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  • 2014.07.28 Monday
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「白夜に青い花」 華藤えれな / ill.高階佑

外交官補の海翔は語学研修にやってきたソビエトで、美しいロシア青年、イリヤと出会った。彼の絵には自由と愛を渇望する想いが込められていた。海翔はイリヤに魅せられ恋に落ちるが、愛した男はソビエトのスパイだった。人を愛する気持ちもエリートの道をも失った海翔は、復讐を誓う。そして7年後、陸軍大佐のイリヤと再会。憎しみを晴らす機会がやってきたのだが……!?

ホワイトハートから華藤さんってなんだか意外な感じがしましたが、スタボリアという架空の国を舞台にした日本人外交官×ロシア系軍人の再会ものという、いつも通りの華藤さんでした。
そして、カバー絵にてっきり日本人受けだと思っていて、逆だと知りびっくり。ここまで分かり難いのは初めてかも。。

ソビエト崩壊直前のモスクワに語学研修にやってきた外交官補の海翔(攻)は、そこで美しいロシア青年イリヤ(受)と出会い、彼の絵のモデルとなる代わりに彼からロシア語を学ぶようになってやがて恋人同士の関係になります。
イリヤの絵に自由への渇望を感じ取り、海翔は彼をなんとか亡命させてやろうとするのですが、実はイリヤはソビエトのスパイであることが判明し、イリヤの裏切りによって海翔はエリートの道を閉ざされてしまいます。
それから7年、ソビエトが消滅した後にできた新興国スタボリアに赴任した海翔は今は陸軍大佐となったイリヤと再会し、この時のために外務省に残り都合のいい狗のような立場に甘んじ続けていた彼は、自分から何もかもを奪った憎いイリヤへの復讐を果たそうとします。
しかし日本人外交官も関わっているらしいスタボリアでの武器密売の真相を暴くため、図らずもイリヤに協力することになってしまい…。

スタボリアは架空の国ですが、如何にもありそうな旧共産圏の新興国として描かれているのが華藤さんらしい。
ロシア趣味が大好きな私は、文学、音楽、バレエ、さらにはワインと次々に登場するロシア文化についにやにやしてしまいました(笑)。
そんな国を舞台に最初は復讐劇が繰り広げられるのかと思いきや、スタボリア国内で行われているらしい武器の密売行為を国籍も立場も違うふたりが最終的には手を取り合い暴いていくというお話でした。
ソビエト崩壊前夜から20世紀末と時間が少し前のお話なので、今からだとちょっと時代がかって見える部分もなくはないですが、それが逆にこの非日常な設定を「あり」なものにしてくれています。
っていうか、もう「ソビエト」って言葉がはるか過去のものなのね…と、遠い目をしてしまったのはここだけの話(苦笑)。崩壊からもう20年以上も経つのかー…。
お話自体は湿っぽくもなく読みやすい感じなので、その辺りの時代背景に詳しくない方でも普通に楽しめると思います。

ただ、いろいろ詰め込んだ感がある一方でまとまりに欠ける印象なのが惜しいです。
何より、海翔視点で何度も彼のイリヤへの憎しみが繰り返された前半は復讐劇を期待したのに、半分くらい来た頃に突然イリヤ視点に変わって密売の黒幕を暴く方向へ変更、最後の最後でまた海翔視点に戻るもイリヤへの復讐心はどこへやら、すっかり相思相愛状態になってしまっていたのにはちょっと拍子抜けというか…。
海翔の心情の変化が解りづらく、もっと早くに視点を戻して海翔が冒頭であれほど憎んでいたイリヤへの復讐を止め再び愛するようになったのは何故なのか、そこを描いてほしかったです。

というか、これならもう最初からイリヤ視点のお話にしてしまえばよかったのではとも思いました。
美貌と医者になるほどの頭脳と芸術を理解する心を持ちながらも、マフィアのボスを養父に持つために男娼まがいのことをしながら諜報をしてきたイリヤという人物は、やや詰め込みすぎ感はあるもののとても複雑で魅力的です。
ビッチなんだけれども実は純粋…というのも、けっこうツボ(というか最近のはまりものw)。
因みに前の華藤作品のようにビッチなのは見せかけだけではなくイリヤは本当に体を使って諜報をしてきた過去がありますが、性格がかなり男前なので痛々しい印象はまったくありません。軍人さんなので、武器もいっぱしに使えますし。
そのイリヤに対して海翔は良くも悪くも単純すぎるというか純粋すぎるというか…(笑)。
まぁ、だからこそ複雑な環境で育ったイリヤには眩しく見えたということなのですが、最初からイリヤを主人公にして彼の込み入った部分をもっとディープに描いてほしかったかも。

