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  • 2014.07.28 Monday
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「交渉人は疑わない」 榎田尤利 / ill.奈良千春

元検事で元弁護士、そのうえ美貌と才能まで持ち合わせた男、芽吹章は、弱き立場の人を救うため、国際紛争と嫁姑関係以外はなんでもござれの交渉人として、『芽吹ネゴオフィス』を経営している。ところが、ひょんなことから高校時代の後輩で、現在は立派な(!?)ヤクザとなった兵頭寿悦となぜか深い関係になっている。嫌いではない、どちらかといえば、好き…かもしれない、だがしかし!!焦れったいふたりの前に、ある日、兵頭の過去を知る男が現れて。

交渉人シリーズ2作目。相変わらずの面白さでした!

「国際紛争と嫁姑関係以外はなんでもござれ」の交渉人・芽吹の元に、ストーカーと化した客に悩むホストの溝呂木が訪れますが、彼は兵頭と何やら因縁があるらしい。
そして兵頭を人殺し呼ばわりした溝呂木の様子にただならぬものを感じた芽吹は、自分の知らない兵頭の過去を知ることになります。

お話の冒頭、芽吹と兵頭は、体の関係(でもまだ最後まではいってない)は続いているけれど恋人同士というわけではないというなんだかよくわからない状態になっていますが、でも信頼関係は深まっているな〜と思いました。
そして相変わらずな夫婦漫才には笑ってしまいます(笑)。

今回は芽吹の知らない兵頭の過去が明らかになるお話で、それ自体はけっこうヘヴィーなんだけれども重苦しくならないのがこのお話のいいところですね。
かと言って決して軽いわけではなくて、読み応えがありました。
「変わろうとしている人を信じたい」もですが「恐ろしいのは個人ではなく、組織」というセリフに、芽吹の信念の根っこを見た気がします。
今回、交渉人としての芽吹の仕事ぶりと活躍がさらに描かれていますが、すごく有能なその姿はかっこよく見えそうなものなのに何故か三枚目になってしまうのが芽吹らしくてイイです(笑)。

そして今回はやっとふたりが最後までやっちゃうことにもなるお話でもあります(笑)。
そこも良かったですが、エロなシチュでいちばんインパクトあったのは、溝呂木の前で兵頭が芽吹とイタそうとしたシーンでした(笑)。オチに笑わずにはいられませんw 兵頭がますます好きになってしまいますww
いやいや、そんなヘンタイなところだけじゃなくて(笑)、最後の最後で明かされる事実に惚れ直してしまいました。

キヨ、智紀、さゆりさん、アヤカなどなど脇キャラもちゃんと登場してくれているのも愉しかったです。
キヨと智紀はいつの間にそんなことにと突っ込んでしまいました(笑)。
今回登場した七五三野は当て馬キャラ狙いすぎでちょっとノれなかったですが、こうした脇の面々が今後どう活躍していくのかも見どころですかね。
因みにさゆりさんファンなので(笑)、さゆりさん視点の終章がすごくよかったです^^

ところで奈良さんのイラスト、苦手だった鼻から下のもったりした感じがなくなったと思ったら、今度は目と眉がコワイ…。コミカルな雰囲気は前よりお話に合ってるんだけど…、目が;;

「交渉人は黙らない」 榎田尤利 / ill.奈良千春

元検事で元弁護士、そのうえ美貌と才能まで持ち合わせた男、芽吹章は、暴力・脅迫・強制、このみっつが反吐が出るほど大嫌いだ。弱き立場の人を救うため、国際紛争と嫁姑問題以外はなんでもござれの交渉人として、『芽吹ネゴオフィス』を経営している。そんなある日、芽吹の前にひとりの男が現れた。しかもヤクザになって!!兵頭寿悦―できることなら、二度と会いたくない男だった…。

