calendar

S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< August 2020 >>

latest entries

categories

category 2

archives

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

  • 2014.07.28 Monday
  • -
  • -
  • -
  • by スポンサードリンク

「熱砂と月のマジュヌーン」 木原音瀬 / ill.笠井あゆみ

絶え間なく雄に穿たれ、心とは裏腹に快感に噎び悦ぶ体。この爛れた淫獄から逃れられるのはいつの日か―。石油王だった父親が倒産と同時に失踪し、寄る辺のないファウジはその美貌に目をつけられ、奴隷オークションにかけられてしまう。あられもなく恥部を晒され屈辱に震えるファウジを高値で買い取ったのは、見ず知らずの男。彼の紳士的な態度に安堵するが、連れられた館で待っていたのは耐え難い恥辱の日々だった。枷をつけられ服は与えられず、夜には淫らな狂宴で男達の性の玩具となり…!?

いろいろと話題の木原さんの新刊、漸く読みました。
初のアラブものという意外さにびっくりなのに、一切タブーのないぶっ飛んだ内容にはさらにびっくり。木原さん、こんなお話も書くのかw
実はイラスト目当てで手にした作品でしたが(すみません…)、すごーく愉しめる一冊でした!
と同時に、読むのにものすごく気力体力奪われて、とても一気には読めませんでしたが(笑)。
同人誌で発表されていた(受け視点)と(攻め視点)に書き下ろしの(攻め視点)を加えた三部構成。
とりあえず、これを商業で出したことに拍手です!

大富豪の父親が破産した上に逃亡したため、性奴隷として売られることになってしまったファウジ(受)。
白人の母の血を強く引いた金髪碧眼の美しい容姿をしたファウジにオークションは高騰し、遂にラージンという青年実業家に落札されます。
物腰の柔らかいラージンの様子に、ファウジはもしや事情を知る父の知人が落札してくれたのではないかと考えますが、その淡い期待は早々に打ち砕かれ、性奴隷としてラージンの使用人である黒人の双子ハッサン(攻)とアントンやラージンが招く客たちに陵辱される日々が始まり…。

アラブものといっても舞台がアラブというだけで、BLジャンルとしてのハーレクィン風味アラブの気配は微塵もありません。
受けのファウジが理不尽で屈辱的な目に遭ってしまう始まりからいろいろと痛いお話ではありますが、通常の木原作品での「痛さ」とこのお話のそれはベクトルが違うというか、正直私はこれが木原作品だとは思えないほどでした(笑)。
陵辱ありモブ姦あり近親相姦ありピアッシングありさらには動物も登場と、もうタブーなんて無い何でもアリな内容。
山藍紫姫子さんあたりが平気な方は大丈夫だと思いますが、普段の木原作品を読む感覚で手に取ると後悔するんじゃないかな…。
甘さが全くないとは言いませんが、終始一貫してハードな内容です。

面白いなと思ったのは、ファウジを買ったラージンがいわゆる攻めのポジションにはなく、それどころか行為には一切加わらないところです。
彼は一貫してファウジが他の男たちに嬲られているのを眺めているだけ。
どうしてそんなことをしているのかといえば、ラージンはかつて自分の兄を性奴隷にしていたファウジの父親イワフを憎んでいて、逃亡して捕らえ損ねたイワフの代わりにその息子のファウジに復讐をしているという理由が明らかになります。
彼につき従うハッサンとアントンも、元々はイワフの性奴隷。
もうね、このお話の中でいちばん怖いのはこのラージンですよ。
ハッサンとアントンを肉親のように想う心があるとかいうこととは別に、とにかく復讐を果たすという一点において一切ぶれない冷徹さが怖すぎます。
何人もの男たちに嬲り者にされているファウジを前にして、イワフが苦しめた奴隷たちが受けた屈辱と同数の行為をこなせば自由にすると、冷静に「あと1917回」とカウントしている姿はホラーです。