安心のハッピーエンドを迎えたラストにはいろいろニヤニヤさせられましたが、イリヤがどんどん大物になってしまうのにはちょっと萎え;
海翔と再会した時から大佐や文化副大臣なんてその若さに似合わない肩書きをもっていたけれど、それ以上にグレードアップされるとなんだかもう異次元のお話読んでいる気分です…;
次期大統領候補なんて仰々しすぎますよ(苦笑)。あくまで普通の男たちのお話…の方が萌えるんだけどな個人的には。

ところでイラスト、30過ぎの大人の男たちのお話なのにまるで少年のようで違和感。
イリヤはまぁともかく、海翔は作中に「一見すると、強面の東洋人」とか「アメリが映画に出てくる武闘家といっても通りそうな強面」と説明されているイメージと全然合わなくて、冒頭にも書きましたがぱっと見彼が受けなのかと思ったほどですよ。。
本文イラストはカバー絵ほどの繊細さがないし、なにより最後は紫色の花の刺青を描いてほしかったな…。

「裸のマタドール」 華藤えれな / ill.葛西リカコ

男娼上がりの性悪ビッチと噂される美貌の闘牛士・ロサリオこと理央。そんな理央が世話係として拾ってきたのはかつて自分を弄んで捨てた男・レジェス。帝王と呼ばれ、闘牛界に君臨した彼だが、試合中の事故で記憶と聴覚を失ってしまう。過去の栄光も二人の因縁も全て忘れ、一途に理央を見つめ守り従うレジェス。目の前の優しい彼に惹かれながらも、過去を忘れられない理央の心は―。

「神に弄ばれた恋 〜Andalucia〜」「愛のマタドール」に続く華藤さんのマタドールもの第三弾です。
今回の主役は、前2作にも登場している異端児マタドール・ロサリオ。
一作目の「神に弄ばれた恋 〜Andalucia〜」で攻めのライバル的存在として登場しかなりインパクトもあったキャラだったので、「愛のマタドール」が彼のスピンオフでなかったのが意外に思えたほどでした。その彼が、ようやくの登場です。
ロサリオはこれまで「アルゼンチン人マタドール」としか説明されていませんでしたが、今回、母親が日系アルゼンチン人で、アルゼンチンでのロサリオと別にの理央という日本名を持っている意外な事実が判明。
これまでそんな素振りが全くなかっただけになんだか取って付けたように感じてしまいましたが、受け攻め両方が外国人設定だと嫌煙されがちなことへの配慮でしょうかね。
そんな疑問を抱きつつ読み始めたお話でしたが、そんなの吹っ飛ぶくらいいいお話でした。
マタドールシリーズの中ではこれがいちばん好き。
元闘牛士×闘牛士の、切なさいっぱいのお話でした。

男相手の派手なスキャンダルと観客受けするタレント性重視の闘牛をすることで有名な闘牛士のロサリオ=理央(受)。彼の付き人のレジェス(攻)は、かつて帝王と言われたほどの闘牛士でしたが、試合中の事故が元で記憶と聴覚を失っています。
理央はレジェスに憧れて闘牛士になった経過があり、またレジェスとは肉体関係も持っていましたが、今理央のそばにいるレジェスは理央との過去も闘牛も忘れ、かつての獰猛さが嘘のように静かに理央に付き従うだけの存在。その優しさに心休まりながらも理央はどうしてもかつてのレジェスを忘れることができず…。

これまでのマタドールものとは違い、受け攻め両方がマタドールであることがよりマタドールものとして濃厚になっている感じでした。
正直、前の二作はマフィアやら神父やらの存在がマタドールものとしての面白さを邪魔していた気がしていまいちはまりきれなかったので、今回は凄くよかった。