言わずと知れた超人気シリーズ、今頃になってやっと読んでみました。
実はこのシリーズ自体はけっこう前から持っていたんですけれど、今の今まで積んでおりまして;
これまで、
 ・BLの超人気作ほどさしてはまらなかった
 ・この作家さんの他作品がさほどツボにこなかった
 ・イラストが苦手(とくに三作目の攻めの目がコワすぎる;)
 ・長編シリーズなので読み始めるのに躊躇
…等々の理由で時間の空いたときにでも〜…と放置していたのですが;この間出た榎田さん100冊記念本を購入したのをきっかけに、もうそろそろ読もうかと。

で、遂に読んだわけですが、期待値高すぎて思うほどは楽しめないかもという予想に反して、これとっても面白かったです!
イラストの印象で勝手にシリアスなヤクザものなのかと思っていたんですが、かなりコメディタッチでびっくり!(笑)。
もっと早くに読んでおけばよかった!(笑)。

東京の下町で交渉人(ネゴシエーター)を始めた芽吹(受)が、高校時代の後輩で今は町を仕切るヤクザの若頭(攻)となった兵頭と再会したことから始まるお話。
暴力が大嫌いな芽吹は自分に絡んでくる兵頭と関わり合いになりたくないんですが、根っからのゲイだという兵頭はなぜか芽吹に執着していて、芽吹を「俺のオンナにする」と言い出して迫ってくるわ、周囲からはいつの間にかそういう関係だと思われるわで踏んだり蹴ったりな状況に陥り、気が付いたら兵頭の依頼で仕事をする羽目に。
それがきっかけである事件が起こり…。

序章と終章を除く本編は32歳にして既にオヤジの入っている芽吹の一人称で進むので、とても軽妙で時々プププと笑いながらサクサク読めてしまいます。
そして両国という下町が舞台のせいなのか、お話全体が地に足の着いた感じで親しみやすかったです。

このお話で何よりツボにきたのは、芽吹のキャラでした!
冒頭の折り目正しい姿が標準なのかと思いきや、仕事から離れた途端にぞんざいな物言いになったり、美形で優秀なのに頭の中はオヤジ臭かったりなギャップがすごくイイ!(笑)。
あと、こういうタイプでここまで運動能力が標準以下なキャラをBLで見たのは初めてかもしれない(笑)。そこに何とも言えない人間臭さを感じて、「ああこういう人何処かにいそうだな」と思わせてくれます。この、ちょっと抜けている感じがミソなんでしょうね。
彼は決して万能なヒーローではないけれど、弱いもののために強くあろうとしている―ともすれば鼻に付きがちなキャラ設定をここまで絶妙に描いているのは凄いです。

お相手の兵頭もイイ味出してます(笑)。
芽吹を「先輩」と呼び慇懃に敬語なんか使っちゃってますが、その実だいぶヘンタイな執着男ですw ほんと、芽吹きに対しては真面目に変態で(笑)、ピンチな芽吹が気の毒なんだけれど、兵頭の「―ああ、ゾクゾクする」には爆笑してしまいましたw
そんな変態さんなところだけでなく(笑)、ヤクザといえばハイスペックな経済ヤクザがお約束のBLにあって、これまた珍しいことに自ら経営しているイメクラの様子を見に行ったりと地道な感じが何だか新鮮です(笑)。や、兵頭のスペックはかなり高いですけど!(笑)。

ふたりの漫才みたいなやりとりがいちいち可笑しくてかなり笑わさせていただきましたが、そうしたコミカルな部分だけではなく、兵頭の依頼から発展する事件のこととかふたりの間に過去の確執があったりとか、色んな面で目が離せない展開です。
事件は大げさでない分如何にも「ありそう」な感じで逆にハラハラさせられました。
ところで、事件がらみで出て来る女の子にBLに登場する女子特有のいやらしさがないのが個人的にすごくよかったです。単にラブ面に関わってこないからかもしれませんが(笑)。