もしもファウジが心根の優しい人間だったなら悲惨すぎてとても読めたものじゃなかったと思いますが、このファウジもかなり性悪というか傲慢チキで外見しか取り柄のないような男で、確かに気の毒なのだけれどあまり同情できず、彼には申し訳ないけれど読み手としてはそこがこのお話を読み進められるものにしていると思います。
しかもしぶとい。折れない。どこまでも我が身の悲劇を嘆くばかりで、かつての父の被害者に思いを馳せることなど絶対にしない。
そりゃまぁ、自分の罪ではないですからね、反省しろというのが無理なんですけれども。
そもそも、ファウジの中で父イワフと奴隷たちに関しては行為を見たというレベルの記憶しかないのです。
けれどもラージンの兄や元々はイワフの性奴隷だったハッサンは、ファウジの性奴隷に対する非道をしっかり覚えている。
この双方の記憶の乖離は何なのか。色んな意味で人間は都合のいいことしか見ない記憶しないエゴの塊なのかもと思えてもきます。

ファウジにしろラージンにしろどちらも「被害者」の立場から一歩も動かない中、ひとりファウジの世話係となったハッサンだけがその立ち位置の変化を見せます。
復讐を果たすより先に潰れられては困ると、ラージンはファウジに希望を与えることを提案、それはハッサンにファウジの恋人を演じさせるというものなのですが、これが意外な結果に。
憎いだけのファウジに偽の恋心を囁くうち、ハッサンの中でそれが本物になってしまうのですね。
ハッサンはものすごいシチュエーションでそのことに気づくのですが、自己愛に溺れたファウジの傲慢さも中々のものの一方、歪んでいるという点ではハッサンも酷いと思わずにいられません。
誰かに恋をする前に性奴隷にされてしまったハッサンは、人を愛することがどういうことなのかあんな場面になるまで気が付けなかったのかと思うと、哀しくなってしまいました。
結局は人を愛することを知らない者同士のお話だったのかと。
…そして何より、ここでもそんなふたりを弄んでいるように見えたラージンが怖い…;

ハッサンがファウジへの感情に気がつくまででが同人誌発表分で、以降3分の1は書き下ろし。
その後内戦が起き、ラージンはファウジを置いたままハッサンとアントンを連れて国を脱出しています。
3年後、ひとり国に戻ったハッサンは盲目となり男娼に身を落としたファウジと再会しますが、ファウジはハッサンに気付かない。
ハッサンはしゃべれない振りをしてアリーと名乗りファウジの世話役になってまでして彼の真意を探ろうとしますが、ここまできてすれ違ったままというのが木原作品らしいというかなんというか、何度ももうふたりに甘い時間をあげようよ…と思ってしまったほどです。
ハッサンほど鈍くない読み手はファウジの本心などさっさと気が付くわけで(笑)、ファウジは実は一途だったんだなーと思ってしまいました。
そして、ファウジがラージンたちの復讐を知った気泙任魯侫.Ε源訶世任垢その後の供↓靴肇魯奪汽鷸訶世膿覆爐里如△修海ら眺めるどう見てもツンなファウジがどこか可愛らしくもありました。
この先は幸せになれるといいですね。

いつもの木原作品がツボにこない私は逆にこうしたお話のほうが愉しめたのですが、ぶっ通しで読むと胃もたれしそうな内容なので(笑)、休み休み読むのがよろしいかと思います(笑)。
話題の動物はアラブなだけに駱駝、蛇、そして予想外の駝鳥と、どれもそれ大丈夫なのか!? なのばかりでしたが(苦笑)、個人的に獣○はすげーとは思っても萌えないのであってもなくてもどっちでもいいです;
ただ、どれもしっかり描かれているので苦手な方は避けたほうが無難です。
あと舌にピアッシングプレイなシーンがあって、あわや失敗!? みたいになったのにはびっくり。こういうの、イタイからやめて下さい…; っていうかここが唯一ダメなシーンでした←
…にしても商業化の加筆修正で随分甘くなったというけれど、…だったら元の同人誌はどんなだったんだww