なにより理央がすごく可愛いです。
作中やたらと「ビッチ」と言われ、相手の挑発に乗っては誤解を生む場面を作ってゴシップ誌に話題を提供している理央ですが、実は後にも先にもレジェスしか知らななkればレジェスのことしか頭にない一途な男の子です。あらすじに男妾上がりとありますが、それもあわやそうなりかけたというだけの話で、厳密には違う。
アルゼンチンに巡業に来ていた闘牛士と日系アルゼンチン人の間に生まれた理央は決して恵まれた環境にはなく、自分が生まれる前にスペインに戻った父を追った母とともに渡ったスペインで、若いながらもすでに天才と謳われていたレジェスに出会ったことで運命が変わっていきます。
レジェスのような闘牛士になるのだと頑張るも母親が倒れて生活に苦しむ中、もはや体を売るしかない…という状況に陥った理央を助けてくれたのがやっぱりレジェスで、以来彼のスタッフとして闘牛を学び、そして体も繋げるようになるのです。
けれどもレジェスが試合中の事故で記憶と聴力を失ってそれから5年もの間だれとも寝ることなく一途にレジェスのために闘牛を行なっているという、性悪と見せかけてとことん健気な理央の姿に心を鷲掴みにされてしまいました。
ゴシップネタの提供やタレント性重視のイロモノ闘牛に熱心なのは、そうすることで少しでもお金を得ようとしているからで、それもレジェスの聴力を取り戻すため…ってもうどのくらい尽くしているんだと。
こういうタイプにはけっこう弱い…。

記憶を失くし、傲慢だった前とは真逆の静かで付き人としてどこまでも尽くしてくれる今のレジェスの姿を見るたびに昔のレジェスを思い出して苦しみながらも、今のレジェスとの時間にも心地よさを覚えてしまう理央は、完全にふたりの男の間で揺れているのと同じで、これはある意味三角関係なのですね。
そして、記憶を無くす前のちょっと何を考えているのかわからないレジェスの意外な事実には、彼の闘牛に対する想いの深さとそれ故の哀しみに泣けてきます。

作中「神に弄ばれた恋 〜Andalucia〜」のサタナスとアベル、「愛のマタドール」のユベールも登場していて、特にアベルは理央の闘牛についてかなり核心をついた言葉を伝えるという重要な役割を担っていますが、それによって理央が「真の闘牛」に気づいていくのが良かったです。
これは、ロサリオというひとりのマタドールの成長の物語でもあったのですね。

ただ気になったのは、これは過去二作品も同じですが厳格なカトリック国であるスペインが舞台にしては同性愛におおらかすぎる気が。。
いくらゴシップ誌でもホモネタは嫌われるんじゃ…。というか、はじめから無かったことになれそうですよね。
その辺りのリアリティのなさが凄く気になってしまいました。作家さんの萌えツボなのか??
その他、夜のパティオでの薔薇のシーンとか男二人でタンゴとか、若干演出過剰で吹き出しかけてしまいましたが、最期まで読むとそれすらも彼らのドラマティックな半生を彩るに相応しいものに思えてきました。
忘れがたいのは作中何度も印象的な登場をする「ひまわり」。
そして、闘牛士の衣装は付き人によって裸から仕上げられていくというのにすごく萌えてしまいました!

ところで、「愛のマタドール」で登場したユベールの付き人のパブロが、今回意外な登場をしていてびっくり。ユベールはこのことを知っているのか、それがいちばん気になりました。

マタドールシリーズ
「神に弄ばれた恋 〜Andalucia〜」
「愛のマタドール」
・「裸のマタドール」

「愛のマタドール」 華藤えれな / ill.葛西リカコ

評価:
ショップ: ---

心に傷を負いスペインへとやってきた神学生の颯也。ある日、酒場で声をかけてきた優雅で魅力的な男・ユベールに強引に誘われ一夜を共にしてしまう。傲慢で自信に満ちた彼がふと見せる孤独の影に気づいた颯也は、素性も知らないユベールに惹かれていく。このままだと背徳の罪に堕ちてしまうと別れを決意する颯也だが、彼の正体がスペイン中を熱狂させる闘牛士だと知り―!?闘牛士×神父の禁断ラブロマンス。