シリーズものなので仕方のないことですが、お話の余白部分が多いのが気になるところ。
芽吹と兵頭のそれぞれの過去に関しては、特にそれを感じてしまいました。
何というか、ふたりともかつての姿と現在の彼らとがあまりに別人過ぎて繋がらず、いったい何があったらそんなに人間変われるものなの?? と疑問だらけ。芽吹も肝心な部分は明らかに語り落としてますよね。
このあたりの余白―というか空白部分は、今後埋められていくのかな。期待してます♪

もうひとつ、ラブ面もふたりはまだまだ恋人には程遠いですね(笑)。
っていうかラスト、まさか最後までしないで終わるとは思わなかった(!)。
そして、芽吹の一人称で進む割に徹頭徹尾ノンケの彼が兵頭に身を委ねても構わないと思うようになったのはなぜなのかが見えてこないのが気になりました。
若干「BLだから」ふたりはくっついたと感じてしまったのが残念。
キャラがすごくいいだけにそこがすごく引っかかってしまったのでした…。

「erotica」 榎田尤利

評価:
榎田 尤利
(2012-08-20)

大人気小説家・榎田尤利が『エロティック』をテーマに描く、3P、SM、極道、●●●●など、いろんなHがたっぷり詰まった贅沢な【エロ特化】初短編集!! 中村明日美子のカバーイラストをはじめ、今市子、えすとえむ、円陣闇丸、鬼嶋兵伍、腰乃、豪華美麗イラスト陣が、華を添える★

「エロティック」をテーマにした榎田さんの短篇集。
べつだん榎田さんファンというわけでもないのでどうしようか悩んでいたんですけれど、リブレさんのアンケート結果を見たら何と「リバ」が堂々の一位を獲得しているのを発見、購入です(笑)。
その「リバもの」を描いた「ストロベリー」はじめ、書き下ろし3作と既に雑誌などで発表されている3作品の収録。榎田さんの他では見られない書き下ろしエロ特化作品集かと思っていたので、書き下ろしが3作品というのはちょっと肩透かしでしたが、読み応えはばっちり。
因みにイラストは各作品とも表紙1枚のみ。中村明日美子さんのモノクロは「エロとじ」と全く同じなので、明日美子ファンには物足りないかも?

「痛い靴」 ill.えすとえむ
★★★☆☆ ※合同同人誌「エロチカ」掲載
ハイヒールに赤いペティキュアに足の剃毛…と書いたら足フェチもののようですが(いやそうなんですが)、シチュとしてはSMと言った方がしっくりくる内容。けっこうイタイです。
生真面目な日高(受)が変態的な嗜好を持つ上司の久我(攻)に執着され陥れられ、気が付かたらその虜になってしまうお話で、上に挙げたようなプレイの数々が登場します。

慣れないヒールを強制的に履かされた日高が靴擦れするシーンもイタイですが、ローターが入った状態で攻められるシーンの恐怖ときたらその比じゃなかったです。描かれ方が怖いんだもん…。
そんな鞭や拘束具も登場しないのにばっちりSMな内容ですが、いかんせん「モノ」単体に萌えるフェティッシュな嗜好はないので、このお話はあまり合わなかったです。

「ストロベリー」 ill.腰乃
★★★★☆ ※書き下ろし
リーマン×リーマンのリバもの。
篠田(受)と舘野(攻)は付き合い始めて1年目を迎えるカップル。けれどもある誤解がきっかけで、篠田は近いうちに舘野に捨てられるかもしれないと思っている。ならば今日だけは自分の好きなことをしようと、篠田は舘野を…!
…という展開でリバになるお話ですが、私みたいなリバ大好き人間は美味しく(笑)、けれどもこういうのがダメな方でも無理なく受け入れられる内容だと思いました。
まず、篠田も舘野も、どっちもがどっちでもいけそうな雰囲気なのです。決して「攻め×攻め」というのではなくて、何というのかな、受けが意外に男で攻めにはけっこうスキがある感じ(笑)。
ふたりそれぞれの一人称で交互にお話が語られて、それが何処となくコミカルなのも読みやすさの一因かも。とにかくふたりが可愛いいのです!
この先も、時々は交代したりしちゃうといいですね(笑)。

ところで他の作品のイラストが作品をイメージした一枚絵な中、腰乃さんのイラストはお話の各シーンを1枚の中にぎゅっと詰め込んでくれているという大判振る舞い! 他でもない「リバもの」だからこその嬉しいさでした♪
それにしても、アンケートで堂々一位を取っちゃうくらいはリバ需要はあるってことですよね!? なのに中々見られないのは、出版する側のNGコードってことなんでしょうか。
リバの何が「NG」なのか分からないんですが、もっと増えてほしいと願ってやみません!!

