辛い部分もあるのでファンの方はご注意ください!

元恋人からゲイ疑惑をかけられたロス市警の刑事ダグ(攻)。そうではないことを証明するためにゲイバーに行くのですが、そこで出会った売れっ子推理小説家のルイス(受)と意気投合、翌朝彼の部屋で裸で寝ている自分を発見してしまいます。
間の悪いことに、ダグはルイスと寝たのかどうかを覚えていない。
そのことに気分を害したルイスと、そのまま気まずい別れ方をしてしまいます。
ルイスとはもう会うこともないだろうと思っていたダグでしたが、ある殺人事件の容疑者としてルイスが浮上して思わぬ形で再会することに。
犯人はルイスではないと確信したダグは事件の真相を追いますが、そのうちにルイスに惹かれるようになり…。

ミステリーの体裁をとっていますが、メインはダグとルイスの恋模様です(笑)。
ダグは自分がゲイであることを受け入れる勇気がなかなか持てず、ルイスははっきりものを言うように見えて実はかなり臆病な性格。
そんなふたりがお互いに惹かれながらもすれ違ってしまうという感じ。ふたりが恋に悩む描写が多くて、ミステリーの部分やこれまでの「DEADLOCK」シリーズのような息もつかせぬ展開を期待すると肩透かしかもしれません。
犯人もお話の半分ほどで判ってしまいます。
かといって、恋愛面もライトというか、そこまでじわーっとくるものがあるわけでもなく…。
いちばん切なかったのは犯人だった彼ですね…。

外伝なので本編キャラが要所要所で登場してシリーズのファンには嬉しい内容になっていますが、そのために肝心のお話が置き去りにされている印象がありました。
ロブの外伝の時は、ロブ自身が本編にも重要キャラとして登場していたこともあって本編の延長線上のお話として無駄なく楽しめたのですが、今回はダグがユウトとパコの同僚という以外は本編とは関わりが薄いこともあって、本編キャラが関わってくるたびにどこか無理矢理こじつけているような感じが拭えなくて、外伝としてちょっと中途半端な印象が否めません。
せっかくダグとルイスという新しいキャラを持ってきての外伝なのに、彼らの特性も生かされていなくて何だか残念。これならお馴染みのキャラを使ったほうが良かったんじゃないかと。。
ダグとルイスは好きなんですけれど、…うーん、シリーズのファンにはサービス満点で嬉しい一冊かもしれませんが、純粋にこのお話を楽しみたくて手に取った者としてはちょっと物足りなかったです。

…それから、ディックの仕事っぷりにそんなんでいいのかと思ってしまいました。腕利きのボディーガードのはずなのにあれはないんじゃないかと。。
ラストの和やかなホームパーティーもちょっと理想郷すぎやしないかとか、どうにも細かいところがいちいち気になってハマりきれないシリーズです。

あと値段が高すぎる! この内容なら今まで通り文庫サイズで十分だと思いましたし、ソフトカバーで本文イラストもないのにこのお値段は高いですよ。
このレーターさんのモノクロはあまり好きではないのであってもなくてもいいんですけど、確か同じくキャラさんから出ていた吉原さんの同じ様式の作品は本文イラストありでページ数も大して変わらないのに同じ値段でしたよね? …と思うとちょっと釈然としません。
15周年記念の一環なのはわかっていますが、どうせなら現在入手困難な小冊子も多いシリーズの番外編をまとめた方が良かったのでは。
今回、完結後の小冊子番外編でのその後のエピソードの数々がちょこちょこ出てきて、読んでないだけにそんな重要なことを小冊子で書いているなんてと複雑な気分になってしまいました。
刊行当時から読んでいる方ならいざしらず、後からの読者への配慮もお願いしたいと思わずにいられません。
このレーベルに限らずですが、最近読み手を置き去りにした企画が増えた気がしてちょっとうんざりしています。。
そして「二重螺旋」、「DEADLOCK」ときたら次は「Flesh&Blood」か? …と思っていたら、本当にそうなってびくり。シリーズ物は同じ規格で出してくれた方が嬉しいのにな。。

「ダブル・バインド」4 英田サキ / ill.葛西リカコ

連続餓死殺人事件の犯人を追っていた最中、突然連絡を絶った葉鳥。 恋人の身を案じた極道の若頭・新藤は、その行方を追うことに!! 一方、単独で捜査を続けていた警視庁刑事・上條は、ついに事件の 真相に繋がる衝撃の新事実を掴むが──!?

「ダブル・バインド」、ついに最終巻です!!
 
事件は一気に解決に向かいますが、前回までで事件の背景や犯人が誰なのかについて大体の予想はついていたものの、全てが明るみになるとさすがに驚きの顛末です。
事件解決には上條が主人公らしい活躍を見せてくれました。
彼と瀬名の関係もちゃんと前進してひと安心^^まさかあの瀬名がちゃんと素直になるとは! とびっくりです。
でも何よりも驚いたのは葉鳥のことかな…。
詳しく書くとあれなんですが、葉鳥は無事に新藤と共に新たな道を歩んでいきます。それにしても新藤、ヤクザの若頭という肩書きが嘘のようなこの作品で一番懐の広いキャラでしたね(笑)。最後まで読むと、私は上條&瀬名よりも葉鳥&新藤のカプが好きになっていました(笑)。
 
最後まで読んで実感したのは、これは始めから終わりまでしっかり組み立てられていたお話だったんだな、と。最終巻で色んな真相が明らかになりますが、それを知った上で読み返すと、あそこのあの部分はこういうことだったのかとか小さく引っかかっていたところまでちゃんと繋がるように組まれているのにはうならされます。
事件とともに上條と瀬名、そして葉鳥と新藤の恋の進展と祥が多重人格症にならざるを得なかった過去の秘密とが重なりあって展開していくストーリーは見事としか言えません。
そして作品全体を通じてタイトルの「ダブル・バインド」が、登場人物それぞれの心理や葛藤を表していました。
それぞれに抱えるものが苦しくてともすれば内容が重苦しくなりそうなところを、上條の絶妙に肩の力の抜けた感じが全体に明るさを与えていたのも、このお話のいいところですね。
巻が進むにつれ事件への比重が大きくなってBL的要素は少なめでしたが、お話そのものが面白かったですし何より萌える部分が多くて読み応えのある作品でした。
そして結末がわかる瞬間よりも、そこに辿りつくまでの過程に夢中になった作品です。

「ダブル・バインド」シリーズ
 ・「ダブル・バインド」
 ・「ダブル・バインド」2
 ・「ダブル・バインド」3
 ・「ダブル・バインド」4
 ・番外編「存在理由」(英田サキスペシャル小冊子収録)
 ・「アウトフェイス ダブル・バインド外伝」(葉鳥&新藤の外伝)

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