「神に弄ばれた恋 〜Andalucia〜」に続く、華藤さんの闘牛士もの第二弾。
今回はフランス人闘牛士×日本人神学生です。

自分の未熟さが元で大切な人たちを傷つけ自身も心に深い傷を負った颯也(受)は、贖罪のため世話になった神父に付いてスペインに赴き神学生として生きることに。けれども未だに自虐の念に囚われています。
ある夜颯也は行きずりの酒場で、優雅だが陰のある男・ユベール(攻)に出会います。
ユベールは、死とスレスレの闘牛を披露することでスペイン中を熱狂させている闘牛士で、闘牛のあとは躰を鎮めるために誰かを求めずにはいられない。
そして颯也は自虐のために男を欲している。
利害の一致でお互いに素性を隠したまま一夜を共にしたふたりでしたが、その関係はその後もずるずると続いていきます。
さすがに神学生であるのにこのままではいけないと颯也はユベールに別れを告げるのですが、間もなく再会することになり、そしてお互いの素性を知ったことで関係が変わり始めます。

誰かに対して自分を犠牲にしてばかりの「優しくて弱い」颯也と、闘牛で頂点に立って死に伝説になることを目指すユベール。
ふたりが実は似たところにいた事、そしてそれぞれに何を求めていたのかに気が付くところはじーんときます。

…なんですけれど、なんというか、設定やキャラは好みのはずなのにどこまでも不発なお話でした。
良くも悪くも怒涛の展開の連続だった「神に弄ばれた恋 〜Andalucia〜」と違って、終始ふたりの関係に的を絞ったのが逆に地味になってしまっているような??
いや、ここにマフィアだの何だのの介入はまったくいらないですが(笑)、終始さらーっとしていてがっつり印象に残らなかったんです。
闘牛やフラメンコ(を踊り出した時はちょっと笑ってしまいましたが・笑)などのシーンでは作家さんのスペイン文化への情熱があふれているなーと感じるんですけど。特に闘牛のシーンは臨場感があります。
たぶん、ユベールと颯也のどちらもにいまいち感情移入ができなかったのが消化不良に終わった最大の原因かも。ふたりがなぜ惹かれ合ったのか、お互いでなければならなかったのかが見えてこずお話に乗れなかったというか。
…もったいないです。
終盤のどん詰まりまでふたりがすれ違っているために、最後の方は駆け足気味なのも惜しいです。

全体的に薄いと感じるのは、イラストのせいもあるのかな。
カバーと口絵はとても素晴らしいですが、淡々としたモノクロからはスペインの情熱や激情は感じられませんでした。ユベールの衣装もカラーと違って意匠も描き込まれておらず白いし。。
葛西さんのイラストは、ヨーロッパならラテンな南の方ではなく北の方が合いそう。イギリスとか北欧とか。

「神に弄ばれた恋 〜Andalucia〜」のサタナスとロサリオがユベールと肩を並べる闘牛士として登場しているのが嬉しいサプライズでした。

マタドールシリーズ
 ・「神に弄ばれた恋 〜Andalucia〜」
 ・「愛のマタドール」
 ・「裸のマタドール」

「地下室のワルツ ─蜜と罰─」 華藤えれな / ill.周防佑未

小児科医の夏生はパリでヴォルフと名乗る外科医と出会い、驚愕した。髪も目の色も、そして素性も違う、けれど見間違うはずもない―その男は、行方不明だった幼馴染み、そして家族の仇・アレク。彼が隠す危険すぎる過去を知る夏生は、邸に囚われ、鎖に繋がれてしまう。その日から誰もこない地下室で、甘いワルツの流れるなか、アレクに支配され、狂おしい官能に溺れさせられて…。

イラストレーターさんが変わっていたので気が付いてなかったんですが、「あなたは僕を愛していない」のスピンオフ、しかもその後が気になっていたキャラ、オスカーも登場していると聞いて手にとってみました。
でも主役は小児科医の夏生と心臓外科医のアレクという新キャラだし、前作品のキャラのその後がわかればそれでいいやな程度の気持ちで読んだのですが…
これがもの凄く良かった!!
今年読んだBLの中でもダントツで面白くて読み応えのあるお話でした。