笠井さんのイラストもいい感じです。
いつになく苦痛に歪む主人公の表情に萌えw
そしてなんだかノベルスサイズで初めて見た気がしますが、文庫よりも大判なだけに見易さがあるというか。さすがに昔のカオスっぷりはなくなりましたが(笑)、今も背景等書き込む方なので小さな文庫サイズではともすればそれに人物が埋もれて見えることもあったので。
ただ最近受けの腰から下が細すぎて、ものによっては女の子に見えてしまうこともあったりして;;
2年位前のかっちりした感じが好きだったんですけどねー。そういえばこの人もどんどん変化していく人だったなぁ…。

「箱の中(講談社文庫版)」 木原音瀬

痴漢の冤罪で実刑判決を受けた堂野。収監されたくせ者ばかりの雑居房で人間不信極まった堂野は、同部屋の喜多川の無垢な優しさに救われる。それは母親に請われるまま殺人犯として服役する喜多川の、生まれて初めての「愛情」だった。『箱の中』に加え、二人の出所後を描いた『檻の外』表題作を収録した決定版。

BL作品が遂に一般文庫化?! しかも「BL界の○川賞」?! …と、色々煽られて手に取ってみました(笑)。
これまでBL作品で一般文庫から出ているものといったら山藍紫姫子さんの作品くらいしか思い付きませんが、あれはBLというよりは耽美系ともいえるし、カバーイラストもそれっぽいしまぁ角川だしね…と考えると、この作品はBLっぽさのない装丁といいけっこうな冒険ですね。まぁでも講談社はラノベにも力を入れているし、こういうかたちでBL作品を出しても不思議ではないのかな(笑)。
ホリーノベルズ版(2006)の内容(「箱の中」+「脆弱な詐欺師」)と続編として刊行された「檻の外」(2006)の表題作を収めた一冊で、「檻の外」に収録されている「雨の日」、「なつやすみ」は収められていません。

痴漢の冤罪で実刑判決を受け収監された堂野(受)と、十代で殺人事件を起こして服役している喜多川(攻)のお話。きれいごとや理想的なだけではい愛が描かれた異色作だと思います。
イラストはありませんが、この作品は下手に登場人物をイメージ化してしまうよりはむしろない方が読みやすいかもしれないです。

「箱の中」
痴漢の冤罪で実刑判決を受け収監された堂野。真面目な性格の彼は、理不尽な状況と刑務所の中の本物の犯罪者たちのあくどさに暗澹たる想いを抱き、ある服役者に騙されたことで極度の人間不信に陥り精神的に極限まで追い詰められてしまいます。
その堂野に、同室の寡黙な男・喜多川が懐き、献身的といえるほど世話を焼くようになる。
それがやがて度を越し始め、堂野は喜多川がそれ以上の関係を求めていることに戸惑いを覚えますが、子供のように純真なところのある喜多川をどうしても突き放すことがができず…。

「脆弱な詐欺師」
「箱の中」から6年後。出所してから5年間、喜多川は稼ぎのほとんどを堂野を探し出すための探偵費用に当てるという生活を送っていますが、情報が少なすぎるために見つけ出すことができずにいます。
そんな喜多川から依頼を受けた探偵の大江は、一度は断るものの何処か人のいい喜多川を騙して、堂野を探す振りをしながら金を取る詐欺行為を働くのですが…。

「檻の外」
「惰弱な詐欺師」直後。堂野と喜多川は6年ぶりに再会しますが、すでに堂野には妻も娘もおり新しい人生を歩んでいました。堂野は、時間が止まったままの喜多川にも前に進んでほしいと思いますが、喜多川の執着は相変わらずで…。