「10×3」 ill.円陣闇丸
★★★☆☆ ※書き下ろし
ヤクザ×顧問弁護士+舎弟の3Pもの。
ヤクザの辻(受)は大の女好きで、危険な色恋に燃える質の男。その辻が組長の娘を相手にスリルを味わおうとしていたところを組の顧問弁護士の財津(攻1)に見られ、口止め料として財津に躰を求められます。
辻は男らしくそれを受けるのですが(笑)、何故か自分の舎弟・菊池(攻2)まで現れて、二人がかりで躰を弄ばれてしまう。
ヤクザものとはいうものの、ヤクザをめぐる3Pお話(笑)なので痛い雰囲気はないです。辻がヤクザらしく男っぽくて女好きなのがいい味を出しています。対する財津は怜悧なタイプで、菊池はワンコです。
菊池はサイズ的にまだムリだという判断(笑)で最期までやってないっていうのが、ヘンにツボに来ました。

お話としては面白かったんですけど、正直、本書の中でこれがいちばん凡庸に見えました。
ちょっともう3Pはありきたり感が拭えないです。。
榎田作品としてはなかなか見られないシチュかもしれませんが、もはやBLで3Pは珍しくもないですよ…。
どうせ書き下ろすのなら、アンケートで挙がっているものや他では見られないものを取り上げてほしかったです。

「カルメン」 ill.鬼嶋兵伍
★★★★☆ ※小説b−Boy2009年7月号掲載
女装もの…ですが、女装するのは可愛い受けではなくてマッチョな攻めの方だった(!)というびっくりなお話(笑)。
小柄なことを気にして密かに筋トレを趣味にしている千歳(受)は、新しく入ってきた会社の後輩の桐生(攻)にコンプレックスを抱いています。
桐生は、千歳が羨む長身と立派な筋肉をまとった男。近くにいるだけでも劣等感を刺激されるのに、なぜか桐生は千歳に必要以上に懐いてくる。
その桐生がゲイであることを知り、更に千歳を好きだと告げられ千歳は困惑しますが、桐生が秘密であるドラァグクイーン姿で千歳の前に現れて…。

BLで女装といったら美しかったり可愛かったりする受けがするものと相場が決まっていますが、それを敢えて攻めにさせているのが面白かったです。しかもただの攻めではない、身長186僂離泪奪船臾醢困任垢茵(笑)
女装ものってBLジャンルの中でも群を抜いて興味が無いんですけれど(汗)、この意外性にはやられてしまいました(笑)。
そしてそんな奇抜な趣味を持った攻めが、受けの前では完全に年下ワンコなので可愛らしさもあってあまり違和感を感じさせないのがまたいいです。
そしてお互いに素の自分をさらけ出せるようになるのには、じんわりきました。
あとあと! まさに適所適材な鬼嶋兵伍さんのイラストに拍手です!

「クリスタル」 ill.中村明日美子
★★★★☆ ※アンソロジー「エロとじ」掲載
密室+スカ○ロプレイ(!)