母親がボスニア人男性と再婚したためにサラエボの郊外で育った夏生(受)は、その後勃発した内戦を生き抜き30代半ばの現在はNPO所属の小児科医としてアフリカで活躍しています。けれども裏表のない白黒はっきりさせないと気が済まない性格か災いして仕事での人間関係は上手く行かず、挙句に横領の濡れ衣を着せられて職を追われてしまう。
夏生が頼った友人オスカーからパリでの働き口を紹介されて、夏生はアフリカから身一つでパリにやって来ますが、新たな職場で衝撃的な人物と再会することになります。
それは、かつての級友であり初恋の相手でもあり、そして家族の仇でもある男・アレク(攻)。今は国際指名手配犯となっているアレクはヴォルフという名の別の人間になりすまして心臓外科医として働いていたのです。
十数年行方不明だった彼に、夏生は復讐を果たそうとしますが…。

男らしくて湿っぽいところのかけらもないからっとした性格の夏生のキャラがとてもいいです。
アフリカでマラリアに罹って路傍で死にかけている冒頭のシーンもびっくりですが、そんな状況でも明るく前向きでまるで悲壮感がなという(笑)。脳天気一歩手前といってもいいくらいですよ(笑)。
華藤さん作品では珍しい受けキャラですよね。
対するアレクはひどい奴かと思いきや、半分夏生のストーカー状態の変態執着攻め。でも実は純で(だからこその変質っぷりか?)可愛いところのある憎めない男です。

お話は現在の時間と過去の出来事とが交互に進みながら夏生とアレクの間に何があったのかが徐々に明かされていく構成で、どんどん引き込まれました。
実際の紛争のことが絡むので民族とか宗教とかがややこしいと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、要は敵対する民族同士のふたりが惹かれ合ってしまったという、ロミオとジュリエット的なお話です。
とはいえ夏生は生粋の日本人なので厳密には違うのですが、彼を愛し受け入れてくれた第二の父親の家族として生きてきたのだから、その仇である存在とは対立しているという構図。
最初はコテコテの大阪っ子が東ヨーロッパに移住してそこで運命の人に出会うという設定に、そんな有り得ないことにせずに主人公を初めからボスニア人にすればいいのに…、と違和感を覚えたんですけれど、そうした民族の対立やしがらみとは無関係なところから現れた人間だったからこそアレクは夏生に惹かれたんだと気が付きました。

華藤さん作品はたいていこの二人のように誤解やすれ違いを起こしていてぎりぎりでやっと丸く収まるるカプのお話が多いですが、お話によってはそんなことで意地を張らなくてもとかぐるぐるしすぎだと思うことがあっていまいちのり切れないことがありました。
でも、このお話は内戦という生死にかかわる凄惨な事態が絡むので、中途半端に感じるところが少しもありません。
夏生の歩んできた壮絶な過去を思えば、彼の医師としての想いやアレクへの許しもとても自然なものに見えますし、感動的でさえあります。アレクにしても同じ。
下手をすれば陳腐に見えかねないのに、とても深みと説得力のある展開に涙です。
そしてこういうお話は内容が内容なだけに暗く重たいだけのものになってもおかしくないのに、主人公の夏生が前向きな性格なためにそういう雰囲気はあまりなく、読んで陰鬱な気分になったりしないのもいいところですね。

途中、夏生がアレクによって地下室に鎖に繋がれて監禁され…な状況にもなりますが、アレクの夏生へのどうしようもない執着心の結果だと思うと切なくなりますし、そんな状況でも夏生が前向きなので酷さや痛さはありません。
…そして夏生にコスプレ(?)させたり踏み付けられて悦んだりと、夏生にも言われちゃってますがアレクの中々の変態ぶりの方が印象に残ってしまったという(笑)。いや、とても切ないところなんですよ…!
そしてこのお話は、受けよりも攻めの方が実は純情なのですね。
地下室は、監禁の場以外にももうひとつお話の重要な場として登場しています。

夏生のよき友人、よき理解者として登場するオスカーの他、夏生の先輩として海堂も姿を見せているのが嬉しいです。ミハイルとは相変わらすなのでしょうかね?
特典ペーパーでアレク視点のSSが読めますが、同郷の人間ということで夏生と親しい海堂に(見当違いもいいところの・笑)嫉妬をしながらも、アレクが夏生のために海堂から味噌汁の作り方を教わっていたりして微笑ましかったです(笑)。
そんな夏生やアレク、そしてオスカーや海堂の姿をもっと見たいと思いつつも、ルナノベルズなくなっちゃったからな…。続編、スピンオフはもう難しいかもしれないですね。惜しすぎる…><