読んでまず思ったのはどっちかっつうと直○賞な作風だろうと。受賞できるできないじゃなくて、「○學界」よりは「○ール読○」に掲載されてそうな作品だという意味です。
そんでもって、何だかんだでBLの域を出ない作品だなとも思いました。
冒頭の、冤罪で服役という状況に陥った堂野が精神的にどんどん追い詰められていく過程は凄まじくてその筆力に圧倒されたんですが、べつだんゲイというわけでもない男ふたりがくっつくという結末がBLだからそうなるとしか思えないんです。
これに果たしてBL免疫のない方がすんなり納得できるのかどうかという素朴な疑問が湧いてしまい、一般書籍として読むのはちょっとムリなんじゃないのかなと思いました。
とはいえ、BLの中では特異な作品ではあると思います。

けれども、BLとして読むと何だか物足りない。。
何より個人的に、堂野、喜多川どちらにも萌える部分がありませんでした。
そのためにBLとしても物足りないという読後感。。いやもうこれは好みの問題なんだと思いますけど。
愛情や温かさを受けたことがなく誰からも「意味」のない存在だった喜多川が、初めてそれらを与えてくれた堂野に懐き徐々に成長していく姿にはキュンと来る方が多いかもしれません。
でも私は、だからこそ彼の堂野に対する執着が怖かった。出所後五年間もただ堂野を見付けるために金を使い生きてきた姿に狂気すれすれのものを感じられすにはいなくて、怖くてそして哀しかったです。
それから、堂野や大江の妻など出てくる女性が如何にもBLに登場する女らしくやたら軽薄なのも気になってしまいました。
全体的に「如何にもBLらしい」ものから離れて文芸寄りのものを目指したものの、何だかんだで中途半端になってしまった、そんな印象が拭えませんでした。

…っていうかね、BLで文学ってそもそも無理じゃないですか。そんな内容になったらそれはもうBLの域を超えたBLではないものになってしまうと思うんですが。
BLに求められているのは、文学としての完成度の高さなどではなくBLでしか表せない・味わえないものだと思いますし、それを求める読み手がいるからジャンルとして成り立っているはず。
文学を読みたければ、同性愛を扱った作品も多くあるのですからそっちを読みめばいいのですし、わざわざBLに文学っぽいものを持ち込まなくてもいいと思いました。

あと、ノベルズ版の「檻の外」に収録されている続編が収められていないのが残念です。
それらを持って完結する作品だというのなら、なぜそれを収録しなかったのか。その方が「一般文芸」としての完成度が上がるためなのか、それとも単にこれを足掛かりとして読み手をBLそのものへと誘導しているのか、どうにも後者のようで最近のBL商法を踏襲しているみたいに見えてイヤですね。
というか半分近くはもう読んでいる内容のものが収まった本を買うのって、読み手にはけっこうな負担だと思います。しかもノベルズ版はこの文庫版よりも高いですし。
そしてノベルズのみならずまだ小冊子やなんかで「続き」があるというのにちょっと辟易…。どうせならそれらも収録してくれればいいのに、どこまで付き合っても「実はまだ続きがありますよ」とずるずる引っ張るあたりにひとつの完結し作品としては読めないもどかしさがあります。そのあたりもBLらしいといいますか、こういうのに馴染みのない一般の読み手を戸惑わせるだけなんじゃないのかな。。
もっとBL愛好者を増やしたいという狙いがあっての今回の文庫化ならば、もう少し読み手に配慮してほしかったです。



…以下、作品とは関係ないぼやきなので関心のない方はスルーしてください。

「リバーズエンド」 木原音瀬 / ill.小椋ムク

十亀にとって高校も友達もどうでもよくて、父親がつくった借金の返済に追われ、バイトをしながら姉弟と一日をなんとか食べて生きること、それがすべてだった。そんな時、ふとしたきっかけから同じクラスの二宮と口を利くようになり、彼の明るさに十亀の心は少しずつ癒されていく。しかし、二宮にほのかな想いを感じはじめた矢先、哀しい運命が十七歳の十亀を待ちかまえていた―。表題作に加え、大人に成長した十亀が優しい恋人・万と出会い、映画監督への道を歩み始めた「今」の葛藤を描いた書き下ろしを収録。