父親の経営する会社の跡取りとして27歳の若さで取締役の立場にある狩野(攻)は、秘書の芳原(受)とともに故障したエレベーターの中に閉じ込められてしまいます。
怜悧な芳原とは若い頃からの仲で、彼に認められたくて狩野はこれまで努力を重ねてきていたのですが、ちょっとした勘違いが元で芳原に不審感を抱いている―そんな微妙な関係にある相手と思わぬ事態に陥ったことで、狩野の嗜虐心がくすぐられます。
しかも、芳原が尿意を堪えていることに気付いて…。

単純に「エロさ」でいうならこれがいちばんエロかったかもしれない。
スカ○ロというか放尿プレイで絶頂という感じです(笑)。
でもそれだけではなく、短編にもかかわらず切なさやキュンとくるもどかしさまであるのだから凄いですね。そいうい部分があるからこそ、際どいプレイも受け入れられるというか。
これは、キャラふたりに愛着や共感が持てたからこそエロスも倍増した作品かもしれません。

「書生の戀」 ill.今市子
★★★★☆ ※書き下ろし
戦争前夜〜戦中の昭和を舞台にした小説家×書生の、本書では唯一のプラトニックな内容。
作家の廿楽の元に、ある熱心な文学青年からの熱烈な手紙が届きます。手紙の中には青年・松岡の習作も同封されていて、廿楽は最初は文学青年にはありがちなこと程度に思っていましたが、徐々に松岡の習作にそして手紙に没頭していきます。
ふたりは互いに逢うこともないまま書簡のみの不思議な交流を続けていくのですが、徐々に不穏な気配を漂わせ始めた時代に、ふたりも呑み込まれてしまう。

本作は松岡が廿楽に宛てた手紙と彼の習作、そして廿楽の日記のみで構成された、いわゆる「書簡小説」のスタイルです。一応ラストに「現代」という視点が出てきますが、本編はあくまで書簡小説。
書簡小説には、書簡と書簡の「間」があるんですね。でもそこは描かれないから、読んでいるこちら側はそこに何があったのか、人物の感情がどう動いたのか想像してしまう。
この作品にはその「見えてこない」部分へのもどかしさがどんどん募って、そこにエロティックな気配が漂います。
そして何より巧みだな〜と思ったのは、松岡の習作の扱いです。
手紙の内容だけで、松岡が廿楽に熱心なファン以上の想いを抱いているのは伝わってきます。松岡は手紙でそれを直接語りませんが、習作で激情を綴っている。
そしてそれに気が付き困惑しつつも受け入れようとする廿楽も、やはり直接ではなく彼の物語の続きを書く形でそれを告げている。
書簡小説ならではの、もの凄くエロティックな行為だと思いました。

時代背景を思えば多分そうなるんだろうなという予想はついたんですが…、途中で読むのが辛くなってしまったほどです。
ラスト、廿楽の子孫が全てを見届けるシーンはいいなと思っていたんですが、何も彼までそうじゃなくても…な部分が個人的にマイナス。これで、それこそ純文学を読んでいたような気分が一気にBLになってしまった感じがして、何だか惜しいと思ってしまいました。

…というわけで、それぞれにティストの違う作品の味わえる贅沢な短編集でした。
装丁もBLらしからぬハイセンスぶり(笑)。きれいなので大好きです。
ただ、本体の紙質かしっかりしていて全体に重いわりに見返しが2枚とも遊んでいるので、本体表紙が折れそうというか脆い感じがして何だか残念。せっかくここまでデザインの凝った装丁に仕上げそれなりのお値段にするのなら、そこもしっかりしてほしかったなー。

「優しいSの育て方」 榎田尤利 / ill.草間さかえ

立派な身体に繊細な心を持つ大学生・栄田惣は、生まれて初めての恋に落ちた。ひと目惚れの相手は通称『殿下』。整った容貌、穏やかな雰囲気から人気の、文学部准教授・宮隆由紀だ。声を聞くだけで、姿を見るだけで、栄田の心も頭も宮でいっぱいになってしまう。けれど、宮にはある秘密があって―!?心優しい栄田と、一筋縄ではいかない宮のちょっと変わったピュアラブ誕生。