<関連作品>
 ・「あなたは僕を愛していない」

「神に弄ばれた恋 〜Andalucia〜」 華藤えれな / ill.朝南かつみ

灼熱の太陽が輝くアンダルシア。伯爵令息アベルは幼い頃、自分を庇って左目を失った孤児サタナスを深く愛していた。身分差ゆえ話す事も許されなかったが、やがてサタナスは二人の恋を成就させる手段として、闘牛士となる。アベルが贈った衣装を纏い、闘うサタナスに観客は熱狂した。そんな時、没落し爵位を奪われたアベルを護るため、サタナスは殺人犯になり、アベルは彼を救おうとマフィアの愛人に身を堕とす。出所後、誤解したサタナスの黒い眸から愛は消え、獰猛な獣のようにアベルを辱めて―。

華藤さんの新刊はスペイン・アンダルシアが舞台の闘牛士×伯爵子息もの。闘牛に対するご本人の思い入れの詰まった一冊でした。そして、朝南かつみさんのイラストが光ってます! 登場人物の表情の見えないカバーイラストなんて見たことない気がしますよ。これ、なんだかものすごく妄想をかき立てられます…!

ジプシー出身の孤児サタナス(攻)と伯爵子息のアベル(受)は本来なら口をきくことも許されないほどの身分の差がありますが、境遇は違えど同じ孤独を抱えていることから想い合うようになります。やがてサタナスはアベルと対等な存在になろうと世界一の闘牛士を目指し、成長と共に闘牛士としての才能を開花させていくのですが、その一方で彼を懸命にサポートしてきたアベルは没落してしまう。
その中である殺人事件が起こり、サタナスは殺人犯として収監、世界一の闘牛士となる夢は絶たれたかと思いましたが。
何とアベルはマフィアの愛人となりその後継者にまで登りつめてサタナスを出所させてしまう。まるで天使のような少年だったアベルが段々したたかな男に成長して、サタナスのためにここまでしてしまう。
で、アベルはサタナスを己の専属の闘牛士にしようとするんですが、サタナスは復帰の条件として牛を殺すごとに彼を抱くという条件をつける。これはサタナスがアベルに愛想を尽かしたとか侮蔑するようになったためではなくて、自分のためにここまでしてしまったアベルを止めるため、そして今度こそ自分のものにするために出した条件なんですね。
状況は変わってしまっても昔と同じようにサタナスはアベルと共にいるために命を賭して闘牛士として生き、アベルはその身を堕としてまでサタナスを闘牛士として生かそうとしている。お互いが求めているもの、目指しているものは同じはずなのになかなか重ならないのがじれったくて切ないです。
そしてこのお話全体を覆う、かつて少年の頃のふたりにある占い師が告げた共にいると互いが互いに不幸をもたらすという不吉な予言の呪縛。それが現実にならないようにお互いがお互いを想いながらも、一緒にはなれないという読んでいる側にはとてももどかしい状況が続きます。

生死を賭けて行われる闘牛とサタナスという野性味溢れる闘牛士の魅力と相まって物語が展開していくさまはエロスすら感じられて読み応えがあったのに、そこにマフィアの抗争だのまさかの裏切りだのが入り込んでしまったせいで終盤はごちゃごちゃまとまりのない印象になってしまったのがあまりに残念。それらを詰め込むには明らかにページ数が不足していて、前半の濃厚で重厚な展開に対して終わりに近づくほど駆け足状態になってしまっている気がします。
それは抜きにして、闘牛のことのみを追ったほうがいろいろ納得できたような。。

サタナスとアベルはいつまでも素直にならず終盤はとんでもない事態にもなって、最後の最後の最後までこれはバッドエンドなのか? とひやひやしましたが、二転三転の末にちゃんとハッピーエンドに落ち着いて安心しました。もうほんと、バッドエンドだったらどうしようかと(笑)。
そして最後まで読み終えると、アベルがサタナスを助ける前半とサタナスがアベルを救う後半の二部構成の物語だったんだな、と気が付きました。
そして何より華藤さんご本人の闘牛に対する思い入れや現地での取材効果で、読んでいて闘牛をまるで知らない私にもその魅力というか魔力がひしひしと伝わってきました。舞台が外国で登場人物がみんな外国人なので取っ付きにくいかと思いきや、著者の丁寧な描写が異国に誘ってくれました。アンダルシアの埃っぽい大地を感じることのできる一冊です。