木原音瀬原作・小椋ムク作画の「キャッスルマンゴー」に登場した十亀を主役に添えた小説です。
十亀の高校時代の表題作「リバーズエンド」(Cab創刊号付録小冊子掲載作)と、「キャッスルマンゴー」終了後のお話「god bless you」(書き下ろし)の二部構成で、間に小椋さんの作画による十亀がホテル・キャッスルマンゴーと万を見付けたときのショート漫画「プロローグ」(Cab創刊号掲載作)が挟んであるという心憎い演出。
…実はこれが初めて読む木原作品だったりします;
BLとは一線を画する作家さんだという評価をいろんなところで見掛けますが、読んでみて納得というか、ちょっと他では見られない作風の作家さんですね。全体的にラブ面が薄いので、萌えたとかキュンときたとかそういうのはあまりなく、変わってもっと深いところにえぐりこんでくるような忘れ難い読後感でした。

漫画は万の視点でお話が進んだので十亀のことはちょっと解りにくい部分があったんですが、ここではそのあたりのことがちゃんと描かれて、十亀というキャラがよく解りました。そして解ったことで一層切なくなってしまいました。

「リバーズエンド」
★★★★★
高校時代の十亀のお話。母親と死に別れ借金まみれの父親の元で育った彼の境遇は、数年前までホームレス状態だったことなど想像以上にすさまじいものでした。
父親が末期ガンで入院し、工場で働く姉・小春と弟・俊介の三人で、小春の会社の厚意でぼろぼろの借家に住まわせてもらって十亀自身もアルバイトをしながらなんとか生活を保っている状態ですが、ある時小春から家の金を盗んだと身に覚えのない疑惑をかけられて、家を閉め出されてしまう。
十亀は仕方なく公園でダンボールを集めて一晩やり過ごそうとしますが、そこをクラスメイトの二宮に目撃されてしまいます。
おしゃべりでお調子者の二宮はクラスメイトにしゃべるだろうと思った十亀に、意外なことに二宮は「お前、うち来る?」と声をかけてきて、十亀はその厚意に乗ることにするのですが、それをきっかけに二宮と親しくなっていく。

二宮は親が家を空けがちで夜も一人のことが多いんですね。きっと寂しいから十亀を誘ったのだろうし、彼が普段やたらおしゃべりなのも寂しさの裏返しなのかなと思います。
十亀は二宮が普通に持っている財布もお小遣いもありませんが、彼にはない仲の良い兄弟がいます。だから学校で孤立していても決して孤独ではなかったんですね。
二宮はやがて十亀の家にも顔を出すようになって小春や俊介も含めて温かい時間を過ごすようになるのですが、実はゲイである十亀はだんだん二宮に友情以上の想いを抱くようになってしまう。
一方、一家の生計を一身に担っている小春の様子がおかしくなり始めて、束の間の楽しい時間は終わりを告げてしまいます。

このお話、BLではお約束の夢みたいな設定や展開がまるでありません。
登場する男子高校生は十代特有の残酷さにあふれているし、十亀一家への救いの手が現われることもない。何よりやくざの残忍さには驚きを隠せません。
でも、現実に十亀のような境遇にあればこんなもんなんだろうなと思ってしまいます。
そんな、全体通じて「リアル」というよりは地に足の着いた現実味のある感じで、だからとても痛いんです。
17歳にして全てを失ってしまった十亀が哀しすぎる。彼にとって頼れる大人が担任しかいなかったのが哀しすぎる。橋の上のシーンはあまりにも哀しすぎる。
その後いったいどんな道を来たんだろうかと思うともう、本当に切ないですね。
それからもう何より小春の立場があまりに切なくて泣いてしまいました。
「キャッスルマンゴー」の中で十亀が口にしていた「兄弟の上ってのは それだけで大変だからさ」というセリフは、小春のことを想ってのものだったんですね…。これを読むまではてっきり十亀が兄弟の一番上で苦労していてその経験から出た言葉だとばかり思っていた軽率な私は、後になって姉の苦しみを知った十亀の後悔は如何ばかりだっただろうかと言葉もありません。