SMというワードに惹かれて手にしてみました(笑)。
大学生の惣(攻)は、図体はでかいくせに小心者、というか見ているこちらが気の毒になるくらい周りに気を使いまくっているタイプ。その惣が、通っている大学の准教授・宮(受)に一目惚れをしてしまいます。それまで女の子とも付き合ったこともないほど恋愛に疎かった惣は、文字通り生まれて初めての恋する感情に驚き振り回されますが、気が小さい彼にしては大胆なことに宮にこの気持ちを伝えようと決心します。
けれども宮がなんとSMを好む性癖の持ち主であることが発覚、Mである宮は優しくていい子な惣はSにはなれないだろうからと惣の気持ちを退ける。断りの理由が好きかどうかとか20も離れている歳の差とかではなくて、Sになれるかなれないかにあるというのがある意味すごい(笑)。宮は惣に対して好意を持っているにも関わらず、ネックはそこなのかと。
けれども恋する男は盲目です。惣はそれでも宮への想を諦められず、ならば宮を満足させられるSになる! と宮の助教でありプロのSM調教師でもある(!)王の教示のもとSになろうとしますが…。
 
この作品で何より新鮮に感じたのは、SMを扱っていながらその手の作品に見られる耽美な気配や背徳感のない、むしろカジュアルな作風だということ。SMという特異な世界を変態的に描くのではなく、何てことのない日常に溶け込ませているという感じです。まぁ、ウブな主人公が恋した相手がたまたまSM愛好家だったという、実はちょっと奥手の男の子の初恋ものでもあるので、それも当然かもしれません(笑)。
だから如何にもSM! という感じではないので免疫のない方でも大丈夫なんじゃないのかと。一応縛ったり叩いたりのSMなシーンはありますけれども、決してシュミに走り過ぎることなくそういうのがダメな方にも配慮がされている感じです。そして全体として、SMなシーンでその世界を見せるのではなくSM論をじっくり語ることでSMというものを知らない人にもわかりやすく説明している印象です。
私はSMシーンよりも、惣がSになるためのSMプレイ(本番ナシ)を散々しておきながら、ふたりがキスすらまだしていなかったという顛末が衝撃でした(笑)。何だかもう、惣が憐れ(笑)。

そんな、せっかくこれまでにない(あったらすみません、勉強不足です;)SM作品なのに、キャラの過去やらトラウマやらのお決まり設定が出てきたあたりでちょっと違和感が。それを持ち出してキャラに深みを与えるにはページが足りない気がしますし、そこにページを割くなら現在の彼らの心理状況をもっと丁寧に描いてほしかったですね。ありきたりなトラウマはいらないです。
特に宮はその過去から准教授となっている今とは何か繋がらない気がして、それはたぶん描ききれていない部分が多いからなんですが、その空白はまさかこれの続編の時のための余白ですかと思わなくもいです。一冊でキレイに完結するお話が読みたいのにーとちょっと消化不良。
そしてこの作品のキモたる優しすぎる惣がSになれるのか、という点に関しても描ききれていない気がしてもやもやもやもや;惣は優しい恋人としては満点ですが、Sとしては? というとかなり疑問です。そこの落とし所をどうするのかが最大の関心事だったので、残念ですねぇ。
あと冒頭の宮の社会学の講義、あれは必要なのかな。。その手のことはその手の本で読めるのだし、この作品ではもっと描くべきところがあったと思うのです。

…で、ラストを読みながら、宮は実は自分にぴったりなSではなくて物凄く得るのが難しいステキな恋人を手に入れたんじゃないのかな、と思いました。

最後に王のお話がありましたが、彼が主役の作品なら読んでみたいですね。とっても面白くなりそう! でも、こんな飄々としたキャラに重い過去とかはなしでお願いします(笑)。

余談ですが、作中にあった「筑○山にも登ったことがないのにチョ○ラ○マをイメージしろと言われても無理」という例えが何だかツボでした。なにその微妙なんだか絶妙なんだか分からないチョイス(笑)。惣がSMについて考えて頭をショートしかけている場面での一文ですが、彼のパニックぶりが妙に伝わってきていちばん好きなところだったかもしれません(笑)。

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