マタドールシリーズ
 ・「神に弄ばれた恋 〜Andalucia〜」
 ・「愛のマタドール」
 ・「裸のマタドール」

「花蝕の淫―狂おしく夜は満ちて」 華藤えれな / ill.朝南かつみ

 北嵯峨の僧庵で、出家し世俗から逃れるように隠れ生きていた清祥。しかし、自分の運命を狂わせた男が再び彼の前に現れ―。まだ十代の頃、桜舞散る京都で出会った闇色の双眸の男・竜二郎。両親を知らずにいた清祥は祖母の葬儀から拐われるように連れられた屋敷で、己が月嶋組組長の息子であることを知る。世話役として、竜二郎に実父の前で犯された清祥は、同性にねじ伏せられ支配される屈辱と恐怖を感じながらも、身に潜む業を引き出されていき―。

朝南さんのイラストに、つい、坊主…!と興奮してしまいましたが(笑)、主人公が剃髪するまでのいきさつと成長が主の主従モノで、剃髪後のお話は少なめでした。

実の親を知らずに育った清祥(受)は、僧籍にある養父の教えのまま自分も仏の道を進もうと、京都の仏教系の大学に進学する。その京都で危険な香りのする男・竜二郎(攻)と出会い、漠然と仏門に入ろうとしていた心を揺さぶられて、清祥の日常は変わっていきます。
竜二郎との出会いから一年、清祥は思わぬ形で彼と再会し、そしてその口から自分が月嶋組組長の息子であるというとんでもない事実を告げられる。更には、月嶋組を継げという僧籍を志す清祥には絶対に受け入れられない要求をしてきます。
組を継ぐことを頑なに拒否する清祥を、その世話役となった竜二郎は犯し、更にはその背に自分の背にある刺青と対を成すお能の「道○寺」をモチーフにした刺青を入れて、二度と普通の人生を歩めないようにしてしまいます。
そして刺青を入れられた清祥の方にも、その情念が宿るかのように変化が現れる。
刺青が彫られた人の人格を支配して、という内容の作品といえば沙野風結子さんの「蛇淫の血」を思い出しますが、こちらはそこにお能の物語の情念を絡ませ、よりねっとりした印象です。
そして自分の背負っている宿命に翻弄されてそれから逃れようとしていた清祥がやがて自分の宿命を受け入れる覚悟をしたころ、組の跡目を狙う異母弟の渉が清祥の前に現れて波乱が起きます。

華藤さんが書くとヤクザの世界も殺伐さとは無縁の情緒さえ感じさせるしっとり任侠道で、全体通じて耽美的な雰囲気濃厚です。ヤクザの跡目争いが主題なのに(笑)。
出てくるヤクザもBLで流行りのインテリヤクザではなくて昔ながらの任侠ヤクザ。京都が舞台のためなのか古風なくらい。その京都も生活臭のしない理想化された地として描かれていて、これは現代ではなくてちょっと昔の話にしたほうがしっくりきたのかも。昭和の任侠ヤクザって萌えません?(笑)
あと、全体に渡って桜が幻想的で妖しい彩りを添えています。これ、紅葉狩りの季節ではなくて桜の咲く頃に読んだほうがより雰囲気味わえるかもしれません。
それから、坊さんヤクザっていうのはBL広しといえどもこれが初ではないでしょうか? 清祥は出家し剃髪して俗世でのしがらみを捨てたはずだったのに、その中にあった情念はそう簡単に流せるものではなったんですね。剃髪してからの方が禁欲的な雰囲気があるぶん清祥の抱える悩ましさも増していてエロティックでした。

ただ、これだけ丁寧で幻想的にすら描かれているのにキャラが好みじゃないというかいまいちつかめなかったためなのか、萌えはあまり感じられませんでした。
清祥はもうちょっと男前なくらいのほうが良かったような。そのほうが剃髪後の凛とした感じも引き立った気がします。
対する竜二郎も、何を考えてるのかつかめず、いつの間に清祥にそこまで入れ込んでいたんだと思えてしまって清祥に対する感情の動きがもう少しわかるように書かれていたらなぁと残念です。
変わって強く印象に残ったのが清祥の異母弟の渉。正直、清祥の京ことばには終始違和感が付きまとったんですが(生活圏だからですかね…)渉の大阪弁は小気味良く響きました(笑)。凶暴な美青年、いいですね!! で、何となく彼がらみのスピンオフでも出るんじゃないだろうかという気がします(笑)