けれども十亀は「不運ではあったけれど、不幸ではなかった」。大切で大好きな家族がいて、決してひとりではなかったから。
そのためなのか、全体的に諦念はあっても悲壮感はありません。
なので過剰な「泣かせる」演出があるわけでもなく割と淡々としたお話だったと思います。なのにふとしたはずみに涙腺がゆるんでしまう。
…ちょっとしばらくこの余韻から抜け出せそうにありません。

その「リバーズエンド」のラストがそのまま小椋ムクさんによる漫画「プロローグ」へと続き、やっと「キャッスルマンゴー」へと、全てが繋がっていくという演出。上手いですね〜。
なので、続く「god bless you」の前に「キャッスルマンゴー」をぜひお読みください。

「god bless you」
★★★☆☆
「キャッスルマンゴー」終了後、今の十亀のお話。
万と漸く恋人同士になれた十亀ですが、ずっと計画していた旅行の日程に十亀の仕事がかぶってしまい雲行きが怪しいことに。
十亀は海外ロケから帰って以来もうAVは撮っておらず、今回の仕事もかなり注目されている映画のメイキング映像の監督という自身をアピールできるきっかけになりうるもの。ただ、長期の地方ロケなので、万との旅行は行けなくなってします。
十亀は万との約束よりも仕事を優先させてしまい、万の機嫌を損ねてしまう。
で、万からメールも電話も途絶えた状態でロケに向かうことになってしまいます。

…そこから万が十亀を追って映画のエキストラとして現場に現れるまで、お話は十亀の仕事がメインでほぼラブはありません(笑)。忙しい仕事の合間に十亀がメールも来ないとこぼしている程度。いや、いろんなことが重なって上手くいかない関係に十亀も実は悩んでいたりするんですけれどもね。
でもメインは十亀の仕事、映画の撮影現場でのことです。
ワンマンだったり態度がでかかったり勘違いしていたりなスタッフ・役者がいるために、現場は最初から波乱含みの気配。そして十亀がなまじ仕事ができるものだから、妬みを買う形で波風を立ててしまうやるせなさ…。
…すみません、あまりにストレスフルな環境に読んでるこちらも疲れてしまいました;
そんな、仕事を通して十亀の人間性を描いたお話なので、高校生の万の初恋ものとして読めた「キャッスルマンゴー」のイメージで読むと、ちょっと違うかもしれませんね。

さてさて。
肝心のラブ面、やっぱりこの恋は万の粘り勝ちですね。
十亀は十代であまりに凄惨な目に遭っているために、何に対しても諦めがいいというか執着しないように生きている男。彼よりもまだまだ若い万には、わがままも甘えることもできるんですよね、素直じゃないにしても(笑)。万が十亀と年の変わらない相手だったら、お互いに諦めたまま終わっていたんじゃないのかと思いました。
そして、今回も吉田がふたりの重要な橋渡し役を担っています。直接の登場がなかったのは残念でしたが、相変わらすいいヤツですね! 

仕事の方も、一体どうなることかと思いましたが最後はちゃんと見てる人は見ていたというオチで安心です。映画、今度は完成するといいですね。

本当は漫画を小説で完結させるというやり方は好きじゃないんですが(小説読まないという人やその逆もいるだろうし)、このお話はありかなと思いました。
それは、漫画も小説もそれぞれに完成度が高いからだろうしどちらからも不協和音がしないから。そして万の物語は漫画で表現された方が、十亀のは小説で書かれた方がそれぞれしっくりくるからだろうなと思いました。
まぁでも、「キャッスルマンゴー」を木原さんの小説で、そしてこの「リバーズエンド」を小椋さんの漫画でも読んでみたい気もしますけれどもね(笑)。
全編通じていいお話でした。

 ・「キャッスルマンゴー」1
 ・「キャッスルマンゴー」2
 ・「リバーズエンド」(十亀視点の小説編)
 ・HOLLY MIX(番外編「end roll」収録)

| 1/1PAGES |