朝南さんのイラストは素敵です。カバーの妖しい感じはもちろん物語を見事に表している口絵がいいです! 欲を言うならば、ふたりの刺青の絵が見たかったです。

「シナプスの柩」上下 華藤えれな / ill.佐々木久美子

両親を亡くし、大学三回生の時に天涯孤独となった桐嶋水斗は、日本心臓外科界の権威である長山の援助を受けて医師となった。だが、援助の代償に長山の下で働くことと躰を求められ続けていた。長山から逃れたいとの思いが募る日々の中、NYから敏腕外科医の樋口が赴任してくる。彼の天才的な医療技術に心酔した水斗は技術を教えてもらうことになり、いつしか樋口に惹かれていくが―。
 
「あなたは僕を愛していない」が良かったので、こちらも手にとってみました。
2001年〜2002年にかけて小説エクリプスに掲載された本編に、上巻に「水棲類の夢」、下巻にふたりのその後を描いた「幸福の領域」が書き下ろされてました。

心臓外科の権威・長山のもとで働く桐嶋水斗(受)は、両親を亡くした自分に医者の道に進めるよう援助してくれた長山への恩から、彼に仕事での研究成果を奪われ、更には躰を好きなようにされていることを受け入れている。けれども追い詰められいく苦しさから長山から解放されたいと望むようになり、ちょうどNYから赴任してきた敏腕心臓外科医の樋口(攻)を利用して、上手くNYに逃げようと考える。ところが利用するつもりで近付いた樋口に、どうしようもなく惹かれてしまう。
樋口も長山にいいように利用されている水斗を哀れに思い始めた頃から水斗に惹かれ、ふたりは互いを求めるようになるが、それを知り激怒した長山が樋口の前で水斗を抱くという暴挙に出たために、樋口にいちばん見られてくなかった姿を見られてしまった水斗は、堪えられずに飛び降り自殺をはかってしまう。
何とか一命を取り留めたものの、水斗は記憶を失ってしまい責任を感じた樋口は彼の面倒をみることを決意、北海道にいる友人の脳外科医・海堂の元へ向かう。
それから樋口が幼児のように言葉さえも分からなくなってしまった水斗を育てていくようになるところからが本編の始まり、という感じです。いろんなしがらみに追い詰められ壊れてしまった水斗の再生のお話、ということでしょうか。

水斗が長山から性的な行為を仕掛けられたり追いつめられるとき「ウィルスに細胞が侵食される」錯覚に陥ったり、北国の湖が記憶を失った水斗の心理状態を表していたりと、象徴的な表現が効果的に使われていて、どこか幻想的な雰囲気です。
また、樋口の神業のような執刀技術に心酔した水斗が「死んだらこの指に解剖されたい」と思うところなどは、ちょっと倒錯した感じでたまらないですね。
そんな耽美的で幻想的な雰囲気が全体に流れていますが、文章に飾りが多いとか読みにくいとかは思わなかったです。むしろさらっと読みやすい印象。

ただ、個人的には最初の、記憶をなくす前の水斗の如何にも医者っぽい発言と、それに戸惑った反応をする樋口が好きだったので、幼児化して無防備になってしまった水斗とそんな彼を過保護に慈しんでく樋口というシチュには、あまり萌えられませんでした。これはもう好みの問題でしょうね…。もうちょっと最初の頃のふたりのやりとりが見たかったです(笑)。
そしてノベルズ上下巻でボリュームもあり医療のことやキャラの感情などとても丁寧に書かれてあるのに、話の展開がBL的お約束に溢れていて予想どうりなのが惜しいところ。もうちょっと予想を裏切るような展開だったらなぁと思いました。
あと、佐々木久美子さんのイラストが、雑誌掲載時のものと新たに書き下ろしたものが混じっているようで、何だか統一感のない感じ。それもちょっと気になってしまいました。

スピンオフ作品
 ・「あなたは僕を愛していない」(海堂が主役のお話です)

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